ビビりな上に他力本願
サイラスは、変わってるとか天才とか、そう言う事を言われるのが嫌いだった。だから、この家はとても居心地が良かった。ボニーもクライドもメリッサも人間ではなかったし、母も社長をしているが元は強盗犯だし、たまに話に聞くアンジェロも超能力者だし、変な人ばっかりで、自分だけが特別だと思わずに済んだ。
だから、アンジェロの孤児院で過ごして、超能力者コースのある学校に通っている超能力者の子どもたちが、心の底から羨ましかった。自分もあの場所で育ったら、どれだけ幸福だっただろう。そう思ったことは何度もある。
でも、シャンティとレヴィを、父母として愛していた。心の底から、愛していた。だから、ヴィンセントに願った。
「俺はアレックスを倒す、何があっても。だからヴィンセント様、力を貸して」
ヴィンセントはそれを聞いて、サイラスに色々言いはしたが、最終的には頷いた。
アンジェロの空間転移で、ワシントンDCの孤児院に到着した。夕食前だったためか、30人近い子どもたちがダイニングにいた。
「「「「いんちょーせんせー、おくさん、おかえりー!」」」」
「はいはい、ただいま」
「ただいまぁ」
子どもたちが一斉にアンジェロとミナに集まって、ハグをしたりキスをしたり、アンジェロとミナは大忙しだ。それを横目で見やりながら、サイラスがヴィンセントに尋ねた。
「来ると思う?」
「来るだろうな」
「その根拠は?」
「掟だからだ」
「俺が聞いてるのは、科学的な根拠って意味なんだけど」
「科学的な検証をした者はいないから、そんな根拠はない」
サイラスはぐうの音も出ない。誰も検証していないのなら、実証しようもないし、逆に言うと否定しようもないという事だ。いつ来るかはわからない、だけど来るとヴィンセントは言った。思わずサイラスは冷や汗を流す。
それを見てヴィンセントはニヤリと笑う。
「何だ小僧、怖いのか?」
「だって、来るか来ないかもわかんないし、アレックスが運動神経いいのは知ってたけど、あんなに強いなんて思わなかったし」
サイラスは基本、無駄に知識がある分、危険に対しては非常に敏感なのである。これは世に言うビビリとも言う。
それを察したヴィンセントは愉快そうに笑う。
「心配するな。私、ミナ、アンジェロがいて、負ける要素など、万に一つもない」
「その根拠は?」
「私もミナもアンジェロも、一撃で都市を破壊できるくらいの能力を有しているからだ」
「えっ、それ実証したことあるの?」
「私とミナはある」
それを聞いて、サイラスはようやく安心できた。そして、安心した表情で、ヴィンセントを見た。
「よかった。じゃぁ頼むわ」
それを聞いて、思わずヴィンセントは白目を剥く。アレックスを倒すと言った割に、ビビリの上に他力本願。精神的に強者の集まりだったドラクレスティ一族の首領としては、白目を剥くしかない。
それでもヴィンセントはやるしかないわけで、アンジェロの所の子どもたちを危険にさらすわけにはいかないわけで。
ヴィンセントは45年ぶりに、盛大な溜息を吐かされたのだった。