表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あばずれマッチ売りの少女 ~火遊びは危険な香り~

作者: 橋 千有

 深々と降る雪、冷たくなった手にはマッチ箱。

「誰か、マッチを買ってくださいな」

 町ゆく人は、皆暖かそうなコートに身を包み、子供は幸せそうに親の顔を見上げます。誰も、少女の言葉なんかに耳を傾けません。たまらず、家に帰った少女。

「お金はどこだい!お金がなけりゃ、家には入れないよ!」

 怒るビッグママ。大きな足で、外に蹴り出される少女。

 体はどんどん冷えていきます。

 寒さのあまり、思わずマッチを一本、シュッ。

 ほんの少し、赤く温かい。

 しかし、それもはかなく消えゆきます。

 暖をとろうと、もう一本。

 その瞬間、少女は思います。

 あ、このまま、マッチがなくなれば、あたしは死んでしまうんだ。

 これって、もしかして「マッチ売りの少女」?

 少女は、なぜ、「マッチ売りの少女」の物語を知っているのか思い出せません。

 でも、マッチを擦れば、温かいストーブが、おいしそうなガチョウが、そしてやさしいお婆さんがわたしを迎えに来てくれるんだ。

 少女は、マッチを擦り続けます。

 赤い炎がわずかに灯りますが、ストーブも、ガチョウも、やさしいお婆さんも現れません。

 なぜ、温かいストーブも、おいしそうなガチョウも、やさしいお婆さんも出てきてくれないの?

 何かが違う。

「マッチ売りの少女」とは何かが違う。

 それは・・・・・。

 あたしが違うんだ!

 そう、今マッチを売っているその少女は、その世界の人間ではなかったのです!

 もとレディース娯躯弩宇ごくどう紅会くれないかい三番隊長、橋駒はしこまお蝶おちょう。彼女が転生した姿だったのです!

 敵対するレディースを殲滅し、前世では目も当てられぬ悪行三昧。

 何人もの少女たちを片端にしてきた伝説のあばずれ少女。

 そんな前世の少女に奇跡など起ころうはずがありません。

 前世の記憶を取り戻したあばずれ少女。

 タフで、ダークな魂が咆哮します。

 死んでたまるか、絶対この世界でも生き延びてやる!

 とにかく、今夜を生き延びねば。

 そのためなら、何でもやってやる

 少女の瞳は、怪しげにらんらんと輝きます。

 と、その時、目の前を馬車が通り過ぎました。

 危ない!

 慌ててよけた少女は、転んで靴をどこかに飛ばしてしまいました。御者は、一瞬少女と目を合わせましたが、そ知らぬふりして行きすぎます。

 あんの、馬車のヤロー!

