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リコ

作者: 王生らてぃ

 今年も雪が降った。というか、雪が降らない年なんてない。ただ今年はちょっとだけ遅かった。十二月の頭。いつもなら、十一月の半ばにはすっかり積もっていて、この時期にはもうかまくらを立てている。お屋敷の縁側からはまだ、土の色が透けて見える。

 今日は特別、冷え込む日だった。しんしんと降り積もる向こう側に見える雑木林の緑色は一層深みを増して、けもの道には小鳥の一羽もいない。ただ、風の吹きつける音が遠くから響くばかりで、小鳥の鳴き声も、動物の遠吠えも、まるで山が死んでしまったみたいだ。だけど、驚いたりはしない。山は毎年、眠ったように死んで、また生き返る。

「そこにいたのね、小春」

 振り返ると舞さんがそこに立っていた。舞さんは私たちのお母さんで、白いエプロンを付けて頭には三角巾を結んで長い髪を隠していた。舞さんはめったに怒らなくて、優しくて、舞さんの作る煮物はとってもおいしかったけれど、お母さんと呼ばれることをなぜかとても嫌っていた。寝ぼけてお母さんと呼んでも私たちを引っ叩いて、泣きながら怒った。

「ご飯のお手伝いをして頂戴」

「はあい」

 舞さんにエプロンを手渡されて、台所に向かうとしょうゆのむっとする鼻をつくようなにおいが立ち込めていた。白い湯気がもうもうと立ち上っていて、それはガスコンロの上の大きな鍋からだった。肉じゃがのにおいだ。

「そこにお皿があるから。人数分、盛り付けて、運んで」

 返事をして言われたとおりにする。小さなお皿に肉じゃがを盛り付けていく。おたまで鍋の底をすくいかえすたびに、浮かんでいる油の模様とか、スープの色とか、においとか、そういうのが少しずつ変わっていくのを見ていた。ふと、深い底にこつりこつりと固いものが沈んでいるのに気付いた。おたまですくって見ると、それはすっかり茶色く染まった、動物の骨のような何かだった。

「舞さん。これは何?」

 舞さんは糠漬けの野菜を取り出しているところだった。ん、と手を止めて骨を見ると、舞さんは親切に教えてくれた。

「これは、鶏の骨よ」

「ニワトリ?」

「これを鍋の底に沈めておくと、とってもおいしくなるの」

「どうして?」

「おまじないだから」

 ぜったい嘘なのに、舞さんはそれがばれていないと思っているんだろうなあ、と私が思っていることもきっと知っている。舞さんは私たちのことを、何でも知っているんだ。骨をまた鍋の底に沈めて、全員分の肉じゃがを盛り付け終わった私は、お盆に乗せられるだけのお皿を乗せて居間に向かった。

 居間は畳敷きの広い部屋で、真ん中に大きなこげ茶色のテーブルがある。その隣に四角い卓があり、すでに八人分の座布団が敷かれていた。誰もいない。お皿をテーブルに並べていると、しとしと静かな足音を立てて霧子が入ってきた。雪にまぎれてしまいそうな真っ白な肌と、引きずるくらい真っ黒に長い髪で、ちょっと猫背で背が高い。こほ、こほ、と咳き込みながら、頬が赤くなっている。

「風邪?」

「ううん」

 霧子はいつも座っている自分の座布団にすっと座った。服の裾から小さな手帳を取り出して、ぺらぺらと読み始める。私はそれを尻目に、また、台所に戻った。

 戻ると、舞さんはお茶碗にお米をよそっているところだった――びっくりしてしまった。お米が真っ赤になっていたのだ。赤飯だ。すっかり、しばらく、見たことが無かった。

「どうして赤飯?」

「今日は、特別な日だからよ」

「とくべつって?」

「小春も、もうすぐ、分かるわよ。もう十一歳でしょう」

「うん」

 ふふん。と、なぜか舞さんは上機嫌だった。私はお盆に肉じゃがの残りを乗せて、また今に向かった。

 居間にはさっきと同じように手帳を読んでいる霧子のほかに、縁と環那がいた。縁は寒いのに、秋に着るような服を着て、すっかり座って霧子の隣で手帳をのぞき込んでいた。環那はちょうど今来たというような姿勢で、廊下から入ってきたところだった。

