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幕間 ファーストコンタクト

2016.6.12

王国側視点です。


「ゼスト様、ファルス宰相がお呼びです」


戦士団の訓練を指導していると、この王宮の執事の1人に声をかけられた。


「ギルスター様が?」


「はい。至急、執務室まで来るようにとの仰せです」


「分かった。ありがとう」


戦士団に次の指示を出し、ギルスター様の執務室に出頭する。

侍女に室内に招かれると、衛兵長のサンヌもいた。


「戦士長。『例の方』が到着になった」


例の方。思い当たるのは1人しかいない。

10日ほど前に土の賢者クラリカ様から届いた書状に記されていた人物。

あの千年に1人と言われるクラリカ様をも超えるという、神話の域にある大魔法使いだという。

クラリカ様と俺は一回りも二回りも歳が違う。

下手したら同じぐらいの娘が自分にいてもおかしくはない。

だが、そんな彼女に戦いを挑んだ場合、俺は100回戦って100回負けるだろう。

彼女こそが、現大陸最強の魔法使い。

ひとたび杖を振れば『魔族』の大群は屍に変わり、膨大な知識で国に助言を施し、すぐれた人柄で人々の心を救う。

まさに英雄譚の登場人物。

あの『勇者』が再三にわたって仲間にならないか勧誘しているが、徹底的な個人主義で絶対に首を縦に振らないという。

その彼女が、自ら師事を願ったほどの、更に上位の大魔法使いが存在する。

明らかに作り話だ。

なんだったら彼女の存在の時点で作り話みたいな物だ。

だがその書状が本人の直筆であることと、同時期に届いたその大魔法使いに助けられたという村からの報告、更にゼルムスからも本人がそう説明していたと報告が届けられており、信憑性は折り紙つきなのだ。

城内の上層部は慌てて会議を開き、是非その大魔法使いとも縁を結ぼうという足運びとなった。

クラリカ様への取り成しの書状が送られたのが7日前。

予定では返事の書状が来るのがもう7日後以降という話だった。

それが届いたと思われる日に本人がやってくるとはどういうことだろうか。


「早過ぎませんか」


「ああ、早過ぎる。しかも書状はちゃんと持って来ているんだ」


宰相は今日向こうに着く予定であった書状を、その手に持っていた。

サンヌが言うには、付き添いのクラリカ様本人が「この書状の件で来た」と言って参上したと言うのだ。


「まさか例の方は、転移の魔法が使えるのでは?」


「……そうかもしれん。なにしろあのクラリカ様より強大な魔法使いだ。衛兵長、例の方はどんな方だった?」


「はい。例の方は名をハネット様というそうです。クラリカ様と近い年代の若い男性でした。見た目の方は白い髪に白い肌、白いローブという白一色に統一されているのが印象的です。またそのローブは非常に美しく、これまでに見たこともないほど高級な物であることが一目で分かります」


クラリカ様と同年代だと?

