夢と現実
「アンケートにご協力お願いいたしまーす」
少女は雨の中、一人アンケート用紙を配っていた。
「どうぞ」
「どうも、あれ?お前は…」
その、少女にはなぜか見覚えがあった。
「どこかで、あったことあるか?」
「…さあ、何のことでしょう」
「そ、そうだよな。悪りー、おれの人違いだ」
あの日、あの場所で、このアンケート用紙をもらった時。
俺は、人生をかえてしまったのかもしれない。
人間や他の生き物は、成長するごとにパワーやスピード、筋力が上がるのが普通である。
だが、俺の力の上り幅が普通の人間とはくらべものにならないほど大きかった!!
5歳のころに『車』を持ち上げて以来、10歳のときに『ゾウ』、14歳のときは『大型バス』。
そして現在は18歳。
俺自身今の俺が取れほどのチカラを持っているのかわからない。
今思えばこの怪現象とも言える成長は、ある一つの『夢』を見て以来、始まったことだと思う。
『自分が勇者で世界を変えていく』…そんなだれでも1度は体験する…そんな夢だ。
勇者などは所詮『夢物語』…。
だがそんな夢物語は、俺に奇妙な副作用を残す。
俺は、その夢を見るたびに力が強くなっていくのだ。
科学的には解明できないが、その夢は俺を確実に強くしていくのだ。
まるでその夢が、俺の中に潜在的に眠るなんらかのチカラを呼び覚ますかのように。
何度も病院に通い、何度も精密検査を受けた。
だが、夢が残す副作用のメカニズムは、わからなかった。
現実の俺は、喧嘩漬けの毎日をおくっている。
毎日のように不良にからまれた。
理由はこの見た目である。
俺の髪の毛は黄色で、目も青いし、目つきも悪かった。
おまけに、俺の身長は165センチしかなかった。
はたからみれば、完全に調子に乗った中学生だ。
これでは、からまれて当然といえば当然か。
毎日、不良どもと喧嘩しているせいか、俺に話しかける同級生は1人もいなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜
家に着いて俺はもらったアンケート用紙に目を通した。
「アンケート…か」
アンケートへのご協力感謝いたします。
初めに、名前をご記入ください。
葉隠紅葉
それでは、次の4つの質問にお答えください。
1>>あなたは、夢を見ますか?
答:はい
2>>自分の夢は好きですか?
答:はい
3>>夢の中であなたはどんな『存在』ですか?
答:最強の勇者!!
4>>もし、夢の世界に入れるとしたら?
答:仲間を作って冒険する
ご協力感謝いたします
それでは、よい『冒険の旅』を!!
夢の世界…か。
もし、本当に行くことができたら、楽しすぎて帰りたくなくなっちまうだろうな。
最強の俺と頼りになる愉快な仲間たち、たくさん旅してたくさんバトルして、毎日順風満帆な生活を送る。
それが現実なら、なんて最高なんだろう…………
目を覚ますと辺りは朝になっていた。
「いつの間にか寝てたのか・・・あれ?」
気が付くと俺は、そよ風になびく草原の上にいた。
「なんだよこれ、夢かなんかか?」
俺の視界には、見たこともない広大な世界が広がっていた・・・