第三話 体液
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五月──
ゆるは、中学二年生
ここは…通う中学の女子トイレの個室
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──チュッ…
「んっ…。んんっ…。」
いつも通りの可愛らしい姿のリュシと、私は口付けを交わす。
リュシの口は意外とニュルニュルしていた。
しかも、舌のようなものが、私の口の中へ入ってこようとしたのだ。
でも、不思議と嫌な感じはせず、すんなりと受け入れてしまった。
恥ずかしすぎて、私は目を開けていられなかった。
だって…異性(?)とするキスは今日が初めてだったから。
「はぁ…っ♡はぁ…っ♡リュシ…♡」
一体、私はどうしてしまったんだろう…。
急にリュシのことが気になって、瞑っていた瞼を気付けば開いていた。
ひょっとして…口からリュシに何か盛られた?!
それとも、リュシの体液を経口摂取したのが原因だろうか?
現状言えるのは、私の気分がもの凄く昂揚してしまっているということだ。
今の私の状態は…自淫した時の絶頂を迎える寸前に近い。
──ガチンッ!!
私は咄嗟に…大事な場所を手で弄って、気持ち良くなろうとしたのだが、両手両足は光の枷で拘束されたままだった。
「あぁ…っ♡あぁ…っ♡リュシぃ…♡リュシぃ…♡」
目の前のリュシに、私は助けを求めた筈だった。
でも、口から溢れた言葉は喘ぎ声が混じっていた。
「ゆるは??どうしたの?大丈夫??」
「たっ、助けて…っく、下さい…!!リュシ…っ!!お、おっ…お願いしますっ…!!」
私の頭の中は、気持ち良くなりたい一心だった。
手足が動かせなくて、今にも狂ってしまいそうだ。
既に、リュシの体液は取り込まれている筈だ。
それなのに、一向にパワーアップする気配がない。
変身する速度が、全く変わらないのがその証拠だ。
「ん?何だか、辛そうだね?それに…まだ、ゆるはの身体がパワーアップされてないみたいだね?」
「はぁぁぁぁっ…♡はぁぁぁぁっ…♡」
徐々に身体の疼きが強まってきており、もう私の頭は限界にきていた。
簡単な返事ですら、ままならなくなっていた。
「ゆるは?もう一度だけ、ボクとキスしてみようか。」
リュシが顔を私に近づけてきた。
──チュッ…
「んっ…♡んっ…♡」
リュシの舌のようなものが、再び私の口の中へと滑り込んできた。
──ドクンッ!!
私の胸の辺りで、大きな鼓動が一度だけ聞こえた。
──キラキラキラキラ…
急に柔らかな光がスマホから放たれると、私の身体を照らし始めた。
すると、変身が終わっていない身体の部分に、衣装が覆うように実体化を始め、装着されていく。
その光景はまるで、魔法少女系のアニメの変身シーンを彷彿とさせた。
「ゆるは?パワーアップ成功したみたいだね?」
身体の疼きは強まる一方で衰えを知らず、私の頭は限界を迎えようとしていた。
「も…もうっ…♡わ…私…限界です…っ♡きっ…気持ち…よく…っ♡なっ…な…っなりたいぃ…ですっ♡」
「きっと、ゆるはにはボクの体液は強すぎるのかもしれないね。前任の『魔法少女』達は平気だったんだけど…。」
前任“達”は、平気だった…?
リュシの言葉で、少しだけ私は冷静になることが出来た。
「うぅぅぅ…っ。ぜ、前任は…っ…!!はぁ…♡はぁ…はぁ…っ。な、何人んんっ…♡いっ…居たんですか??」
波のように疼きが襲ってくるが、手足はまだ拘束されていて…自己解決が難しい。
リュシの彼女として、この件は看過出来ず…息も絶え絶えだが問い掛けた。
──ガチンッ!!
