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世界最高の頭脳を持つ天才科学者

 マーリンの魔術講座を受講し始めてから1週間。一通り基礎を叩きこむことは出来た。マーリンは最短記録だと褒めてくれたが、これはサイラスが天才だからこそできることだ。普通は魔術書を全部読んで覚えるなんて、そのこと自体が不可能に近いのに、サイラスはそれを1日で済ませてしまったので、とんでもないアドバンテージだった。

 サイラスが魔法技術を習得した後、本格的にメリッサを救うための構築式を考えることにした。術式のベースは光魔法。その中でいくつかのパターンを考える。

 パターンは治癒・維持・防御・再生など光魔法に可能なパターンをいくつか分けて、その中からメリッサの状態に必要なものを抽出する。

 メリッサは前置胎盤なので、ジョヴァンニの封印の影響下で帝王切開手術をすることは決まっている。なので、胎盤側の血管からの出血を防ぐために、それらの血管を保護するための防御・維持、失血した場合の補助的な治癒、子宮周囲の動脈血・静脈血の流動性の抑制、分娩直前までの子宮収縮抑制と分娩直後の子宮収縮促進が、医学的見地からは必要だ。

 そして魔法的には吸血鬼性の抑制、人間性の維持、メリッサの魔力の減退が必要と考えた。

 サイラスはマーリンとヴィンセントと3人で魔術式を考えて、いくつかの術式を考案出来た頃にはさらに1週間が経過していた。


 サイラスは礼と共にマーリンとエレインに別れを告げた後、今度はアメリカに来ていた。考案した魔法を効果的に作用させるための手段として、一人の科学者の力を借りたいと思ったのだ。

 その科学者と言うのは、アンジェロの友人の一人である。現在、世界最高の頭脳を持つ科学者と呼ばれている、医学、工学の世界的権威であり、レオナルド・ダ・ヴィンチの再来と呼ばれる科学者レミ・ヴァルブラン博士、その人である。

 レミは世界中の大学を回って研究に明け暮れ、博識でユーモアがありイケメンでモテモテなのに、結婚もせず研究にばかり没頭して60代を過ごす変人との噂だ。そんな変人が、技術力の日本、開発力のドイツ、再現力のアメリカと提携して、偉大なる医療機器を発明した。

 その発明品は、製造は不可能と考えられていた奇跡の工学、ナノマシンである。しかもレミの開発したナノマシンは高高度のAIが搭載されており、全身に血液循環に乗って分布する細胞型と、血液循環に乗って特定の臓器に作用するホルモン型の2つが既に開発されている。サイラスはそのホルモン型ナノマシンに魔法をかけ、効果的に子宮のみに魔法を定着させようと考えたのである。


 アンジェロから既に紹介はしてもらっていて、レミの助手はすぐに研究室に案内してくれた。医療機器と工学機器が整然と並んでいる広大な研究室の一番奥に、白衣を着てメガネをかけ、少しくすんだ金髪をした、圧倒されるほどイケメンなおじさんがいた。思わずサイラスは呟いた。

「うっわぁ、レミさんって超いい男だね」

「よく言われる。でも顔なんて僕の一部でしかない、どうでもいい事さ。僕の大部分は頭脳によってできているんだからね」

 聞こえてしまったらしくレミはそう言って笑い、サイラスたちに座るように促した。この返しだけでも十分に変人臭が漂う。

 腰かけたレミは「お久しぶりです」とヴィンセントにもにこやかに挨拶する。

「お前を見ると本当に時の流れを感じるな」

「伯爵に初めてお会いした時は、僕はまだ10歳でしたしね。反対に伯爵やミナさんは全く時の流れを感じさせない。僕はミナさんやあなたという存在を見ていると、科学者として非常にうずく物を感じますよ」

 途端に獲物を見るような眼をするレミに、ちょっと引いたヴィンセント。お構いなしにレミは続ける。

「僕が開発したナノマシンも、元々の構想はミナさんの吸血鬼性から着想した物です。あなた達は血液によって形作られている。全身を駆け巡る血液を自在に操り、あらゆる現象を引き起こす。血液と同じ様に作用する医療機器があれば、医学は革新的に発達すると思いました。そして僕はそれを実現した。これからも僕は研究を続けるし、僕はいつかあなた達に追いつく」

「全く、末恐ろしいガキだと思っていたが、吸血鬼の構造を疑似的にでも再現するとは、恐れ入った」

 ヴィンセントは結構本当に恐れ入っているようだ。サイラスだって心底恐れ入っている。

 サイラスは自分の計画をレミに話して、実験に協力してくれないかと頼んだ。レミは魔法の存在に驚いていたが、超能力者だの吸血鬼だのが友人にいるせいか、すぐに驚きは引っ込めた。その代りに好奇心がムラムラと湧き上がってきたようで、彼は興奮した様子で話を聞くと、すぐに立ち上がってデスクに向かった。

 いきなりパソコンを猛烈な勢いで叩きだしたレミの背中を見て、サイラスとヴィンセントは少し顔を見合わせ、レミの背中に声を掛けた。

「レミさん?」

「ちょっと黙ってて。今論文が6本溜ってるんだ。面倒くさくて放置してたらこのザマだよ。1時間で片付けるから待ってて」

 研究はしていたようだが、論文の執筆はサボっていたようだ。でもどうせ天才科学者なので、頭の中にデータは収まっているのだろう。怒涛の勢いで論文を書き上げていくレミの背中を、「俺も人の事言えないけど、やっぱりこの手の人って変な人多いな」とサイラスは呆気にとられて眺めていたのだった。


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