 裸足なのも顧みず、少女は馬車を全速力で追いかけました。

 馬車は、路地裏曲がります。

 少女はその先、先回り。

 見れば、馬車が止まるとこ。

 少女が追いつくその前に、誰かが馬車から降り立ちます。

 御者も、一緒についていきます。

 よしよし、ちょうど誰もいない。

 あたしにメンチ切ったらどうなるか。

 橋駒お蝶の制裁が始まります。

 見れば、窓なし木製の馬車。

 少女は、扉を開けると、中に滑り込みました。

 窓がないから、中は真っ暗。

 しめしめ、これなら見られない。

 あいつら驚け、帰ってきたら、自分の馬車が燃えている。

 ざまあかんかん、カッパの屁。

 少女はマッチを擦りました。

 下にマッチを落とそうとすると、マッチの火の届く隅っこで何かが動きます。

「うわ、何よ、あんた」

 よく見れば、少女より幼い女の子。

「なんで、あんただけ置いてかれたのよ。パパと一緒に行けばいいのに」

「あの人はパパなんかじゃないわ」

「じゃ、何よ」

 女の子は、首を横に振り、

「分かんない」

「そう、じゃ、あたしのすることの邪魔だから、この馬車から出ていって」

「足に枷がはめられていて出られないの」

「枷?」

 マッチを擦って、女の子の足元を照らすと、確かに枷がはめられています。

 なんで、足枷なんてはめられてるの?まあ、いいや、あたしにゃ関係ない。

「ここで枷をはめられたのなら、どこかに鍵があるはずよ」

 あばずれ少女は、もう一本マッチを擦って、周りを照らしました。

「あった!」

 そこは、女の子からはとても手の届かないところです。あばずれ少女は、その鍵を手に取ると、女の子の足枷を外しました。

「ありがとう。これで自由になったわ」

 女の子が、馬車を出ていこうとすると、

「ちょっと、待った」

 女の子が止まります。

「あんたの首にかかったペンダント置いていきな」

 あばずれ少女が言います。

「えっ、でもこれはあたしの大事な・・・・」

「また、枷をはめられたいのかい?」

 橋駒お蝶のドスのきいた言葉に、女の子は半分泣き顔。

「どうするんだい、早く決めな」

 女の子は仕方なくペンダントを首から外し、おそるおそるあばずれ少女に差し出します。

「それでいいんだよ。さ、とっとと出ていきな」

 女の子は、馬車を出ていきました。

 扉が閉まり、周りは再び真っ暗に。

 シュッとマッチを一擦り。あばずれ少女の性悪な笑顔がその中に浮かびあがります。


 御者と男が帰ってきたとき、馬車は激しい炎に包まれ燃え上がっていました。


 してやったりのあばずれ少女。

 自分をないがしろにした馬車は燃え、おまけにペンダントのお土産付き。白銀に輝き、装飾の中には何かの紋章。

 これは、きっと金になる。

 あばずれ少女は、これを質屋に持っていきました。

 道行く人はいそいそと。

 昼間と雰囲気が違います。

 これじゃ、なおさら売れやしない。

 あばずれ少女は、マッチを売ろうなんて、これっぽっちも考えていませんでした。

 カツカツカツ、と音がします。

 見れば軍靴、兵隊さんが、道一杯に歩いています。

 赤の軍服、ベッケルボルト。

 ヴォーダン・シュール・ベッケルボルト。

 南の国の、独裁者。

 青の軍服、ハウゼンシュタイン。

 フォン・デュルネ・ハウゼンシュタイン

 北の王国の、国王様。

 ハウゼンシュタインの領土だったころ、この町は、活気にあふれ、誰もが幸せに暮らしていました。

 しかし、ベッケルボルトが突然、町を襲い、今はその占領下にあるのです。もともといた町の人々は、虐げられ、その日の暮らしもやっとです。

 道行く幸せそうな人々は、南の国の人間たち。

 町の窮状を知った北の国は、この町を奪還すべく密かに動き始めていました。


 そんなことなど、つゆにも思わぬあばずれ少女。

 質屋にそぐわぬ小さな少女が、質屋の扉を開きます。

 店主は、じろりと少女をいぶかしげに見つめています。

「これを買い取ってくださいな」

 ペンダントを差し出すあばずれ少女。

 ペンダントを見る質屋の表情が変わります。

「こいつをどこで手に入れた?」

「家に伝わる大事な物。父にお金にかえてこいと頼まれたの」

 そ知らぬふりして、嘘八百。

 質屋の視線が鋭くなります。

「嘘つけ。これはマッチ売りの少女が持つものではない。普通の人は持てぬもの。きっと盗んだに違いない」

 いつの間にやら、背後に店員。

 後ろ手に扉の鍵を閉めてしまいます。

 そのカチリという音を聞いたあばずれ少女。

 嘘がばれたと分かれば、やることは一つ。

 相手は少女と、甘く見た店主。

 ここで、橋駒お蝶の本領発揮。

 ペンダントをサッと握ると、カウンターを飛び越え、店主に飛び蹴り。

 倒れた店主を飛び越えて、店の奥へと走ります。

 やはりあったよ、店の裏口。

 扉枠の穴にスライド式でははまったストッパーをはずし、扉を開けて飛び出します。


 裸足のまま走り続ける雪の道。

 背後で質屋の店主の怒鳴り声。

「泥棒だぞ!マッチ売りの少女が人の物盗んだ!誰かマッチ売りの少女を捕まえてくれ!」

 これで、マッチ売りの少女は犯罪者。

 なんでこうなる?

 せっかく途中までうまく行っていたのに。

 日は、傾き、夕闇が迫ります。

 足はかじかみ、青白くなってきています。

 大通りにはあばずれ少女を捕らえようと、兵隊たちが闊歩しています。

 建物の角から兵隊の姿を見て、あばずれ少女は、反対方向に走ります。

 ああ、寒い。

 足が冷たい。

 どこでもいいから休みたい。

 橋駒お蝶も、さすがにへこたれました。

 普通の少女のさみしさが人の温かさを求めます。

 でも、お金がなければ家には帰れず、道行けば捕らえられ冷たい牢獄の中。

 そこに誰からも忘れ去れたような、壊れかけた納屋が。

 中には、いつ入れたかもわからぬような干し草。

 どこでもいい、少しでも暖が取れれば。

 疲れ果てたあばずれ少女は、干し草の上に倒れ込みました。

 かじかんだ手を口に当て、温めた手で冷たくなった裸足の足をさすります。

 震える手で、マッチを一本、シュツ。

 冷たくなった足にマッチを近づけます。

 ほんの少し暖かくなったような気がしましたが、それもすぐに消えてしまいます。

 もう一本、マッチを擦ろうとしてやめます。

 こんなことしたって、きりがない。

 マッチが終わればそれまでだ。

 あばずれ少女は、今までしてきた自分の所業を思い起こしました。

 人に自慢できることなんて何一つない。

 橋駒お蝶だったときも、両親は呆れて、何もしてくれず、仲間は、キレた自分が怖くてついてくるだけ。

 心の底から、自分のことを想ってくれる人なんて誰もいなかった。


 「おねえちゃん」


 いや、一人だけいた。

 あたしの幼い妹。

 犬が好きで、野良犬をかわいがっていた、レディースが何かも知らない、あたしの大切な妹。

 そうだ、あの日あたしは・・・・。

 その時、納屋の扉が開きました。

 しまった、見つかった!

