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幕間 それぞれの20日間

2016.10.15

各ヒロイン視点での20日間の日常。

~~ニーナの20日間~~




「あっはっはっはっは!!」


玄関を開けると、隣の師匠の家の方から、複数人の男性による笑い声が聞こえてきた。

3人分のそれの中には、師匠の物も混じっている。というか爆笑だ。普段ならそんな姿はまずお目にかかる事が出来ない。


「ひー、ひー、マジ腹痛い~っ!!」


こっそりと師匠の家の庭を覗くと、白い机に座って3人の男性が談笑していた。


1人は師匠。

今は普段の純白のローブの上に、魔具なのであろう幾つもの装飾をあしらった、豪奢な外套を羽織っている。

普段とは違い重装備である所から察するに、この3人は最近頻繁に赴いているらしい『モンスター討伐(まものがり)』とやらから帰って来た所なのかもしれない。


2人目はクラツキ様。

妖しい真紅の魔力を垂れ流す漆黒の鎧に身を包んだ、師匠と同じぐらいの身長の男性。

師匠の故郷の友人だという方で、初めて集落に訪れて以来、2度ほどこうして遊びに来ている。

この方とのやり取りを見るに、師匠は仲間内ではお調子者の立場であるようだ。今も師匠が何か面白いことを言ったのか、3人で笑っている。


3人目はメタル様。

重厚な青い全身鎧に身を包んだ、2本の魔剣を背負った剣士。

紹介されたのはつい先日。今日は2度目の来訪であるようだ。

師匠とクラツキ様がこの方を『団長(リーダー)』と呼んでいる所を見るに、もしかしたら師匠たちは、故郷では傭兵団のような物を結成していたのかもしれない。

それならば、師匠が様々な戦闘に関する知識を保有していることにも納得できる。


この3人に共通するのが、その存在感の大きさ。

一目見ただけで「桁が違う」と否応無しに理解出来てしまうような、そんな強者の迫力に溢れているのだ。

そんな世界を滅ぼしてしまえそうな神域の存在たちが、まるでその辺にいる若者のように普通に過ごしているのである。

本当にこの集落はおかしな場所だ。いや、というより師匠の故郷とやらがか。

その場所では人々が皆師匠ほどの強さを誇ると言うし、実際に師匠たちはそこでは「その辺にいる若者」に分類されているのかもしれない。


「あはは!」


こうして友人と楽しそうに喋っている時の師匠は、正真正銘の子供状態だ。

微笑ましい姿を邪魔するのが憚れて、私は家の裏側を回って出て行くことにした。








数日後。時刻は夜。

いつもの4人での修行を終え夕食を取ると、私は南の修練場に再び……今度は1人で赴いていた。


「―――【熱源探知の魔法(サーマルヴィジョン)】」


火の探知の魔法で周囲に人がいないことを確認する。

今から私がやるのは魔法の個人修練。万が一にも誰かを巻き込んでしまっては事だ。

ちなみにこの魔法は師匠から10日ほど前に教わった物で、熱源……要するに体温を持つ生物を、視覚により探す事が可能になる魔法だ。

発動すると、視野内に存在する熱源の温度に合わせ、青から黄色、黄色から赤という具合にその場所が光って見える。

その性質上現在の暗闇の中でも問題なく使用でき、更に私が得意とする火の魔法でもあるので、【探知の魔法(ライトエコー)】より遥かに少ない魔力で発動する事ができる。

欠点としては、どうしても光の探知の魔法には性能で劣る事だ。


「ふう……始めますか。―――【火鞭の魔法(プラズマウィップ)】」


