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0司 プロローグ

これは、「たとえこの身が襤褸に転じようとも」のスピンオフ作品です。

「たとえこの身が襤褸に転じようとも」はこちら↓

https://ncode.syosetu.com/n7302gi/

ぜひ読んでみてね!

0司 プロローグ


私の名はエヴィ、ランク7のベテランダンジョン探索者だ。一応所属パーティ'サンダートラバース'のリーダーをやっている。パーティー名の由来は、私の得意魔法【雷電魔法】に掛けているのと、電光石火でダンジョンを踏破したいという願掛けからだ。

私は今、氷獄のダンジョンの3階層にいる。その名の通り、氷属性の最高級難易度ダンジョンだ。未だ踏破されておらず、過去23階層までしか到達記録がない。中級ダンジョンでも50階層は割とよくある数字なので、この氷獄のダンジョンはそれ以上は階層があると考えられている。

私の後ろには、パーティの3人の仲間が付いてきている。

一人目は、アイラト。男。ランク5。良く言うと要領がいい、悪く言うと半端だ。一言で言うと器用貧乏かな。でも、アイラトのおかげで助かる場面も多い。基本的に、行き詰まった状況を打開できるのは彼の力によるところが大きいだろうと思っている。

二人目は、ジルヴィーナ。女。ランク6。【樹木魔法】の使い手だ。この魔法はすごく使える。戦闘では、樹で妨害したり叩きつけたりでそこそこ戦闘力があるし、樹で小屋を作って野宿を快適にしてくれたりする。

三人目は、ヴィタリー。男。ランク4。まだ10歳と幼いのにランク4な天才だ。あとめちゃくちゃかわゆい男の娘。ココ重要。テストに出ます、知らんけど。


私達が氷獄のダンジョンに潜ってからすでに半日経って夜になろうとしているが、手に入れたものといえばモンスターが落としたわずかばかりのアイテムばかり。宝箱は全て開けられている。安全策を取って浅い階層で探索をしているからだろうか。皆の顔にもうっすら疲れが見える。寒さで余計に体力を消費するからね。いや、もはや寒いんじゃなくて痛い、か。

皆の疲れ具合を見て私は言う。

「今日はここらで休もうか。ジル、【樹木魔法】で簡易小屋を作ってくれるか?」

ジルヴィーナは表情を緩めて小屋作りにかかり始める。残り二人も、周囲の警戒は怠らずに一息ついた。

少し待つと小屋が出来上がった。ノーマルに有能だ。これが普通のパーティならばいちいちテントを張らなければならないところである。

皆ぞろぞろと小屋の中に入る。

入ってすぐのところに囲炉裏が作ってある。まあそこだけダンジョンの床が出ているだけだが。ジルヴィーナが小さな木片を出してくれたので、【雷電魔法】で火をつけ囲炉裏にくべる。いつの間にか囲炉裏のそばには薪が生成され積んである。気が利くなあ。

交代で見張りをやることにして、まずは私が見張りに出る。なんたって【雷電魔法】で熱を生み出せるからこの中で一番暖を取らなくて平気だからね。リーダーだから率先して引き受けたという事もある。

見張っている間中特に何事もなく、交代しに戻ると、アイラトが次空収納袋から食料を取り出し、調理していた。私と入れ替わりにジルヴィーナが見張りに出ていく。飯を食ったあたりでジルヴィーナが帰ってきて、アイラトが出ていった。私は少し仮眠を取ることにした。休息は取れる時に取らないと取れなくなってしまう。


ヴィタリーに起こされて目を覚まし、見張りに出ていく。最高のシチュじゃないか…。密かにそんなくだらないことを考えてニヤニヤしながら見張りをしてしばらく経つと、あるものが見えた。トロウモンキーだ。

トロウモンキーは収集癖を持つ猿型モンスターで、それ自身の毛皮ドロップはもちろん、レアアイテムを持っていることがあるので実入りが大きいと探索者に人気のレアモンスターだ。