「えっ…!?」
突然、目の前から光が消え…漆黒の闇となった。
これまで幾度となく『魔法少女』への変身を行ってきたが、こんな事態は初めてだ。
──ググググッ…
私は咄嗟に視界を遮る何かを取り除こうと試みたが、両手は光の枷で拘束されたままだ。
「ああああああああっ!!」
自らの身体に次々と巻き起こるハプニングに、私は為す術もなくパニックに陥ってしまった。
「ゆるは、大声出したらダメだよね?」
冷静なリュシの一言に私はハッとするが、もう私の理性もここが限界…これ以上は本能の赴くまま従うしかない。
「すぅぅぅぅっ…はぁぁぁぁっ…。」
ここは、中学の女子トイレの個室の中だ。
とりあえず、深呼吸をして気持ちを鎮める。
授業中、私がトイレに行くと言い、教室を後にして少なくとも五分以上経つ。
流石に十分を越えれば、先生に頼まれた誰かが、私が大丈夫か様子を確認しに来る可能性が増える。
「少しだけ、ボクの話聞いてくれるかな?」
「は…い…。」
──ギリッギリギリギリッ…
歯を食いしばって、狂おしい程の身体の疼きを堪えるしか、私には術がない。
「ゆるはの前任は…音で人間を操る悪者に囚われてしまってね?だから、ゆるはの耳には対策を施してあるんだ。」
「し…っ、知らな…かった…ですっ…。」
──ギリギリギリギリッ…
リュシの言葉に対して、答えるのがやっとだ。
「最近、光で人間を操る悪者が現れたみたいなんだよ。だから…ボクはゆるはが大切だから、操られないようにしてみたんだけど…。」
「ああ゛…あ゛っ…♡あ゛あ゛あ゛あ゛っ…♡」
折角、リュシが新装備のお披露目してくれているのだが、衰え知らずの身体の疼きは凄まじいもので、中学二年の私ではもう…耐えきれない。
「も゛う゛っ…♡む゛り゛ぃぃぃぃっ…♡」
私の理性の糸が、プツンと切れた実感があった。
「ゆるは…」
誰かが、私の名前を遠くで呼んだみたいだ。
その声はすぐに聞こえなくなり、自分の意識が飛ぶのがわかった。
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五月──
ゆるは、中学二年生
ここは…どこか
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「…えっ!?」
身体を誰か触れた感覚がして、私は目を覚ました。
慌てて目を開けたが、まだ漆黒の闇の中だった。
それと、あれだけあった身体の疼きが消えていた。
どうやら、女子トイレの個室の中ではないようだ。
どこかのベッドのような上に、私は仰向けで寝かされている。
──シュッ…シュッ…
「あれ…?」
なんと光の枷が外されていて、手足が動かせた。
寝かされた状態で身体に伝わってくる感触から、私は一つ分かったことがあった。
先程、『魔法少女』への変身はパワーアップを経て、一瞬でほぼ終わったはずだった。
でもどうやら、『魔法少女』の衣装等を一切身につけていないようなのだ。
今の私の状態は恐らく…全裸にされた上で、リュシの新装備で視界を塞がれ、ベッドのような上へと寝かされている。
それに、私が目を覚ますきっかけとなった、感触は明らかにリュシのものではなかった。
この状況を考えると、急に怖くなってしまった。
「誰か!!助けて!!」
堪らず、私は大声をあげて助けを呼んだ。
もし、私が誘拐や監禁された状態ならば、その犯人が来るだけなのだが。
「ゆるは、大丈夫だよ?」
聞き慣れない男性のような声だった。
しかも、躊躇せず私の身体を触ってきている。
「やめて!!酷いことしないで!!」
動かせる両手両足をバタバタとさせて、抵抗した。
「痛いよ…。もう、酷いなぁ?ボクはリュシだよ?」
明らかに声が違う。
リュシはもっと女性的で、愛らしい声をしている。
こんな低音で声優さんみたいなイケボな訳ない。
「そんなこと言われても、私は何も見えていないので…。
「あっ!!ゴメンゴメン、そうだったね…。確か、ボクが説明してる最中だったんだ。【投影開始】!」
──ブウゥン!!
何かが起動したような音が、耳の近くで響いた。
すると、私の目の前には、毎日見慣れた自分の部屋の天井が広がっていた。
やっぱり、魔法を使った事も含めて、声の主はリュシなのだろうか?
「見え方はどう?今流行りのARゴーグル、真似してみたんだけどね?」
これがリュシが紹介したかった新装備だったのか。
ということは、私が今見ているものは、ディスプレイに映し出された映像なのだろう。
それにしても、『魔法少女』の衣装にARゴーグルは完全にミスマッチだと思う。
「ねぇ…リュシ?」
そう言って私は、リュシと名乗る人物の感触がある脚の方へと顔を向けた。