練習するのは今日師匠から教わったばかりの、近接戦闘用の火の魔法。

師匠が言うには、魔法使いの弱点である近距離に潜り込まれた場合を想定し、こういった近接魔法も1つは覚えておいた方が良いのだそうだ。

普段の安全圏を保つ戦闘法だけでなく、ちゃんとそれが崩された時の対応策まで教える辺りが師匠らしい。

師匠が普段私達に教えている勝利法の極意は、言ってみれば「相手が何をしてきても大丈夫なように備えておく」という単純なこと。

彼は石橋を叩いて渡る人間だ。ああ見えて、意外と王道を往く人なのである。


「…………くっ!」


多めに魔力を練り上げ、先程見せられた師匠の火鞭の魔法の様子を思い出す。


師匠の指先から出現した、光り輝く白い鞭。それが用意されていたゴーレム5体を、容易く両断した様を。


その完成形を想像し、杖の先から練った魔力を炎の鞭にして捻り出す。


「……う……!」


杖から炎の鞭を出現させることは出来る。が、それはあくまで炎の鞭だ。

炎では物を燃やすことは出来ても、両断することは出来ない。

それに一瞬で炎が空気に拡散してしまい、長時間出現させ続けるのが難しい。


「――――っ!!」


「ボッ!」という音を最後に、炎が霧散してしまった。

夕方の修行を合わせれば既に5回目ほどの試みであったのだが……またしても失敗してしまった。

ひたすらに魔力を注ぎ込むだけでいい他の魔法と違い、この火鞭の魔法は効果が完成するまでの道筋が複雑なのだ。

これは久しぶりに長期戦になるかもしれない。

私がそう気合いを入れ直し、杖を構え直そうとした時だった。


「苦戦してるみたいだな」


少し離れた場所から声をかけられた。師匠の声だ。

振り返ると、師匠が集落の方から歩いて来ている所だった。

先程の探知の魔法に引っかからなかった所を見るに、たった今転移の魔法で飛んで来た所なのだろう。


「師匠……どうしてここに?」


「すぐ近くから魔法の反応がしたんでな。一応見に来た」


師匠の家からだと10町(1km)以上離れている筈なのだが……その程度の距離、師匠からしてみれば「すぐ近く」ということか。


「も、申し訳ありません。わざわざ足を運ばせてしまい……」


「いや、別にいいさ。……それより、火鞭の魔法(プラズマウィップ)も再現が難しいのか?」


そう言って彼は小首を傾げた。

周囲はすっかり暗闇であったが、純白のローブに身を包む師匠は、月光の明かりだけでもよく見えるのだ。


「はい。師匠の見せて下さった完成形を目指して、色々試しているのですが……中々難儀しております」


「ふむ……」


師匠が何かを考えるように黙り込む。考え事をする時に顎を触るのが彼の癖だ。


どうやら私がこの火鞭の魔法の習得に躓くのは、師匠にとっては予想外であったらしい。

火の魔法に高い適性を持つ私で無理なら、ほとんどの魔法使いに無理なのだと思うのだが……恐らく師匠からすれば、この魔法も些細な弱小魔法に過ぎないのだろう。

大魔法使いたる彼からすれば、どこが難しいのかすら分からないほどに容易く扱える魔法なのだ。


「……もし良かったら練習に付き合おうか? 1人でしたいならそれでも良いし」


「えっ……」


思わぬ提案。

一瞬どう返事をするか迷ったが、あることに気付いてすぐに頷いた。


(これはもしや……ふ、『2人っきり』?)


ルルさんなどは午前中、仕事が暇なのをいい事に、師匠と2人で過ごすことを許されているそうだ。

なんと羨ましいことか。少し前までは私がその立場だったと言うのに……。


(とにかく、この機を逃す手はありませんね)