いよいよ有り得ない話になってきた。


「ふむ……君は()の方をどう思った?」


「そうですね……見た目は非常に特徴的でしたが、雰囲気はごく普通の少年といった感じでしたね。服装的に、圧倒的な財力を持つのであろうことだけは確定のようですが……」


「そうか……戦士長はどう思う?」


「今までに聞いた情報だけで言わせて貰えば、正直胡散臭いという他ありませんね」


「まあそうだな……だが、彼が関わったことは全てが異常だ。今回の早過ぎる到着についてもな。とにかくまずは会ってみよう。2人には、私の護衛を頼む」


「はッ! お任せ下さいッ!」






俺が先頭になり、応接間の扉をノックする。

俺が最初なのは、俺がサンヌより強いからだ。

不意打ちされる可能性が一番高い最初の入室は、護衛が務めるのが鉄則だ。


「お入りください」


クラリカ様の声だ。本当に本人らしい。

俺はいつでも剣を抜けるよう扉を開け、中に入る。




―――白。




クラリカ様の隣に座った少年は、サンヌの報告から想像していたよりも更に白かった。

白い髪に、不思議な色合いの白い肌。

そしてあまりに美し過ぎる純白のローブに身を包む。

サンヌが財力がどうのと言っていた意味が分かった。このローブは明らかに王族の服より上。一体これ一着で金貨が何十枚飛んでしまうのか。

色と服装の次に、何より一番最初に魔法使いの武器である杖を探す。

しかし彼はどこにも杖を持っていない。

隣のクラリカ様は大きな杖を今も抱えているのに。

サンヌと2人で、ギルスター様をいつでも守れる位置に立つ。


「ハネット様、クラリカ様。遠路はるばる、よくお越しして頂きました」


ソファーに座って開口一番、ギルスター様が労いの世辞を述べる。


「いえ。今回は書状の依頼通り、師との間を取り持たせて頂きました。陛下への謁見はいつ頃になりそうですか?」


冷静沈着なクラリカ様にしては、珍しく会話を焦っている印象を受ける。

何か隠し事があるのか?

注意深く見ていて気付いたが、クラリカ様は前に見た時より更に美しくなられている。

元から王侯貴族のような美貌だったが、今の彼女はそれすらも上回っているようだ。


「申し訳ありません、クラリカ様。その前に自己紹介を。……お初にお目にかかります、ハネット様。私は国王陛下を補佐させて頂いております、ギルスター・ジーク・ファルスと申します。以後よろしくお願い致します」


