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【作品打ち切り 改訂版に移行しました】ニートな俺が山でスキルを習得させられて強くなったし、お金が必要なのでダンジョンで働きたいと思う  作者: MRプロジェクト
ゴブリン集落戦

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08.心頭百歩

「……はっ!」


 突出した勢いと、力と技術。それらに任せて首を刈り取る。それが最短の殺し方。刃毀れも少なくて済む。


 だけど、その都度___


 刃が上手く通らない……!


 それは自身の力を抑えている故だ。いつもの身体の動きだから、刃を抜き去る時、対象を斬りきれておらず少し遅れる。


 だから俺は思った。


 もうこの際、川端さんもほっとけと言っているのだから、ほっておくべきなのだろうか。と。


 嫌味を残したものの、その「雑念」が残る。

 その事が頭を過る。脳内に染み渡る。


 刃毀れに注意し、鮮血を浴び、死を与え、そして殺す。今の悠夜にとって面倒な足枷だけは、ただの体力の浪費でしか無い。ジリ貧でしか無い。


 木々を蹴り、剣を振り、ゴブリンの首を胴を切断する。その間、刃に少々の亀裂が生じた。

 それでも飛び出でて剣を振るう。切られたゴブリンからは臓腑が垂れ出て、木は紅くグロテスクに。


 そうして2人分の生を勝ち取って、今尚も生き続ける。


「っ……!」


 面倒だ。兎に角面倒だ。……でもそれでも、今のままで十分なのでは無いのだろうか。

 俺は、別に全てを出しきらなくても出来るのだから、川端さんの言葉を間に受けて、全てを出し切って「やっちゃう」のはそれまた違う。

 結局の所、求められるのは俺自身の判断……。


「っ!?」


 グワンと畝るが如く空気が波打ち、荒立てる。豪風が一貫して走る中、シュッと矢が俺の頬を掠めた。

 余りにもの速さに、反射的に矢へ目を向けると、その矢はバキバキに割れて落下している所。


 あぶねー。一体何処から___


 そう思い <アリージメントサーチ> を起動した時だった。


「おいおいおい、バカ怪力にも程があるだろう」


 ほぼ2km。そこに一匹滅茶苦茶にデカいゴブリンがいる。それはフュージゴブリンではなく、もっと別に強いゴブリン種だ。

 なにより、2kmからの射出だけで俺を射抜こうとしたんだ。強い事は分かる。


 くそっ、面倒事を増やすなよ。ちっちゃいゴブリンだけで十分だって。それに第参波が来ているってのに。


 若干の焦りと気の迷い。注意力を尖らせたせいか、集中力が疎かになる。


 ……いや、まて、落ち着こう。


 そう自分に言い聞かせて___


 今は目前の敵の排除が優先だ。焦るな、落ち着け。注意を払うだけでいい、まだ倒しに行かなくていい。先ず先ず2kmから撃つんだ。そう簡単に連発できない。

 それに、全域を見る限り第参波でお終いだ。

 だから、今は最後の三匹を殺すのみに集中する。


 木々を伝うゴブリンを殲滅した所で、木に掴まりながら振り返ると、ヒュージゴブリンと目があった。


 途端にヒュージゴブリンは弓を構えて、悠夜は身構える。


 スパン


 長弓から放たれる瞬速の矢。

 豪怪力から放たれるその矢は瞬きで既に届いていた。


「っし」


 そう息を軽く止めてから出す。

 前に飛び前転し、鏃が頭を捉えるギリギリの所で躱しきって向かいの木に飛び移る。


「やっぱり、こいつらから」


 爪で木の皮をめくりながら、脚に力を込める。

 そして、射出。


 パキッ


 悠夜は剣を首に沿わせて半分だけ切断する。

 それと同時に刃の亀裂がより深くなる。


 うなじごと、半分に切られた頭はダランとし、ゆっくりと身体が朽ちていく。ぶしゃと勢いよく飛び出る血は通り過ぎて行く悠夜には被らなかった。


 悠夜は悪態を吐く。余計手間が増えたと、面倒くさがりながら短剣を一枚取り出して、折れかけの刃を飛び進みながら血ぶりして鞘に納めた。


 短剣のリーチは極端に短いが、その代わりに身軽さや戦法の幅が大いに広がる武器でもある。主にトリッキーに、急所を刺して翻弄して殺す。

 唯一思い通りに動かせる武器だ。


 だがそれは、この巨大なゴブリンに出来るのだろうか。


 一抹の不安。


 ヒュージゴブリンは悠夜の足音に気づき、振り返りながら拳を振るう。

 その瞬間空気が押し出され、10mもあるはずの距離ですらその風を感じられた。だから感じる、抑えすぎると危ない可能性を。



『力は自身もそうですが、人助けにも使わないとダメですよ、マスター』


 無理矢理に山で籠らされて手に入れた力。最終的には、何かあったら誰かを守れということに落ち着いたこの力。

 でも、力を手に入れてわかったことは、助けられるなら助けるべきであるという事。面倒が臭くても、やるしか無い。

 そしてそれは、他人に決められる事じゃ無い。自分が決める事なんだと。


『私のことは気にしないでやっちゃってください』



 リーチの長い剣を使えない事はとてもハンデを与えることになる。短剣は対人用でしか無い武器だ、こんな的外れな大きさの敵に使っていたら刃毀れどころか直ぐに壊れる。

