04.稼ぐ為にレベリング
米! 5ちゃんねるを6チャンネルに変更
10/8 査定額共に修正しました。
シャワーで濡らした体を浴槽に貯めたお湯で心地よく温める。浴槽からはもうもうと湯気が立ち、顔に当たれば汗が出る。そんな、いつもと同じような風呂の時間なのだが、いつもと違って動いたから疲労がたまったのだろう。
「ふぅー……」
ぴちゃりと音を鳴らせば、思わず垂らしたおやじ臭いセリフに苦笑い。その微かな声が反響し、やがて無音になる。唯一の音と言えば、時々ピチャリと水が波を作るときくらいだ。
そうした無音の中、悠夜は夢想した。
俺が目指すもの。
風呂に浸かればいつも考えた。それは、この三カ月間のせいだろうと、俺は思う。
そもそもの発端が、スキルについてどう話すか。その時のリスクやメリット、可能性についても求めた。精神論の方向でも、風呂場の中で資料を読みながら考えた。
ただ、そんなに思い詰めると疲れる。だから、考える事を手放して、自分を見つめた。
それが、今も尚考える原因。
ピチャ
考えれば考えるだけどつぼに嵌る、底なしの思考。
でも、だからこそ思い詰める。
俺が本当に目指している事。
そう脳に言葉を落とせば、一番に思い付いくものがあった。そしてそれは、やはり金だった。
残り6100万の借金。
未だにそれは重い足枷で、俺の暮らす環境も、実家より数段階下。設備も最低限。修理なんて以ての外。夏なのにクーラーが壊れて、偶にしか点けないのに、点けなければならない時に点けられない地獄。
その中での唯一の楽しみが風呂だから、まぁいいんだが。
結局俺自身、贅沢を求めている。否。人間、欲に従い求むものだ。そして、欲を叶えるにはこのご時世、金が必要。
だから、高給職の冒険者になろうと思った。もしあの時落選していれば、今も先の見えない明日をビビりながら歩いてたであろう。
「はぁ……」
そう言えばさっき、このご時世なんてほざいたりしてたなぁ。と思い返せば、どこの時代でも結局金だった事を思い出した。そう。それは古墳時代の時から金金金。なんなら、金が一番掛かった戦国時代だってな……。
金が命に等しい世界。この世界は力が等しき世界じゃない。金が何もかもに物を言う。権力を振るうにも、何かの為にする事も。
だからいつもこの結論に辿り着く。
結局金なんだと。
だから、その為にも。
もっと働かないといけないんだよな。
浴槽から立ち上がると水が体から落ちる。そして、お湯と外の境界線を跨いで、夏へのドアを開ける。
外は風呂場と変わらない暑さだった。唯一の扇風機が、ボーッとする頭を支えてくれる。
それから身体を拭き、着替え、洗濯機を回してから1LDKのリビングに、麦茶を冷蔵庫から取り出して座った。
足が今にも壊れそうなちゃぶ台は、流石中古最安値品と言うものだった。
……。
暑い。
顔を上げて時計に目をやればまだ20時。飯も食ったからすることが無い。
悠夜はこなれたようにスマホを巧みに取り出してパスワードを解いた。
そう言えばだ。6チャンネルで確か……。
