余命宣告
藍玉の月の刻
星空が模されている天井の部屋の中、少女と女性がテーブルを挟んで、向かい合っている。
「…アンタの、命は……もって一年。それ以上は…」
金からピンクのグラデーションの髪色をした少女は、努めて冷静に目の前の女性へ告げる。
「そうか、一年“も”あるのか。なら、やりたかった事をこの一年のうちに片付けるか。」
銀髪で赤いアンダーカラーの女性は伸びをしながら、なんでもないかのように少女の言葉を受け入れ、未来の算段をつける。
「アンタ……ッ、――“薬草の魔女”の後継者は見つけたの?」
勢いに任せ感情をぶつけたかったが、彼女に何を言っても無意味だと思い直し、“フーッ”と息を吐く。
「いーや、私の前に、出てくる気配がない…おそらく、現れるのは、私が死んだあと……なんだろうな。」
「そう……こればっかりは、分からないものね。」
薬草の魔女は首を横に振り、少女はあごに手を当てる。
「話は変わるが“星詠みの魔女”さんよ、使い魔を召喚できる魔法陣をひとつ、譲ってくれないか?」
机に頬杖をつき、ニカッと笑いかける薬草の魔女。
「アンタ、ワタシが散々“使い魔を呼びなさい”って言ってたのに、死ぬ間際に呼び出すの?!」
ガタッと立ち上がり、イラつきをあらわにする星詠みの魔女。
「いいだろ、別に?私の勝手だ。」
頭の後ろで手を組み、今にも口笛を吹きそうな雰囲気である。
「アンタを赤ん坊の頃からみてて、親同然のアタシに、よく言えたわね“薬草の魔女”」
ため息を吐きながら、星詠みの魔女は席に座り直す。
「まぁ、いいじゃねぇか。な?ひとつ頼むよ、“星詠みの魔女”さんよ。」
「ハァ…仕方ないわね、高くつくわよ?」
「えーっ!母親同然なんだろ?まけてくれよォ!」
「ワタシの言うことを聞かなかった罰よ。」
「ちぇっ、ケチくせぇ。」
「……魔力が“ほぼない”アンタのために、魔力を八割込めておいて、“適正価格”で譲ってあげるんだから、感謝しても良いぐらいよ。」
「ハーイ、ありがとうございますぅ、お母さまー。」
「(……ワタシを母親だと言うんなら……)」
「んぁ?なんか言ったかよ?」
「なんでもないわよ、とりあえず、召喚用の魔法陣と…それから要るものは?」
「あー、そうだな…一応、“服従の足枷”とか要るか?」
「そうね、腕力でアンタに勝てる子なんて、それこそ魔皇帝や、その皇子たちぐらいなもんだろうけど……念の為に、“契約の首輪”も付けとくわ。」
「おっ!ありがてぇ!…っし、じゃあ帰るわ。次くる時は、使い魔の紹介の時だな。」
「家に“居つく”タイプの子なら、ワタシがそっちに行くから、連絡しなさい。」
「ハイハーイ。」
“よいせっ”と受け取った荷物を抱え上げ、「“またな”」と手を振る薬草の魔女。
足元まである髪を三つ編みにし、ミリタリーロリィタと呼ばれる衣装を身にまとった星詠みの魔女は、玄関ドアから“薬草の魔女”の姿が見えなくなるまで彼女の背中を見つめ続け
「ワタシを母親だと言うんなら、母親より長く生きなさいよ……」
そう呟き、ひとり涙を零しました。
しかし、天井の星々は、その願いを聞き届けてはくれませんでした。