ギルスター様は丁寧に自己紹介をした。

クラリカ様の話を遮ってまでの媚の売り方。

王国がクラリカ様から彼を最高位に置き換えたことを明示している。


「そうか」


しかしそれに対する反応はただの相槌。

自己紹介を返すことも、今後についての世辞すらも無い。

空気の凍った部屋の中、難しい顔をしていたクラリカ様が誰よりも先に口を開く。

やはり彼女は頭の回転が早い。


「宰相、今回の参上について、師匠は条件を付けておられます。その条件をそちらが飲むまで、師匠と友好的な縁は結べない物と思って下さい」


「条件、でございますか?」


国王直々の招待に対し、条件を付ける。

なんという強気な出方だろう。

賢者という特殊な立場であるクラリカ様ならともかく、彼は立場的にはただの魔法使いであるのだ。

この穏やかな雰囲気を持つ少年は、見た目と裏腹に豪胆な性格をしているのかもしれない。


「ええ。今回の招待を受ける条件は―――」


「ニーナ、やめろ」


その条件とやらをクラリカ様が説明しかけたが、少年は間髪入れずにそれを遮った。


「し、師匠?」


困惑。

弟子でありこの場を取り持つために付き添っているクラリカ様ですら、彼の真意が掴めないらしい。


「その件は、王と直接会った時にだけ話そう。それまでは秘密だ」


少年は簡潔にそれだけ言った。

どういう意図での発言なのか、戦士の俺では一切判断がつかない。


「……そうでございますか。理由をお聞きしても?」


「駄目だ」


ギルスター様から複雑な気配が伝わってくる。

困惑と怒り。

それを取り繕おうとしたための一瞬の気配の歪み。

命のやり取りで研ぎ澄まされた俺の第六感が、彼の心情を読み取った。

しかし流石は長年腹芸で生きてきた方だ。

その前の会話で得た情報から、すぐさま探りを入れに行った。


「陛下と直接お会いになった際には……ということは、陛下との会合自体は受けて頂けるということでしょうか?」


「そういうことだ。今日はその準備をするよう言いに来ただけだ」


つまりは書状の代わりに自分が出向いたということらしい。

やはり豪胆な性格に思える。


「……なるほど、そうでございましたか。では会合の日時ですが、今日から4日後の午前ではどうでしょうか?」


突然の来訪だったので、当然陛下は予定が空いてない。


「師匠」


「それでいい」


向こうも理解しての来訪だったらしい。

もしも本当に転移の魔法が使えるのなら、それまでは家に帰ればいいということだろうか。


「では、そのようにお願いします。私たちはそれまで、城下町の宿『エルフの羽衣亭』に滞在していますので」


予想に反して普通に滞在するつもりらしい。

先程までの高圧的な態度と比べると不思議な選択だ。

なにか王都自体に別の用があるのかもしれない。


「こちらにご滞在されてはどうですか? 当然最上のおもてなしをさせて頂きますが」


「それは駄目だ」


少年は先ほどからギルスター様の言葉を一刀両断で切り捨てる。

相変わらず理由も言わない。

よく曾祖父ほども歳の離れた相手にこんな態度でいられるものだ。

年齢はともかく、その肩書きには似合った風格かもしれない。


「……失礼いたしました。では4日後の午前に、宿まで使者を送ります。あとはその使者がご案内致しますので」


「そうか、じゃあ俺たちは帰るとしよう。ニーナ」


「は、はい」


話が決まり次第、もう用は無いと言わんばかりに席を立った。

案内係兼諜報員としての仕事を任されたサンヌが前に出る。


「門までわたくしがご案内致します」


「ああ、頼む」


断るかと思ったが、案内は素直に受け入れるようだ。

サンヌ、クラリカ様、少年の順で扉に向かう。

その背中はがら空きだ。

クラリカ様の方が遥かに攻めにくそうに感じる。


いつものやつをやってみようか?


強者というのは例外なく殺気に敏感だ。

そして強者であれば強者であるほど鋭い反応、または独特な反応を見せる。

多くの強者と相対してきた俺は、その反応から相手の力量をある程度は見抜ける。

……よし、やってみよう。

特別な反応を見せれば本物、何の反応も示さなければ口だけの可能性が高い。

俺はその少年の白い背中に殺気を叩きつけようとして―――。



―――その瞬間、いつの間にか少年が俺に振り向いていた。



(……は? なっ!? い、今、一体どうやって―――)