ルールルに6ちゃんねるを打ち込み、サイトを開く。すると、やはりダンジョンの文字が羅列していた。そして、その中で一番の話題度を誇る「魔法」に付いてのスレッド。
朝は見れなかったし、今見る以外他ないだろう。
そう思ってページを開いた。
「僕が建てました」
「よしゃ、褒めてやる」
「乙」
「わいが可愛がったるで!」
「さて。どうでも良いけど未来人説確立だなってところだっけ」
「違う。今はそんなのどうでもいい」
「魔法だよ魔法」
「そそ」
「そんための場所ザンス」
「で、スレ立てたけど進まない。消費乙」
「よし、魔法じゃわい!」
「てか誰だよ。魔法の話した奴」
「お前知らずに来るとか、一番上のテンプレ見てこい阿保」
「あ、悪い悪い。成る程でござる」
「コイツウザいんご」
「もういいから話そうず」
予想を裏切らない始まり方。
俺は一文一文読み続け、なんとか話の中枢に入り込んだ。
「魔法とかパリーホッターって感じでいいんかな?」
「しらん」
「わい分かるで! キラキラしてて油手ブラって言ったらポヨーンってなんねやで」
「成る程分からん_( ̄ー ̄ )__」
「なな、回復魔法とかありそうちゃう? 傷の治りが早くなるとか瞬時に治るとかの」
「それやったら魔力やろ。魔力は絶対あるって、未来人が言ってたし」
「誰か指揮を取れ。話を統一しろ」
「はいはーい。マジなパンピーでござるよ。アニメプリプリ狩りキュアを見を終わった所んご」
「どうぞ」
「魔法ってさ、身体強化魔法とかあると思わん?」
「その前にさ、土魔法があったら地形変動させて鉱石取り放題やんけ」
「緑魔法とかあったら木の促進やん。10年も待たんでええやないか」
「なんなんお前ら。エコで生産主義か」
「雷魔法とかかっこよくない? アニメとかでズバーンて蹂躙するところとか、雷纏って高速移動とか」
「ちっちっち。甘いぞお前ら。魔法と言えば空間魔法。サラリーマンの為にある魔法じゃあないかね?」
「帰れ社畜が」
「社会に貢献する畜生になっとけ」
「オマイら? 次やったら通報な」
「あのさ、なんでダンジョンが現れたか分かる奴おる?」
「それなら某チャンネルスレにて究明中だそうだ。そっちへ行ってこい」
「そう言えば宝箱とか、そん中からポーション出てきたらしいな」
「めっちゃ前の情報やん。今じゃヒヒイロカネだぞ。国営サイトに出土品とか載ってる」
「ま☆じ☆か」
ヒヒイロカネ。
それは河田さんから聞いてたけど、国営サイトに載せてるのは知らなんだ。
それからも続くスレを見ていくうちに時間は進んでいく。そして気付けば21:30だった。
頬から垂れる汗。怠い身体。重たい体。寝転び形態を態々変形する事が面倒くさいと思うようになった、身体。
あー怠い。
なんでこーも怠いんだ? 暑いせいか疲れたせいか。意味不明な魑魅魍魎の類による、呪いのようなものなのか。魔力素的干渉によるものなのか。
どちらにせよ怠くて重くて、堕落したいのは変わらない。
あー……。
ゴロンと右に転がる。
うー……。
次は左に転がる。
あー……。
寝返りを打つように、見方によっては柔道の受け身のように右に転がる。
そして___
怠い……!