「とっても良い匂いがする」

 環那が言う。私が肉じゃがを並べているのを見て、ああ、と納得したように頷いて、台所に戻る私についてきた。

「舞さん、私もお手伝いする」

「ありがとう。環那、それじゃあご飯を運んでちょうだい」

「わあ、お赤飯だ」

 環那は驚きの声と共に、それを運んでいった。

「小春、お味噌汁を持って行って」

「はあい」

 さっきまで肉じゃがの入っていた鍋の隣に、すこし小さな鍋があって、ふたを開けると新しいにおいと一緒に白い湯気がもうっと立ちのぼった。きぬ豆腐と一緒に、水菜と榎が入っている。豆腐はひとり分に三個、具は出来るだけ偏らないように、注意した。環那が戻ってきて、お茶碗をまた居間に運んでいく足音がする。

「みんな、起きてきた?」

 舞さんの声がする。

「霧子と、縁が向こうにいる」

「じゃあ、お味噌汁を運び終わったら、みんなを呼んできてちょうだい」

 お味噌汁のお椀は小さいので、お盆に八つ乗る。居間に運んでお盆ごとテープルの上に置いてから、廊下を通って寝室に向かった。窓の外はまだ雪が降っている。ぱたぱたという足音は、春の時のすとすというときも、夏の時のどたどたいうときも、秋の時のぎしぎしいうときとも違う。廊下を通って、橋渡しを渡った先に、私たちの寝泊まりしている建物がある。ふすまが半分、空いている。開いて中に入ると、座布団に座って分厚い本を読んでいる栞と、鉛筆でがりがりと原稿用紙に向かっている海沙の二人だけがいた。

 栞がかけていた眼鏡をはずして、ちょっと不機嫌そうに私を見た。

「なに?」

「ご飯だよ。舞さんが、呼んで来いって」

「いま、ようやく、面白い所だったのに」

 海沙が乱暴に鉛筆を机の上に投げた。栞も同じように読みかけの本の上に眼鏡を置いて、立ち上がる。私は部屋の中をぐるりと見回して、二人に尋ねた。

「弥子は?」

「知らない。少し前に出てから戻ってきてない」

 ぶつけるように栞が言って、私とすれ違って出ていった。それに倣って、海沙も連れ立って部屋を出ていく。部屋の中はすっかり、もぬけのからだ。

 部屋に踏み入って、押入れを開けてみたり、机の下を覗いてみたり、畳をはがしてみたりしたけれど、弥子の姿はどこにもなかった。困った。みんなを呼んでこないと、舞さんに叱られる。部屋の扉をしっかりしめて、弥子を探した。けれど、意外とあっさり見つかった。建物をぐるっと回った反対側、弥子はその廊下に座って、外を向いていた。

「弥子。弥子」

「ん?」

 弥子の顔は真っ白で、がちがちと震えていた。

「なにしてるの?」

「雪を見てるの」

「ご飯だよ。舞さんが呼んでる」

「もう少し待っててよ」

 弥子は背が小さくて、歳も下だ。空から雪がしんしんと降ってきているのをじっと見ている。白い息が漏れる。

「もう少し、もう少ししたら行くから」

「駄目だよ。私が怒られちゃうんだから」

「大丈夫だよ、そんなの」

「ご飯はみんなで一緒。舞さんがいつも言ってるでしょ?」

「もう少ししたら行くから」

 ひゅう、と風が音を立てて吹き抜けていった。雪の結晶が渦をまく。弥子はそれを見て、目の中にもきらきら光る渦をまいた。弥子の目の色は私たちとはちょっぴり違って、夏の木の葉みたいな綺麗な緑色が混じっている。

