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【作品打ち切り 改訂版に移行しました】ニートな俺が山でスキルを習得させられて強くなったし、お金が必要なのでダンジョンで働きたいと思う  作者: MRプロジェクト
呑み込まれた者達

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ー 2 ー 違和感

 女は頬を引きつらせて___


  「意味がわからない」


 と言った。

 その喪失感と不思議さが含まれたなんとも言えない声を漏らす。尤も、不思議なのはこちらも同じだ。魔物である事がバレた上で、人間であると固執するのはなんとも。それとも、この女が言っている事が正しいのか。


 それとなしに見下げてみると、丁度目があった。背丈は180ある俺の胸あたりだから160くらいか。顔もどちらかと言えば可愛いと言われてチヤホヤされる、それくらい。だが、髪はどちらかと言えばボサボサで、今更ながら、少しばかり頬が煤けていた。

 そこで、うーんと唸ってみる。

 本当に彼女が言う歳なのだとしたら、ここまでヘアセッティングをしない女はいないはずだ。顔も幾分か煤けているから、衛生面も欠けている。


 やはり、魔物の擬態で間違いないがするが。


「どう言う事!」

「いや、それはこちらの台詞だ」


 女は飛び上がりながら叫ぶ。目を充血させて、叫ぶ。それに対して俺は冷静にもう一度可能性を考えてみた。

 ダンジョンの中に高校生……か。どうしてなんだ。飲み込まれた? 否、行方不明者が0なのだ、あれは奇跡としか言いようのない出来事であるが、居なかったのだ。


 そう、0なのだ……0?


 何故だか0という数字に違和感を覚える。そしてその瞬間、頭がずきりと痛む。


「ぜ、ろ……?」


 ぜろ、ゼロ、0。……何がおかしいんだ? 0って普通だろう。奇跡が起きたのなら普通だろう。そうだ、0なんだ……。……ん? 0っておかしくないか、普通に考えて。


 ずきんっ


「うぐっ……!」

  「ねぇ! なんで、どういうことよ! 0って、0っておかしくない!? 確率以前に物理的に無理___」

「待て、五月蝿いっ。 少し、黙ってくれ」


 女は押し黙る。だが俺はそんな女に気を配れる状態じゃなかった。あと少しで何かがわかるような突っかかりが、喉から先を通さないようにして、その違和感に頭を悩ませていた。


 0、何故0なんだ。待て、0? 0だ。いや0じゃない。おかしい、何かがおかしい。なんなんだこの突っかかって取れない感じは。


「0……」


 だめだ、分からない。0のなにが___


「何がおかしいんだ……」

「せ、先輩どうしたんっすか?」


 意識が朦朧とする。先程からの脳の痛みのせいか。

 風邪でも引いたか……? ダンジョンの中でそれは非常に厄介なのだが。


 島は俺を心配そうに尋ねると、相手を変わろうかと言ってくれた。しかし。


「先ず、初めに、島……隊長と呼べ。先輩、じゃないと何回言えば良い」

「え、あ、す、すいませんっす……隊長?」


 あれ、どうした。何故島にそんなことを言っている? いや、違う。これが普通なんだ、下の者は上の者を敬って……でも、治らない癖を許可を出したのは俺だったはず……。っ……おかしい、何かがおかしい。


 ずきん

 ずきん、ずきん


「た、隊長!?」


 あ……。何故だか地面が鼻先にある。

 視界が白く靄がかかって、感覚が麻痺してきた。


「お前! 隊長に何したんっすか!」

「ふ、副隊長、落ち着いて下さい。明確な攻撃はまだされていません。相手の行動を見て___」

「それが遅いから隊長がやられたんだろ!! 誰か! 隊長に回復薬を飲ませろ!!」


 聞こえる音も声も遠のいていく。すーっと剣を引き抜く音、女のえ? という腑抜けた声。何もかもが。そして0。


 脳が熱い。ああ、溶けそうな位脳みそが熱い。今にも気を失いそうだ。


 途轍もない脱力感と眠気。


 このまま、俺は眠るのか……? そう思った矢先、緑色の苦い液体が口の中で暴れていく。


「うぐ、あが……ごほっ、ぅう」


 0、0、0、0……。


 喉を通り胃へ到達した瞬間、意識がはっきりと、覚醒した。


「っ……!」


 ゼロ……。まさか。


「ま、待ってよ。それは横暴だよ」

「問答無用、お前はやはりここのボスで間違いない!」


 女は顔を青ざめさせて後ずさる。

 違う、違うんだ。


「待て、島」

「何をどうやったかは知らないけど、先輩をやった罪、処するっす!」


 待て島、俺は死んでなんかいないし、殺された時の罪が大き過ぎる。


「島、島!」

「てやぁ!!」


 お前はそんな血の気の多い奴じゃあないだろ!