 あばずれ少女に緊張が走ります。

 入ってきたのは幼い少女。

 馬車から逃がしたあの女の子です。

 女の子は、あばずれ少女に気づいて、びくっとします。

「あんた・・・・」

 女の子は、また何かされると、すぐ出ていこうとします。

「大丈夫だよ」

 あばずれ少女がやさしく呼びかけます。

「もう、あんたから何か取ろうなんてしないよ。外は暗いし、寒いよ。行くところがないのなら、あたしの横にいていいよ」

 それを聞いた女の子、こわごわ、あばずれ少女の横に座ります。

 裸足の足をさすり続けるあばずれ少女。

「どうして、靴を履いていないの?」

「馬車にはねられそうになったとき脱げちまったのさ。車輪に取られてどっかに飛んで行っちまった」

「寒そう・・・・」

 女の子は自分の靴を脱ぎました。

「これを履いて」

 それはそれは小さい靴。あばずれ少女の足に入るわけありません。

 あばずれ少女は苦笑して、

「ありがとう。でも、あたしには入らないよ。その気持ちだけで十分温かくなったよ」

 あばずれ少女は、女の子に靴を返しました。

「・・・・もう疲れたよ。こっちにおいで、一緒に寝よう」

 あばずれ少女の言葉に、初めに会った時の刺々しい、怖がらせるような響きは全くありません。

 女の子はおずおずと近づいて、少女の隣に横たわりました。

 幼くても、たとえ小さな存在でも、そこに確実にある脈動する命の鼓動。

 これが人の温かさなんだな。

 そう思いながら、あばずれ少女は寝てしまいました。

 どのくらい寝たでしょう。

 何かが体に触る感覚で、あばずれ少女は目を開けました。

 足に何かが触れている。

 寝たまま足の方を見ると、女の子が、小さな手で青白く変色しかけた足をさすっていました。

 あばずれ少女が寝ている間、女の子は、靴を履かせてあげられない代わりに、ずっと足をさすってあげていたのです。

 足に血行が戻り、青白い肌に赤みがさしてきます。

「寝なかったの?」

 うなづく女の子。

「ずっと、さすっていてくれたの?」

「靴がないなんて、こんなに白くなって冷たいなんて、きっとつらいと思うから」

 あばずれ少女の心の中に、少女らしい温かい炎がポッと灯りました。あばずれ少女は、女の子を抱きしめました。

「・・・・・さっきは怖がらしてゴメンね」

 女の子は、抱かれた少女の胸の中で小さくコクリとうなづきました。

 と、その時突然、男が納屋に入ってきました。

「おやー、こんなところに、女の子がいるぞー」

 どうやら酔っぱらっているようです。

「ここは、俺の隠れ家だ。勝手に人の家に入りやがって。そういう悪い子にはお仕置きだ」

 そういうなり、あばずれ少女にのしかかります。

 何と勘違いしているのか、年わの行かぬ少女にいたずらしようとでもしているのか。

 酒臭い口を顔に近づけられて、橋駒お蝶が首をもたげました。小さな体でも、そのパワーはお蝶のもの。必殺の金蹴りキックが、男の急所を直撃です。

 男は飛び上がり、股間を抑えて飛び跳ねます。

 立ち上がったあばずれ少女が、女の子に手を伸ばそうとした時、男が女の子をさっと抱きかかえてしまいました。

「このズベ公!小さいからって手加減すりゃ、痛い目に遭わせやがって」

「その女の子を放せ!」

「俺の言うことを聞かなきゃ、この女の子の首をへし折るぞ!」

 ぐっと男をにらみつけながらも、ファイティングポーズを解くあばずれ少女。

「そうそう、それでいいんだ」

 あばずれ少女に近づいた男は、片手であばずれ少女を張り飛ばしました。

 干し草の上に倒れ込むあばずれ少女。そのあばずれ少女の上に馬乗りになる男。

「さっきみたいなマネはするなよ」

 男は両足を絡めて、足を使えないようにします。

 男が、あばずれ少女の胸に顔をうずめます。

 足ばかりを気にして両手はそのまま。

 あばずれ少女は、男が胸に顔をうずめている間に、気づかれないようマッチを取り出し、頭の上でマッチを一擦り、シュッ。

「もういい加減にしな」

 あばずれ少女のドスのきいた声に、思わず顔を上げた男。

 次の瞬間、

「うぎゃっ!」

 男は片目を抑えました。

 あばずれ少女は、マッチに火をつけると、男の片目にそれを突っこんだのです。

 男は、足をもつれさせ転倒すると、そのまま激しい痛みで地面を転げまわります。

「おととい来やがれ、変態おやじ!」

 あばずれ少女は、女の子の手を握ると、納屋を飛び出しました。

 町の裏路地を駆け抜けて、人のいない方へ、人のいない方へ。

 と、めったに人の来ないところに兵隊が。

