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【作品打ち切り 改訂版に移行しました】ニートな俺が山でスキルを習得させられて強くなったし、お金が必要なのでダンジョンで働きたいと思う  作者: MRプロジェクト
第3難 高難度ダンジョン【東京ダンジョン】

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01.凱旋帰還

「ひっ、ひぃ。疲れた」


 黒く焼け焦げた草と禿げた土を見て、思わずへたり込む。

 汗に濡れて固まる髪の毛。目を頬を伝う汗。蒼天の空を見上げて目を一間閉める。


 すると、薄く脳に焼きつく、太陽の仄かな光。

 そして、己の溢れ出る力。


 これがレベルアップか?


 疑問符を浮かべるが確信的にそれはそうであった。漸くのレベルアップ。だが特に感情は湧かない。

 その代わりに、幾ばくかの力が身体の底というか全体から湧き上がる事は感覚的に分かった。鳥肌がいきり立つ感じだ。


 だがまぁ、素っ気ない……と言って仕舞えば終わりだが、そんなに心を込めて喜べるほど俺には体力と魔力素がない。

 体力がない大きな要因はやはり、魔力素が著しく失われているからだ。その為、身体の酷使以外での異常な疲れが起こる。それは全身の筋肉に乳酸となって過重過ぎる労力の浪費を促進させた。


 だけど、まぁ。疲れてもいいだろう。


 緑色(りょくしょく)の木々。人工物。開拓地。

 自然のようで自然じゃないここ、ダンジョン。

 目を瞑っても分かる、その空の輝きと青さ。見慣れた風景と合致する。


 それはどちらかと言えば、不思議と作り物と思えてしまうけど。でも、だからこそ思う。


「ほんと、未知に溢れてる。ダンジョンというのは」


 それから悠夜は重たい身体を再び酷使して、歩き出した。

 その道中、息を切らした川端達に会って、共に会話しながら帰路に着いたのは言わずもがなか。




 そうして目の前に大きく現る外と中の境界線。言うならば、ゲート。


 重たくも軽い脚を少し伸ばせば景色は360°変わる変わると、徐々に暖かな陽気が俺たちを照りつけて、ガソリン臭い現代的な臭いが肺に跋扈する。


 だがそれは余りにも瞬時すぎて、瞬時に変わった肺の空気とその内容物に咳き込んでしまい、肋骨が折れてるからか血反吐が溢れる。


「大丈夫ですか!?」


 すると救護班のような、白服の自衛隊の人が駆けつける。それは本当に早く、物理的に迅速であった。


 この人らは、レベルアップ経験者なのか。

 でも、駆けつけるくらいなら風を吹かせないで欲しいな。なんか吹き飛びそう。


「ええ、ちょっと肋骨折っただけなので。少しすれば治し(・・)ますよ」


 そんな悠夜の言葉だが、鬼気迫る表情の救護隊はあり得ないと否定した。


「折れた肋骨は自然に治りませんから。肩を持つ御二方とも変わって下さい」

「「は、はい」」


 俺の談はパッと消えるが様、連れていかれるままに連れていかれる。抵抗できないから当たり前だが。


 それからせっせと運ばれて、簡易的な白い救護テントに連れてこられた。


「白羽、包帯と血だらけの服の変え、それと病院に連絡!」

「了解しました!」


 なんだろう。大事になってきた。

 特段そこまで焦る事じゃないから、そこまでしてもらわなくても良いんだが、魔法を使うにも魔力素がもう少し足りないしなぁ。やっぱり大人しく受けるか。


 鼻息で「ふんー」と軽い溜息を吐く。


 すると、どっと舞い込んでくる疲れと眠気。今にも意識が飛びそうな、例えメガシャキを飲んでも覚めなさそうな眠気。


「あ、服は自分で着ます」


 抗い抗い、何とか意識を保つ。

 ここで意識を離せば、面倒くさいことになり兼ねない。俺は面倒が苦手だ。


 だから、兎に角目を閉じないように意識をはっきりさせる。あの長との闘いよりも癖がある闘いだ。


「あ、あぁ、包帯ちょっとキツ過ぎです」


 チクリ。痛む脇腹と心臓部。包帯がきつ過ぎたのかと思い俺はそう言った。


「すいません、少し待って下さい」


 あー、治したい。痛みには慣れてるけど、地味に痛いし。だからと言って回復魔法に使える魔力素も後89分くらい待たなきゃだめだ。


 そうなると最終的には自然回復と人の治療任せになるんだよな。


 瞼が重く、抗えない力が光を閉ざさせる。

 真っ暗闇とまではないが、微かな光を孕んだ闇。

 意識も尖り、薄い頭の靄も取れる。


 その時、帰ってくるまでの道中の会話が頭の中にリピートした。あっと、記憶の靄が晴れたためか。


『嶋崎さん、あなたの事はこの班だけの秘密としましょう』

『はあ?』


 どういう事なのか、その時素っ頓狂な声を吐く。いや、元々疲れによるものなのかどうも頭が回らなかった。だから薄い靄のせいで今一内容が掴めていないままその場を過ごしていた。


 でも、今ならハッキリと内容が分かる。


『山田さん、あなたも賛同お願いします』

『あ、はい……。って、いや、えと、何でか聞いてもいいですか』


 そんな戸惑いをみせた山田さんに、川端さんはその内容というものを簡潔に話した。



「レベルアップが世に浸透するまでか」



『はい。それはですね、レベルアップの話が浸透するまで嶋崎さんの力の事を隠しておけば面倒事は無くなるかと思いましてね。なにせ、レベルアップって凄いですから、この知識も時が経てば常識になりますし、私達は言わば冒険者の先行隊。強くても何ら不思議はないと思います。嶋崎さんは、面倒ごとが苦手でしょう?』