「よせ、島! 冷静になれ!!」


 その時、何とか声が届いたのか島は動きを止める。


 その紫鋼の長剣。

 女の目と鼻の先にある。そして、紫色(ししょく)の刀身は、テラテラと壁の松明の火を反射させつつ、女の青ざめた色を映し出していた。

 それに女は何か抵抗するわけでもなく、ただ、後ずさっていた。


「その女の言っていることは間違っていないかもしれない」

「隊長、何言ってるんですか?」


  それは島のみならず他の隊員も同じように、不思議そうな声色で言った。


「取り敢えず、剣を引け。話はそれからだ」

「で、でも!」

「いいから、引け。隊長命令だ」


 仕方なく、と剣は鞘に収められていく。カチンと音がしたのを確認したのち、他の隊員に俺から10歩下がるように命令した。


 これは憶測でしかない。が、あながち間違いでもないかもしれない。寧ろ、今迄の考えが間違えだったのかもしれない。


 でもよくよく考えれば、だ。ここは三大都市東京。それも、ランドマークのスカイツリーが位置する区画の殆どを飲み込んだ。それなのに死亡者は愚か、重軽傷者、行方不明者もいない。奇跡が故に不思議でもなかった。が、しかし。よくよく考えてみたらよく、わかる事なのだ。民間人は必ず一人はいるはずだ。都市の一部、それも大都市。例え50㎡の範囲だとしても、一人は人が存在するはずの場所。故に一人もいないという事は絶対ない。

 他にも、ここは都市なのだ。人通りも車も、なにより24時間営業のコンビニもある。


 違和感が増えていく。


 そして彼女のいう事の奇妙さに納得していく。よくよく、よくよく考えれば分かること。ここは都市なのだ。誰も行方不明にならないなんて絶対ないんだ。

 猫1匹だろうが犬1匹だろうが、建物一つ無くなるだけでも分かるはずなのに。


「茅乃と言ったな、確か」


 確かなのは、こんな事があっていいのかという理不尽さ。ダンジョンという異常な存在の影響を受けた、俺たちの存在。


「……これは憶測でしかないのだが、俺たちは記憶を改竄(かいざん)させられたと思われる。このダンジョンに」

「……」


 女は……茅乃は俯く。下を向き震えていた。

 握られていた拳からはギチギチとどうしようもない音が聞こえてきた。


「なんで、なんでよ!」

「知らん。知らないものは知らないんだ。でも、これは憶測。憶測だから、俺が間違ってる可能性もある」


 それから、俺は茅乃という女に、自身が気付いた違和感について話していった。

 その言葉は、他の隊員にある程度聞こえないようにしている。理由は、多分聞いたら俺みたいになるような気がしたからだ。


 何かに気づいた瞬間から頭痛が増してきた事は、偶然でも無いのだろう。何かあってからでは遅くなりかねない。回復薬も帰り用に残さなければならないから、余計に聞かせたくもない。


 俺は女に最後として少なくとも日本中の人々はお前達を忘れている……違う。これだと表現が曖昧だ。もっと、苛烈(かれつ)とも言えるような、それでいて理不尽さがこれ以上ないように。


「忘れさせられている」


 茅乃は俺の憶測を聞くにつれて口を魚のようにパクパクと開き始める。

 そして話が終わったところで茅乃は半分程泣きながら言った。


「え、なにそれ。酷い、酷いよ。皆んなの記憶にない? ……立花とかにも忘れられてるのかな……? もしかして斎藤からも? え、加奈は? もしかしてお母さんとかくそ親父とか、にいちゃんとか。え、いや、そんなの。意味がわからない、嘘だよね、ねぇ、ねぇ!」


 声は滅茶苦茶に震えていた。泣きそうなくらい、嗚咽のような声。身体も震えきっていて、本来の力よりも襟元を掴む力が幾分か抜けている気がする。


「これはあくまでも憶測だ。鵜呑みにするな」


 だが、そう。これはあくまでも憶測だから、憶測に過ぎないのだから、鵜呑みにするような証明もない。眉唾物だ。馬鹿の一つ覚えみたいに信用するのは如何とも思う。


 だが「でも」、と彼女は言った。

 段々と力を無くして、ブラリと腕を垂らしながら。


「でも、でも! 現にあんた達が忘れてるんだから、忘れてるんだから、そう思うしか、でき……ない、じゃん」


 そして彼女は崩れ落ちた。

忘れていた、ではなく、完全に忘れさせられていた今日この頃、訳がわからないまま、何とか生存して助けを乞おうとしたところで誰だよって剣を引き抜かれたら、そんなん僕でも泣く。


明日か明後日に投稿します。巧くいけば今日とかも出来たらいいですね。

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