今日一日の成果の少なさへの不満と、最高のシチュによる気の緩み故だろう。私は、仲間にモンスターの報告をする前に【雷電魔法】を撃っていた。

トロウモンキーの体力では受けきれないはずの一撃だが、しかしトロウモンキーは倒れなかった。マジかよ!【雷耐性…をここ氷獄のダンジョンに持ってくるやつはいないから【転嫁】の付与された道具を装備していたらしい。それを見た私は一瞬の内に後悔に襲われていた。そんな付与のついた装備品を持っているということは武器も強いはず…!どいつだそんな値が張る装備持ち込んだアホは!とっさに仲間に雷音で警告を送る。

と同時にトロウモンキーのヘイトが向く。さあ何を使ってくる?トロウモンキーはおもむろに何か小さいものを手に持った。てっきりボウガンによる矢や杖による魔法攻撃だろうと予想していたが違うらしい。只のモノだったら矢ほど早くないし魔法ほど追尾してこない。そこまで大したことはないでしょ!これは勝ったな…!

…この油断が命取りだった。「何か」が投げられる。軽く躱した…と思った刹那、「何か」は、爆発した。虚を突かれた私は為すすべなく巻き込まれる。

足を大きく抉られ、爆風が収まった時、すでに周りには爆発直前の「爆弾」が無数に転がっていた。

あ、これはムリだ。にげられない。

そこで私は悟る。この威力。無理だ、と。もう助からない、私は死ぬ、と。

やけにゆっくりと見える景色の中で最後に見えたのは、驚き叫びながら小屋から飛び出してくる仲間の顔だった。

ごめんね、しんじゃって。ゆるしてちょうだい…。


真っ赤に染まる視界とともに私の意識は遠のき…
















気がつくと真っ白で立方体な空間に寝ていた。


本当に真っ白、ここまで白いのは見たことがないというくらい白い。新品のペンキより白いんだから相当だ。

こう、非日常的な白さと言うか、純白なイメージそのもの?

まあそんなことはいい。問題はここはどこかということだ。そう思いながら勢い良く顔を上げると、真正面にお爺さんがいた。

誘拐ゆうかいか?最初に思ったのはそれだった。別に誘拐された経験があるとかそういうのではないけれど、目の前のお爺さんはやたら悪そうな顔をしていたのだ。俗に言う悪人顔ってやつ。

さあ誘拐されていたらどうするか。そんなの一つしかない。犯人に反撃する。一択だよね!(*断じてそんなことはありません)

というわけで不意打ちで殴りかかった。【雷電魔法】を拳にまとわわせて。最初から全開の力で。

いける! そう確信していたのに…

…なのにこの爺さん拳を避けやがった。こいつやりおる。

そこからはもう必死だ。この爺さんは多分私より強い。畳み掛けないとやられる。直感が私にそう囁く。

遮二無二しゃにむに拳を繰り出し続けるが一向に当たらない。しかし、爺さんの方からも反撃が来ない。膠着状態だ。

…この時点で私は気付くべきだったのだ。爺さんが何か喋っているということを……。しかし戦うことに意識を全集中させていた私はそれに気付けなかった。


突如爺さんの顔が歪むと、爺さんは溶け消えてしまった。文字通りその場でフッと消えてしまったのだ。

それを見て慌てて周りを見た私の意識はその瞬間刈り取られる…。
















気がつくと再び真っ白で立方体な空間に寝ていた。


しかし前と違う点が一点ある。

そう…両手両足が鎖で繋がれていることだ。鎖の先は床の下に消えているので起き上がることも出来ないし、【雷電魔法】で壊そうと試みてもそもそも魔法が発動しない。

あんまりな事態にしばし呆然としていると、視界に例の爺さんが目に映る。

しかし身動きも取れずに魔法も使えない私は何も出来なかった。

よく見ると、爺さんの額には青筋が浮かんでいる。

まあそりゃそうか。誘拐したと思ったらさらった相手が意外にしたたかに抵抗してきたのだから…。

「…拐な…断…てい…。」

ああブツブツつぶやいている…。これから私はどうなってしまうのだろうか…。

「誘拐など断じてしていないと言っておろうがこの脳筋がぁ!」

…はい?