「はい。よろしければ、ご教授願えますか? 1人だと中々上手く行かなくて……」


「そうか。……じゃあ提案なんだが、1つ1つ、各工程に分けて練習するというのはどうだ?」


「各工程に分けて?」


「ああ。完成形を最後に持って来て、そこに至るまでの道を、段階に分けて練習するんだ」


「ほう……」


「試しにまず、杖の先から普通の炎を出してみてくれ」


師匠に言われた通り、魔力を燃料に杖の先に手の平ほどの炎を灯す。


「もっと大きく。人間2~3人ぐらいをまとめて飲み込めるぐらいの大きさで」


言われた通り、注いでいる魔力を更に追加して炎を大きくする。


「あ、すまん。熱かったよな。―――そうか、『えぬぴーしー』は自分の魔法でも『ダメージ(ひがい)』を受けるのか……」


自分の生み出した炎の熱量に耐え切れず、マントで顔を覆った私を見て、師匠が何かを取りだした。

どうやら腕輪か何かのようだ。


「師匠、それは?」


「着用者に熱への耐性を付与する腕輪だ。これからも火の魔法を使うのなら、常に身に付けるようにしておけ」


そうなんでもないかのように説明して、師匠は私の右腕にその腕輪をはめた。

途端にあれほど熱かった筈の炎の熱が完全に遮断され、涼しくすら感じ始める。


「…………」


熱耐性の魔具か。怖いので値段は絶対に聞かない。

私は畑にアダマンタイトの塊が転がっているのを見て以来、師匠から贈り物を貰う際には思考停止すると決めたのだ。

彼は一国を築けるぐらいの財産を、ただの盗難防止の『重り代わり』に使ってしまうような人だ。常識に当てはめるのは不可能である。


「じゃあ分かり易いよう、俺もやるか」


そう言った師匠の手の中に、金属で出来た大きな筒のような不思議な道具が生まれた。


「よし。今のお前の状態がこれだ」


「おおっ」


師匠が手元の部品を弄ると、その筒の先から炎が噴射される。

ちょうど私の出している炎と同じ感じだ。


「これをこうやって集中させる。炎の吹き出し口を絞っていくイメージ(かんじ)だ」


師匠が先程の部品を更に弄ると、筒から噴き出る炎が、噴射の勢いはそのままにどんどんと細くなっていく。

見せられた光景と言われた情景の通りに想像を働かせながら、真似して炎を『絞って』いく。


「……おお!」


すると一点に集中して高温となった炎の色が、赤から青へと変化した。

一般人の多くが知らないだろうが、これは炎の最終状態。真に高温の炎は、赤色ではなく青色なのだ。

私も先代クラリカから受け継いだ知識としては知っていたが、実際に見るのは初めてだ。


「良い感じだ。今度はそれを更に細くしつつ、同時に火力も上げてみろ」


「は、はい」


少し難しい注文だが、やってみる。

炎を『大きくする』のではなく、『強くする』という想像だろうか。

それにしても、炎とはこれ以上に熱くなる物なのだろうか。賢者としての好奇心が湧いてくる。

師匠との修行はこういった新事実が次々と出てくるので楽しい。


「良い感じだ。だがもっと強く。もっともっと」


言われるがまま、魔力をどんどんと追加していく。

すると……。


「―――おお……!」


「よし」


赤色から青色に変化していた炎が、より大きく輝き始めた。

その輝きは、白に近い光。

師匠が使っていた火鞭の魔法の光に似た物だ。


「なんか微妙に違うような気が……『ぷらずま』って溶接的なアレじゃなく、雷の方なのか? でも火魔法だよな? ……まあいいか。ニーナ」


呼び声に顔を向けると、師匠が修行で馴染の鉄の筒を持っていた。


「その炎でこれが切断できるか、やってみろ」


「は、はい」


言われた通りに杖を向ける。

師匠が火傷する心配はしない。彼は私の全力の魔法を受けたとしても、痛みすら感じないような人なのだから。


火鞭の魔法……というより火()の魔法という見た目の炎で、鉄の筒に撫でるようにして触れると、面白いように容易く両断出来てしまった。


「おお……」


「ふむ……いけたか。ならいいや。……にしてもこうやって見ると、これはこれで1個の魔法として使えそうだな。火鞭の魔法(プラズマウィップ)の方が射程は長いが、街中や狭い所で振り回すなら、こっちの方が良いかもしれん」


「はい、そうですね。周囲への影響も少なそうですし」


火鞭の魔法は近接魔法とは言っても、鞭という形状の性質上、射程がかなりの長さを誇る。

そしてそれと同じく、振り回して使う武器だという性質上、欠点として周辺への被害も甚大なのだ。

近接魔法と言うよりも、至近距離から中距離までの広範囲を薙ぎ払う魔法と言うのが、正しい所なのかもしれない。

その点この刃状の状態で使えば、射程は短くなってしまうが、代わりに扱い易くはなる。


()()()()的に使い易い訳だ。【風刃の魔法(エアスラッシュ)】と同じだな」


そう独り言のような物を呟き、師匠は納得したようにうんうんと首を振った。

知らない言葉なので咄嗟に理解できなかったが、続いた言葉でなんとなく意味は分かった。

たしかに直線を攻撃する魔法である【風刃の魔法】は使い易い。効果範囲が単純な魔法ほど使い易いという話なのだろう。

師匠などは、本気で魔法を使うと範囲が広すぎて世界を滅ぼしてしまうと言うし……。


「それじゃあ今度は、その状態から形を鞭に変形させる練習をしよう。出来るようになったら、それぞれの工程を繋ぎ合わせる練習。それも出来るようになったら、最後に素早く発動させる練習だ。最終的な目標は、2秒以内に鞭の状態まで持ってくることだな」


「はい、ご指導よろしくお願いします」


師匠に細かいコツを教わりながら練習する。

そのおかげで、完成までに15秒近くかかるものの、ついに火鞭の魔法を習得する事が叶った。

……前から思っていたのだが、師匠には、人に物を教える才能があるような気がする。

恐らく物事への理解が深いことと、師匠の美点でもある相手の気持ちになって考えられる点が、上手く働いているのだろう。

出来ればこの個人授業はこれからも続けて欲しい所だ。……せっかくの2人っきりの機会でもあるし。











~~ルルの20日間~~




『カーテン』の隙間から差し込む光に、目を覚ます。


(朝かぁ……)


