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【作品打ち切り 改訂版に移行しました】ニートな俺が山でスキルを習得させられて強くなったし、お金が必要なのでダンジョンで働きたいと思う  作者: MRプロジェクト
呑み込まれた者達

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ー 3 ー 交渉談

30/12/19 ご迷惑をお掛けします、次話に関してのご報告です。次話を12/18または12/19を予定していたのですが、少々修正する為翌日20日の〜22:30に変更したいと思います。

 あれから何分か経った。女の顔からは生気のない脱力感を感じる。初めの出会った時よりも心の余裕が無くなったのか余所余所しくもなっていた。


「なんで、私が何かしたっていうのよ……」

「……」


 なんと声を掛けたらいいか分からない。

 故に、沈黙が続いた。


 これについてだが、他の隊員にはなにも話していない。傍からの景色だから、突然泣き出したり余所余所しくなったりしたようにしか見えないだろう。だから話してやりたい。

 が、それは一度宿舎に戻って、何があってもいいように万全の対策を用いた時じゃないといけない。


 それにしても、他の隊員は(じれ)ったそうに俺たちを見ている。そう言えば、離れておけと言ってからもう30分程経ってるからな……。悪いことをした。


「隊長、もう動いてもいいっすかね」


 島も丁度動きたいらしい。


「ああ、すまんな皆んな。後、島。先輩でも大丈夫だ。さっきはすまん」


 それに対して「え、そっすか?」と嬉しそうな島。


 先輩、か。島とはそこそこの付き合いなのだが、まともに隊長と呼んでくれた事が無かったな、俺の名前も。いつも先輩か、藤田先輩。それくらい。初めからそうだった。

 もう少し隊長と敬って欲しいものだが、特段それを嫌っているわけでもないから許可した自分がいる。だから、それはそれでもういいだろう。


 それよりも。

 茅乃茜だったか。


「はぁ……。もう、いいよ。うん、もうこの際、いいよ、もう」


 彼女はそう言った。諦めた雰囲気が強かった。俯いて、気怠そうに。しかし、踏ん切りも何もない。ただ、自暴自棄のようにそう言い放った。


「一体何をだ」


 だから俺は、それに訊き返す。

 せめて何を諦めたのかを訊きたい。


 そして彼女は言った。


「そんなの、決まってるじゃん。皆んなが忘れてるならもういい……。私は皆んなの代表なんだ。泣くとか、嘆くとか、無駄な事に時間を使う余裕もない」


 代表……。

 思い返せば___


「確か、交渉をするとか、言っていたな」


 言っていたはずだ。

 出会い頭、いやほんの数十分前に交渉したいから来たと言っていた。

 ここは一つ、聞くのも手である。

 また逆に、聞かぬも手である。


 だが、ここは聞く事にしよう。情報は必要だ。それに、例え憶測であっても可能性としてそこに存在しているのであれば、それについて知っておく義務がある。


「何の交渉だ」


 しかし、俺は交渉というものは少し好きではない。いや、好む者こそ少ないものだろう。


 俺は自分で言うのは何だがそこそこ慎重な男だ。故に慎重になり過ぎて結果、決裂となったことは一度や二度ではない。


「何の交渉、か。はぁ……」


 彼女は言う。


「水、食糧、衛生用品、それと栄養剤とか諸々の補給」

「量は」

「軽く50人分。それを30日分で欲しい」

「それはなんとも___」

「___無理な話?」


 彼女は、再び溜息をつく。

 何となく察していた様な少しばかり残念そうな顔付きで、そっと俺の足元まで近づいた。

 と思えば胸のあたりをツンと指先で突かれる。


「な、何のつもりだ」


 地味に痛いのは何も伸びた爪だけじゃ無い。単純に入っている力が強い。


「何のつもりだって?」


 怒気を孕ませながら、鋭く吊り上がった目尻。キツイ眼光にそっと目を背ける。

 そしてつい、耳を塞ぎたくなるくらいキンキンとした声で怒鳴られた。


「こっちは、明日には死ぬかもしれない確率があんたらと違って高い訳で、余裕すらないの。わかる? ここまで来るのに本気で走り続けて14日。この時間、一人また一人って死んでるかもしんないんだよ!」


 タンタンタン

 タンッ


 思わず咳き込みそうになる一撃。タタラを踏みながら後ずさる俺に構わず歩みを進めて、接近する。


「大体、ほぼ睡眠もとらず、殆どの食事も汚れた水を摂取する以外なしできたのよ、分かる? この焦り。枯渇問題の大きさについてちょっとは理解してよ! 一般人でも国に要請するとか出来るでしょ!」