 だからと言って手加減して入れば第参波がくる。


 やはり、自身の力量不足か……。


 ブレる視界。


 違う___


「ここに来た時から___」


 俺は___


「覚悟を決めるべきだった___」


 自分の力で被害が及ぶことを恐れすぎていた。それなら、そうならないように気をつけるだけの話だったんだ。


 見られた。だから恐れられる。そしてそれを怖がる。


 だから、これ以上は力を出さない。


 それはそれで、違うのではないだろうか。


「はぁああ!」


 確かに全力とはいかない。

 だけど、殆どの力を抑えなくても___


「爆ぜろ!!」


 巨首の首に短剣を差し込み、そう叫ぶ。


 スキル ___ <爆破> ___


 出せる分には出せるはずだ。


 爆散する肉片。ゆっくりと、膝をつきながら落ちる巨体。そして返り血。


 そう。俺はやれる分を出し切る覚悟をしていなかった。ここに立っていながらも、見られないですむように、前の様にならないような結果を作るために結果主義者になってたんだ。現実に甘えてたんだ。


「わ、私は負けないぞぉおお!!!」


 川端さんの虚勢。

 心に響く。


 川端さんも、何かを思って覚悟しているんだ。

 確かに邪魔で、面倒でしかない。けど……それはそれで、自己中心的な考えだ。俺こそ川端さんの意を汲むべきだったんだ。


 つまり___


『やっちゃってください』


 川端さんを信用するしかない。


「川端さん! 横に避けて膝裏の筋を切ってください!」

「はっ、はいぃい!!!」


 鈍くも拳が届く前に避けきり、そのせいで木がぶっ倒れる。だが、川端さんは生きている。だから、川端さんは指示通り、斧を振りきり、見事に筋を切断した。


 ヒュージゴブリンはドスンと響く音を立てて左片脚を突く。


「川端さん! ナイスです!」


 何とか間に合った、声と俺自身。


 悠夜は勢いそのままヒュージゴブリンの頭を両手で掴んで押し倒した。


「首を!!」

「はい!」


 ヒュージゴブリンの顔は地中に埋められ、叫び声が振動する。

 地面がひび割れ、土が捲き上る。ヒュージゴブリンは苦しみながら、両腕を使って起き上がろうとするが悠夜に抑えられて尚且つ、脚が切られているがため、力が入らず起き上がれなかった。


 そして決められる、その鈍速の斧振り。


 一回。グチュと身に入り込む音。

 少しの返り血。地面の振動はよく大きく、盛大に。


 二回。よく入り込む音。

 頬にかかる鮮血。ピクリと跳ねたヒュージゴブリン。


 三回。骨に突き当たる音の無い音。

 耳にも感じる、憎悪と痛みと苦しみの絶叫。


 四回。骨を切り裂き、脊髄を破る。

 そこで、再びピクリと跳ねる。声も急に弱々しく息ですら浅く変化する。


 五回。五回にして喉元を割く。

 巨首は半分を切って、残り少し。この時点でもう死んでいるだろう。


 六回。そうして、漸くにして確かにヒュージゴブリンは死んだ。


「がはぁ、がはぁ、がはぁ」


 喘息気味の喘ぐような川端さんの声。


「やりましたね、川端さん」


 ヒュージゴブリンの胴体と離れた顔から手を離して、そう言葉をかける。

 それに、息を荒くしながら返してくれた川端さん。


「は、はい。それに、凄くレベルがアップしているようで……。なんですかね、五回くらい強くなったような湧き上がる気分が来ました……はぁ、はぁ」


 そして、目論見通りにレベルアップを果たしてくれた。


 公式に出ていたレベルアップ表は多分、雑魚単一性の___雑魚を基準とした___表で、ヒュージゴブリンやらの別種の経験値を想定していないものだと踏んで、川端さんに殺してもらった。何故川端さんにそうさせたかは、単純に、彼も強くなればまた比例して俺の手間も減るからだ。


 俺はそう思った。


 そして見事、ゲームでもよくあるように雑魚モンスター30匹倒すより、中ボス1匹倒す方が効率も上がりも良い結果となった。所謂パワーレベリングでたが。


 でもこれで凡そは強くなったと思う。


 1レベルが上がっただけで見違えるような動きに川端さんが変化していたから、加えて5レベとなれば凡そ強いというのも過言では無いだろう。

 まぁ、何処まで強くなったかは分からないが。


 だから俺は、俺自身にある程度の余裕を持つことができ、川端さんに自分で自分の命を守るよう託した。


 悠夜は「ふぅ」と息を吐いて、唯一の武器である短剣をもう一枚取り出して両手に構え、川端に状況を話し始めた。


「川端さん、休んでる暇はなく次が来ます。でもこれが最後です。それでですが、最後の奴らを倒し切ったら、森の最奥(さいおう)に居るゴブリンに向かいます」

「了解です、嶋崎さん」


 そして第参波到来___





「嶋崎さん!__川端さん!__助けに来ました!!」

「嘘だろ……」





 だがここに来て、嫌がらせの如く山田さんが現れた。

お読みいただきありがとうございました。

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