「ふぁぁ……」


あくびをしながら寝台から起き上がる。

そのまま目をこすりながら『鏡台』前の椅子にストンと座った。

基本的にボクは寝覚めが良い。一回目が覚めれば、そのまますぐに布団から出られる。

多分、常に癒しの魔法を使ってて、他の人より体が元気だからだろう。


ボクはハーフエルフのルル。

この集落に住み始めてから結構経った。


今やっているのは毎朝の日課。

朝食作りが始まる前に、髪を櫛で梳いて寝癖を直しておくのだ。

ハネットには……あの夜、ボクが思ったみたいに、ボクの髪も綺麗だと思って欲しい。

だからこれは、1日の生活の中で一番重要な仕事なのだ。







たっぷり時間をかけて髪を梳いた後、洗顔や歯磨きを済ませて『調理場』に行く。

たくさんのエルフがいる中、ボクと同じ白い頭を探す。


「あっ。―――ハネット! おはよう」


目的の背中を見つけて声をかける。

ハネットがこっちに振り返った。


「……ああ、ルル。おはよう」


(あ……)


返事をしたハネットの顔には見るからに元気が無く、口数も極端に少ない。

今日は『元気が無い日』みたいだ。


―――ハネットにはこうして、たまに元気の無い日がある。


何故なのかは分からないけど、ハネットは()一番はこうして元気が無いか、逆に凄く元気かのどっちかなのだ。

最初は起きたばかりで眠いからかと思ってたけど……その()を見れば、そんな単純な理由で無い事はすぐに分かった。

それまるで、目を離した隙に、二度と手の届かない遠いどこかに行ってしまいそうな―――。


「…………」


想像して怖くなったからか、無意識の内にハネットのローブを掴んでいた。


「ん?」


ボクに引っ張られて、ハネットがもう1度振り返った。

多分不安そうな顔をしているであろうボクの顔を見て、ハネットが不意に表情を和らげる。


「……どうした? ニーナならもう来てるぞ?」


そう優しく言ったハネットの目は、もうさっきまでの『寂しい目』じゃなくなっていた。


「う、うん……あの、後でまたね」


「ああ」


自分でも何がなんだか分からないけど、とにかくボクの中にあった不安は薄らいだ。

とりあえずもう大丈夫そうだと思い、言われた通りニーナのいる場所……調理場の隅、二度目の参加であるボクら2人の特等席へ向かった。


「おはよう、ニーナ」


「はい、おはようございます。ルルさん」


「ルル、おはよう」


ニーナに朝の挨拶をすると、少し離れた場所からティアも声をかけてきた。そっちにも手を振って返事をする。


「はいはーい、みんな揃ったか? じゃあ今日は…………面倒だからサンマ焼くだけでいいか」


少しして『ホワイトボード』の前に立ったハネットが声を上げた。

見た感じ、もうすっかり普段通りだ。

……何回も料理を教えてるせいで、色々適当になってきてるけど。


「あはは、適当だ」


「師匠は同じことを何度も説明するのが嫌いなようですからね。……その内この家庭科も、私達が教えることになるかもしれませんね」


「ああ、ありそう」


「まあ本来なら、師匠ほどの方が人に料理など教えているという現状の方がおかしいので……むしろ正常な状態に戻ると言うのが、正しいのかもしれません」


「あはは、それもそうだね。変だよね、今の状態」


ニーナと談笑しながら、いつもより遥かに簡単な朝ごはんを作った。

ふふふ、魚を焼くのは得意だよ。何しろつい最近まで、食べ物は全部丸焼きにして食べてたからね。







まだ見ぬ『海』の魚だというサンマ(すごく油が乗ってる魚で美味しい。なぜか王都では見た事がない)を朝ごはんに食べた後、集落の中を散歩して回るハネットについて行く。

これも毎朝のボクの日課。いや、特権と言ってもいいかもしれない。

ボクの仕事場である『診療所』に『患者』さんが滅多に来ないおかげで実現した、夢の時間()()()

少し前はハネットとずっと一緒にいるニーナが羨ましいと思っていたけど、最近は21年経ってやっと運が向いて来たのか、エルフたちの授業で忙しいニーナと入れ替わるようにして、その場所にボクが立つことが叶ったのだった。