「窓を閉めろ!外に明かりを漏らすな!従わぬものは、処刑する!」

 兵隊はそう言いながら、街中を歩いています。

 何事が起ったのでしょう。

 こんな真っ暗な夜に、窓を閉め切り、灯りを漏らすなとはただ事ではありません。

 この町は、山の合間の小さな町。

 この街の明かりが、夜に山間を進む道を示す街路灯。

 これがなくなれば、夜の山間を進むのは不可能になってしまいます。

 街の明かりがなくなると、周りを囲む山の暗さもひときわ。

 その日は、月明りさえなく、寒々しい満点の星のきらめきが際立ちます。

 あばずれ少女が山の頂を振り返ると、暗闇の中、さらに暗く沈んだ山の稜線に一瞬灯りのようなものが。

「おまえたち、何している」

 その声は、見回りをしていた兵隊のものでした。


 暗闇の中、北の王国、青い軍服の兵隊が列を連ねて狭い山道を進軍しています。

「待て!」

 先頭の兵が、進軍を止めます。

「どうした?」

 その後ろについていた、ひときわ立派な軍服を着た男の人がその兵に尋ねます。

「ここから町の様子が見えるはずなのですが、なぜかまっ暗で何も見えません。これでは、夜のうちに、町を奪還するのは不可能です」

「だが、南の国の本隊が、すでに町に向かっている。夜のうちに町に攻め入れなければ、町の奪還は失敗するぞ」

「何か目印になるものさえあれば、一気に攻め入ることができるのですが、これでは斥候を放っても、夜道に迷うばかりで町までたどり着けないでしょう」

 そこへ、後方から兵士が一人走ってきた。

「申し上げます!」

「何事だ?」

「王国からの伝令によれば、姫が南の国のスパイに誘拐されたと」

「何?」

「国王、奴らは町に攻めこまれないよう、姫を誘拐したのに違いありません。交渉の道具に使うつもりなのでしょう」

 立派な軍服を着ていたのは、北の王国の国王、フォン・デュルネ・ハウゼンシュタインその人でした。

 フォン・デュルネは、山間の町の人々の窮状を聞き、自ら軍を率いてこの山間の町を奪還しようと考えていたのです。

 しかし、あと一歩のところで、目指した町を暗闇の中で見失い、自らの幼き姫をも敵の手中に捕らえられてしまったのです。

「どうしますか?何とか姫だけでも奪還するよう、斥候を出しますか?」

「・・・・いや、わが姫一人のために、大事な兵たちの命を無駄にしたくない。待つのだ。今は、何かが起こるのをひたすら待ち、その瞬間を逃さず、一気に攻め込むしかない」


 あばずれ少女と女の子は、町長の館に連れてこられました。

 今は、南の国の軍隊の本部になっていて、町長の家族は館の隅に追いやられています。

 大きなテーブルには、南の国の兵隊が並び、豪華な食事を食べています。

 そして、町長とその家族は、部屋の隅の小さなテーブルに着き、粗末なパンと飲み物だけ。町長の家にある物は、すべて南の国の兵士のもの。

「おい、ワインがないぞ」

 兵士の一人が言います。

 町長の妻が、立とうとすると、

「お前じゃない。そっちの娘だ」

 町長の一番上の娘が、食べるのをやめて、町長の方を見ます。町長が、仕方がないという風にうなづきます。娘は立ち上がり、ワインの瓶を持つと、言われた兵の所に注ぎに行きます。

 ワインを注ぐ手が震えています。

 すると、兵士は、娘の体を触り始めました。

 娘は驚いてワインの瓶を取り落とします。

 それ見て、兵たちは大笑い。

 町長が思わず立ち上がります。

 すると、隊長が立ち上がり、

「何だ、その態度は?俺たちの慈悲がなければ、お前たちはここにはいないんだぞ!生かしてやっているのだけありがたいと思え!」

 そこへ、一人の兵隊が入ってきます。

「命令を無視して、街中を歩いていた子供を連れてきました」

 あばずれ少女と女の子が入ってきました。

 すると、女の子を見た町長の表情が変わります。

 隊長は、いぶかし気にあばずれ少女たちを見るだけで、そのことに気づきません。

「その胸に下げているのは、ハウゼンシュタインの紋章ではないか?」

 あばずれ少女が女の子から奪ったペンダントを見て、隊長が言います。

「スパイが誘拐した、北の国の姫というのはお前のことか?」

 隊長が立ち上がり、あばずれ少女のほうに歩いてきます。

 ペンダントを下げているので、姫と勘違いしているようです。

「それにしても、服装が汚らしい。そっちの小さい子の方がお姫様っぽいが、姫たるものが、自らの家の紋章を人に預けるとは考え難い。むしろ、正体がばれないように、わざと汚くしているのかもしれんな。おい」

