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死後から始まる無双奇譚  作者: ヨベ キラセス
3/3

『7:26』


「………まだ痛い」

「自業自得、って知ってっか?」


 頭を頭突き、自分で着替えさえて居間で朝食を取る。今日も質素にごはん、味噌汁、そして鮭の塩焼き、胡瓜の漬物だ。ちなみにこの献立が3日続いてしまっているが、そこで「飽きた」と文句垂れたらタンコブが倍になるだろうが––––


「ありがとうねメグ。すごく美味しいよ」

「……いい加減その呼び名をやめろよ」

 ………このように毎日飽きもせず、無表情の自覚有りだからか言葉にして感謝される。そんなミトだから調子が狂うことがよくある。今も少し照れ臭い。



『8:00』


 戸締りをし、俺とミトは玄関を出て鍵をかける。




 すでにあれだが、俺はミトの家に『居候』している形だ。十年前に《死者》対策で地下のシェルターにいた俺は、ようやく太平洋の避難兼要塞都市ヨルムンガンドに移送される日に、自衛隊がその日まで極秘で活動していた対天災対抗チーム『ドミネート』の所属で、現在はここ《ヨルムンガンド エリアヤマト》の局長をしている、《ヤマトの英雄》で俺の恩人『如月 シノ』に、さらに親のいなくなった俺に居場所をくれた。俺はその恩を返すため、こうして家事を請け負っている。ちなみにだが、シノさんの家事スキルはミトとあまり大差ない。


 そして、のちに《アースラグナロク》と言われたあの日、『ドミネート』が使用した有限式飛行型武装テスタメントの功績は、ある一点の現実を除き実用化を進められた。

 《テスタメント》は、十五年前とある海域、鉱脈等で採掘された未知の鉱石『魔煌』から溢れる謎の力を動力源としていて、未だ解析は半分もいっていないらしいが、《テスタメント》そのものは何度もバージョンアップを繰り返している。


 今は量産機《テスタメント V6》を呼び出すデバイスを、高校生の少女たちに今後のため慣れさせるために配備されている。しかし《テスタメント》は男では原因不明の性能低下が起こるため、最低限の性能を引き出せるように高校生男子には拳銃型魔煌武装《マテリアル()バレット()シリーズ()》と特注の防弾チョッキを義務とされている。ま、形は選べるから意外と男子の不満は少ない。標準は《自動式拳銃 ベレッタM92》を再現した物だ。


 このように、現在ラノベ主人公のような男子の例外はなく、現実問題男女格差は大きく覆った。

 身体能力では今も勝る男子だが、いつでも呼べる《テスタメント》を踏まえれば明らかに勝ち目などない。《テスタメント》を纏えば自動障壁が発生して、《MBS》でも対抗は難しいから、使用規約があるにしてもパワーバランスは完全に逆転していることには変わりない。文学や体力の他に《テスタメント適正》もある現在、就職等でも自衛等で採用確率の上昇、発言力の大きさ、政治的地位有利性––––とまあ、少なくとも《亭主関白》はまずなくなったな、男側では……。




「YOU!YOU!お二人さん!! 朝から仲良いねー!!」

 噂はしてないが、ラップ調で意気揚々とボサボサの髪で現れたバカ『片隅かたす 桃児とうじ』が俺の右隣に並ぶ。現在通学路の人通り多い、そして左隣では注目の的な幼馴染みがいるにもかかわらずその態度でくるあたり、羞恥心はどこかで忘れてきたのだろう。拾いに戻って欲しい。

「帰れ」

「……悪かった。だからその冷たい目で見ないでくれ」

 と、よくわからんテンションは消えたようで、懐から眼鏡を取り出し、さらに半円型のくしを取り出して髪を整え、見たまんま優等生の見た目に戻したトウジはため息を溢す。

「……あのなメグ、俺はもう少しはっちゃけて、クラスのお調子者になりたいんだ」

「合わない個性はむしろ逆効果で離れていくぞ。すでに俺が離れたい」

「そういうなメグ、帰りにダックに連れて行ってやるからさ」

「……バーガー三個」

「ピクルス全部増量な」

「よし親友!」

「おう親友!」

 と、厚い握手を交わている間に校門前までついた。


 ところでだが、先ほどの奇行がなければ男子期待の学年筆記上位で、見た目に似合わずのスポーツマン、女子においては珍しく人気を誇る本物の優等生だ。先ほどのような奇行がなければかなりの優良株であるトウジは、こうして(俺を除いて)ミトと並んで歩くと余計に注目を浴びる。毎日のように(俺を待つ)トウジが(俺と一緒に来た)ミトが(俺と一緒に)歩くから、カップルと噂されていた。だから黄色い声援がよく聞こえる。


 一度トウジには気があるのか聞いたことはある。元々出会いはトウジの後ろの席だったってだけの理由なだけに、しかしこうして仲の良い友人になれたのだから、もしそうなら気を利かせてやろうと思っていたのだが、当の本人はそうではなかった。彼曰く、

「ミトは確かに魅力的だが、実は許嫁がいる」

 だ、そうだ。トウジの家は別に裕福ではない。どちらかといえば相手が裕福で、相手から決められたという。まあ、本来立場逆だが、トウジは相手の子を知っている上で、昔からの付き合いで奇行癖も理解しているらしく、決められたとはいえ程々に嫌われない努力をしているらしい。要はこいつも満更ではないとのこと、羨ましいぜ。

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