ちなみに夢の時間その1は、もう1つの日課である夜の密会だ。つまりボクは昼間も夜もと、1日の中のほとんどをハネットと過ごしていることになる。むふふ。


「今日はどこに行くの?」


「もちろん畑だ」


「あはは、やっぱり」


ハネットは畑が大好きだ。決まった用事でもない限り、最初に必ず畑に行こうとする。

なんだったら最後にもう1度畑に寄るぐらいの徹底ぶりだ。

まあ何でそんなに好きなのかは分からないけど、そもそもボクたちエルフにとっては『畑』って物自体がつい最近まで知らない概念だった。

だからボクらにはまだ分からないだけで、何か魅力があるんだろう。


中央広場から東に向かって、左手に見えてくる花畑から展望台に登る。

初夏の雰囲気を含み出した、そよそよとした風が爽やかで気持ち良かった。


「……平和だなぁ」


ハネットに倣って景色を眺めていると、彼が不意にそう呟いた。

隣に顔を向けると、ハネットは展望台の柵に肘を突いて完全脱力していた。それはもう、中位の魔物であるスライムのようにグンニャリと。


「ふふ、そうだね」


自分の部屋のようにくつろぐハネットの様子もそうだけど、ボク自身ここに来てから、すっかり平和な生活を送るようになったと思っている。


少し前まで、ボクは傭兵だったのだ。

それも大陸最高戦力の1人であるという証の、最上位の。


たった1年という短い期間だったのに、盗賊と戦うこともあれば、ドラゴンと戦うことだってあった。

それは殺し殺されが当たり前な世界。

しかも里から出たばかりのボクは、そんな戦いの世界の常識どころか、人間の世界の常識すら、何一つ持っていない状態だった。

多様な内容を持つ依頼のおかげで生活は不規則で、一息つける時だって、常にティアの情報を集める為に駆けまわっていた。

思い返せば自分でもよく無事だったなと思うぐらいに、大変だった。



それがこの集落に来てからは。

日課がどうとか、散歩がどうとか……恋がどうとか。



―――そよ風が吹き抜ける中、一面に広がる草木や花々が、サワサワと心地いい音色を奏でている。

世界に2人っきりなったみたいな感覚を覚えた。

なんだか無性に切なくなって、勢いに任せて手を繋ごうと思ったけど……駄目だった。

触れる直前どころか手を伸ばす時点で、どうしても尻込みしてしまう。


(もう1ヶ月以上もこうして一緒にいるのになぁ……)


自分からの体の接触は、ボクにとってはドラゴン退治よりも難易度が上だった。


「あ、みんなが来たね」


「そうだな」


ボク達に少し遅れて、畑組のみんながやって来た。

2人っきりの時間は終わりか。結局今日も、勇気は出なかったな。

チラリと横目で窺うと、ハネットは働くみんなの姿を、ただただジッと見つめていた。

それは一昨日や昨日と全く変わらない光景。

うーん、まるでハネット自身も植物になっちゃったみたいだな。


「ねえ、ハネットってさ。いつも眺めてるだけだけど、楽しいの?」


ふと気になってそう尋ねた。

もしかしたらハネットのことをより理解できるかもしれないと、言ってから漠然と思う。


「うーん。どっちかと言うと、眺めるのが楽しいっつーより、ボーっとするのが好きなんだ。のんびりした感じがして」


畑についての魅力じゃなく、ハネットからはそんな答えが返ってきた。


(のんびりした感じ、か)


言われてみれば、ボクも今この空間に、今この時間に、確かに安らぎを感じていた。

そしてよく考えてみれば、ボクの人生、『安らぐ』なんてことは少なかったように思う。

里では常に針のむしろだったし、里を出てからは先ほどの通りだ。

常に『焦って』いる。

そんな感じの人生だった。


でも今のボクに、その焦りは無い。

目の前の自然を……頬を撫でる風を、目に映る長閑さを。

ただ自然体に、ただあるがままに。

ただただ安らかに時間が過ぎていくことを、楽しんでいる。楽しめるように、なっている。


―――そんな心地いい『のんびり』は、隣いるこの人がくれたのかな。


(ありがとね、ハネット)


心の中で、隣でボケッとしている彼にお礼を言った。



「……よし、次はギルの陣中見舞いにでも行くか」


「うん」


北の街道へ向かうハネットの後ろについて行く。


「ふんふん~♪ 骨粗しょう症~♪ こつしょしょんしょん~♪」


途中で拾った木の枝を上機嫌に振り回しながら、変な歌を歌い始めたハネット。


(あ、また変な歌うたってる。あはは、ていうか本当に子供みたいだなぁ)


彼が口ずさむ歌はいつも変な歌だ。故郷の言葉なのかな。

それにしても、ハネットがボクたちの前でこんなに自然体でいるのは珍しい。

基本的にハネットは、クラツキとかいう友達たちの前とは違い、ボクらの前ではかっこつけて大人っぽく振る舞っているのだ。

朝はあんな感じだったけど、今は機嫌が良くなったのかな?


