伝説の勇者
『今より250年間に起こる未来の話』
1827年執筆 著者エドワード=ジャック
今より50年前、私は一人の男に出会った。
男の名前は知らない。
その男は、私にこう言った。
「俺は未来からやってきた。これから話す事はすべて真実だ。俺と出会って、聞いたことを本にして、多くの者に語り継いで欲しい。」
男が何を言っているのか、私は分からなかった。
1800年からの100年間、悪魔と人間との間で戦争が起こり、多くの死者が出る。
それからしばらくの間、戦争はなくなる。
だが…2015年。
戦争は再び始まる。
その戦争を終わらせる『使命』を持った者がいる。
それは、遥か昔より変わることのない未来。
その者は、異世界からやって来る。
小さき『友』を連れた、『黒の魔力』を持つ者。
その者、『紅蓮の髪』をした『蒼の目』を持つ二刀流なり。
『5人』の仲間とともに切磋琢磨しあいながら2015年を迎える。
この話をした数日後、男は突然と姿を消した。
現在1827年。
50年前に男が残した『予言』は『真実』へと変わった。
悪魔との戦争が始まったのである。
西の領地では、すでに100万人近い死者が出ている。
なぜ悪魔が人間を襲うのか、
それはわからない。
我々は、『伝説の勇者』が現れる事を信じ、待つだけである。
時計の針は、11時を回っていた。
「なるほどな。この本に書いてある『伝説の勇者』が俺だと。」
「その通り、外見的特徴もぴったりだし、君は異世界から来たという点が本と同じだろ。」
「…なんで俺が、異世界から来たと。」
「この世界には、『黒の魔力』なんて存在しないんだ。」
「でも君は、黒の魔力を持っているそうじゃないか。鶴亀の漸から聞いたよ。」
「この世界に黒の魔力が無い以上、それを持つ君は、異世界から来たことにならないかい?」
魔力を確かめた時、水が黒くなった理由が分かった。
「…ご名答。俺はこの世界の住人じゃあない。現実世界からやってきた。」
「それで、俺をどうするつもりだ?…悪魔とでも戦わせるのか?」
「…いや、今の君では悪魔には勝てないだろう。そんな無駄なことはしないよ。」
「君…僕の弟子にならないか?」
弟子?
ハルカは、俺を完全に下に見ているようだ。
「…俺が、お前より弱いって言いたいのか?」
「別にそうは言ってない。君はここに来てまもないから、いろいろと手ほどきしてあげようかと」
俺は、ある思いつきをした。
「…じゃあ、俺と今から『決闘』してくれないか。」
その申し出に、意を返したのはハルカではなくチルだった。
「何言ってるのですか紅葉さん。ハルカ様は超級勇者、勝てるわけがないのです!!」
確かに無謀かもしれない、だからといって、ただハルカの弟子になるのは…癪だった。
「クスッ、いいよ。僕も伝説の勇者がどれほどの者か確かめたいしね。」
ハルカのまなざしが、鋭さを増したのを、
…俺はこの目で、体で感じた。