魔法使いのパーティ 2
孤児院の庭に出てきた、タキシード姿の魔法使いと、青いドレスの魔法使い。アンジェロがステッキをかざすと、前列の広範囲に電流が降り注ぎ、一気に1000人以上の人間が倒れ伏した。そしてミナが杖に纏わせた炎を爆発的に拡大させ、それを放つと中列で爆発的な衝撃とともに人間が燃え盛る。
あまりの様相に子どもたちは息を飲んで様子を見守り、聖職者たちは隊列を乱されて狼狽した。
だが、敵もさるもの。容赦なく銃撃を開始してきた。だが、それもミナの斥力の障壁によってすべてが弾き返され、跳弾によって幾人もの聖職者の命が奪われる。それに気付いて銃撃を躊躇っているのを見て取り、ミナが杖を上空にかざす。
「プリズムレインボー!」
まるで魔法少女の様にクルクルとターンを決めて、地表から精製したガラスや水晶から無駄にプリズムを発生させつつ、相転移で水蒸気を氷塊に変えて、夥しい氷の散弾を敵に向かってぶちまける。プリズムと氷の破片が、光に反射してキラキラと輝き、攻撃なのに幻想的で非常に美しい。
「奥さん可愛い!」
「きゃぁぁぁ! カッコイイ!」
「きれーい!」
やたらとキラキラとした攻撃に、女子からの熱い声援を受けるミナ。ミナの攻撃をかいくぐってきた聖職者たちが、銃撃しながら迫ってくる。そこにアンジェロが飛び出して行って、身体強化を使って恐るべきスピードで肉薄する。地面が陥没するほど踏みしめて跳躍し、蹴り一撃で数人を吹き飛ばす。そして集団の中に飛び込むと、アンジェロを中心として数十人が一斉に宙を舞った。
「うおぉぉぉ!」
「いんちょーせんせーカッケェェェェ!」
ヒーロー映画さながらのアクションを見せるアンジェロに、男子から熱い声援が送られるアンジェロ。
そんなこんなで魔法(という名の超能力)と身体能力を駆使していたが、アンジェロが隊列の後方に見覚えのある女性がいることに気付いた。その女性はアンジェロに対して並ならぬ怨嗟の念を、その瞳に宿していた。
アレックスがこちらに来ていないのを不思議には思ったが、彼女がいるのなら納得という物だ。
レスターの幼馴染で、友人で、パートナーであった、ビビアン。彼女がここにいて、アンジェロに憎々しげに視線を送っている。アンジェロがそれに気付いた時、ビビアンは既に銃を構えていた。そして、銀弾の装填されたライフルで狙ったのは、アンジェロではなくミナだった。
絶好調でキラキラファンシー攻撃を繰り出していたミナは、ビビアンには気付いていない。アンジェロが慌ててミナに声を掛けたが、その時には既に銀弾がミナに着弾していた。
子どもたちがあっと声を上げた。破裂音の後、ミナから血飛沫が上がって、ミナが倒れ伏す。子どもたちが顔色を青くしたと同時に、アンジェロが駆け寄った。
心配そうに眺める子どもたちの視線の先で、アンジェロがミナを抱き上げる。そして、アンジェロはおもむろに、ミナに口付けをした。すると、脱力していたミナがピクリと動いて、体を動かした。
「おくさんが、生き返った」
「すごい!」
「キスで目覚めた!」
「素敵!」
大興奮の子どもたちの向こう側では、卒業生たちがやっぱり半目になっている。
「ねぇ、なんだか演出が無駄に凝ってない?」
ミカエラの質問に、ステファニーが遠い目をして答える。
「こういう事態を想定して、院長先生と奥さんは、何日も前から打ち合わせしていたのよ」
「あの夫婦、変なところで真面目よね」
「残念ながら、ウチの人もノリノリよ……」
呆れる卒業生に気付きもせず、子どもたちは、愛する人のキスで目覚めるという、童話のような復活劇に大興奮している。勿論そんな事をしなくても、心臓や頭を打ち抜かれない限りは、ミナも痛いだけで済む話だ。
見ていると、いよいよ敵の勢力は残り1000人位にまで減っていた。ここまで30分かかったかも怪しい。
時間的にもそろそろ大技を出してくるのだろうと考えていると、その予想は大当たり。
おもむろにミナが杖を振る。すると、動物の形にカットされた植木たちが動き出す。
「エキセントリックパレード!」
エレクトリカルだったら某鼠の国に訴えられそうだが、エキセントリックだったら大丈夫だろう。ウサギやキリンの形にカットされた植木が、のっそりのっそりとうごきだす。よく見ると、アンジェロが小さく指を振っているので、実際に操っているのはアンジェロのサイコキネシスだ。魔法少女っぽい技なので、ミナに演出を任せているのだろう。
動物の植木たちは聖職者とびかかり、吹き飛ばし、蹴っ飛ばしていく。ファンシーで可愛らしい植木達が暴れるのを見て、子どもたちも驚いて囃し立てる。
「すごいや! あの柊の木も奥さんが操ってたんだね!」
「動いてる! 可愛い!」
「花びらが散ってるよ! 綺麗だね!」
子どもたちの視線の先で、動物の植木が大暴れする。少しすると植木の動物たちは大人しくなり、所定の位置に引き上げていく。
そしてミナとともに、アンジェロも立ち向かう。アンジェロがステッキを振ると、その軌道に沿う様に竜巻が発生する。そしてミナがアンジェロと微笑みあって手をつなぎ、血の杖を振ると炎が発生して、竜巻と混ざり合う。すると、竜巻と融合した炎は爆発的な勢いをつけて、人間たちに襲い掛かる。バックドラフト現象を利用した攻撃に、ジョヴァンニが解説する。
「あれは二人が織りなす合体技だよ。二人の愛によって生まれた、愛の必殺技、ラブ★ハリケーン!」
一斉に瞳をきらめかせる子どもたち。
「愛のなせる業!」
「素敵!」
「ラブ★ハリケーン!」
普段から院長先生と奥さんはラブラブだが、愛の必殺技など披露されてはたまらない。子どもたちは感動と興奮で腰砕けだ。
それを見て卒業生たちはやっぱり呆れたが、ラブ★ハリケーンのあまりの攻撃力の高さに、今度は白目を剥かされる。
「ありゃぁ、骨も残らないな」
「ご愁傷様だよ」
「本当ね。院長先生と奥さんを敵に回すなんて、バカな選択をしたものだわ」
「まったくだな。どういう計算をしたら、あの二人に勝てると思ったんだか」
この孤児院で過ごしてきた者達にとっては、全くの謎である。彼らにとっては、院長先生と奥さんは、敵に回してはいけない人間のツートップなのだ。その二人を敵に回して、無事でいられると思う事が不思議でならない。
彼らも超能力者だし、その辺の普通の人間よりは強い自覚はある。それでも、院長先生と奥さんには、逆立ちしたって勝てないことはわかる。彼らにも勝てないのに、普通の人間がいくら武装していくら人員を集めても、勝てるかどうか怪しいと思うのは当然だった。
そして大人たちの予想は外れることなく、聖職者たちは愛の必殺技によって焼き尽くされた。