 ……理解しているさ、それくらい。

 要求されている内容が50人。

 少し少な過ぎないか? とも思ったがここはダンジョン。ダンジョンの中で生きていたのなら、死んだ人もいる。1000人、いや、3000人以上は絶対だ。その中で生き残ったのが50人と言うのも変な話でも何でもない。


 しかし。


「一つ訊きたいのだが、階層は何階層だ」


 しかし、物資を運ぶに伴う危険性も考慮しなければ意味がない。助けに行ったはいいが屍になって戻ってこないなど笑い話にもならない。

 だからこそ重要なのはダンジョンの階層。


 階層ごとに広さも魔物の強さも驚く程変動していく。だから、訊いておかなければならない。そして、訊いて考える。交渉は既に始まっている。


 しかし彼女は首を傾げた。


「階層……?」


 ……階層という概念がないのか……?

 そう思ったが、いやそりゃそうかと一人で納得した。聞き方が悪かったと。


「ここまで何階上った?」

「……ああ、そうね。そういうことね」


 彼女は言った。3つ上だと。


 となると、まさか、8階層の人間……。


 8階層、強さの次元が分からない。広さも分からない。根本的な魔物の種類さえ分からない。

 そもそも、8階層でどう生き残ったのだろうか。


 疑問点や聞きたいことが増えていく。


 だから先ず___


「8階層について教えてくれないか」

「は? なんで? 一方的な情報搾取でもするつもり? させる気は無いけど」


 即答だった。あり得ないと言う面持ちで睨みつけられる。歳は下だ、普通は可愛いくらいに思えるかもしれないが、どうしても萎縮してしまう。

 だからか、少しばかり言葉に躓いて喋ってしまった。


「い、いや違う。物資を運ぶ際危険が伴う。広さも魔物の強さも種類も、知っておかなければ準備が出来ず、助けに行ったのに壊滅するなんてことがある。そこは理解してくれ」


 どんどんと尻すぼみになっていく声だが、彼女は一応全て聞き取れたのかムッとする。


「……わかった」


 そうして分かったことは、8階層はそこそこ強く、途轍もなく馬鹿広い。また、8階層を彷徨う「番人」たる化け物がいるのだそうだ。聞く限りだとそれは下半身と思われる辺りに円形の腕輪に近い形状をしたようなものが2、3個あって、その下半身の中は露出した熱量と炎を放つ太陽のような球体があって身体ごと浮いている。

 顔は土に適当に顔を描いたようなものらしい。


 しかし、圧倒的に強いと言う。会ったら死んだと思った方がいいらしい。


 そして7階層だが、7階層は8階層より少し弱く、少し小さいらしい。次に6階層は7階層より弱く、小さいというものだった。聞き入れた情報は抽象的であまり理解を得なかったが、ダンジョンの広さについてはある程度知っているつもり。

 彼女がそう言うのであれば、大方間違いでも無い気がする。この広さはたしかに表現しにくいからだ。


 そして、彼女が言っていたここまで14日、2週間走り続けたと言うところから考えてみるとその広さは広すぎると言うのも納得がいく。何せ8階層で生き残ったのだ。8階層がそこそこ強いと言うのであれば、8階層、凡そレベルはどれくらいか。これまでの事を視野に入れて計算してみる。


