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第2話 人気キャラクター養成機関

 ワケが分からずに呆然としている俺に、大男は親切丁寧に説明を開始した。


「ここは、人気キャラクター養成機関『ネズミの穴』。ここを卒業して世界的人気キャラクターになった者は多い。見よ!」


 指さした先に飾られていた像は……


「これはマズいだろう!!」


 俺は思わず叫んでいた。アナハイムの黒いネズミ。世界一著作権に厳しい会社の筆頭キャラクターじゃないの!


 だが、大男は気にするそぶりもなく言い切った。


「商業利用しなければ問題ない。小説だから画像も出ていないからな。何らかの間違いで書籍化してイラストがつくようなことにでもならなければ問題ないし、万が一にもそうなったら編集者が削るから大丈夫だ。彼こそ、栄えある我らが『ネズミ・メンバーズクラブ』のリーダーにして、『ネズミの穴』出身者で最高の出世頭よ。丸の左右上方に少し小さな丸を重ねた模様を付けるだけでキャラクター商品になるという、世界最強のマーチャンダイズキャラクターである」


「いや、だから『クラブのリーダー』とか言ってる時点でヤバいって!」


 だが、大男は俺の抗議など馬耳東風と聞き流して、次の像を指さす。


「こちらは、第二の出世頭。ICT時代におけるキャラクターの重要な戦場、コンピュータゲームにおいて世界的に活躍する者も居るのだ」


「こっちもヤバいって! 京都も結構著作権には厳しいんだから!!」


 そこには、京都の花札屋の世界的に有名なゲームで一番人気の黄色い電気ネズミの像が鎮座していた。


 だが、俺の抗議など聞く耳もたず、大男は話を続ける。


「ゲーム業界三大人気キャラクターと言ってもよい世界的な人気者だぞ。のこり二人のうち、髭の配管工はスマホゲームが滑り気味であるし、針鼠はセミリタイア状態だ。それに比べて、彼はスマホゲームでも社会現象を巻き起こしたゲームの一番人気キャラクターである。そこからアニメやマンガなどにも進出。まさに『君に決めた!』といった感じであるな」


「だから、ヤバいネタ使うなって!!」


 俺の叫びを無視して、大男は三番目の像を指さす。


「少し古いが定番の人気者である。灰色の雄猫と仲よく喧嘩する姿を知らぬ者はおるまい」


「だからやめろって……」


 だんだん気力が続かなくなってきた俺を無視して、大男は更に説明を続ける。


「こちらは、日本ローカルではあるが、1959年から実に半世紀以上も続いている教育テレビの人気子供番組において、10年間という最長不倒の継続記録を打ち立てた人形劇シリーズの三番手キャラである。トップだけでなく脇を締める人気者も育てているのだ」


「……いいのかな、これ?」


「こちらは大イタチを相手に戦うネズミたちだ。テレビアニメ化されただけでなく、二十一世紀になってから劇場版CGアニメも作られたほか、舞台演劇にもなっているぞ」


「……ああ、知ってるわ、コレ」


「こちらは、五回もアニメ化されている妖怪マンガで常に主人公の相棒をつとめているキャラだ。不潔、卑怯というネズミの暗黒面(ダークサイド)を表に出していながら人気者という強者である」


「……そう言われると、確かにこいつ、属性的にはアレな割に人気があるよな」


 何となく納得しかけた俺に対して、大男はたたみかけるように言いつのる。


「どうだ、ネズミというのは小さくて弱いのに強い者を倒すヒーローにもなれば、ダークヒーロー的にもなれるのだ。それだけではない、ただのネズミでさえ、最強の悪役(ヒール)になることもできるのだぞ」


「まさか! さすがにそれは無いだろ!!」


 思わず叫んだ俺に、大男は最後の像を指さした。


「この二十二世紀の猫型ロボットの耳をかじったのは何だ? この大人気キャラクターにとって最凶最悪の敵とは何だ? そう、ただのネズミなのだ!!」


「ああ、ホントだ、そうだったわ……」


 泣いている猫型ロボットの耳をかじっているただのネズミの像を見て、俺の中で何かがコトンと音を立てた。何かが壊れたのか、それともスイッチが入ったのか。


「ここは『人気キャラクター養成機関』だって言ったな?」


「そうだ」


「つまり、ここで鍛えられたら、何の取り柄もない俺でも人気キャラクターになれるのか?」


 俺の問いに、大男は力強くうなずいて答えた。


「なれる! だが、修行は死ぬほど厳しいぞ」


 その言葉を聞いて、俺は叫んでいた。


「かまわない、俺を……俺を、ネズミにしてくれ!!」

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