 後ろから木の軋む音がして振り返ると、季節違いな恰好のままで縁が歩いてきた。

「舞さんが、遅いから呼んで来いって」

「もうちょっと待っててったら」

 弥子はかたくなに、その場を動こうとしない。縁がはあっと白い息を吐いて、弥子の頭を小突いた。

「あのね、弥子が帰ってこないと、いつまで経ってもご飯が食べられないの。今日はお赤飯だよ、お赤飯」

「おせきはん?」

「おめでたい日なんだって。ハレの日だよ、ハレの日」

「雪が降ってるよ」

 弥子は大まじめにいうので、私と縁は顔を見合わせて笑った。

「ハレの日っていうのは、おめでたい日ってことだよ」

「おめでたい日? じゃあ、今日は雪だから、おめでたくない日なの?」

「ハレっていうのは、晴れじゃないの。ハレだよ、ハレ。……はれ?」

「もうちょっとだよ。もうちょっと……ふたりとも、見て!」

 風の音が、ふいに鋭い、ぴゅう、という音に変わった。弥子がすたっと立ち上がって、目の前を指さす。その先では、降っている雪がくるくると、白いうずまきになっていた。弥子が手を叩いて喜んだ。

「やっとみられた! 待ってたかいがあった!」

「なあに、これ」

「風が強いと、たまに、こうなるの!」

 ほんのちょっぴり雲の向こうから透けてくる太陽の光にくるくると渦巻きが光った。まるで万華鏡みたいで、思わず私と、縁とで肩を並べてしゃがみこみ、じっと見つめてしまう。雪でできた渦の中に、星が浮かんでいるみたいで息をのむ。こんなの、初めて見た。星なんかより、よっぽど綺麗だった。

