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突撃、ダンスパーティー

よろしくお願いします。

 白を基調とした内装に、広く取られた窓から、いまだ沈み切っていない日の光が差し込み、そこは茜色に輝く不思議な空間となっていた。

 通りすがる人すべてが、その光景に思わず感嘆の吐息をもらす。

 しかし、その瞬間は長くは続かなかった。

 日が沈み、廊下に暗がりが落ちようというとき、天井から吊り下げられていた大きなシャンデリアに明かりが灯る。

 するとそこには先ほどまでとは全く違う光景が広がっていた。

 シャンデリアの暖かい光が、壁や天井だけでなく、足元にも描かれていた壁画を映し出す。


 このひと時を見ることができた幸運に、心が温かくなるのを感じながら、エリザベートも憂鬱な気持ちだったことを忘れ、目の前の光景に魅了された。


 うっとりと眺めていると、手を引っ張られる。


「行くわよ。エリザちゃん。」


「は、はい。」


 もう少し余韻に浸りたかったのに、と思いながら、慌てて母についていく。

 会場のすぐそばまで行くと、母はコネリー夫人を見つけてそちらへ行ってしまった。

 一人残されたエリザベートは仕方なく、婚約者を待つことにする。


 しばらく、辺りを見渡していると、頭を左右に向けながら、明らかに人を探しているであろう婚約者を発見した。

 そちらの方へ歩いていくと、向こうも気が付いたようだ。

 目があった途端、顔を思い切りしかめられたが。

 そのままこちらへ向かってズカズカと近づいてくると、鼻で笑った。


「はっ、お前のセンスも相変わらずだな。」


 自分のドレスが似合っていないことは重々承知しているが、ここは貴族スマイルで乗り切っておく。


「あら、ありがとうございます。」


「は?褒めてないけど。大体なんでお前みたいなやつの横に並ばないといけないんだよ。俺まで、センスないみたいに思われるじゃないか……。」


 その後も何やらぶつくさ言っているが、割愛させていただく。


 想像していた通り、婚約者とはうまくやれそうにないことが改めて分かったところで、会場に入場することになった。

 すると、何やら後ろで、おい、おい、という声が聞こえてくる。

 あまりにうるさいので振り返ると、ん!と手を出してくる。


(お前は子供か!ちゃんと口がついているのだから口で言えよ!)


 エリザベートが呆れていると、またしても、おい、と言うものだから、つい言ってしまった。


「まぁ、失礼な方ね。(わたくし)、おい、何て名前ではありませんことよ。」


「この俺がエスコートしてやるって言ってんだから、お前は黙って手出してりゃいいんだよ!」


 瞬く間に顔を真っ赤にしてついには逆切れである。

 全くもって手に負えない。

 いったい彼は何がしたいんだと思いつつ、手を出す。


 今度驚くのは婚約者の方だった。

 いつもであれば、間違いなく反撃してきて、ぎゃあぎゃあと喧嘩になるはずが、今日は素直に手を出してきたからだ。

 度肝を抜かれたような顔をしつつ、またいらぬことを言う。


「お、おう。そ、そうして素直に手を出せばいいんだよ。」


 どこか勝ち誇ったような顔をしながら、手を取った。




 さっさと中に入った途端、エスコートされていた手を放す。


「では、ごきげんよう。」


 それだけ言って、婚約者から離れる。


(はぁ、疲れるわ。)