(ふふ、良かった。ハネットにはそうやって笑ってて欲しいな)


ハネットの機嫌が良さそうで、なんだかボクも機嫌が良くなった。


「ねえ、それって何の歌なの?」


「ん? 変な歌」


ハネットの変な歌は、本当に変な歌だったのか……。

というかなんでそんな変な歌を上機嫌に歌っていたんだろう。

知れば知るほど、謎が増える人だった。











~~ティアの20日間~~




「おはよう、ニーナ」


「はい、おはようございます。ルルさん」


『調理場』の空いていた席でハネット様の指示があるまで待機していると、賢者様の隣にルルがやって来た。


「ルル、おはよう」


「あ、おはようティア」


少し離れているルルに声をかけると、にっこり笑って手を振って来た。

うーん、女の私でも見惚れるぐらい可愛い。昔から里の中でも特に可愛い子だと思ってたけど、素直に笑うようになって更に可愛くなったわ。


「はいはーい、みんな揃ったか? じゃあ今日は…………面倒だからサンマ焼くだけでいいか」


『ホワイトボ-ド』という名の白い大きな板の前に立つハネット様が、今日の指示を始める。


(……良かった。ちょっと元気になったみたい)


「―――あはは、適当だ」


「師匠は同じことを何度も説明するのが嫌いなようですからね」


考え事をしていたら、『エプロン』を着けて準備しているルルと賢者様の雑談が聞こえてきた。

そういえば前にお茶会で聞いたけど、ハネット様はこの『家庭科』という料理の『勉強』を、新しい住民が増える度に一から教え直しているらしい。

たしかにそれはちょっと大変かも……。


「まあ本来なら、師匠ほどの方が人に料理など教えているという現状の方がおかしいので……むしろ正常な状態に戻ると言うのが、正しいのかもしれません」


「あはは、それもそうだね。変だよね、今の状態」


ルルはこの集落に来てから、本当によく笑うようになった。

その変化に暖かい気持ちになるのと同時に、チクリと心のどこかが痛んだ。気づかないフリをして、ハネット様の指示に意識を戻す。


「―――あー、海の魚の中でも、このサンマみたいな魚のことを『青魚』っつってな。理由は……ほら、なんか……青いだろ? なんかそんな感じだ。特徴は……『美味い』。大体そんな感じの種類、みたいな」


諸々の原因であるハネット様は、その適当さ加減が最高潮に達していた。

あまりにも適当な解説に、ルルだけでなくエルフの何人かもクスクスと笑っていた。








学校が終わり賢者様の家に向かう。すっかり日課になったお茶会だ。

普段は賢者様と一緒に向かうが、今日は先に他の『先生』たちと『授業』の打ち合わせをしてから帰るということだったので、1人でやって来た。

今頃お父さん達他のエルフのみんなは、お仕事かな。

この集落では、別に全員が働かなければいけない訳ではない。北の村っていう所から来た人達も、何人かは私みたいに家の仕事に専念している。それはエルフのみんなも同じだ。

昔私と一緒に買われてきた奴隷さん達だけはちょっと特殊だけど、それ以外の人達は、元々の生活に極力近い状態で過ごす事が許されているのだ。


「ル―――」


『生垣』を超えて、先に来ているであろうルルに声をかけようとした。

でもその声は、椅子に座っていたルルの顔を見て引っ込んだ。


……ルルが1人でニヤニヤしてる。


この集落に来てからルルが見せるようになったもう1つの顔だ。

大方、ハネット様のことでも思い出しているのだろう。


悪戯を思いつき、精霊たちに頼んで足音を消して貰った。まだこちらに気付いていないルルにバレないよう、大きく回ってから背後に近付く。


「―――ルル!!」


「うわあああっ!?」


突然後ろから抱き着かれたルルが、見たことも無いぐらいに驚く。

面白くてケラケラと笑ってしまう。


「てぃ、ティア!? もう!! なんなのさ!!」


ルルがぷんぷんと怒る。長い付き合いだけど、怒った顔は初めて見た。

珍しい一面が見れて大満足だ。


「ふふふ、ルルこそ1人でニヤニヤしてたけど、ハネット様と何か進展でもあった?」


「えっ……あ、その、それは……」


油断して出てしまっていた自分の痴態を見られて恥ずかしかったのか、ルルが白い顔を上気させた。

でもその真っ赤な顔は、何かに気付いたような顔になってからストンと元の色に戻る。むしろ心なしか表情が暗くなった。


「まあ、進展なんて何も無いんだけどね……。―――この1ヶ月半、ずっと」


「そ、そう……………………ごめん」


「ああ、うん……」


重い空気が庭を支配した。






「どうも、少し遅れてしまいました」


2人して黙ってお茶を飲んでいると、賢者様が遅れて到着した。


「? 何かありましたか?」


私達の様子に何か不穏な物を感じたのか、賢者様がそう尋ねてくる。


「…………」


「あ、いえ、なんでもないです」


ルルが難しい顔で黙り込んでいるので代わりに応答した。

「……そうですか?」と一言だけ言って賢者様も椅子に座る。

これと言って特に会話も無く気まずいお茶会が進められていると、不意にルルが口を開いた。


「―――ねえ」


何を言うのかと、内心恐々として耳を傾ける。

もしもルルがハネット様との恋路関連の発言をしたら、この場はどうなってしまうのだろう。

賢者様とルルという、ハネット様を取り合う女同士での修羅場が展開されてしまうのだろうか。



「ハネットってたまに、朝会った時元気が無いよね」



全然違う話だった。

思わずズッコケそうになる。

あの会話以来黙っていたから、当然それに関係したことを考えているんだと思っていたのに……ルルの中では、とっくに別のことに関心が行っていたようである。


(なんだかハネット様みたいね)