「よしっ、満足」

 弥子はからっとそう言って、まだ渦が残っているのに、居間に戻ろうとする。

 縁が大袈裟に両手を開いた。

「もう行っちゃうの」

「うん。もう、見られたから」

「でも、まだあるよ!」

 渦はくるくると、だんだん細長くなりながら、早く回る。とても綺麗だった。小さいころに舞さんに見せてもらった、万華鏡とそっくりだった。

「綺麗だよ」

「うん、綺麗だけど、もう見れたから」

「まだあるよ」

「なかなか見られないんだから。私、いっつもここで待ってたんだよ。今日はとってもいい日」

 弥子はそう言って何度も立ち去ろうとするのを、縁がぐいっと裾を引っ張って押しとどめた。

「だめ! 待ってて!」

「どうして。ご飯が冷めちゃうよ」

「だって!」

 二人が言い争いをしている間に、風がまたひゅう、と吹くと、渦はぐらりと揺れてくずれて、無くなってしまった。

 ああ……と三人の息が漏れて、白い煙が立ちのぼる。

「なくなっちゃった」

「こんなに長くあったのは初めてかもしれない」

「そうなんだ」

「うん。いつもは長くても、まばたき一回くらいだよ」

 外はいつもの雪景色に戻っていた。私は弥子と縁をつれて、急いで食卓に戻った。廊下を歩く間も、雪の渦のことを何度も思い出した。忘れられそうになかった。


  ○


 みんなが揃った食卓には、おいしそうな肉じゃがとお味噌汁、それと赤飯が並んでいた。舞さんが座ると、みんな一斉に緊張する。

「今日は、特別な日よ」

 舞さんは手を合わせる前に、突然、そんな話をした。

「みんなで霧子を、お祝いしましょう」

「霧子?」

「なにかあったの?」

 弥子と海沙が声を上げる。

 霧子は長い髪を垂れ流しで、じっと顔を伏せていた。何も言わない。

 縁が寒そうな格好のままで言った。

「ねーねー、舞さん。霧子に何があったの?」

 舞さんが答える。

「霧子はね、みんなよりちょっと早く、大人になったの」

「おとな?」

「おとな」

「おとなってなんだ?」

 何も言わない栞だけが、ふん、と鼻を鳴らして、すましている。

 次々とざわざわが大きくなっていくのを、舞さんがぱん、と手を叩いて制すると、みんなが一斉に静かになった。

「はいはい、ざわざわしないの。他のみんなも、もうすぐ分かるから」

「もうすぐって、いつですか」

 弥子がすぐに手を真っ直ぐ挙げて、舞さんに聞いた。舞さんはくすっと笑って、

「それは、ちょっと、分からないな。でも、いつか必ず来るの」

「ほんとうに?」

「ええ、本当よ」

「いいから食べましょうよ。早く部屋に戻って本の続きが読みたい」

 栞がびしっと言った。栞はいつも、みんなで過ごす時間よりも、自分の時間の方が大事だった。つっけんどんで、いつも不満を言っている。

 思いついたように環那が言った。

「舞さんは、おとな?」

「そうよ?」

「私たちも、おとなになれるの?」

「いつかは必ずね。はい、それじゃあそろそろ食べましょう」

 舞さんが言うと、みんなが一斉に手を合わせた。

「はい、いただきます」

 いただきます。七人分の声が広い居間に響く。まだ小さい弥子や縁はものすごい勢いで箸を口に運び続ける。霧子や栞はゆっくりと、落ち着いて食べていた。海沙は「さんかく食べ」が全然出来なくて舞さんによく怒られているけれど、環那は逆に舞さんの言いつけ通りに「さんかく食べ」をしている。私も舞さんに怒られたくなかったので、お味噌汁をちょっと飲んでから赤飯を食べた。普通の白い米よりも、粘り気があって、少し甘かった。

「おいしい」

 思わずつぶやくと、舞さんが得意げに胸を反らした。

「そうでしょう。上手く作れてよかった」

「ごちそうさまでした」

 からん、と音を立てて栞が立ち上がり、食器をまとめて台所に運んでいく。それをみて、海沙が慌てて茶碗を持ち上げて口の中に食べ物をかきこみ始めた。

「こら、海沙。お行儀悪いよ」

「早く食べなきゃ」

「そんなに慌てないで、ゆっくり、味わって食べなさい。作った人に失礼でしょ」

 しゅん、と海沙が肩を落とす横で、栞が自分の部屋に戻っていく足音が聞こえていた。

 環那が言う。

「どうして栞は、いつもすぐに部屋に戻っちゃうんだろう」

 海沙が答える。

「だって、食べながら本を読むのはお行儀が悪いからって、栞が言ってたよ」

「本なんていつでも読めるのに」

「でも、すぐに読みたいって言ってたもん」

「せっかくの、ハレの日、なのにね」

 弥子が得意げに言うので、私と縁は笑ってしまった。舞さんも目を丸くする。

「良く知ってるわね」

「縁と小春に教えてもらったの」

「ふうん? ええ、そうね、今日はハレの日よ」

 ずずっと、霧子が熱いお茶をすする。霧子の前に並べられた、いい匂いのする肉じゃがも、白い煙がのぼるお味噌汁も、きれいな色のお赤飯も、ちっとも減っていなかった。

「霧子。食欲ないの?」

 私が尋ねると、霧子は小さくうなずいた。みんなが、一斉に彼女を心配するようなまなざしを向ける。

「だいじょうぶ?」

「風邪ひいたの?」

「せっかくの、ハレの日なのに」

 みんなの箸が止まり、視線が霧子に集中する。霧子は恥ずかしそうにじっと伏せて、なんでもない、とひとこと呟いた。長く伸びた髪で顔が隠れている。

 舞さんは霧子の背を手でさすりながら、私たちに言った。

「冷める前に、早く食べちゃいなさい」


 舞さんと一緒に、弥子と縁、それから環那が台所でお皿を洗っている。

 海沙はご飯を食べ終わるなり、栞のいる部屋に戻ってしまったし、霧子は居間の隅で座布団の上に横になって具合悪そうにしている。ときどき、ううん、というような声が聞こえたり、もぞもぞと身体をよじったりする。

