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夢明け


 温かい夢を見た。

 春の心地がずっと続いているような、そんな夢を。


「…………」

 いつの間に、眠ってしまっていたのだろう。

 あの後、自分でも気付かないうちに緊張していたのか、力が抜けた千春を雪登に抱きかかえられて社まで連れてきてもらったのは、なんとなく記憶の端にあるが、よく思い出せない。

 どれ程、寝ていたのか、辺りはすっかり夕方だった。千春は体を少し、起こして周りを見渡す。

 自分の隣に雪登の寝ている姿を見つけ、安心したように笑みを浮かべた。


 ……あの頃から、あなたは変わっていなかったのね。

 

 姿はそのまま大きくなっただけで、中身は全く変わらない優しいあの時のまま。

「ん……」

 千春が起きたことに気付いたのか、雪登もゆっくりと目を覚ます。

「……起きていたのか」

「はい。……お体は大丈夫ですか? 怪我しているのに、わたしを運んできてくださってありがとうございました」

「いや……。それに、そなたが取って来てくれた薬草で、今の所、痛みは引いている。礼を言うのはこちらの方だ」

 自分が薬草を取って来ていた事を知っていたらしい。一人で手当てしたのか、彼の腹と背中はぐるぐると白い布が巻かれていた。

「そんな……。でも、安静にしていて下さいね? 夕飯は私が作りますから」

「すまない……」

 千春は頷いてから、夕食の準備へと取り掛かる。襷掛けをしつつ、ちらりと雪登の方を見ると彼も自分を見ていたのか視線が重なった。

「なっ、……んでしょう?」

「いや。見ているだけだが」

 横になりながら、こちらに視線を送っている。少々作業がしにくい。

 千春はぎこちなく動きながら、夕飯の準備を進めた。


  

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