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令嬢は迷走する

昨日は更新できなくてすみません。

よろしくお願いします。



※エリザベート視点から始まります。

途中で第三者視点に戻ります。

 最近私には悩み事があります。


 ええ、既にご存知の方もいらっしゃることでしょう。

 魔法が上達しないのです。


 何故、こんなにも上達しないのか。

 いい加減私に才能がないのではないかと思えてきました。


 ですが、あの魔法士に


()は途中で放り出したりはしませんので。』


 と澄まして言ってしまった手前、今更辞めます、とか言えるわけないじゃないですか!?


 あぁ、どうしましょう。

 実を言うと、教える人にも問題はあるような気がしているのはここだけの秘密です…。

 別の人捜してもらおうかしら…。

 無理だというのもわかってはいますけど。


 しかし、本当に困りました。

 こうも手こずるものだとは、思いもよりませんでした。

 とはいっても、なんとなく見当はついているのです。

 これはあくまで、私個人の見解ですが、日本人としての記憶が邪魔をしているのではないかと。

 日本では魔法なんてものは存在していませんでしたからね。


 まぁ、魔法は水と風の二種類の適性がありましたし、そこだけ見れば優秀と言えるのでしょうけど。

 この世界では、基本的に一人一適性らしいので。


 一応この世界の魔法について説明しておきますと、火、水、風、土が適正として存在しています。

 水は火に強く、火は風に強く、風は土に強く、土は水に強い、という法則があります。

 魔法の階級として、初級、中級、上級があります。


 初級と言っても、攻撃することを目的として作られているので、かなりの威力があります。

 ですから、街中での魔法の使用は禁じられています。

 中級まで使用できれば、魔法士としては、申し分ないそうです。

 上級を使える人は、国に一人いるかどうか、とのことでした。


 因みに、この国には防衛機関として、魔法師団と騎士団がありますが、そのどちらも貴族しか入団は認められていません。


『冒険者の中にも魔法が使えるものがいるかもしれないが、どうせ俺たちの足元にも及ばんだろうさ。』


 とのことで、魔法士の受け売りです。

 その後も何やら、長々といかに自分たちがすごいかを語っていたような気はしますが、興味ないので覚えていません。



 さて、魔法について語ってきましたが、そろそろ私自身について話していきましょう。


 私が使える魔法は先ほど申しました通り、水と風の二種類です。

 初級までは詠唱をすべて教えてもらい覚えましたが、如何せん距離が出ないわ、威力はないわで、ほとほと困っているところです。


 手元に発生させた時点で、かなり小さいものしかできません。

 単に出力の問題なのか、と思ったのですが、魔力量は問題ないそうです。


 魔法士に聞いても


『そんなものは自分で考えろ。』


 と一刀両断されました。


 ここ最近の私の愛読書と化している魔法書を読み進めていますが、どうにも、しっくりきません。

 こうなってくるといよいよお手上げです。


 現実逃避がしたくなってきました。


 現実というと、もう一つできれば避けたいことが…。


 この社交シーズンは、最後に王宮でパーティーがあるのですが、それに参加したくないのです。

 前のエリザベートであれば嬉々として参加したのでしょうけど、今となってはめんどくさいだけです。

 これでも貴族ですから婚約者がいますが、仲は最悪ですし。

 パーティーともなれば、顔を合わせなければなりませんからね。

 そうはいっても、国王陛下の名前で出される招待状に対した理由もなく、不参加の意を示すのはあまりにもリスキーです。


 参加することになるのはわかってはいますが、心の中くらいはせめて、行きたくないと思ってもばちは当たりませんよね?






 ※

 エリザベートが悶々と悩み、試行錯誤しているうちに、社交シーズンも佳境に差し掛かった。

 今日は、王宮でのパーティーである。

 パーティーは夕方から始まり、夜通し開かれるのだ。

 この日ばかりは、無礼講ということで、お酒が回り始める時間になるとどんちゃん騒ぎになる。

 成人を迎えていたエリザベートは去年初めて参加してみたが、あまりの惨状に途中で退場することになった。



 まだ、お昼前だというのに、王宮に向かう馬車で通りはごった返していた。

 メドウズ家でも、パーティーの準備に朝から大わらわである。

 特に女性陣は、たくさんのメイドに囲まれながら、メイクに着付けに、と大忙しである。


 数か月前、まだエリザベートが記憶を戻す前に、採寸したドレスを着せられながら、何故記憶が戻ってから採寸させてくれなかったのだ、と恨んだ。

 それは、白から薄いピンクへとグラデーションしているものだった。

 どうやら、前のエリザベートはピンクが好きだったようだ。

 それも、ふわふわとした、いかにも可愛らしい子が着れば似合いそうなものである。


 こってりと化粧を施された顔は、かなりきつめの美人であるため、正直、鏡の中の自分は似合っていない。


(せめて色を深紅とかにすればまだましな気がするけど…。)


 と、遠い目をしながら考える。

 今の自分であれば間違いなく選ばないものを着せられ、ガリガリと精神が削られていく音さえ聞こえてきそうだ。

 準備が進むにつれ、だんだんと死人のような顔になっていくが致し方あるまい。



 ようやく準備を終えた頃には、生きる屍が出来上がった。


 しかし、休む間もなく、馬車に積み込まれる。


「早く出してちょうだい!遅れちゃうじゃない!!」


 遅れるわけはないのだが、後ろで母が金切り声で叫んでいるのを聞きつつ、ようやく馬車の中で一息ついた。


 父は既に城に行っており、兄たち二人は後から来るとのことで、母と二人、馬車に揺られる。


「エリザちゃん。そのドレスよく似合ってるわ。」


 うんうん、と頷いて満足そうに微笑んだ。


「ありがとうございます。お母様もそのドレスお似合いですわ。」


 ほほほ、と笑いながら、思わず、この人のセンスか!と言いそうになった。


 一息ついて、そう言えばそうだった、と気が付く。

 どうやらこの母も、可愛らしい服が着たかったようだ。

 しかし、使用人に勧められるのはまったく系統の違うもの。

 そこで、自分の娘にかわいい服を着せるのが夢だった、といつぞやだったか話していた。


 が、残念ながら生まれたのは地味顔少女のみ。

 化粧をすれば美人になるが、これも悪役令嬢顔。

 可愛らしい、女の子らしい、服はあまり似合わない子に育ってしまったわけだが、それでも着せたかったらしい。


 この顔で、フリフリドレスはやめてくれ、と思ったエリザベートは悪くないだろう。



 ゆっくりしか進まなかった、馬車がやっと王宮の門をくぐった。

 いつもであればこれほどかかることはないが、道が混んでいるせいで、大変時間がかかった。

 王宮内も広いため、会場に着くにはまだ時間がかかりそうだ。


 婚約者とは、会場で落ち合うことになっている。

 仲のいいパートナー達は、男性が女性の屋敷まで迎えに行き、一緒の馬車で王宮まで行くのだが、わざわざ、そんなことをするほど仲は良くない。

 会場に入る際のエスコートはしてもらう必要はあるが、できればお互いに必要最低限の接触で済ませたいと、一も二もなくの即決である。





 馬車から降りるまで、母とたわいもない世間話をしていた。

補足)この国の成人は12歳です。

成人していれば、パーティーの夜の部に参加しても問題ありません。


誤字脱字など気になるところがありましたら、教えていただけるとありがたいです。

ありがとうございました。

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