「ずっと言っておるのに全く耳を貸さずに襲いかかりおってからに!」

…え?なんか言ってたの?

「言っておったわ!たわけが!」

…ん?心読んだ?

「心くらい読める!儂は神ぞ?」

………、……|(痛い人を見たときの心情)

「いや嘘ではない!」

…この自称神|(笑)のお爺さんはずっとぎゃあぎゃあ騒いでいる。いったらありゃしない。

「神に|(笑)をつけるな!あといのはお前のせいだからな?」

「その顔を鏡で見てから言い直してください。」

「じゃあ顔変えようか」

そういうと爺さんは発光し始めた。

…あの、お爺さんの変身シーンって誰得?

そんな事を思っていると目の前にはアイラトの姿が…。

…あっ、まさかの仲間黒幕ルートですか…。

「姿借りただけですけど?」

「アイラト……信じていたのに……どうして…?」

「君、話聞かないところあるよね、ねえ。姿借りただけって言ったじゃん。」

「あ、そういうのいいんで、悪役は無様にヒーローにやられてください。タスケテジルヴィーナチャーン!」

「白々しい演技やめて?よく鎖に繋がれたままそんなに挑発できるね!儂は神だって言ったよね?」

「神はもっと荘厳そうごんな雰囲気出している筈だ!あなたには荘厳のソの文字もない。よってあなたは神ではない! Q.E.D.!」

「いや君のレベルに合わせているだけだから、君が低俗なだけだよ?」

「いやまて邪神という可能性も…」

「大丈夫、儂は混沌神」

「全然大丈夫じゃなかった」

「いや混沌神は正義側ライトサイドよ?」

「」

「いや急に黙るなし」

「…目的はなんだ!」

「いや急にどうした?」

「誘拐されてお前に弄ばれるくらいなら挑発して激情のままに殺させようとしたのに全然うまく行かないじゃないか!」

「いや、神だから感情に振り回されないだけ。君、僕が心読めるの知ってるだろ?その企み筒抜けだったよ。あと、そろそろ誘拐犯の誤解は解いてほしいな?」

「…そうだったな、……さっき神なのに散々喚いてたな!」

神の額に浮かんでいた消えかけの青筋が不死鳥ふしちょうのように舞い戻ってくる。

「…死人の癖にさんざん煽りおってからにぃ…」

「誰が死人だ!」

「…え?」

「え?」

「え?…もしかして死んだのに気づいてない?まさかとは思うけど、あれだけの爆発に巻き込まれて命が助かったとか思ってらっしゃる?」

……。

「まさかねぇ…?」

…ひたすらにうざいが、それ以上の衝撃的な事実のせいで怒りも湧いてこない。…え?私、死んだの?

「まあ良いでしょう。ぅおっほん。やっと本題に入れる…。儂が君の魂をここに留めておいたのは、一言で言うとダンジョンマスターに仕立て上げるためです」

…と思ったら更に上があッタ

…マジカ

だんじょんますたーナンテイママデノギャクジャナイデスカ

「ベテラン探索者の魂ならダンジョンにも詳しいしね」

まあ確かにいきなりでびっくりしたけれど確かにダンジョンマスターは適職かもしれないけど…

「…でも君は短気だし儂に対する忠誠心も欠片もないみたいなのでこのまま消滅処分かな」

エ?

「ちょっとまってくださいおねがいしますまじめにはたらきますしちゅうせいもちかいま」

「…というのは冗談だけど。手のひら返しが凄いな…。」

よ、よかった…

「それではさっさと転生しちゃってくださーい!正直、もうこれ以上君の相手したくないのよ…。」

そう言うと、一気に視界が反転する。

きゅ、急すぎない…

そこまで考えて、意識も反転してしまった。















「でも忠誠心はやっぱり心配だから称号で縛っとこう」



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