思考の転換について行けない感じがとても似ている。

というかよく考えると、ハネット様とルルって発想や物の考え方が似てるわよね。

果たして似た者同士というのは伴侶として相性が良いのか悪いのか……。


そこまで考えて、場の雰囲気が重いままであることに気付く。


―――そういえば、ルルが今言ったのは、とても重要な話題ではなかったか?

私自身、気付いていても、なんとなく話題に出すことを避けてしまっていたほどの……。

賢者様を見ると、彼女もその話題に対して苦い顔をしていた。私やルルだけでなく、賢者様も『そのこと』は気になっていたのだろう。


「……はい。確かに、たまに極端に疲れた様子の時がありますね」


「う、うん……」


賢者様が肯定したので、私も頷いておく。

私が朝、ハネット様が『ホワイトボード』の前に出た時に感じた安堵。

それは直前に会った彼の様子に、()()()()()()を覚えたからだった。


「やっぱりあれだけ元気が無いと気付くよね。……でさ。―――なんでだと思う?」


その質問に、私も賢者様も黙り込む。


―――あれはさぞ……生きているのが、辛いのだろうな。


何度も思い出したお父さんの言葉。それを2人にも言うかどうか悩む。

私には正確に意味を把握することは出来ないけど、もしかしたら2人なら、その言葉から何かに気付いてくれるかもしれない。


「……恐らくですが…………故郷で何か、あったのではないですか?」


私より先に、賢者様が口を開いた。


「故郷で?」


「はい。お2人とも、師匠が1日の内、たまに集落内から姿を完全に消している瞬間があるのはご存じですか?」


「え?」


「ん? 北の村に行ったり、あのクラツキとか団長って人たちとどこかに出かけたりしてること?」


賢者様の言葉の意味を図りかねていると、ルルが私の考えていた疑問を言ってくれた。


「いえ、もちろんそれもなのですが……。例えば深夜から朝方までなど、師匠はこの集落から……いえ、恐らくこの大陸から、完全に姿を消している時間があるようなのです」


賢者様が真剣な顔でそう言った。

この大陸から完全に姿を消している時間がある?


「え? そうなの?」


「はい。例えば……お2人が知っているかは分かりませんが、基本的に師匠は、お宅に伺えばいつでもすぐに対応に出てきて下さります」


ハネット様の家を訪ねたことなど1度も無い。ルルの方に目を向けると、目が合ったルルは1つ頷いてから賢者様に向き直った。


「それって朝の迎えみたいに約束してない時でも、そうだってこと?」


「はい。例え本人が用事があって手が離せない時でも、魔法の力なのか玄関だけは独りでに開くのです」


「へえ~」


「そこで本題なのですが……師匠は夜の10時以降ぐらいになると、呼び鈴を押しても一切の反応をして下さらなくなるのです。それは夜明け前など、朝の早過ぎる時間も同じです」


「……あの、賢者様は、なんでそんなことを知っているんですか?」


まるで調べ尽くしたかのような自信ある言い方に違和感を覚えて尋ねた。


「何度か実験しました」


さも当然であるという風にそう言われた。

そんな悪戯みたいな事をして、もしハネット様がいたらどうするのかしら……。


「は、ハネット相手によくやるね……」


ルルも若干引いている。

私も久しぶりにこの人が賢者と呼ばれる『()()()()()』の1人なのだということを思い出した気分だった。


「それで理由を考えたのですが……恐らく師匠はその時間帯、あの家にはいらっしゃらないのではないでしょうか。転移の魔法などもありますし、故郷に帰っておられるのかもしれません」


「故郷に帰ってる、か……。単純に、寝てて気づいて無いとかじゃないの?」


「逆に聞きますが、師匠のあの身体能力で、寝込みに鳴り響く呼び鈴の音に気付かないなんてことが、あると思いますか?」


「……無いね」


「それにもし家の中にいらっしゃって、呼び鈴の音にも気付いていたとしたら、師匠の性格上、出てこないなんて選択肢を取られる訳がありません。何か緊急事態が起きたと思い出てくるか、寝ている所を起こされた苛立ちで文句を言いに来るかする筈です」