 途中からめんどくさくなり、一刻でも早く婚約者のそばから離れようと、多少のイラつきを我慢していたのだ。

 ボーイの運んできたドリンクを貰いながら、テーブルに盛られている料理をいくつか取る。

 ホールの隅に並べてある椅子に座り、ようやく一息ついた。


 今日のパーティーは出される食事だけを楽しみにやってきたといっても過言ではない。

 挨拶回りをする必要のないエリザベートは、早々に、食事を頂いたら帰るつもりである。


 参加はしているので、早抜けしようが問題ない。

 未成年は全員早抜けするし、エリザベートは成人しているが、同い年くらいの令嬢は夜まで残っている子の方が少ない。


 去年は物珍しさも手伝って参加してみたが、まさしく、惨状であったので、あれに参加したいとは思わない。

 あれを目の当たりにして、ダメな大人というのをはじめて認識した気がする。



 そんな風に去年を思い出しながら、自分もダメな大人にならないようにと自分を戒めていると、見知った令嬢たちが寄ってきた。


「エリザベート様。本日はこのような隅でいかがなされたのですか?」


 いわゆる、エリザベートの取り巻きである。

 それぞれ、可愛らしい色のドレスを身に纏い、笑顔を浮かべているさまは、花のようである。


「ええ、今日はこちらでゆっくり過ごしてみようかと思いまして。そういうのもまた違っていいでしょう?」


 おっとりと微笑みながらそう答える。

 しかし、その返答は不服だったのか、取り巻きたちがざわざわし始める。


「でも、皆さんは、あちらで殿方もお待ちのようですし、遊んでいらして?せっかくの綺麗な花がこのような隅にいたのではもったいないですわ。」


 そう言って、彼女たちを送り出した。

 彼女たちはエリザベートを気にしながらも、ダンスをしにホールの中央へと戻っていく。

 その後姿を目で追っていると、婚約者の姿が目の端に映った。


 どうやら、令嬢をダンスに誘っているようである。

 婚約者は、性格には難ありだが、顔は整っている方なので、特にお姉さまから人気である。

 お姉さまに囲まれ、鼻の下を伸ばしているのがここからでも確認できた。

 婚約者がいる身で、それはどうなんだ、と思わなくはないが、以前のエリザベートも似たようなことをしていたから、それに関しては突っ込みにくい。


 ぼんやりと婚約者を目の端にとらえていると、急に入り口のあたりが騒がしくなった。

 黄色い歓声の上がる中入って来たのは、エリザベートの兄二人である。

 ともに婚約者はいるが、そんなことにもめげずにたくさんの令嬢がアタックしているらしい。


 恐らく兄達だろうと予想していたエリザベートは特に驚いた風はなく、新たに食事をサーブしに行った。

 少し愉快だったのは、婚約者の周りにいた令嬢たちが、蜘蛛の子を散らすようにいなくなったことだろうか。


 半分しか血がつながっていないとはいえ、こうも違うと少しへこむ。

 そう、エリザベートは後妻の子供、兄二人は前妻の子供である。

 兄達から嫌われているのは、その影響もあるのかもしれない。


 兄達と遭遇したくないエリザベートは、取ってきた料理を早々と食べ終え、帰る準備をする。

 準備と言っても、入り口のところで帰る旨を伝え、馬車を手配してもらうだけだ。


 馬車の準備が整うまで、王宮内を見て回ろうと、来るときに通った渡り廊下へ歩いていく。



 夜の帳が落ち切った今はまた違う雰囲気だった。

 人気もなく、シャンデリアの明かりが及ばないところもあり、どこかもの悲しさを感じさせるものだった。

 しかし、荘厳さは相変わらずで、何度見ても心奪われる。


(この廊下を独り占めにしているような気分だわ。)


 何かパワーをもらえそうで、ついつい両手を掲げていた。






 王宮に来た時とは正反対の、すがすがしい気持ちで廊下を後にしようとした時だった。

 どこからか、男の人の話し声が聞こえてきた。

 盗み聞きは良くないと思いつつも、気になったエリザベートは、声のする方へ忍び寄った。


 姿は暗がりになっていて見えないが、どうやら二人いるらしい。

 まだ、少し声が聞こえにくいが、これ以上近づくとバレる可能性があるので、そっと聞き耳をたてる。


「………計画……大丈夫…」


「……進めて……帝国…通じ…」


「…忌子……裏の……」


 なにやら、少し漏れ聞こえてくるだけでも危険な臭いのする言葉ばかりである。


 もう少し詳しく聞こうとつい身を乗り出した。


「……っ誰だ!!」


 こちらに気づかれてしまった。


 慌てて廊下をひた走る。


 ちょうど停まっていた馬車に飛び乗った。

基本パーティーでは男女が対になって入る必要があります。

エリザベートママは適当に相手を調達して入ってます。



ありがとうございました。

ちょっと気になるところで終わっていますが、土日の投稿はできないかもしれません。

申し訳ありません。

更新できそうであればします。

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