「大丈夫なの?」

 私が声をかけても、霧子はぜんぜんこたえてくれない。

「具合、わるいんだ。おとなになるって、大変なんだね」

 もぞ、と手足を動かす。けれど、霧子は起き上がることもなく、そのままじっと横になっていた。

「おとなになる」って、舞さんは言った。霧子は私たちよりも、大人になったのだ。でも、どうなればおとなになれるのか、私たちには分からない。確かに霧子は私たちの中では背が高い方だし、喋り方や仕草も子どもっぽくないけれど、よく転ぶし、大人しいし、私や環那、栞の方がおっぱいだって大きい。「おとなになる」って、なんだろう。

 台所での水の音が聞こえなくなっていた。居間に三人と、舞さんが戻ってきた。

「そろそろ寝る時間よ。自分の部屋に戻りなさい」


  ○


 部屋は全部で五つある。私と環那の部屋、縁と弥子の部屋、海沙と栞の部屋、霧子の部屋と、空き部屋が一つ。私と環那は布団を床に並べて、部屋の明かりを消した。外では風の音が、ぴゅうぴゅうとなっている。どんどん強くなっているようだ。

「ねえ、小春」

 環那が天井を見上げたままで言った。

「おとなになるって、なんだろう」

「わかんない」

「でも、霧子はおとなになったんだよね」

「うん」

「私たちが子どもで、霧子がおとなって、どういうこと?」

 聞かれても、私にも分からない。

「どういうことなんだろうね」

「私たちも、いつか、おとなになれるのかな」

「いつかは、なれるかもね」

 環那はやにわに体を起こして、きらきらと輝く目を私に向けてきた。

「ね、ね、おとなになったら、何がしたい?」

「え?」

「私はね、可愛いお洋服がたくさん欲しいんだ。すらっと背が高い、おっぱいもお尻も大きなおとなになって、お洋服をたくさん着たいの」

「いいね」

 本当は、おとなの女の人が着るお洋服なんて、ほとんど見たことが無いんだけれど。

「だからさ、小春は、何がしたい?」

「うーん……」

 おとなの女のひとにしか出来ないことなんて、私はおとなじゃないから分からない。舞さんを思い出してみると、いつも料理をしたり、掃除をしたり、洗濯をしたり、それくらいならいつも手伝っている私たちでも出来る。

 おとなになったら、したいこと。

「……お母さん、に、なりたいかな」

「お母さん?」

「そう。お母さんになりたい。舞さんみたいに、子どもの面倒をみるの。それで、その子どもがまたおとなになったら、今日みたいに赤飯を炊いたりして、お祝いするんだ」

「へえ、お母さんか」

 環那は感心したようにため息をついて、また布団にもぐって横になった。

「だったら、お父さんもいるね」

「そう、だね……お父さんも、いるね」

「それで、その子どもにも、可愛いお洋服を着せたいね!」

「環那、そればっかり」

 それからもずっと、私はお母さんになりたいと、環那はお洋服が欲しいと、喋っている間に二人ともどちらからともなく、眠ってしまった。風の音がうるさくて、とても寒かったので、ふたりで身を寄せ合うようにして温かくしていた。

 ときどき、廊下をとすとすと歩く音がする。誰かが用を足しに行ったり、舞さんがあちこち見回ったりするときに立てる足音だ。夜の部屋に横になっているだけで、いろいろな音が聞こえる。眠っていても聞こえた。


 次の日、霧子は家から、ぱったりと姿を消してしまった。


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