第5話:お店のインテリアの買い出し。でも、なんでみんな出迎えの列を作ってるんですか!?
ピカピカに磨き上げられた大きな窓(昨夜の僕とモチの成果だ)から、朝日が差し込んでいる。異世界の朝の空気は本当に清々しい!目覚ましの音も、上司からの仕事の催促メッセージもなく、聞こえるのは小鳥のさえずりだけだ。
僕は思い切り背伸びをした。最高にスッキリしている!『疲労無効』のスキルはマジで神スキルだ。昨夜あんなに館の片付けをしたのに、朝起きても腰痛一つないなんて!
「朝だよ、お前ら!」僕は二匹の従業員に挨拶した。
ベッドの端で丸まっていたクロが琥珀色の目を開け、大きな伸びをして「ニャ〜」と鳴く。モチも棚の隙間からぽよんぽよんと飛び出してきて、働く準備は万端だとアピールしているようだ。
よし、今日の目標は街へ行って、カフェの装飾品や可愛い家具、食器、それから食材の買い出しだ!僕は昨夜見つけた宝箱から金貨を10枚ほど取り出し、小さな布袋に入れた。これくらいあれば初期費用としては十分だろう。この世界の物価はよくわからないけど、金なら絶対価値があるはずだよね?
僕はクロを胸に抱きかかえ、モチは慣れた様子で僕の頭の上にぽよんと乗っかった。(冷たくて柔らかくて、まるで熱冷ましシートを乗せているみたいだ。頭が涼しくて意外と快適!)
準備を整え、僕は館を出て、再びアルテラの街へと向かった。
しかし、街の門をくぐり抜けた途端……。
なんだか……空気がおかしくないか?
昨日の入城時も変だったけど、今日はさらにヤバい!本来なら商人で賑わっているはずの大通りの両脇に、フルアーマーの衛兵たちが綺麗に一列に並んでいる。そして街の人々は衛兵の後ろに隠れるように身を潜め、全員がうつむいてガタガタと震えている。まるで、誰か超大物の到着を待ち構えているかのようだ。
すげえ……。今日は貴族か偉い人のパレードでも来るのかな?歓迎の列がめちゃくちゃ壮大だ!
僕はパレードの邪魔にならないよう、道の端っこを歩くようにした。でも、僕が通り過ぎるたびに、直立不動の衛兵たちが滝のように冷や汗を流し、中には膝から崩れ落ちて、ガシャーンと鎧の音を立ててへたり込む者までいる。
「ヒッ……ま、魔王が……来たぞ……」震えるささやき声が耳に届いた。
魔王?この街に魔王が来るの!?それは怖いな!僕は慌てて左右を見回し、危険なヤツがいないか探したけれど、僕とペットたち以外には誰もいない。もしかして魔王って透明になれるのか!?
とにかく、ここから急いで離れた方がいい。巻き添えを食らったら大変だ。僕はシステムウィンドウを開き、『マップ』スキルを使って、街で一番大きな家具・装飾品の店を検索した。
あった!大商人ギルドの商業商会だ。ここから2ブロック先か!
僕は足早にその店へ向かった。そして扉を押し開けると……。
シーン……。
店内の店員と、品物を選んでいた数人の客が、一斉に僕の方を振り向いた。次の瞬間、全員の顔から血の気が引いた。客たちは持っていた品物を放り出し、店の裏口から一目散に逃げていく。小太りの中年男性の店員に至っては、カウンターの裏で腰を抜かして床にへたり込んでしまった。
あれ……なんでみんな逃げちゃうんだ?僕は自分の姿を見下ろした。もしかして、頭の上にスライムを乗せているのが、この世界ではマナー違反だったりするのだろうか?
「あの……こんにちは。お忙しいところすみません。テーブルや椅子、それからお店の飾り付け用の小物を少し買いたいんですが」僕はガクガク震えている店員さんに向けて、できる限り友好的な笑顔を向けた。
「こ、殺さないでください!!い、偉大なる御方!店にあるものなら、何でも持っていって構いません!ど、どうか私と家族の命だけはお助けを!!」小太りの店員は裏返った声で叫び、必死に両手を合わせて拝み倒してきた。
ちょっと待ってください!強盗しに来たわけじゃないですよ!買い物をしに来たんです!なんでこの街の人たちは、僕が危害を加えるって思い込んでるんだ?僕の顔って、そんなに悪徳な借金取りみたいに見えるのかな!?
「本当に買い物をしに来ただけなんです。ちゃんとお金も払いますから」僕は慌てて布袋に手を突っ込み、金貨を1枚取り出して、カウンターの上に『チャリン』と置いた。
店員は目を剥き、カウンターの上に置かれた古代の模様が刻まれた金貨を、まるで禁忌の品でも見るかのように凝視した。
「ほ、滅亡した古代王国の純金貨!!こ、これほどの国宝級の代物でお支払いを……」彼は震える声で呟き、目には涙すら浮かべている。「か、かしこまりました!直ちに当店で最高級のプレミアム家具一式を……あなた様の……お館へと発送いたします!お釣りは不要でございます!この金貨1枚で、この建物ごと買い取れるほどの価値がございますから!!」
は?1枚で建物ごと買える!?
僕はポカンと口を開けた。昨夜見つけた宝箱って、そんなにとんでもない価値があったのか!オーマイガー!大金持ちじゃないか、サトウ・サトル!
「じゃあ……お洒落な木製のテーブルと椅子、可愛い食器類、それからふかふかのクッションを、街の端にある館まで配達をお願いします。ありがとうございます!」僕は満面の笑みで答えた。このお店のサービス、マジで五つ星レベルだ!しかも送料無料!(お釣りはいらないって言われたけど、これだけ買えれば十分お釣りがくるくらいお得だよね!)
僕は膨らむ期待を胸に店を出た。僕の可愛いペットカフェが、ついに形になろうとしている!
一方、店員の男はというと……僕が立ち去った直後、すぐさま商人ギルドと冒険者ギルドへ向けて緊急の魔法通信を飛ばしていた。
『緊急報告!呪われた館の魔王が、物資と資源の買い占めを開始した!しかも、すでに滅亡した古代王国の金貨を使用している!各機関は直ちにこの未曾有の大危機に備えよ!!』
……いやあ、この街の人たちって本当に働き者だなあ!僕は鼻歌交じりで道を歩いていた。自分がたった今、国家レベルの大パニックを引き起こしたことなど、露ほども知らずに!