 隊長が、兵を呼びます。

「姫を誘拐してきたスパイを連れてこい。それでどっちが姫か分かる。それまで、地下牢に閉じ込めておけ」

 2人は、館の地下牢に閉じ込められてしまいました。

 兵が去ると、あばずれ少女は聞きました。

「あなた・・・お姫様なの?」

 うなづく女の子、いやお姫様。

「わたしは、北の国の国王フォン・デュルネ・ハウゼンシュタインの娘デートリヒと言います。南の国の悪い人に誘拐されて、あの馬車に」

「それで、足枷なんてされていたのね」

「父は、この町の人たちが、南の国の人たちに虐げられていることを知り、この町を取り戻そうとしています。それを知った南の国の人たちが、なんとかそれを防ごうと、わたしを誘拐したのです」

 なんてこった。

 面倒くさいことになったぞ。

 でも、あたしには、北の国も南の国も関係ない。

 その日を刹那的に生きられれば・・・・。

 しかし、この幼い女の子は、自分の意志にかかわらず、こんなに小さい頃から国と国の争いのはざまに立たされているのです。

 明日には、その命を奪われてしまうかもしれないのです。

 あたしだけが、生き伸びられればそれでいいの?

 ほんとにそれでいいの?

 でも、スパイが来てしまえば、どっちが姫かは分かってしまう。

 と、その時、扉とは違うところの壁が突然開きました。

 驚く、あばずれ少女とデートリヒ姫。

 そこには、町長が立っていました。

 デートリヒ姫に膝まづき頭を下げます。

 この人は、誰が姫か知っている。さっきは黙っていたけれど。この人は味方だ。

「麗しきわが姫。このような形でお会いすることになるとは思いませんでしたが、どうかお許しください」

「よいのです。父は申しておりました。町長が、早く降伏してくれたおかげで、まだ多くの町民が生きながらえていると。きっと、つらい思いもしたでしょう。まもなく父が参ります。その苦労もそれまで」

「お父上が?・・・・・しかし、それまで姫は身を隠さなければなりません。このトンネルを抜ければ外に出られます。お父上が到着するまで、何としても生きながらえてください」

