本当にあった怖い話
この世界に光が刺さなくなってからもう3年が経つ。草木も死に絶えた荒野の上に、ふたつの人影が揺らいでいる。
片方はもう虫の息で、赤黒い血にまみれながら、目の前に横たわる自らの下半身を眺めている。
表情は穏やかで、何かを慈しむような目をしている、人は死の間際何を思うのだろうか。
俺はdバイクのシートに腰掛け、備え付けの浄水器から浄水した小便を一気に飲み干した。
やがてdバイクの通信機からレディー・ガガのボーン・ディス・ウェイが鳴り響く、コールマンからの着信だ。
「やあ兄弟、派手にやったみたいだね。」
「俺にかかればこんなもんさ。」
コールマン・リュックサック、俺の大学時代の友人だ。
この世界にデスパンデミックが起こった直後、食糧不足で暴動が起きた。
そして、彼はとある男から襲撃を受けた。
小さい子供がプールに入るときに着ける浮き輪みたいな感じで、両肩に回転する斧を装備した男に身体を気をつけの姿勢にした状態でわざとかなり接近されて、両腕を切断された。コールマンの飼っていた犬は、ついでに四角にされた。
「悪いが、こいつじゃない。」
「だろうね、やつは金髪のモヒカンで、口紅を顔中に塗っていたんだ。今でも鮮明に覚えてるよ。」
コールマンは賞金稼ぎのこの世界で、dバイクの整備や武器の調達をして俺のサポートをしている。
「こいつを換金したら、今日は酒場に行こう、たまにはいいだろ?」
「酒場か、いいね。いつもありがとう。」
彼は俺に賞金稼ぎをさせている事に負い目を感じているし、自分が戦えない事にもどかしさを感じているんだろう。
デスパンデミックのあと、俺は家族を失ったショックで自殺を図った。
詳細は省くが、コールマンはそれを許さなかった。
こんな世界で生きている意味はないが、俺はその日から彼に人生を捧げることを誓った。だからこそ彼には負い目を感じて欲しくない。
夜、コールマンのdバイクが不調で少し遅れると言う連絡があり、俺は先に酒場に向かった。
ここら一帯の酒場は俺たちの住むd地区の中でも治安が悪く、お尋ね者の顔もちらほら見える。
今日殺した男は他の地区では名の知れた賞金首だったらしく、思わぬ収入が手に入った。
気が大きくなった俺はいつもよりも少し高級な酒場で飲むことにした。酒場の中はにぎわっていた。
ビールを注文してコールマンの到着を待っているとマスターが話しかけてきた。
「あんた見ない顔だね、d地区の人間かい?」
「ああ、いつもは外れの安い酒場で飲んでるんだが、今日は思わぬ収入があってね。5万ゼニーだぜ。今日殺した賞金首だが、他地区では有名なヤツだったらしい。あっけなかったね、何の手ごたえもなかった。」
その言葉を聞いて青ざめたマスターは何も言わず、そそくさと店から出ていった。
なんだこいつと思っていたら「今日はうちの子分が世話になったな。」という声が聞こえてきて、振り向いたら口紅の男だった。
勘違いして隣の人に言っている。
隣の人はいきなり両腕を切断され、ぐらぐらしてるところにビンタをされて地面にすごい勢いで倒れ込んだ。
やばすぎて動けない。
駐車場からレディー・ガガのボーン・ディス・ウェイが聞こえてくる。
コールマンが俺を探してるようだ。
「俺じゃねえよ〜!」
「じゃあ誰だよ?」
「いてえよ〜!」
「おめえだろうが!」
クソやべー、どうする?
倒れた男の姿を見て女が悲鳴を上げる。
マジ今しかねー。
逃げ惑う人々に紛れて俺は走り出し、いつもの酒場の前で俺を待っていたコールマンにいますぐ帰ろうと言った。
「なんで帰るんだい?」
いいから!!!
「夜はこれからだろ?」
マジで今そういうのじゃないから!!!
「どうしたんだい?理由を説明してくれよ。」
マジこいつ!!!その顔やめろ!!!
あーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あああああーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
こいつのこういう所嫌い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
本当にあった怖い話~完~