第六話 友達
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五月──
ゆるは、中学二年
ここは、ゆるはの部屋
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「そうそう、ゆるはの荷物はね?担任の先生が“家まで、ゆいなさんが持っていって貰えるようです”って言ってたわよ?ゆいなちゃんきたらお礼するのよ?」
話がかなり脱線してしまったが、まだ私はお母さんと通話中だった。
今ではゆいなちゃんとは、お互いの家を行き来して寝泊りするくらいの仲になっている。
だから、お母さんともお姉ちゃんとも面識がある。
「うん。」
「あ、もうお母さん時間だから切るね?ゆるは、体調には気をつけなさいね?無理しちゃダメだからね?」
収録の合間の休憩が終わるのだろう、お母さんは急に口早に言うと、私の返事を待たずに電話を切った。
お母さんが芸能活動を始めてからは、こんなことは日常茶飯事で、もう慣れてしまった。
それに、スマホのショートメッセージやインスカもあるので、言いたいことはいつでも伝えられる。
「あ、そうだ…。リュシ?多分、ゆいなちゃん来ると思うので、変身…解除して貰えますか?」
「その前に、ボクともう一回しないかい?」
私たちがあの行為をしてる最中に、家へとゆいなちゃんがやって来る可能性がある。
しかも、私のお母さんから家の合鍵を、ゆいなちゃんは預けられているのだ。
なので出られる状態になるまで、玄関の前で待っていてもらうことが出来ない。
「これから、ゆいなちゃん来るので…。」
「ああ。あの勘の鋭い子か…。色々と面倒な子だし、やめておくね。『変身解除』!!」
手に持っていたスマホが宙に浮き、その画面から眩いくらいの光が私に向かって放たれた。
──ジュゥゥゥゥッ…
変身時同様、眩い光を全身に浴びた私の身体に、再び変化が起こった。
まず最初に、エルフの耳に似せた耳が元に戻った。
続いて、目の周りをガッチリ覆っていたゴーグルは、跡形無く消え失せた。
すると、二十歳の身体はシューっと音を立てながら、中学二年の身体へと戻っていった。
──ガチャッ…
急に私の部屋の扉がゆっくりと開いた。
「ゆるはぁっ!!もぉぉぉぉっ、いきなり帰っちゃうなんてぇぇぇぇっ、アタシ寂しかったぁぁぁぁっ!!」
──ドスンッ…!!
扉が開いたと思った次の瞬間には、ベッドの上の私にゆいなちゃんが飛びついてきていた。
「ゆいなちゃん、来るなら連絡してよー?私、ビックリしちゃったよー?」
「何か大きな勘違いしてなぁい?ゆるははアタシの“モノ”なんだけどぉ?普通、持ち物に連絡なんてする訳ないよねぇ?」
ゆいなちゃんは非常に独占欲が強く、ある時期を境に私は彼女の“モノ”にされてしまった。
言動などからもお察しの通り、ゆいなちゃんはこの国でも有数の大企業の創業者一族に生を受けている。
そのせいか、自分が欲しいと思ったモノは、どんな手を使ってでも手に入れてきたそうだ。
「それよりぃぃぃぃっ!!ゆるはぁぁぁぁっ??はやくぅぅぅぅっ!!いいことしよっ?」
──パサッ…
ベッドの上で、私の上に馬乗りのゆいなちゃんが、着ている制服を恥ずかしげもなく脱ぎ始めた。
「今日は、ゆるはのこと…いっぱい気持ちよくさせてあげるから…。でも、アタシより先に寝ちゃわないでよね?」
──パサッ…
あられもない姿になったゆいなちゃんが、脱いだ下着をベッドの外側へとそっと落とした。
そして、私の下腹部の辺りにゆっくり腰を下ろした。
──ペロッ…ペロッ…
ゆいなちゃんは、私の方を見つめると、無言で自分の手の指をペロペロと舐めはじめた。
もう、ここまでくるとお分かりかもしれないが、ゆいなちゃんは女の子が大好きな女の子なのだ。
彼女の“モノ”である私は、そういう点はどうなのかと聞かれれば、基本的に相手の人種や性別は気にしない性格だ。
こんなブスな私に、好意をもってくれる相手は貴重だからだ。
それに、通う中学のスクールカーストの頂点に君臨する、ゆいなちゃんを敵に回した時点でお終いだ。
