表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

レベルアップとステータス 3

いろいろと変えました。


 認めない認めない。

 あぁ、どうして? 私は絶対に認めない。

 例えとんな結末になろうとも――ワタシは総てをアイしている。



 ✴ ✴ ✴ ✴ ✴



「ではまず、こうなった原因を簡単に説明しましょう」


 うさぎの顔が描かれた被り物をした男は、俺に視線を向け小馬鹿にしたようなしぐさで、ふわりと空中に体を預けた。


 ニヤニヤと気味の悪い笑みをした被り物。見ているこっちを不快な気分にさせてくれる。


「ことの始まりはただ一つ。ワタシがこの世界の神を殺しました――」


 両手を広げ……おそらく被り物の下でドヤ顔を浮かべているに違いない。


「………」


 聞いてもいない事実を暴露された俺の気持ちを考えろ。神殺しの自慢なんか聞いても面白くないんだよ。


「神という存在が居なくなった世界は、大きな穴が空き、やがて朽ち果てる未来しかありません」


 しかしファットマンは俺の心情を無視して更に話を進めていくのだが、それでもちょっと待てと言いたい部分は出てくるわけで。


「………」


 世界に穴が空く? 朽ち果てる未来しかない?


 真剣に話をしているようで、馬鹿にしているのか? 俺にはそれがただの法螺話にしか聞こえない。


「と、まあ前置きはここまで。さてさて、本題に入りましょうか」


 鋭い眼光。爆発的に広がる負の圧力。

 ただそこに居るだけなのに……何か得体の知れないモノに押し潰されているような――


「いちいち回りくどいヤツだな。つまり、何が言いたいんだお前は」


 グッと心を持ち堪えた。

 明らかな敵意を露わにしつつ、ヤツの話を聞き入れる。いまこの状況を楽観的に捉えてはならない。これは自分のために、今はコイツの話を聞いてやろう。


「ははは、すごい殺意です。まだ"能力"すら発現していないって言うのに――これは将来有望。期待できますね」


 いまいち話が読めない。一枚も二枚も上手なこの感じ。心底ムカつく。


「一体何の話だ、気味の悪い。早く話を進めろよ」


 ヤツが負の圧力だとしたら、俺も負けずと負の圧力で押し返す。今この空間にはビリビリと互いの気迫がぶつかり合っている。

 

 両者一歩も譲らない――死を賭けた膠着状態。


「では早速、第一のルールから説明致しましょうか。と言っても、これはまあ簡単なお話。この世界は"ゲーム"に成りました。比喩でも何でもなくそのままの意味です。先も言いましたよね? ワタシはこのゲームの管理者だって」


 それはもうさっき聞いた。どうも胡散臭い話ではあるが、今は聞いてやる。


「ああ。それで、他にもまだあるんだろ?」


「ふふふ、せっかちさんですね~。焦らずともゆっくり説明いたしますよ」


 可愛らしい動物を見るかのような目で諭してくる。


「ウザいキモい黙れ。話を続けろ」


 俺は一秒でも早くこの空間から抜け出したいんだ。ヤツの支配下に置かれているこの状況こそ耐えられない。


「では続けましょうか――」


 そう言って、ファットマンは優しく語り掛けるようにして言葉を紡ぎ始めた。



 ✴ ✴ ✴ ✴ ✴



「マジ、かよ……」


 ヤツの話が終わった途端、俺は無意識に声を漏らしてしまっていた。


「は、はは……」


 感情の篭もらない乾いた笑いが響き渡る。


 これはもう、笑うしかない。何て素晴らしい、俺はこういうのを求めていた。


「お前、中々やるな。見直したぞ」


 先まで、ファットマンに対し不快な感情しか抱いていなかったが。訂正しよう。こいつはまさしく神だ。認めよう、というより認めるしかない。


「ふふふ。貴方様のような変わったお人は初めて見ましたよ――那由他も生きてみるものですね」


「あ? なにか言ったか?」


「いいえ。なんでもありません。貴方様のようなお方と出会えてワタシは嬉しいのです。ここまで忠実にワタシの型に嵌まってくれる貴方が」


「気持ち悪いのは相変わらずだな……」


「お褒めにあずかり光栄でございます」


「……褒めてねぇ」


 神になる=全てを悟る。

 こいつがこんなにキモい理由が少しだけ分かった気がした。


「だけどまあ――お前のような神になるつもりはねーから」


 ハッキリと自分の意思を、誰にも邪魔させない一途な想いを。セカイを統べる神に向かって――堂々と伝えてやった。


「ふふ、あははははっ! 面白い。本当に面白いですよあなたは。ぜひお名前をお聞かせ下さい……ワタシを殺すと吠えたあなたの名前をワタシが殺されるその瞬間まで覚えていたい」


 ったくいちいち言い回しがキモい。もっと普通に言えないのかよ。と心の中でも悪態を吐くが……


「オッケイ分かった。よく聞けよファットマン。俺の名前は夜喰やばみ 聖十郎せいじゅうろう。このくそったれなゲームをクリアする――最高にきもい神様の盟友だ」


 なんともまあクサい。だが勘弁してくれ、俺だって嬉しいんだから。


「夜喰様。次会うときは、このセカイの"ことわり"を賭けて――」


「ああ。首を洗って待ってろよ、クソ野郎」


 新たなセカイで――殺し合う約束をした友人。その記念と言っちゃあれだが。まあ楽しみだぜ盟友。



「いざ尋常に――勝負しようかァッ!」

「いざ尋常に――勝負しましょうか……」


----------------------------------------------------------------

あなたは運命の選択を迎えた


・決意を固める ←


※後戻りは出来ません。本当に宜しいですか?


・はい ←


----------------------------------------------------------------



「――――――」



 その問に答えた瞬間。

 灰色だった世界に、鮮やかな色彩が戻った。

お読み下さりありがとうございました!

次回はファットマンの説明会を聖十郎視点で書いていこうと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