「ありがとう。あなたも、どんなことがあっても生き延びるのですよ。父はそのために来るのです」

 2人は、トンネルを抜けて、外に出ました。

 外を歩く人はほとんどいません。

 時折、兵隊が通り過ぎるくらい。

「2人が逃げたぞ」

「何?どうやって?」

「分からない。スパイも一緒に探している。お前たちは向こうに行け」

 兵隊達が話しています。

 2人が逃げたことはばれてしまいました。

 兵隊たちが進む方向とは逆の方に向かいます。

 すると、一軒の家から、どこかで見たような男が出てきました。あの馬車から降りてきた男。デートリヒ姫を誘拐した男に間違いありません。

 兵隊たちは皆2人組なのに、このスパイだけは一人。

 このスパイの口をふさがなければ。

 あばずれ少女は、さっき通ったところに大きなスコップが置いてあったのに気づいていました。

 そこまで戻ると、小さい体には負担の大きい大きなスコップを肩に担ぎます。橋駒お蝶のタフネスが少女に宿ります。

 そして、スパイの行く先に先回り。

 建物の角にごみ入れが置いてあります。あばずれ少女は、そのごみ入れの上に乗ると、スコップを構えました。

 橋駒お蝶はもとソフトボール部。ショートの4番でした。

 バットをスコップに持ち替えて、建物角の陰で構えると、誘拐犯に渾身の一撃。

 スコップは歩いてきたスパイの顔面をジャストミート。スパイはその場に倒れました。

 スコップを投げ捨て、

「これで、どっちがお姫様か分かる人はもういなくなった」

 その時、兵隊たちが近づくカツカツという靴音が。

「やばい、手伝って」

 あばずれ少女は、デートリヒ姫と、スパイの片足ずつを持って、ずるずる引きずって動かします。

 一番近くにあったドアを、ダメもとで開け放ちます。

 そこに人がいても、きっとさっきの町長のように味方になってくれる。

 賭けでした。

 中に入ると、そこはもぬけの空でした。

 とりあえず、そこにあったテーブルの下にスパイを隠します。

 ちょうど、隠し終わったその瞬間、ドアが開きました。

 そこに立っていたのは・・・・。

「お前ら、こんなとこで何してる?」

 片目にアイパッチをしたその男は、納屋であばずれ少女を襲おうとしたあの変態でした。

 男が床を見ると、テーブルの端から足が出ています。

 アイパッチの男は、身をかがめて、テーブルの下で倒れているスパイを発見しました。

「おいおい、これは何だ。お前ら、兵隊に引き渡してやる。そうすれば、すぐに処刑だ」

 あばずれ少女が、さっと動くと、男は、ドアのすぐ横にあった斧を手に取りました。

「おっと、今度はさっきみたいにはいかないぜ。そうだな。兵隊に引き渡す前に、足の一本くらい切り落としておくか。大人しくしているようにな」

 あばずれ少女は、正面突破をあきらめ、デートリヒ姫の手を取ると、建物の奥へと走り出しました。

 そして、一番奥にあったドアを開けると、中に飛び込み内側から鍵を閉めてしまいました。

 男がドアにたどり着きます。しかし、鍵がかかっていて、ドアは開きません。男は、何とかドアを開けようと、ノブをガチャガチャ鳴らします。

「開けろ!お前たちに逃げ道はない!」

 やがて、ガチャガチャノブを回す音がしなくなりました。

 中は真っ暗。

 あばずれ少女がマッチを擦ります。

 そこには、油性のランプが置いてありました。

 と、突然、ドアを突き破り、斧の先がのぞきました。

 男は、斧で扉を叩き壊すつもりなのです。

「かくれんぼはもう終わりだ!」

 あばずれ少女は、咄嗟にランプを手に取ろうとして、床に落としてしまいました。ランプが割れ、中の油が床に広がります。

 2発、3発と、斧は、扉の穴をどんどん広げます。

 そこから入るわずかな光で、マッチ箱を見ると、マッチ棒はあと一本。

 あばずれ少女は、デートリヒ姫を自分の後ろにやると、最後の一本に火を付けました。シュッ。

 そして、火のついたマッチ棒を、床に広がった油に放り投げました。

 狭い部屋の中に、炎が燃え上がります。

 あばずれ少女は、炎に背を向け、デートリヒ姫を抱きかかえました。

 次の瞬間、ドアを突き破り、男が飛び込んできます。

 男が見たのは、女の子の姿ではなく、燃え上がる炎。

「なんじゃ、こりゃあ?」

 男が一歩部屋の中に足を踏み入れた瞬間、あばずれ少女は男を渾身の力で突き飛ばしました。男は、斧も持っていたので、重さでバランスを崩し、炎の中に倒れました。途端に服に油がしみこみ、男の体は燃え上がりました。

「ぐぎゃあっ!」

 そのすきに、あばずれ少女は、デートリヒ姫の手を握り、建物を飛び出しました。

 裏道を通って、その建物から遠ざかります。

「大変だ!建物が燃えているぞ!」

 南の国の兵たちが口々に言います。

「早く、消火しろ!北の国の軍隊にこの場所がばれてしまうぞ!」

「もう無理だ!炎はどんどん大きくなっている!」


「国王!あれを!」

 隊長の言葉に、フォン・デュルネが、山の頂から見降ろすと、山間の暗闇の中に、燃え上がる炎が。

「時は来た!今こそ奪還の時!剣を掲げよ!松明に火をつけよ!わが頼もしき兵たち!人々を苦痛の鎖から解き放つのだ!栄光は我々にあり!」

 鬨の声が上がります。

 暗い山の稜線に松明の炎が次々灯り、その灯りが一気に山を駆け下りてきます。松明の炎は尽きません。その数は優に千を超えています。


 町に駐屯する南の国の兵は、わずか数百人。

 勝敗は見えていました、

 解放された人々は、喜びの声を上げます。

 南の国の兵たちは、次々に投降します。しかし、一部の兵は町のあちこちに身を潜め、最後の抵抗の機会をうかがっています。フォン・デュルネが町に入ると、町長が駆け寄りました。

「わが王、お待ちしておりました」

「うむ、町長、長らく苦労を掛けた。もう町の解放は間近だ。南の国の兵たちはもはや袋の鼠」

「わが王、そのことで話が」

「何だ」

「デートリヒ姫のことです」

「姫のことを何か知っているのか?」

「はい、わたしは姿を見ました。兵たちに捕らえられるところを何とか逃がすことに成功しましたが、その後、まだ姫の姿を見た者はいないのです」


 その頃、あばずれ少女とデートリヒ姫は、町の一番奥にいました。火事が延焼し、兵たちが逃げていくので、大通りに出られなくなり、取り残されてしまったのです。

 まだ、建物は煌々と燃え盛り、大通りは赤く照らされています。しかし、南の兵の姿はもう見えません。

「もう、南の兵はいないわ。早くお父様の所に行きたい」

 デートリヒ姫が言います。

「まだよ。このどこかに、敵兵が潜んでいるに違いない。今出ていったら、途端に捕らえられてしまうわ。そしたら、せっかくの勝利も無駄になってしまう。国王の姿が見えるまで、ここから動いちゃダメ」