中学一年の時、ゆいなちゃんに助けられてから暫くの間は、彼女との関係は純粋に友達の間柄だった。
実はまだその頃、彼女には今の私のように親密な関係の女の子が居り、家に遊びに行った時は三人で過ごした。
だが、年が明けた頃の事だったのだが、その女の子は男の子と付き合い始めたのだ。
気持ちの切り替えの早いゆいなちゃんは見切りをつけ、その女の子との関係を解消したのだが、その直後に私との関係を始めた。
なので、いつ私も見切りをつけられるかと、内心気が気ではないのだ。
「ゆるはぁ…♡今日はぁ…♡どうしよっか?」
そんなことを言いながら、ゆいなちゃんは大事なところを、私の大事なところへ密着させてくる。
昨日までの私なら、間違いなく興奮を抑えきれなくて、彼女におねだりをしてしまっただろう。
でも、今の私は違うのだ。
『魔法少女』としての能力のパワーアップに釣られ、リュシとは付き合い始めている。
しかも、リュシとは『魔法少女』に変身後の二十歳の姿ではあったが、先程、大人の関係を持ってしまっている。
「じゃあ…?ゆいなちゃん、私の顔の上にね?お尻向けて跨ってくれる?」
少しでも刺激が強い方が、興奮できるのではと考えたのだ。
私にはリュシとのあの行為が衝撃的過ぎて、ゆいなちゃんとの行為をしても絶対、霞んでしまう。
だから、彼女を傷つけない為にも、私には強い刺激が必要なのだ。
「はぁ…っ♡はぁ…っ♡ゆるは…?ほ、本当に…コレ、していいんだね…?」
実を言えば、お母さんから電話が来る少し前まで、リュシが私に色々と手解きをしてくれていたのだ。
リュシが言うには、“ゆるははきっとこれまで通りだと難しくなくなる。“という事だった。
でも、本当にその通りになって、私はビックリしている。
「ゆいなちゃん…♡お、お願いっ!!早く…っ♡」
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三十分後──
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──ピンポーン!!
家のインターホンのチャイムの音が聞こえた。
どうやら、私は途中で寝てしまったみたいだ。
リュシの相手をした後だったのがかなり大きい。
「ゆるはぁ??起きてよぉ?さっきから、ピンポンピンポンうるさいんだけどさぁ?起きないとぉ…この薬塗っちゃうからねぇ♡」
毎度、ゆいなちゃんが持ち込んでくる薬がヤバい。
この前の塗り薬は、塗られた部分が一晩中激しく疼き続け、治めるのが大変だった。
「んんっ…。」
今起きたとアピールするように、私はゆっくりと目を開けた。
すると、ゆいなちゃんの大事なところが、目の前に立ち塞がっていた。
これは一体どういう状況なのだろうか?
「やっと起きたぁ!!もう…アタシ、待ちくたびれちゃったんだからぁ!!ねぇ…っ♡ゆるはぁぁぁぁっ♡早くぅ…♡」
今のゆいなちゃんの言動から、少し状況が掴めた。
刺激的なマッサージを彼女から受けている最中に、私の体力がゼロになったようだ。
健気にもゆいなちゃんは、そのままの状態で大人しく待っていたのだろう。
──ピンポーン!!ピンポーン!!
「ねぇ…?流石に怖いんだけど…。さっきからずっとだよ?」
「えっ?!ずっと!?別に、何も通販とか頼んでないし…。お母さん達からも、荷物とか何も聞いてないよ?」
こういう時、リュシがいてくれると心強いのだが、ゆいなちゃんは勘が鋭いので、今日は主導生物の拠点へと行ってもらっていた。
「ゆいなちゃん、ゴメンね?ちょっとだけ、インターホン見てきていいかな?」
そう言って、私の目の前に立ち塞がっている彼女に、少し退いてもらおうとした。
「じゃあ、早くしてよぉ??じゃないと…アタシっ!!ゆるはに、酷いことしちゃうかもしれないからねっ??」
何だかんだ言いながらも、ゆいなちゃんは私の言うことはちゃんと聞いてくれる。
そこも私が彼女のことを、嫌いになれないところの一つだ。
それにしても、外に居るのは誰なのだろうか?