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超魔導剣士の逃避行  作者: ジグ
第2章 亡国の魔神
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魔神再臨

レオンハルトは1年経った今でも自分が何をするべきか決められずにいた。

やさぐれるように酒とクエストに溺れる日々。


しかし、討伐隊を全滅させた魔物を追ううちに物語が進展する。

イミル国 イルミシル雪原


地吹雪が舞い上がる夜の雪原、白いロングマフラーに白い迷彩柄の防寒コートを着た栗毛の少女。レオンハルト。


今はハルトと名乗っている。


『ハルト、そっちに行ったぞ!』


若いハンターが叫ぶ。

スノウクロウラーが雪の中を潜行する振動が地面を伝う。

私はこんなとことで何をやっているのだろうか。


広域衝撃弾(エリア・ブラスト)

大きな音とともに衝撃波が地面を走る。


その爆音に驚き、スノウクロウラーの巨大な図体が地面から飛び出す。

鋭く睨み、脚を肩幅に開いて構える。


スノウクロウラーが再び地面に潜行しようと頭をもたげるその瞬間、強く踏み込み、半円状に切り込む。


ちくわを両断したような、そんな手応えだった。

真っ二つになったスノウクロウラーのぶよぶよとした白い外皮が雪と同化している。


早く目的のものを採取しなければ。


『いいよ、ハルトは休んでな。』


若いハンターが慣れた手付きでスノウクロウラーを解体していく。



私は空を見上げる。豪雪で夜空の星が見えない。

ここ(イミル)に戻ってもう1年。私は未だ、自分が何をするべきか決められずにいた。



【第二章:亡国の魔神】



『確かに受領いたしました。こちらが賞金でございます。』


ギルド会館で賞金を受け取ると、一時的にPTを組んでいたメンバー全員に山分ける。


『さすが最高ランクのハンターって感じだったぜ、ハルトさん!』


「ありがとう。じゃあ私はこれで・・・」


『固定のPTメンバーとかいないんだろ?だったらうちで』


「いや、いいんだ。誘ってくれてありがとう。」


そそくさと併設の酒場に行き、カルーアミルクを注文する。

酔っ払い達の陽気な歌声から逃げるように、酒場の隅っこで窓の外を見ながら酒を(あお)る。

実年齢は26だが、見た目は16,7ほどであるため、この見た目でやさぐれるように酒を飲むと少々奇異な目で見られる。


「昔は酒なんて必要なかったんだけどな・・・。」


今や私は最高ランクのハンター。何をするべきか決められないまま放浪しているうちに最高ランクとなってしまった。

自分の身分を偽ることだけが得意になっていく。

ちょっと規模の大きな魔法や超能力(アーツ)を駆使しても、「流石最高ランクのハンターだ」の一言で見過ごしてもらえるようになってから随分と仕事がやりやすくなったものだ。


レオンハルトとして最高ランクになるまで何年かかっただろうか?あの時は弱かったからな・・・。今や適当に放浪して1年たらずで最高ランクだ。


まだ22時か。もう1クエスト終わらせて寝ようか。

剣と盾を持ち、外へ向かう。


『おいあんた、こんな時間に外に出るつもりか?』


見上げるような大男だ。それが私に声をかけてきた。


「ちょっと酔い覚ましにね。」


『やめとけ、今日はいつもより吹雪がひどい。それに酔ってるなら冬の外に出るべきじゃねぇ。凍死するぞ。』


アルコールで麻痺した頭をフル回転させ、余計な悶着は起こすべきではないという結論に達した。


「わかった。ちょっと酔ってたよ。ありがと。」


大男の肩になんとか手を伸ばして、部屋に戻る。


シャワーも浴びずにベッドに寝転がる。頭がぐわんぐわんして気持ちが悪い。

急に眠気が・・・。


真横にヘルミナが血を流して倒れていた。

眼前には私に斬りかかろうとする、黒い鎧の魔神。


オリアクが何重もの回復魔法をヘルミナに唱えるが、起き上がる気配はない。

私が前線を支えないと・・・。


魔神の一撃は強烈に重く、防ぐ度に頭が揺さぶられて視界がおかしくなる。


“付与:核熱剣(メルト・ブレード)

金色に輝く、細長いエネルギー流が刀身に宿る。


魔神に一撃を入れる度に閃光が収縮して爆発が起こった。

少しの間、魔神と激しく打ち合うも、最終的に私が力負けして地に伏すことになる。


ターゲットがオリアクに向き、幾つもの不浄な稲妻を放つ。

オリアクは対抗呪文で耐えきるも、激烈な斬撃を前にはなすすべなく崩れ落ちた。


「くそっ・・・」


何度も立ち上がろうと試みるも、力尽きて地面に突っ伏す。


ヘルミナを・・・オリアクを・・・私の友人達を・・・よくも・・・!