ずっと見ていた筈なのに、いつこちらを振り向いたのかが分からなかった。しかも……。




「お前、なぜ今俺に敵意を持った?」




絶句。

まるで頭の中を覗かれたかのような嫌悪と戦慄。


「背後を向いた瞬間だったという事は、俺を背中から斬ろうとでもしたのか?」


ハッタリではない。完全にバレている。

一瞬にして体に鳥肌が立つのを感じる。

俺は今、まだ殺気を放ってはいなかった。

ただ考えただけ。

なのにそれに反応された。

まるで本当に俺の頭の中が見えているかのようだ。

振り返ってからこちら、彼は一度も瞬きをしていない。

第一印象と真逆の真っ黒なその瞳で、こちらをじっと見つめ続けている。

その漆黒の瞳が、俺の瞳を通して闇を中に送り込み、頭の中を探り取っているのだろうか。


「ゼスト?」


少年の瞳に射抜かれて棒立ちの俺を、ギルスター様が名前で呼んだ。


「ゼスト様」


サンヌの凛とした声が耳に届く。


「正直に話し、謝罪を」


サンヌは俺の癖を知っている。実際に俺にやられたことがあるからだ。

彼の状況に適した簡潔な言葉に、正気を取り戻した。


「も、申し訳ない! ……殺気を放ち、貴殿がどう反応するか試した」


「なぜだ」


「本当に申し訳ない。戦いに身を置く癖です。その反応により、どれほどの強者か測ろうとしました」


正直に答える。とてもじゃないが、この相手に嘘が通用するとは思えない。

そして頭を下げたことで、初めて気付いた。

手が震えている。

戦場で鍛えられた俺の肉体は、この先に待ち受ける圧倒的な「死」の予感を、いち早く感じ取っていたのだ。


少年は俺の謝罪を聞くと、納得したのか興味を失ったのか、その強烈な視線をこちらから外した。

そして事もなさ気にこう言ったのだ。


「どうせだったら次からは剣を取れ。こうして問答すると―――殺すより、時間がかかる」


その言葉で、あの闇の目の正体に気付いた。

―――虫を見る目。

少年は……いや、『彼』は、王国の戦士最強であるこの俺のことなんて、なんとも思っていない。

まるで視界の隅に1匹の蟻を見つけたぐらいの瞳。

本当に一切の興味が無いのだ。

さっき彼の頭にあったのは、俺を許すか許さないかではなく、殺すか殺さないか。

邪魔だったら排除するし、そうでなければそもそも存在すらどうでもいい。

さっきギルスター様の自己紹介を軽く流した理由も同じ。

彼にとって、自分以外の全ての物が無価値。

ただただどうでもいい。

名前など、覚える気が起きないのだ。

道端の石ころに、1つ1つ名前を付ける者などいない。

それはつまり、彼には俺たちが石ころと同じに見えているということ。

……確信した。

彼は、尋常ではない。

戦えば、自分が死ぬ瞬間すら知覚できずに殺される。そんな想像が脳裏をかすめる。

これまで何度も俺を助けてきた戦士の勘が叫んでいる。

彼は、絶対に喧嘩を売ってはいけない存在だと。


「さて、じゃあ案内を頼む」


「……あ、師匠。先に行って下さい。すぐに追いかけますので」


「余計なことは喋るなよ」


「はい。心得ました」


サンヌを促して彼は部屋を出て行く。

絶対的強者から解放されて、心が急速に軽くなるのを感じる。

いつの間にか完全に彼に飲まれていたらしい。

余裕が生まれて、視界の中の光景をやっと理解する。

クラリカ様が鋭い視線で俺を睨んでいたのだ。


「あなた達は、今、死んでいましたよ」


隣でギルスター様が息を飲む。

俺はその言葉で確信した。

彼女は彼の戦いを……いや、蹂躙を、その目で見たのだ。

その結果、その足元に跪くことを選んだ。


「師匠は今、あなた達を殺しませんでした。……だからこそ。次は必ず、あなた達を殺すでしょう」


そう言い残して彼女は部屋を出て行った。

後には静かな部屋だけが残る。


「戦士長。どう思う?」


ギルスター様が、再び俺の見解を尋ねた。


「……本物です。俺では百人いても相手にもされず殺される想像しかできません。正真正銘の化け物だ」


「そ、それほどか」


「はい、確実に。見逃してくれたのは、私があまりにも弱過ぎるので、どうでもよかったんでしょう。……しかしそれでも、目の前を二度、羽虫が飛べば」


「……叩き潰すという訳か。それが、最後の忠告の意味か……」


「ギルスター様の方は、彼に何を見ましたか?」


「うむ。性格は確実に悪いな。私が困惑する度に楽しそうにしていた。その他は何も分からん。何も教えてくれなかったからな。……その何も分からんというのが、不味い」


「条件……。何を要求するつもりでしょうか」


「想像もつかんな。執拗に隠すというのが特に不気味だ。陛下に直接伝えるというのも怖い」


「あ、そういえば、来る前に侍女がいましたね」


俺は彼に給仕をしていた侍女2人を連れて来た。

