表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻と土竜(メグルとモグラ) 芝蘭結契篇  作者: ひろみ透夏
第9話 配達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/61

【第9話】01 配達

 

「メグルくん、まだ小学生でしょ? 配達のお手伝いは高校生になってからでいいのよ」


 澄みきった青い空が、淡く色づき始める時間。

 子ども食堂は、十七時からの開店に向けて準備に追われていた。

 坂田佐和子が厨房で大量の野菜を切り、ボランティアの大学生たちが鍋をかき回したり、お皿に盛りつけたり一緒に手伝いをしている。


「でも泊めてもらっていますし、ぼくも子ども食堂の役に立ちたいんです」


「お父さんに頼んだ追加の買い出し、手伝ってきたら?」


 脇目も振らずに坂田佐和子が声を張り上げる。

 厨房はまるで戦場のようだ。


「あんなのモグラ……いえ、父さん一人で出来ますから」



「なにお前、配達手伝いたいの?」


 そのときメグルの背中に声をかけてきたのは、高校生くらいの男子だった。

 ブレザーの制服をかなり着崩し、耳にピアスをしている。


「うぃ~っす」


 男子高校生は、厨房の坂田佐和子や大学生たちに挨拶すると、学校の鞄を子どもスペースに放り投げた。



「加藤くん、今日も配達二件頼める?」


 坂田佐和子が、ちぎったメモ用紙を高校生男子に手渡した。


「いいすよ、じゃあ行ってきまぁ〜っす」


 加藤と呼ばれた青年はカウンターに並べられた弁当を二つ手に取り、慣れた手つきで配達用バッグに入れて食堂を出ようとした。

 すると厨房から顔をのぞかせた坂田佐和子が、あわてて付け足した。


「中村さんが最初ね! あのひと遅れると怒るから……」


「了解っす!」


 加藤青年がふと足を止め、メグルに目配せして出て行った。

 あわててメグルが後を追う。



「いいんだよ、お前みたいな来たばっかの子が気を遣わなくたって。遠慮なく飯食わせてもらっときな」


 加藤青年が配達用バッグを背負い、外に止めてあった自転車にまたがった。


「ぼくも来年は中学生だし世話になってばかりいられません。昨日なんか、あの食堂に泊めさせてもらってるんです。見習いに付き合わせてください!」


 加藤青年は目を丸くしてメグルを見ると、手を差し出した。



「お前ちっこいくせに偉いのな……。おれ、加藤誠司かとう・せいじ。よろしくな」


「ぼく菅野メグルです、よろしくお願いします」


 メグルが握手したとたん、加藤誠司はにやりと笑った。


「じゃあメグル、全力でついてこいよ!」


 加藤誠司がいきなり自転車を漕ぎ出す。


「え、ちょ、ちょ待ってっ!」



 公園の芝生広場を縦断する加藤誠司の自転車を、メグルは全力で追いかけた。




          *




 見上げれば茜色に染まる空に、薄紫のグラデーションがかかり始めている。


 公園から自転車で一〇分ほど走った団地で、加藤誠司は自転車を止めた。

 振り返ると、へろへろになりながら走ってくるメグルの姿が小さく見える。



「あいつ、意外と根性あるな……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