 橋駒お蝶の勘が、まだ危ないと告げていました。

 やがて、その2人の前に、北の軍の青い軍服が見えてきました。

 その先頭には、国王の姿が。

「お父様!」

 やはり、幼い女の子。

 ダメだとはわかっていても、父親の姿を見た途端に建物の影から飛び出して行ってしまいました。

「あっ!」

 これで、見つかったら、あの子が姫だとばれてしまう。

 あばずれ少女も、建物の影を飛び出しました。

「姫!」

 国王も駆け寄ります。

 その時、建物から一人の兵隊が飛び出してきました。

 赤い軍服。南の国の兵隊です。

 それは、町長の館にいた隊長でした。

 赤い軍服の隊長は、国王がたどり着く前に、あばずれ少女とデートリヒ姫を両手でつかんで捕らえてしまいました。

「止まれ!姫がどうなってもいいのか?」

 青い軍服の兵が一斉に止まります。

「やめろ、姫に手を出すな!」

 国王が叫びます。

「ならば、兵をこの町から撤退させろ!」

 国王は、ぐっと口をつぐみました。

「どうした?早く撤退させないと、姫の命はないぞ」

「2人同時に命を取ることなどできない。お前こそ、降伏するのだ。他の兵たちはもうほとんど投降したぞ」

 その国王の言葉を聞き、赤い軍服の隊長は、2人のことをかわるがわる見ました。

「どっちが本物の姫だ?」

 あばずれ少女は、デートリヒ姫を見ました。

 幼い姫は、これから起こるだろうことを思い、震えています。

 妹もその瞬間、こんな風に震えていたんだろうか。

 あの時・・・・。


 大切な妹を亡くしたあの日。

「あたしがいいと言うまで家に近づいてはダメよ。ほら、ノラと一緒に公園で遊んでおいで」

 ノラとは、妹が可愛がっていた野良犬の名前。

 そう、あの日、お蝶を狙って敵対するグループが、お蝶の家を襲撃してきたのです。それを知ったお蝶は、家から妹を遠ざけました。そして、お蝶は、それを返り討ち。慌てた敵対グループは、猛スピードで、お蝶の家から逃走しました。その先には、妹がノラと遊んでいた公園が。

 そして、敵対グループが公園の横の道に差し掛かった時、ノラが突然駆け出し、道に飛び出して行ってしまったのです。それを追いかけて、お蝶の妹も道路に飛び出し、そして・・・・。

 あたしが悪いんだ。

 あたしが、妹を殺したんだ。

 あたしが、敵対グループを追い払わなければ、

 妹を公園なんかにやらなければ、

 敵対するグループなんて作らなければ、

 あたしがレディースなんてやっていなければ・・・・・。

 それから、復讐の鬼と化したお蝶。敵対するグループを追い詰め、次々血祭りにあげていきました。

 そのグループの中に、ダントツの走り屋がいました。その走り屋に勝とうとすれば、死が待っているとさえ言われた伝説の走り屋。そして、その走り屋を追い詰めている最中、お蝶は大クラッシュを起こし・・・・。

 そして、あたしは転生したんだ。

 でも、もう二度とあんな思いはゴメンだ。

 あたしを大切に思ってくれた唯一の存在を失うなんて。

 いや、唯一じゃない。

 今あたしのすぐ横で震えているこの幼い女の子も、あたしを大切に思ってくれている。この子まで失いたくない。

 もしかしたら、取り返せる?