 これぞ閃いた! 的な勢いでまくしたてて言うその内容。それは時たま見せたスキルの力も加味されたものなのかは知らないが、それを聞いてふと、声が出た。


『なんで僕なんかを擁護するんですか』


 あはは、と濁すかのように笑った川端さんだが濁す事はなくしっかりと話してくれる。


『……あの場に立って、分かったんですよ。貴方が私の娘の恩人なんだって』

『恩人?』


 急すぎる話。と、その時の感覚ではそうだった。


 川端さんの恩人。川端さんその娘さんの恩人。

 俺は覚えていなかった。でも、川端さんがいうには間違いがないらしくて。


『川端 奈緒という名前に聞き覚えありませんか』

『え、ええと。川端奈緒……」


 おうむを返す。


 何度も返す。


 川端奈緒さん……。

 奈緒さん……。

 奈緒さん……。


 そしてその反動からか、心理の深層にお札や鎖をぐるぐるに巻きつけ貼り付けた封印の記憶が、封印から解放されたの如く強く頭にフラッシュバックした。それは、力を抑えることにした記憶。


『奈緒さん、大丈夫ですか』

『だ、大丈夫で……す』


 大きな瓦礫。半壊したコンビニの中で、奇跡的に俺ら2人しかいないがために救えた命。

 あのダンジョンの揺れが引き起こしたコンビニ倒壊。


 頭を抱えて身を潜める奈緒さんの上で踏ん張って、瓦礫を捨てては降ってくる瓦礫を捨ててを繰り返す。そうして見えてきた光。


『よいしょっと』


 もう一丁と張り切って、瓦礫を全て撤去した時、確かそうだった。


『ひっ。嶋崎さん……あなた、何なんですか』


 そう、怪なるものをみるように、怯えを孕んだ声がかけられる。瓦礫によってできた壁に、それ以上下がれないものの、たじろきながら距離を取ろうとする。


『え?』


 それに戸惑いを見せたのは俺だ。

 なんたって、まさかそんな事を言われるなんて思いもしなかったから、全力で完全な善意で助けたのに、帰ってきた言葉は「お前は何なんだ?」。


 そんな言葉をかけられて俺は気づいた。


『に、人間じゃない』


 そう。俺は自身の異常性を忘れていたんだ。どちらかと言えば、それが普通の感覚だった。

 だから戸惑いながらも、奈緒さんに手を伸ばした。


『そ、そんな。酷いなぁ。……とにかく、奈緒さん。ここから出ましょ、ね?』

『ひっ!?』


 残る記憶の最後には、手を指し延ばすが拒絶された記憶。


『あぁ、あれは苦い記憶ですね』


 あはは。逆に俺は濁した。思い出したが最後、コメントは出なかったが正しいか。


『奈緒から聞きましたが、あの後颯爽と去ったようでね』


 そりゃああんな状況下でその場に残るなんて考えを持つほど、俺の肝は座ってないからな。寧ろ、その場で普通に居られる度胸が欲しい。

 あの後直ぐにバイトを辞めたぐらいなんだから。


『あの子実は、その時に言ったことを悔いていたようで、思わず言ってしまって傷つけたってその次の晩ずっと泣いてました。ああ、その日の前日は警察の人とか色々とありまして』


 俺は黙々とその話を聞く。


『それでですが、その時に私は嶋崎 悠夜さんの名前を教えてもらってたんです。こんな言い方は幼稚ですが、「私のヒーロー」なんだってその時に』


 意外。思いもよらなかった話。未だ知らなかった、拒否される事しか。


『そんな事があったのだと、記憶半分で憶えていたのですが今回、あの場に立って分かったんです。貴方が、奈緒を救ってくれた嶋崎悠夜さんだと』

『……』

『嶋崎さん。娘の代弁となるのですが、その節は誠に有難うございました。嶋崎さんのお陰で奈緒が今も生きることが出来ています。本当にありがとうございます』


 そして___と、川端さんは続ける。


『私情を挟んで勝手な行動、申し訳ございません。どうしても、例え貴方が強くても、分かっていましても、見捨てられなかったんです』


 尻すぼみに下がる声のトーン。俺の肩を支える川端さんの力も何処と無く小さく、弱くなっていた。


 そういう場合、どう声をかければ良いのだろうか。

 そういう時、俺ならどう言ってもらいたいか。

 そして俺は、何を言いたいのか。


『……もう良いですよ。正直、それは遅すぎですし過ぎたことですし』


 もう、言葉は終わった。

 俺が終わらせた。

 未熟ながら人を助けさせてもらった。自己顕示欲ではないが___かも知れないが、否定する___これにより、多くの人を救えたと思う。それが何なの足しになるかなんて分からないけど、それはそれで、もう終わらせたんだ。今更何かを考えてたってもう遅い。


 結果良ければ全て良し。


『さ、行きましょ』



「救急車が到着したので行きますよ」


 揺さぶられ、薄く目を開ける。


 ……大人しく病院に行くか。


 再び重たい体を起こせばゆらりと景色が傾いたが、救護の人が肩を持ってくれた。景色は……もうその時には暗く、感覚だけが安定する。


 あの、いつもよく聞くサイレンが自身の近くで鳴っているというのは、何処か新鮮だった。

 乗せられた救急車。その中は医療器具がとても多く積まれ、その中で応急処置を病院に着くまで受けた。

この章からは、ある程度テンポよく行きます。

お読みいただきありがとうございました。

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