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魔術師による魔術講座 3


 マーリンによる魔術講座「魔法とは何か」。


「今この世界に、魔法使い、魔女や魔術師と呼んで差し支えない者は、私を含めて8人しかいない」

「少ないね!」

「昔は大勢いたが、そもそも魔力を持って生まれる人間が少ないし、魔法使いになれる環境でもない。魔法は衰退した。それは何故だと思う?」

「科学の発展?」

「そうだ。金融や通貨の発展も原因ではあるが、最も大きな原因は科学の発展によるもの。科学と魔法の違いは?」

「科学は汎用性が高いから誰でも使えるけど、魔法は特定の人にしか使えない」

「その通り。魔法は特定の者にしか使えない上に、非常にまどろっこしい。だが、科学は非常に簡単なプロセスで、誰にでも一定の恩恵を与える。人間が便利なものに飛びついた結果として、魔法は衰退した。まぁ、当然の結果と言えるけれども。もちろん、科学者として魔力を基礎とした才能を発揮している者もいるけれどね」

「なんか矛盾してるね」

「そうでもない。魔法というのは特定の人間しか使えないと言うだけで、その過程はほとんど科学的だよ」

「どういうこと?」

「魔法というのは、結果だ。そこに至るまでの理論を研究し、その理論を呪文や魔方陣という形で構築し、補強し、創造する。魔力という木材をどのくらい用意して、どう組み上げて、どうつなぎ合わせるか。どのようにして魔法という家を建てるか、その設計と理論の研究が最も重要なのだよ」

「なるほど! 実に科学的!」

「そうとも」


 魔法を使うためには理論が必要だ。色々とルールもあり、根拠に基づいて形作られる。構造のしっかりしていない家が長持ちしないのと同じで、魔法も理論立てた構造が全てなのだ。

 とはいっても、理論を学ばなくても魔法を使うことは可能だ。中には理論をよく知らないで、呪文を唱えて魔法を使う魔法使いもいたようだ。ある程度理論研究がされていて、その構築式である呪文を魔力を持つ者が唱えれば、魔法は出現することが出来るのだ。

 ただ、他人の用意した呪文を唱えるだけならば、それ以上の発展はない。そう言う意味では、理論を学ばずに呪文を唱えるだけの魔法使いは、便利に道具を使っている人間と差はない。

 理論を研究し魔法を創造する者が魔術師であり、それをただ使用するだけの者は魔法使い、大体がこのように分類されていたようだ。

 

 太古の昔は魔法研究も盛んだった時代があって、その研究が広まっていけばいくほど、大体は魔法使いでも事足りた。だから昔から魔法を研究する魔術師自体はかなり少なかったし、魔法の隆盛と共に魔法使いが増える一方で、魔術師の数は減っていった。科学の発展や近代化に伴う魔女狩りなどが増え始めると、魔法使いも減少し淘汰されていった。

 今この世界に魔法を使えるものは数人しかおらず、魔術師と呼べる者はマーリンとアフリカにいる魔女の二人だけらしい。魔法を使うだけなら呪文を覚えるだけで済むことだが、魔法を作ることは生半可な事ではないのだ。


「その話をしたって事は、魔法を作らなきゃメリッサ様は救えないって事?」

「そうだ。現存の魔法の中に、吸血鬼の掟を破るものは限られているし、吸血鬼の産婦を死亡から救う魔法を見たことはないからね」

「何でないの?」

「掟だと初めから諦めていたか、諦めきれずにその魔法を探しても、辿り着けなかったか」

「そもそも魔術師を見つけ出せなかったか?」

「それもあるだろうね。少なくとも私はそんな依頼をされるのは初めてだ」

「そっか、じゃぁイチからのスタートになるんだね」

「ああ」


 メリッサを救う魔法はない。ならば作るしかないのだ。メリッサが死に至る医学的な理由はわかっているが、吸血鬼の掟という非科学的な現象については、魔法的なアプローチも必要かもしれない。そう考えてやってきたが、今から研究するとなると間に合うのだろうか。

 サイラスがそう考えていると、マーリンが言った。


「諦めてはいけない。私は知恵を貸すと言ったね。君も天才なのだろう。才能を持つ者が、それを無駄にしてはいけない」


 魔力を活用できるのが魔法使い。魔法を創造できるのが魔術師。魔力は才能だ。才能を無駄にすることは、彼らにとっては冒涜に等しい。

 それに気付いて、やっぱりメリッサの命を諦めることなんか出来ないし、サイラスだって何かしたかった。だからサイラスはマーリンをしっかりと見つめた。


「俺に、魔法を教えて」


 マーリンはサイラスを見つめ返すと、やっぱり少し愉快そうに口の端を上げて、ゆっくりと頷いた。 

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