悪魔と人間の黒歴史
「これを見て欲しいんだ。」
ハルカは2冊の本を持ってきた。
ほこりを多くかぶっている。
かなり年代ものの本のようだ。
「右が悪魔についての本。左が伝説の勇者の本だ。どちらから読む?」
俺は右側の本を手に取った。
『悪魔』
1867年執筆 著者セレス=フォルン
悪魔、それは人間を超えた存在。人間では太刀打ちできなぬほど、
圧倒的な力を持った神にも似た存在。
紀元前から奴らの存在は確認されている。
だが、奴らが表立って活動しだしたのは1800年以降。
当時の西の国の王の首を切り落とした時から、悪魔と人間との争いが始まる。
しかし、圧倒的な力の前に、人間側は惨敗。
以降50年足らずで『西の領地』は、悪魔の手に下る。
1845年
世界各地から強い『能力』を持った者を招集し、
対悪魔戦力として、『勇者組織』を結成。
当時23歳の私も、勇者として招集される。
これにより、悪魔の世界侵攻の足止めに至る。
1850年
西の領地と南の領地の間で、悪魔との戦争が始まる。
戦争は3か月にも及んだ。
多くの戦死者を出したが、目立った成果を出せていないのが現状だ。
1852年
悪魔側が、『ソロモン72柱支団』なる72人の悪魔の王たちによる組織を結成。
1853年
ソロモン72柱支団、十五軍団長『アマイモン』が人間側に出頭。
アマイモンを捕虜として確保。
しかし、有益な情報を得るにはいたっていない。
1858年
第1次西南大戦が始まる。
人間側 死者5万人 負傷者10万人
悪魔側 死者3千人 負傷者1万人
4人の王を捕虜として確保に成功。
だが結果は惨敗。
人間側の死者5万に対して、悪魔側はわずか3千人。
1859年
第1次西南大戦が終結。
人間側の大敗で終わる。
1862年
勇者の育成が始まり、『ランク制度』が始まる。
『あとがき』
これは警告である。
これ以上悪魔との戦争を続けてはならない。
無用な死者を出してはならない。
いくら抵抗しようと、悪魔が世界を奪うのは時間の問題であるのは明白である。
…私は、世界の平和を望む…。
俺は、本を机の上に置いた。
「どうやら…読み終わったようだね。」
「それが…人間と悪魔の歴史だよ。」
「そして、その本を書いたのは、僕の曽祖父なんだ。」
終始無言だったチルが、口を開く。
「…1800年から1900年までの歴史は、すべての資料から消され、その間の出来事を知るすべはもう残っていないのです。」
「まさか…その100年でこんなことが…」
「その本は、我が家に伝わる世界でたった1冊の本なんだ。」
「家族以外に見せたのは、キミたちが初めてなんだよ。」
「現在、悪魔領は西と南、2つの領地をのみ込んだ。いずれここも…」
俺は考え込んでいた。
『能力』とは何なのか、捕虜となった悪魔の王はどうなったのか。
なぜ1800年代に入り、悪魔が急に戦争をしだしたのか。
俺の疑問は、増える一方だ…。