怒りに呼応するように、全身の魔力が増幅する。


“究極魔法:天元凍死す飢饉の霜月(ブリュメイル)”。


天空に、視界に収まりきらないほど巨大な輝く冷気の球体が出現する。

私の怒りの矛先に向かうように、その球体は冷気の渦となって魔神を飲み込む。


雹と、黒雲と、猛吹雪。


冷気の渦は激しさを増し、臨界を超えた瞬間にイミル国の80%を飲み込む冷気の波となって、何もかもを飲み込んで凍結させた。



ハッとして目を覚ます。あの時の夢だったか。

ここ(イミル)に戻ってから悪夢でうなされるようになってしまった。


熱いシャワーでも浴びて落ち着こう。

頭からお湯を浴びながら、腕を組んで考えにふける。


目をつぶっていると、鋭敏になった聴覚が複数の人間の緊張したような声音を捉える。

こんな時間に一体何の騒ぎだ。


慌ただしく階段を駆け上る音、そして幾許(いくばく)もなく下品なノック音が響く。

『ハルトさん!ハルトさん!』


あーはいはい、私ね。

ノック音に急かされることなく、マイペースに体を拭いて部屋着に着替え、戸を開く。

スノウクロウラーのクエストでPTを組んだ若いハンターがいた。


「どうしたの?」


『そ、それが・・・夜中に討伐に出ていた隊が大怪我を負って運ばれてきて・・・。』


呪符の束を持って、下階へ降る。

閉店した酒場の床に寝かされ、介抱されている5人PTが目に入った。


「一体何を討伐しに行ったの?」


『プラチナ・ゴーレムだったかと。』


プラチナ・ゴーレム。夜間に銀色の光を放つゴーレム。

屈強で高い攻撃力を誇るため、そこそこの高ランクがPTを組んで挑戦する。

ゴーレムの体自体が希少な金属でできているため、倒せるなら上等な金策相手になる。


しかし、あの倒れているランクのハンターなら余裕を持って倒せる相手だと思うが。


『いきなり空から降ってきたモンスターに壊滅させられたと。』


「外では何が起こるかわからないからね。」


旅慣れているせいで、ちょっとPTが全滅する話程度は山ほど聞いていた。

大体は運悪く強力な力を持つ何かに乱入されたというもので、今回も例外ではないだろう。


『実はあのPTの一人が記憶を頼りにスケッチしていて・・・こんなモンスターに見覚えありませんか?』


2つのケルト十字のようなものを持った影に慄いている人たちの絵だった。

その影は人の上半身に近い形をしているが、下半身は描写されていない。

人の大きさと比較して、その影はとても大きな存在だと思われる。


「いや、知らないね。」


『そうですか・・・実は最近、似たような事件が多発していて、調査するためのクエストを高ランクのハンター向けに発行されるらしいですよ。』


「そうなんだ。発行されたら見てみるよ。」


運ばれてきた一行に、幸い死傷者は出なかった。


その夜は一睡もできず、酒場で夜を明かす。


『ハルトさん。昨晩の件に関連するものですが・・・。』


「そんな抽象的なクエストじゃ受けられないよ。採算取れないし。」


“正体不明のモンスターの調査”。一体それだけの情報で何の成果を期待されているのか。

もっと具体的な成功条件がないクエストは地雷だ。


「ただ、気には留めておくよ。」


適当なクエストを見繕って受注する。

昨晩の5人組がやられたところと近い場所だ。


大きなあくびをしながら、剣と盾を持って酒場から出る。


外は相変わらずひどい吹雪だ。

永遠の冬が訪れてから、街道沿いには眩いほどの街灯魔法をつけることで歩く人が遭難しないように工夫されるようになったらしい。


二時間ほど歩いたころだろうか。


吹雪の奥に見える影。二対の大きなケルト十字のようなものを持っているようには見えるが、スケッチされていたものとは明らかに小さい。

人間、小柄・・・。


『こんにちは。』


それは短い栗毛に、目つきは決して優しいものではなく、

青いマント、アーマーサークレット、胸当て、アーマースカート、アームガード。白いシャツに、黒い防刃ニーソックスを装備している。


そう、それは間違いなく超魔導剣士装備の”私”だった。

だが、その両手には剣と盾ではなく、ケルト十字状の武器を2本携えていた。


「お前・・・誰だ。」


瞬時に武器を引き抜く。


『やっと見つけたよ。ずっと探してたの。』


私よりずっと女の子らしい話し方をするじゃないか。

警戒をさらに強め、剣を構える。


『ねぇ。話を聞いて?』


「答えろ。なぜ私の姿をしている。」


『あなたが最も強力な生き物と認識したからよ。』


二人は、いや。私だけが一方的に睨む。

相手はただ無表情に目の前に突っ立っている。


「お前を殺してギルドに引き渡すぞ、モンスター。」


『どうしても話を聞いてくれないのね・・・なら・・・。』


十字架を地面に突き立て、スカートのポケットから青い石を取り出す。

それを天に掲げると、青い光が集まる。


「これは・・・まさか・・・!」


『来て・・・私はここにいるの・・・イントミーク!』


私を模した少女は4Mほどの巨大な、黒い外殻に覆われた4つ目の怪物に姿を変える。

生き物らしさはなく、無機物的な外観。その四肢は昆虫のようだ。


眼前に現れたそれは、新たな魔神であった。


それは地面に突き刺した十字架を抜き取る。


『確かあなたはこういう魔法を使ったね。』


『”付与:超高圧魔力剣(ギガ・フォースブレード)”』


右手の十字架に青白い魔力の刃が付与される。


『”付与:核熱剣(メルト・ブレード)”』


左手の十字架が紅に輝く。


『さあ、”亡国の魔神”。あなたの力を見せてちょうだい。』


1話ずつの文量を試行錯誤中です。

無理なく書けて、中弛みしない程度の最適な文量を見つけていきたいと思います。


今回は4000字程度と、従来より3000字減らしております。

以後、1話ずつの文量が増減するかもしれませんがご容赦ください。

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