 180以上。


 ここまでくるのに凡そレベルを100まで上げてきた。

 しかし、はるか先の高みに存在する力でも14日かかると言う。

 80レベルと言うのは途方も無い差だ。

 俺たちでは最低でも1ヶ月以上はかかる計算になる。


「んー、そうか」


 となれば難しいな。


「なに、十分なまでの情報を話したつもりだけどご不満? それとも、手伝いは御免?」

「……いや、そうじゃなくてだな」


 俺たちが辿り着けないかもしれない。

 俺は嘘偽りなく言う事にした。訊いたことに加えて考えた事を合わせても、レベルを後80も鍛え上げるなど到底俺たちだけでは難しい。

 すると彼女は軽くうんうん頷きながら言った。


「そうね、じゃあいいよ手伝いわ。元々、物資さえ貰ったら自分だけで行くつもりだったし」


 そうか、一人でか。


「なぁ、それは交渉と言えるのか?」

「なんで?」


 そんな分からないみたいな顔をしないでほしい。


「交渉とは、互いにメリットがあって成立するもので___」

「私は8階層までの情報と、8階層での私たちの強さについても言った。私は人数分の物資を得られる。これだけでも十分だと思うのだけど」


 たしかに階層の情報というのは大きい。

 しかし。


「いや、不釣り合いだ。50人の命を30日持たせる。これがどれだけのことか___」

「ねぇ、あなたって飛んだクズ野郎なのね。人の生死がかかってるって言ってんのに」

「……おいおい、交渉と言ったのはそっちだろ」


 お互いのメリットは誤差範囲でもミリ単位まで、これでは不釣り合いだ。


「だから、もう一つ条件を提示させてくれ」

「……なによ」


 これは如何なのだろうか、と少し躊躇う。しかし、これは必要なことでもある。それを説得させる事こそ成功と言える。尚且つ、救助の手間も短くなる。


「俺たちを鍛えてくれ」

「無理」


 これまた即答か。


「だけど、悪い話じゃないと思うんだ」


 そう。悪い話では無いと思っている。


「鍛えてくれれば時間も短縮できると思う」

「いいよ、大丈夫」

「違うんだ、物資だって50人分を30日となったら一人じゃ無理がある。レベルが上がっていてもだ」


 それだけじゃ無い。


「魔物だって物資を漁る、俺たちも経験がある。だからこそ、協力したい。生存者の救助をしたいんだ」


 大体。


「……何事も遠い先を見据えなければ、なにも出来ない。成功もしないだろ? 君は全ての物資を背負って走り続けられる保証があるのかい?」

「なんかアンタキャラ変わってない?」


 キャラとは何なのか。


「そんな事は今不必要。君は出来るのか、自身はあるのか?」


 俺は問う。


「これはお互いメリットがあると思うんだ。2日もあれば十分だとも思う。70レベル程、君が居てくれればだ」


 それにと付け足す。


「上層階でのレベリングの際、少しずつ物資を運び延命させることも出来る」

「あのさ、あそこ、どれだけ広いか知ってるの?」

「考慮している。俺が話している事に無駄はない。俺たちの物資も少ない、後に帰還する。その際にこの事を相談する。一定量物資を積み、レベリングする。そして、8階層でも十分なレベルに到達したらそれらをここにいる15人、そして君とで分担して運べば手間は愚か最終的な安全性は守られる。救助の際も困らないだろう」


 だから。


「悪い話じゃないと思うんだ」


 これは彼方へのメリットの提示。

 此方としてはレベリングさえ出来れば速やかに行動できる。こう言うのを釣り合った条件と言える。


 そんな話を聞いて彼女は思案顔で呟く。


「こう言うのが交渉って言うんだ。私の知ってるのとちょっと違う気がするけど……」


 そもそも、彼女からのメリットの提示がなかったのだから半分約束のようなものになっただけで、歴とした交渉だ。


 そして彼女は黙る。口元に手をやって、目を地面に落として小さく唸る。そうしてチラチラと俺たちを見る。


「……そうね」


 完全なるメリットの釣り合い。

 彼女は多量の物資と安全性、共に救助の時間を大幅に短縮できる。こちらは8階層までの情報とレベリングが確約される。しかし、それだとこちらに分があるとも言えるか。


そう思った時彼女は言った。


「一つ、追加してほしいのだけど」

「なんだ?」


 聞き返すと細々とした声だが彼女は答えた。


「補給物資の質を上げて欲しい、それとおいなりさん。私の好物なの」

「おいなりさん?」


 おいなりさん、いなり寿司か?


「質の向上は元よりなのだが、いなり寿司は何故だ?」

「いや、ずっと食べていないとちょっとね、食べたいの。いいよね」


 少しばかりキラキラとした目だ。本当に好物なのかもしれない。それなら、まぁ許容範囲だ。それに。


「……それくらいなら」


 分が合う。と考える。


「それならだ、この交渉は成立でいいんだな」

「ええ、それでお願い」


 こうして交渉を制した。


 しかしながら、いや、終わって気づいた。


「先輩、終始聞いてましたけど……まぁ、気になる事は山ほどなんっすけどね、交渉するような事じゃないんじゃないっすかね……」


 島は少々呆れた風に言葉を垂らす。


「確かに、そうだな」


 それには先程気づいた。


 これは態々お互いのメリットを測り合う必要性がなかったというもの。つい、交渉と聞いて何とか言葉を紡いだが、確かにそうなのだ。

 今は自衛隊ではなく、冒険者。しかし、本分は自衛隊。助けられる命があるのなら助けるべきである。

 そして、その為に彼女に協力を要請するだけで終わる話だったかもしれない。


「だが、成立したなら___」

「絶対遂行っすね、わかってるっすよー。交渉談となれば先輩はいつもの慎重さすらかなぐりすてますし」


 それは何処か心外だ。

 俺は、口約束、契約、誓約、何であろうとしたのなら最後までやりきる。それは規則でなくとも守りきる。

 そうしてようやっと、守ったと言えるのだから。


 さて、この事を島たちに話さなければならないのだが、どう話せばいいものか。

すいません、この章はもう少し続きます。

投稿は明日明後日に。


次回! 島兼孝!



30/12/17

17:00から冒険者の章を連結、添削作業を行います。終了は30/12/23の22:30を予定しております。

ご迷惑をおかけします。


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