表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻と土竜(メグルとモグラ) 芝蘭結契篇  作者: ひろみ透夏
終章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/61

【終章】01

 


「いいかしら……?」



 粉雪が舞い散る夜、派手なサングラスにゴージャスな赤いドレスを身に纏った女性が、子ども食堂『つながり』の引き戸を開いた。


 続いてもう一人、青いドレスの女性もキャリーバックを引いて入ってくる。



「どう……ぞ……」


 エプロンをつけた香澄と紬が元気よく接客に出たとたん、ふたりの姿に思わず口を開けた。


「えっと……、ドリュウさんっ……!」



 困惑した表情で、香澄が厨房を振り返る。

 すると、頭にタオルを巻いて豪快に鍋を振っているモグラが、脇目も振らずに威勢よくこたえた。



「誰でもウェルカムだよ! 空いてる席に座って!」



 ドレスの女性たちがコートを脱いで食堂のパイプ椅子に座る。

 ふたりに水を運んできた紬が、覚えたての台詞でたどたどしく説明した。



「いらっしゃいませ、子ども食堂『つながり』はみなさまのあたたかいご支援で成り立っています。これからもこの食堂を維持するため、一〇〇円からご寄付を……」


 赤いドレスの女性がにこやかにこたえた。


「もちろんよ」


 すると青いドレスの女性が、キャリーバックの中からレンガのような塊の札束を取り出し、次々とテーブルの上に置いていく。



「……すご~い」


 目を丸くして手を伸ばそうとする紬を、あわてて香澄がとめた。


「こんな大金、必要ないです! 食事代だけ頂ければ……」


 青いドレスの女性が、サングラスを外してふたりに語りかけた。



「お金には悪魔のような力があるけど、何に使うかは人間の自由意思……。わたしはあなたたちの未来にこのお金を使うの。あなたたちがどう使うかは、あなたたちの自由よ」



 懐かしそうに目を細めて、香澄と紬の手をやさしく握った。

 そこへ、腰に巻いたエプロンで手を拭きながらモグラが出てきた。



「くれるっておっしゃってるんだから、ありがたく頂いときな。近頃、何から何まで物価が上がって、いくらあっても足りやしねぇ……。おいら話があるから、ちっと席を外しててくれ」


 香澄と紬が厨房に入るのを見届けてから、モグラが振り返った。



「新しい体を手に入れたのかい? 二条姉妹」



 赤いドレスを纏った二条杏香が、サングラスを外しながらこたえた。


「人間界は病んでいる。代わりの体はいくらでも調達できるわ……」


 ふたりに対面するパイプ椅子に、モグラが斜に腰をかける。



「お前さんたちの仇は、もう人間界にいないぜ」


 青いドレスを纏った二条美華が、当たり前のようにこたえた。


「知ってるわ。飛鳥の魂の封印は解け『魔界』へ戻った。メグルくんはもう仇じゃない」


「ならどうしてあんたらは、まだ人間界にいるんだい?」



 杏香と美華が、互いの顔を見合わせる。

 やがて美華が懐かしそうに『つながり』の室内を見渡した。


 壁一面が手作りのクリスマスの飾り付けで華やかになっている。


 坂田佐和子の姿こそないが、以前と同じように誰でも受け入れ、あたたかな雰囲気で包み込んでくれる、そんな落ち着いた空間だった。



「……あなた、ここを継いだのね」



「坂田佐和子は同郷だ。やったことは許せねえが、彼女の意思は引き継いでやりてえ」


 モグラが厨房ではしゃぎながら皿を洗う、香澄と紬に目を向ける。


「いずれあの子たちに襷をつなぐさ。それまでにおいらは、ここでやらなきゃならねえことがある」



 モグラは二条美華が金山に録音を強要した、雨宮香澄のスマートフォンをテーブルの上に置いた。


 ボイスレコーダーから金山の震える音声が流れる。

 そこには今までに誘拐した子どもの名前、関与した大人たちの名前が語られていた。



「誘拐された子どもは何処かで魔鬼として生きている。逃げた金山を捕まえたところで警察に突き出せねえのなら、せめて誘拐に関与した人間にはおいらが罰は与えなきゃならねえ。あんだけの悪さをして、のほほんと……」



 遠慮なさげに、二条杏香が口を挟んだ。


「あなた、六道が存在する意味をまるでわかってないのね。あなたがやらなくても因果の法則は絶対。善行も悪行もいずれ己に返る。報いは必ず受けるのよ」



 パイプ椅子の背もたれかかりながら、モグラが口を尖らせた。


「なんだぁ? お四聖様(ししょうさま)の説教かぁ? おいらはおいらでやりたいようにやらせてもらうぜ。人間界は自由意思の世界だからよ!」



 困ったような表情で、二条美華が間に入る。


「まあいいじゃない。子どもたちの体を魔鬼から奪い返すのは手伝ってあげる。あなたも一人じゃ大変でしょう?」


「こりゃまた、随分と六道に干渉するようになったじゃねぇか二条美華。雨宮香澄の魂に触れて、人間に情が湧いてきたのかい?」


「調子に乗らないで。目的はそれだけじゃないわ」


 杏香と美華が、互いの顔を見合わせる。

 意を決したように、美華が口を開いた。




「メグルくんが、人間界に戻ってきたの」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