 幼い命が奪われる瞬間を、これ以上見せつけられるのはゴメンだ。

 そうだ、あたしが生まれ変わったのは、この時のためだったのだ。


「お父様!わたしのことなんか考えないでどうかこの町の人々を解放してください!」

 あばずれ少女は、叫びました。

 マッチ売りの少女が言う言葉ではありません。

 ドスをきかせた、脅し文句でもありません。

 しかし、その響きは凛として、そこにいた誰もが彼女を姫と信じたことでしょう。

「わたしは、北の国の国王フォン・デュルネ・ハウゼンシュタインの娘デートリヒ。このペンダントが何よりの証拠」

 あばずれ少女は、デートリヒ姫から奪ったペンダントを掲げました。

 赤い軍服の隊長は、フォン・デュルネの表情を見ました。大きな目を見開いて、あばずれ少女のことをじっと見つめています。

 あれは、自分の娘が口走ったことに驚いているのに違いない。やはり、小汚い娘の方が、本物のデートリヒ姫だったのだ。

 そう確信した赤い軍服の隊長は、幼い女の子を、デートリヒ姫を解放しました。

 デートリヒ姫は、あばずれ少女を振り返りました。

 あばずれ少女は、デートリヒ姫にうなづき、笑いかけました。

 デートリヒ姫は、何も言わず、無言のまま父の方に駆けだしました。しかし、その父の胸には飛び込みませんでした。

 赤い軍服の隊長は、デートリヒ姫を手に入れたと固く信じて、短剣を取り出します。

 そして、あばずれ少女の首にそれを突きつけました。

「さあ、どうしたのだ。早く撤退させねば、姫の命はないぞ」

 フォン・デュルネは、デートリヒ姫を見ました。

 しかし、デートリヒ姫は、父の方を見向きもしません。

 フォン・デュルネは、あらためて、あばずれ少女を見ました。

 先ほどは、あまりの驚きで思わず見とれてしまいましたが、どこかで会ったことがあるか、あらためて記憶をさぐっても全く思い出せません。

 見たこともない、薄汚れた着物に身を包んだ少女。

 しかし、先ほどのまでの当惑は、その少女の毅然とした態度の前に吹き飛びました。

 フォン・デュルネは、掴んだ剣を投げ捨てました。

 そして、両手に何もないことを見せつけながら、ゆっくりと赤い軍服の隊長の方に歩いていきます。

「わたしは、この町の住民に対して責任がある。兵を撤退させることはできない。だが、それで姫の命を失えば、わたしは生きている意味を失ってしまう。それなら、わが命を取るがよい」

 赤い軍服の隊長は、混乱しました。

 姫の命をとっても、兵は撤退させない。それどころか、自らの命もとれと言う。もし、ここで国王の命を取ろうものなら北の国は、この町どころか、南の国に攻め入るでしょう。南の国の独裁者ベッケルボルトは、そんなことをした自分を生かしておくわけがありません。

 何をしても、自分の希望どおりに事は運ばないのです。

 フォン・デュルネは、赤い軍服の隊長の目の前まで来ました。

「どうした、そんな女の子に短剣など振りかざすな。お前は、振りかざす相手を間違えているぞ」

 フォン・デュルネの全身から発せられる全てを圧倒する強いオーラ。

 赤い軍服の隊長の混乱が、最高潮を極めます。

「うわー!」

 赤の隊長は、あばずれ少女に突きつけた短剣をフォン・デュルネに突き刺そうとしました。フォン・デュルネはそれを避けると、あばずれ少女を赤い軍服の隊長から突き離し、短剣を握った手をねじ上げました。

「ぐあ!」

 赤い軍服の隊長は、そのままフォン・デュルネにその全体重をかけられ、地面にねじ伏せられてしまいました。そこへ、青の兵隊たちが駆け付けます。

 フォン・デュルネは、赤い軍服の隊長の身柄を兵たちに預けると、地面にへたり込んでいたあばずれ少女に手を差し伸べました。

「大丈夫か、少女よ」

 あばずれ少女は、フォン・デュルネを見上げながら言いました。

「なぜ、あたしなんかのために」

「わが娘の命を守るために、その命をささげてくれたのだ。その思いにこたえるにはわが命で答えるしかない」

 あばずれ少女は、何と答えていいか分からず、首にかけたペンダントを外しました。

「これは、お返しします」

「それはすでにお前の物だ。返す必要などない」

 そこへ、デートリヒ姫がかけてきます。

 デートリヒ姫は、あばずれ少女に抱きつきました。

 その頬は、涙で濡れています。

 デートリヒ姫は、あばずれ少女の顔を見て、

「大好きよ。あなたは、わたしにとって天使なの。だから、これからずっとわたしから離れないでね」

 そして、父の方を向くと、ようやくその胸に抱かれました。

 フォン・デュルネは、幸せそうに姫を抱きしめながら、あばずれ少女に言いました。

「どこの誰かは分からないが、わが娘の命のみならず、この町を救った。北の王国の魂を救った。少女よ、お前こそは、北の王国の宝物。これからは、わたしを父と思うがよい」

 わたしは、必要とされている。

 心の底からわたしを想ってくれる人が、わたしを大切に思ってくれる人たちがここにいる。

 あばずれ少女の目から涙があふれました。


 それから、あばずれ少女は幸せになったかって?

 それは読者の想像力におまかせしましょう。


 おばあさんが最後に迎えに来る「マッチ売りの少女」は、ここにはいません。

 皆さんは、マッチの火で幻影を見たいですか?

 いやいや、それでは悲劇で終わってしまいますよ。

 火遊びは危険。

 マッチ一本火事のもと。

 でも、それは、使い方ひとつ。

 たった一本のマッチでも、奇跡を起こすことは可能なのですから。


最後までお読みいただきありがとうございました。

どうも、童話の悲劇には、人として最低の大人しか出てこないような気がします。

子供たちの模範となる大人たち。

魔法使いの魔法よりも、子供たちに必要なのはそれじゃないでしょうか。そして、それは現実の世界でも。

では、現実の世界で模範となるべき大人とは?

その答えは、ぞれぞれの胸にある良心が知っています。

この物語が、その良心を呼び起こすきっかけになってくれればと願っています。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