賢者様の言ったことは、どちらもありありと想像できた。

「どうした、何かあったのか?」と頼りになる凛々し……頼りになる顔で出てくるか、「うるせーわボケ! 殺すぞ!」と怒って出てくるかのどちらかだろう。


「たしかに……」


「ですから可能性としては、あの家にいらっしゃらないというのが一番高いのです」


「でも時間が時間だよ? ハネットの故郷だって夜なんだから、何も出来ないんじゃないの? それともわざわざ寝る為だけに帰ってるって言うの?」


「いえ、実はこの世界には『時差』という物がありまして……師匠から聞いたかもしれませんが、この世界は円盤状ではなく球体です。そして我々から見ると太陽は大地の周りを回っていますので―――すいません。分かり易く言えば、ここが夜だったとしても、別の国や大陸の外ぐらいに遠く離れた場所だと、そこも夜だとは限らないのです」


そう言えば昔、ハネット様に買われてこの集落に初めて来た時、そんな感じの話を賢者様とハネット様がしていたかもしれない。


「よ、よく分からないけど、そうなんだ?」


「はい。ですので例えここが深夜であったとしても、師匠の故郷は昼間である可能性もあるのです。いえ、師匠の故郷に該当しそうな国は、大陸全土を把握している私の知識の中には無いので、確実に大陸の外にあるのでしょう。島国という話でしたし。そしてそれだけ離れた場所ならば、その『時差』もかなりの物になるので、最低でも数時間はズレている筈です。つまりここが夜の間は、むしろ師匠の故郷は昼間の可能性の方が高いのです」


「う、うーん」


「すいません、説明が長くなってしまいました。とにかく師匠がその時間帯、故郷に帰還なさっている可能性が凄く高いということだけ分かって頂ければ大丈夫です」


「う、うん、分かった。…………あ、だから『故郷で何かあったから』、なのか」


「はい」


なるほど、その仮定が真実だとすれば……ハネット様の朝の様子には、その直前まで彼が故郷の地で何をしていたのかが関係しているという訳ね。


「まあ実際には()()()()()もありますが……そちらはかなり荒唐無稽な話ですので……」


そう言って賢者様は、少し考えごとをするように目を細めた。そして次の瞬間、大事なことを思い出したというように目を開いた。


「あ、それで話の続きになりますが―――多分師匠にとってその故郷というのは……あまり、好ましくない場所なのではないでしょうか」


「…………」

「…………」


賢者様のその結論に、私もルルも黙り込む。

だって、それは―――。


「……つまり、ハネットに元気が無い時は……故郷に帰った後だからってこと……」


―――という訳だからだ。

それはまるで、まるで……。



……里にいた時のルルと、同じだった。



そしてそれが違うと否定するだけの材料を、私達は持たない。

むしろ賢者様がその、「彼にとって故郷は好ましくない」という結論に至った理由の方こそが理解出来た。

多分これは、彼と浅くない関係を築いた人間なら、誰でも共感できるだろう。


……それは彼が時折見せる、『あの目』を見れば。






―――あれはさぞ……生きているのが、辛いのだろうな。






その言葉がふと蘇って、ゾッとした。


―――ここでの穏やかな生活の裏に、彼はもう1つの人生を持っている。


それは彼のあの真っ黒な瞳の理由に……『闇』の一端に触れてしまったかのような感覚だった。



「―――帰らなければ、いいのに。ずっと、ここにいれば……」


ルルがそうポツリと零した。

その赤い瞳は白い『ティーカップ』を見つめて揺れている。

かつての自分と今の自分。そして彼とを、重ねているのだろうか。


「……何か、理由があるんでしょう。それが出来ないような、理由が。そうでなければ、あんな……」


それっきり賢者様も黙る。

その顔は……悲痛に、歪められていた。

その表情には覚えがある。あれも確か、私がこの集落に初めて来た時のことだ。


「彼が……ハネット様が、この大陸にやって来たのは……」


俯く私の口は、その言葉を発していた。


「……『逃避』、なのでしょうか」


「……そうなのかも、しれません」


私の言葉に、賢者様ががポツリと返す。


それは故郷の地からなのか。

それとも、現実からなのか。

それとも―――。


重苦しい空気の中、私はふと空を見上げた。

話の最中、ずっと下を見ていた私達は気付かなかったが……。

……私達の頭上には、どこまでも澄み渡った、綺麗な青空が広がっていた。

どこまでも澄んだ、青い青い、()()()()のみで描かれた空が。





()()()()()()()()()()()()()()()()()()()




……私にはそれが、まるで何かの皮肉のように見えた。



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