ギルスター様が詳しい話を聞き出す。

侍女たちが言うには、彼はクラリカ様と気安くお茶を楽しみ、茶菓子が不味いと言って何も無い所から別の菓子を出したという。


「空中から物を取り出す……いや、それとも生み出したのか? どちらにせよ、魔法使いであるのは確定のようですね」


「杖は持っていなかったが、別に杖が無くても魔法が使えなくなるという訳ではないしな」


「私が思うに、彼はクラリカ様とすら桁が違います。恐らく杖など無くても困らないほどなのでしょう」


「君は彼のお方を相当に高く評価しているのだな」


「……ギルスター様。はっきり言います。彼は、確実に『勇者』より強いです」


「なんだと!?」


俺のその評価に、ギルスター様が珍しく我を忘れた。

それも当然だ。下手すれば世界の危機だ。


「そ、そんな……ありえない」


「そう、あれは有り得ないほどの力を持つ存在です。神域の大魔法使い。まさに神の領域かと」


「い、一体、それほどの存在が、どこに隠れていたというんだ……」


「あの方なら存在を隠す魔法に長けていても不思議ではありません。それどころか、実際はいくつなのかも分かりませんね」


「なるほど……、見た目通りの年齢ではない可能性もあるのか。もしかして、エンシェント・ドラゴンか?」


「……その可能性は高いですね。私のことを虫を見るような目で見ていました。そもそも同族ではないのかもしれません」


「そうか……。いや、しかし、我々には救いの女神がついている」


「ほう」


「クラリカ様だ。彼女の存在こそが、彼のお方を味方に付ける方法があると証明している」


「……! なるほど」


そうだ。

彼女は弟子として受け入れられ、先程の侍女たちも彼とは良好な関係であるように見えたと言っていた。

そして最後の忠告。


―――師匠は今、あなた達を殺しませんでした。……だからこそ。次は必ず、あなた達を殺すでしょう。


あれは彼のことをある程度理解していなければ出てこない言い回しだった。


「やはりクラリカ様は素晴らしいお方だ。いつだって絶望の中に一筋の希望を示して下さる」


国の方針としては、クラリカ様を見習って、彼から敵意を向けられぬように立ち振る舞うことが決定した。

退室して訓練場に戻る間、来たるべき4日後を想う。


(そういえば、トリスタンの奴は彼をどう思うかな……)


4日後同席するであろう好敵手(ライバル)の、彼についての意見が聞いてみたい。

雲一つ無く晴れ渡った空を見ながら、まず最初にそう思った。











「あら? あれはもしかして……」


廊下を歩く最中、ふと窓の方を見ると、その先に広がる庭園に見知った後ろ姿を見つけた。


「おお、賢者様ですね」


隣のレヴィアも窓の外を見た。

彼女は私専属の護衛として付けられている女騎士だ。


「お隣の殿方はどなたかしら?」


「はて、賢者様が誰かと一緒にいるのは珍しいですね。それも男性とは」


私たちが知る限り、賢者様は個人で動かれるのを信条にしている筈。

それはもう、あの『勇者』様からの再三のお誘いすら断られるぐらいの徹底ぶりだ。

その彼女が誰かと連れ添い歩くだけでなく、そのお相手が殿方とは。

明日には街中のウワサになってしまうかもしれませんね。


「男性の方は真っ白ですね。後ろから見ると黒一色の賢者様と対照的です」


「ふふ、そうね」


遠くて判断が付かないけど、殿方の服装も魔法使いのローブのような物に見える。


「もしかして、お弟子さんを取られたのかしら?」


「なんと。そうだとしたら、素晴らしいことです」


賢者様は史上最高と謳われる方だ。

その賢者様が認めたお弟子さんなのだとすれば、きっとあの方も素晴らしい才能を秘めているのだろう。

お父様などは、なんとかしてこの王国に縛れないかと考えられるのでしょうね。

それこそもしかしたら、その相手として私が宛がわれることもあるかもしれません。


「姫……」


レヴィアが私を見て悲しそうな顔をしている。

彼女との付き合いは長い。恐らく私の考えていることが分かってしまうのだろう。

この幼馴染さんは困った物ね。でも、私を心配してくれて、嬉しいですよ。


「ふふ、大丈夫よ。あくまで可能性の話ですもの。それに賢者様が認めたお人なら、きっと素晴らしい方だわ」


「そうですね。むしろ他の者に嫁ぐより、安心かもしれません」


しばらく2人で、小さくなっていくお2人の姿を眺めた。

政略結婚は王侯貴族の常ですもの。

それに側室の娘である第三王女の私には、それぐらいの使い方しかないのも事実。

高望みなど、今までにしたことはありません。

……ただ。

宛がわれた方が……素敵な方だと、いいですね。





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