次は左に転がって寝そべった。もう動きたくない種を体現してみた。本当に怠い。
けど___
行かないとなぁ。
身体重たいわ。腰が痛いわ。
あー怠いわー。
いろいろ言い訳をつけて動きたくない病の発症を確認する。
だがまぁ、動かなきゃならないのは労働者である限り絶対だ。給料を受け取るのも、仲間と話すのも責務。
よしっ、行こう。怠いけど……。
悠夜はゴロゴロするのに時間をかけ過ぎて、過ぎた15分の為に、空を飛んで時間短縮を図った。
<===冒険者協会===>
「お待ちしておりました。鑑定が完了しています。こちらが内訳表です」
=======
【個体名 シルバーウルフ】
シルバーウルフの毛皮×6
¥ 100万2560
シルバーウルフの牙 ×8
¥ 32万140
シルバーウルフの爪 ×10
¥ 24万300
魔石紫粒 ×2
¥10万
【個体名 ゴブリン】
ゴブリンの牙 ×82
¥ 69万
ゴブリンの皮 ×36
¥ 180万
【個体名 スライム】
酸性溶液120cc ×8
¥ 96万
【個体名 キノコメル】
傘 ×15
¥ 30万
【総計】
¥5,413,000
======
「その中からダンジョン税と鑑定額を入れたものがこちらになります」
======
鑑定量ランク
A 300品以上【750,000】
B 250品以上【450,000】
C 200品以上【200,000】
D 150品以上【100,000】《該当》
E 100品以上【10,000】
F 50品以下【5,000】
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======
【鑑定額】
鑑定日数 1日
鑑定品数 167品
査定量 ランクD
鑑定税 10%
鑑定金額 100000円[D額]
鑑定額
5,413,000 × 1 × 10% = 541,300
541,300+100,000=641,300
【ダンジョン税】
鑑定総額 ¥ 5,413,000
ダンジョン税 5,413,000×5%=270,650
【総額】
5,413,000 − 911,950 = 4,501,050
======
500万切るか……。恐ろしぃなぁ税というのは。
パーセンテージ金額ほんと、ロクでもない。確かに、等しく国民から徴収するのは許そう。
富裕層と言えども、我ら低層と同じくらいにしようとする思考は褒めよう。取得分を減らすあれだからな。
だが、その反面。その平等性によって一般市民まで悪の手が及び家計を苦しめる、本当に、年々増加する悪魔のあれだ。許さん。火の車。炎上工場の家の家系にどれだけ石油を注ぐつもりだ。
はぁあー、これを5当分するなら90万と210円か。
一応、単純な計算をするならば、30日で2700万6300。これを後三ヶ月続ければおつり付きで借金を返せるじゃねーか!
なーんて。そんな事はない。そもそも冒険者。給料となる源な魔物達はいつも不変ではない。もっと変動的で遭遇に関する偶然率と不幸率を合わせた結果に確定するものである。観測効果の様なものだ。あるようでないような、ないようであるような。それが偶然と不幸に置き換わっただけの話。
ま、何にしたって金は金だから、金という存在こそ不変的な動きをしているのだろう。
「ありがとうございます」
俺はお礼を述べて紙を受け取った。
「はい。あと、これも渡しておきますね」
すると、受付嬢さんはそう言ってもう一枚の紙をデスクから取ってきた。それはレベル指標という、物だった。上からレベルの求め方からはじまり、階層ごとのレベルの違いまで書いていた。
つまるところ、レベル指標であって、受付嬢さんの心意気である。
======
【レベル指標】
▽レベルの求め方
・lv1〜20
50m走
lv1 7.6秒
lv5 6.5秒
lv10 4.8秒
lv15 2.2秒
lv20 1.0秒
<注意/記録には個人差がある>
・測定をする場合は冒険者協会に申請して下さい。
<一階層>
lv0〜18
<二階層>
lv28〜46
<三階層>
lv50〜62
<四階層>
lv70〜99
<五階層 【階層ボス】>
lv100
<六階層>
lv103〜116
<七階層>
lv120〜141
<八階層>
lv150〜172
<九階層>
lv178〜199
<十階層 【予想階層ボス】>
予想 lv200
【lv100事に別称 <1limit>となる】
【例 1limit20lv】
===
俺はそれを眺め見て思った。
「100レベル以上……あるんですか」
