表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻と土竜 芝蘭結契篇  作者: ひろみ透夏
序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

【序章】02

 

「……魔鬼まきです」


「……マキ?」



「そう魔鬼です。魂の棲み分けを望んだ如来にょらいが『十層界』を創造したとき、全ての混沌を望んだ魂たちは『魔界』に追放されたのです。そいつらが魔鬼! 奴らは呼び込んだ越界者に悪事をさせて秩序を乱し、人間界を魔界側の勢力に組み込もうとしてるのですよ!」


「勢力争いをしてるのですか……? その如来と魔鬼とやらが?」


 黒づくめの男がソファに背中を預けながら、大きくうなづく。


「価値観の変化を嫌う人間にしては、飲み込みが早いですな」



 そこへオリーブグリーンのジャケットに半ズボンをはいた、さきほどの少年がお盆を手にやってきて、テーブルの上に湯気のたつ湯呑みと、牛乳瓶の底のような分厚いレンズの入った黒縁眼鏡を置いた。


 黒づくめの男が、徐にその黒縁眼鏡をかける。


「いいですか? 人間は産まれながらに頭の上に水晶玉のような星を持っているのです。あなたの頭の上にも浮かんでますよ……。ええと試練星しれんぼしが八つ、成就星じょうじゅぼしが……」


 眼鏡のブリッジを中指でずり上げながら、黒づくめの男が眉をしかめる。



「たったの一つ? あなたその年齢の割に一つしか試練を乗り越えてないとは……。逃げてばかりの人生だったんですな?」


 見透かしたようなその言葉に、わたしはムキになって言い返した。


「し、失礼な! わたしの人生は立派……とは言えないかもしれないが、人並みには頑張ってきたつもりだ!」


 しかし黒づくめの男は軽蔑の眼差しをわたしに向けた。



「見るもんが見れば一発でバレるんですよ……。与えられた試練を乗り越えれば、試練星は成就星に変わります。しかし悪事などの不徳を積むと逆に増えるのです。人生を終えた時に試練星が十二個を超えていると、『堕界だかい』と言って人間界より下の世界、つまり『修羅界』に転生することになる」


 わたしは無意識に頭の上を手で払っていた。

 とうぜん振り回した手は空を掴むだけで何の感触もない。



「そんなことしたって試練星は減りゃしないよ……。安心なさい、このまま真面目に生きてれば、あなたは来世も人間界だ」


 黒縁眼鏡を外しながら、黒づくめの男が話を続けた。


「人間界に悪を蔓延させて人間たちの試練星を増やし、魂を大量に堕界させる……。如来との契約で人間に直接手が出せない魔鬼は、その仕事を担わせるため越界者を呼び込んでいます。その現場をあなたは目撃した……ってぇ訳ですな」



 黒づくめの男の話をひと通り聞いたわたしは、ソファに深く背中を預けると大きく息を吐いた。

 理解しようと努めてみたものの、いったいこの男は何を話しているんだ……。


 事務所のドアを叩いたことに、わずかに後悔の念を抱き始めながら、改めてぐるりと室内を見渡した。

 来たときは話を聞いてもらう一心で周りが見えていなかったが、よく見るとずいぶん汚らしい事務所だった。



 まだ昼過ぎだというのに半地下の室内は薄暗く、天井近くの小さな窓から差し込む微かな陽光に反射し、無数の埃がちらちらとラメのように室内を舞っている。


 配管がむき出しの天井と、打ちっぱなしのコンクリートの壁からは、所々から水が染み出し濡れていた。

 自分が座っているソファも、その奥の事務机もかなり古く、もはや粗大ゴミといっても過言ではない。


 ビル警備の経験が長いわたしは、ここがもともと部屋ではなく、ただの倉庫なのだと確信した。



 しかもあれだけ頼り甲斐があるように見えた目の前の黒づくめの男も、よくよく見れば肘や膝に継が当てられたボロボロの黒いスーツに蝶ネクタイ、頭にはシルクハットという珍妙な格好だ。



「ああ、そうだ。まだ名乗っていませんでしたね。わたくし、こーゆーものです」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