某あーるぴーじーや、魔物を仲間にして戦うゲームですらlvは99だ。100はなく、あっても星だ。
俺が言いたいことと言うのは、レベルのインフレ化を心配していたりする。
そんな俺の気持ちをコンパクトにまとめた言葉に、真剣な眼差しで受付嬢さんは答えてくれた。
「ええ。極一部ね。ほんの極一部。この一年、ダンジョンに只管篭った人のそれなりの対価でしょうね。あの河田翔寺さんでも、まだlv78らしいですし」
「え……78」
少し驚いた。
ってもしかして、あの時気絶させるだけ意味がなかったかもしれないと言う事だったのかよ。それは知らなさ過ぎたわ……。まじか……すいません河田さん。
心から謝罪の意を込めた。
そうして次に気になった事を聞くことにした。
「あの、このlv200ってなんで予想なんですか」
と、その時、受付嬢さんの顔が変化した。
「あぁー、えと。朱音さんの予想なんだよね」
「アカネさん?」
もごもごとはっきりしない物言いで、顔を背けたり俯けたり、しまいには「はぁ……」溜息を吐く始末。
こちらからしたら、ただの奇行でしか無いのだが、何がどうなってそうなっているのか凄く気になる。
「受付嬢さん?」
「えっ、あ、ああ! はいはい。そうね。まだ、十階層に到達できる力が無いのよ。だから、前の記録と照らし合わせてっていう取り敢えずの指標にね。さ! 以上で終わり。ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
なんか躱された感が凄かったけど、なんなんだろ。誰なんだろう。『アカネさん』とは。
ただ、一つわかった事は、あの受付嬢さん。アカネさんとやらを嫌っている事だけは分かった。いや、嫌っているというより苦手臭かった。
そうして、四枚の紙と12個の素材用バックを抱えて声を掛けた。
「皆さん。お待たせ致しました」
「お疲れ様です」
俺はバックを下に置いてから明細書を渡した。
「レベル指標?」
「あ、間違えました。こっちです。あー…いややっぱりこっちも見ておいて下さい。階層ごとのレベル指標らしいです」
そうして各々、バックと紙を回しながら読み込んだ。よく読んでいるというなら、川端さんが何気によく読んでいる。レベルでいうのであればこの班でトップだ。そうなると、なによりの頼りにもなるから、対処できる領域を覚えているのだろう。
俺は、読み終えて回ってきた紙を纏めて、後でニューラインでも送っておくと話した。
「それと、一人当たり90万210円です。お金の方はそういう事でお願いします」
因みに、ゲンナマ。という事はない。この時代はもう通帳一択である。現金を持ち歩く事こそ鬼畜の所業。盗まれても文句の言えない立場たる所以だ。
「それにしても凄い額ですね。1日に450万以上。今までだと100、200万取れていい方でしたのに」
山田さんは嬉しそうにそう呟いた。
そして、それに関しては同感である。
「二階層の額が100万ですからね」
二階層。6匹。捌き方もなってなかったのに15万程。ゴブリンを狩るよりも言い値だ。
だから、ああ。ダンジョンなんだなと思った。ここにスラハク要素が加わればもう完全にゲームとしか思えなくなる。
それに___
「やっぱり、良質な物を取るには強くならないとダメですね」
川端さんはソファーに感慨深く座りながらそう言った。
「ええ。だから」
俺はこの額を見たとき、どうしても言いたいことがあった。今までの方針としてレベルアップと素材集めの両立を目指してきた。が、これはどうみても上へ上がった方が得である。故に___
「レベリングを中心の方針に変えませんか? 素材は最後の方で取るようにして、余計な手間と時間と重量を取らせないように」
という事。それには全員賛成のようで。
「私は良いですよ」
「では私も」
「僕も賛成です。二階層1匹15万位なんですから」
「俺もっす」
そういう事で、すんなりと今後の方針が変わった。それについては、何となく察しがつく。
金は必要だ。まだ1日目だから大丈夫だが、何ヶ月と武具を使っていれば手入れだけじゃ治らない所も出てくる。剣だって槍だって斧だって鎌だって。いつかは壊れる。そのいつかの修繕費の為にも、または購入費の為にも稼がなければ無かったからだ。
これで話は纏まった。それに、特に話すことといえばないのでさっさと解散することにした。
「取り敢えず、今日はこれで解散ということにしましょうか」
「そうですね。明日の為の英気を養わなければいけないですし」
各々、持ってきたバッグを背負う。
「では皆さん。今日はお疲れ様でした」
「「「「お疲れ様でした」」」」




