リアナ
忘れられた城の探索を終え、僕とリトは城を去ろうとしていた。その時、突然、一人の女性冒険者が僕たちの前に現れた。彼女は勇敢な様子で、旅の装備を身につけていた。
「こんにちは、私はリアナ。あなたたちもこの城を探索していたのね。何か面白いものは見つかった?」
彼女は友好的に笑いながら尋ねた。
「僕は翔太、こっちはリト。ちょっとした発見はあったけど、まだ謎は多いね。リアナは何か見つけた?」
僕は彼女に尋ねた。
リアナは首を横に振りながら答えた。
「残念ながらね。私はここの地域について調べている冒険者。特に古い伝説や秘密に興味があるの。」
「そうなんだ。僕たちも色々と不思議なことに遭遇してきたよ。この城にもいくつかの謎があってね。」
僕はリアナに答えた。
リアナの目が興味で輝いた。
「それは面白そう。私もこの辺りの伝説や歴史についていくつか知っているわ。あなたたちの経験と私の情報を組み合わせれば、もっと深くこの地域の秘密を探ることができるかもしれないわね。」
リアナは考え込むように言った。
「ねえ、もし良かったら一緒に旅をしない?私の知識とあなたたちの経験を合わせれば、きっと互いに役立てられるわ。そして、この地域の謎をもっと深く探ることができるかもしれないし。」
リアナのアイディアに対して、翔太は少し考え込んだ後、静かに首を横に振った。
「リアナ、君の提案は魅力的だよ。でも、正直言って、僕たちはまだ君のことをよく知らないんだ。もっと君のことを知ってからじゃないと、一緒に旅をするのは難しいかもしれない。」
リアナは少し落胆した表情を見せたが、翔太の慎重な態度を理解したようだった。「それはもっともね。お互いに信頼を築くことは大切だもの。」
翔太はリアナに謝罪の意を表し、「でも、また会ったら、情報交換くらいはできると思うよ。」と提案した。
リアナは微笑みを返し、「そっか……またどこかで会えたら、ぜひお互いの発見について話し合いましょう。」と言った。
リトは翔太とリアナのやり取りを見守りながら、何かを察したように静かに尻尾を振った。
リアナが去ろうとしたとき、リトが突然彼女の足元に駆け寄り、まるで彼女から離れたくないかのようにそばに留まった。リトの瞳には好奇心と親しみが溢れており、彼はリアナにじゃれつくように小さく鳴いた。
翔太はその光景を見て、驚きとともに微笑んだ。
「ねえ、リアナ。どうやらリトが君を気に入ったみたいだよ。」
リアナは驚いた表情でリトを見下ろし、やさしく彼を撫でた。
「こんなにかわいいドラゴンに気に入られるなんて、私も光栄よ。」
リトはリアナの手の下で喜びを表し、幸せそうに鳴き続けた。その様子を見て、翔太は思いを新たにした。
「リアナ、もしよかったら、リトと一緒に僕たちも一緒に旅をしないか?」
リアナは少し考え、次にリトの顔を見て微笑んだ。「それなら、喜んで。リトがここまで気に入ってくれるなら、一緒に旅をするのも楽しそうね。」
翔太は安堵の息をつき、リトに感謝の目を向けた。リトは翔太とリアナを交互に見て、尻尾を振り続けた。
こうして、リトの気持ちが決め手となり、リアナは翔太とリトの旅に加わることとなった。
彼女は早速、旅の途中で集めた情報や伝説について熱心に話し始めた。彼女の話は興味深く、僕たちのこれまでの旅にはなかった視点を提供してくれた。
しかし、僕の心の奥では、彼女の提案の背後に隠された動機や真意について、少しの警戒心を抱いていた。リアナの真の目的は何なのか、それとも彼女は本当にただの冒険者なのか。まだその答えは見つかっていなかった。
◇◇◇ ここから
途中、僕たちは1つの小さな村に立ち寄った。村の人々は親切で、僕たちに渓谷への道を詳しく教えてくれた。村の子供たちはリトに興味津々で、彼と遊んでいた。
リアナは村の人々に地元の伝説について尋ね、彼らは昔渓谷に住んでいたという古代の賢者の話をしてくれた。その賢者は、星と自然の力を操ることができたと言われていた。
夜が深まり、村での休憩中、僕たちは突然の騒ぎで目を覚ました。暗闇の中で、何者かが僕たちの荷物をこっそりと持ち去ろうとしていた。
「何してるんだ!」僕は声を上げようとした瞬間、リアナが素早く動いた。彼女は驚くほどの敏捷性で、荷物を盗んでいた影に飛び掛かり、彼を地面に押し倒した。
「盗みは良くないわよ。」リアナは冷静に言いながら、盗賊を翻弄していた。リトも吠えて盗賊を威嚇し、僕は慌てて荷物を確保した。
しかし、盗賊は驚くほど身軽で、リアナの捕捉を巧みにかわした。彼は身をひねりながら、宿の窓から外へ飛び出し、夜の闇に消えていった。
リアナは窓から外を見やりながら息をついた。
リアナは冷静さを保ちながら、僕たちに向かって「大丈夫?何かなくなっていない?」と尋ねた。
僕は荷物を確認し、「大丈夫、全てここにあるよ。リアナ、助けてくれてありがとう。」と答えた。
その夜、僕たちはリアナの勇気とスキルに感謝し、彼女にさらなる信頼を寄せた。リアナの行動は、彼女がただの冒険者以上のものを持っていることを示していた。
◇◇◇
村を後にし、僕たちは森を抜けて丘陵地帯へと進んだ。そこは花々でいっぱいで、空気は甘い香りに満ちていた。リトは花々の中を駆け回り、時には僕たちに珍しい花を見せてくれた。
昼頃、僕たちは1つの清らかな泉で休憩をとった。泉の水は冷たく、透明で、僕たちはその水で喉を潤し、少しの食事をとった。
リアナが神秘的に話し始めた。「この泉の水は、地域の伝説に登場する聖なる水かもしれないわ。昔から、この水には特別な力があると言われているのよ。」
僕は心の中で苦笑しながら思った。なんてことだ、こんなありふれた泉が伝説の聖なる水だなんて、リアナの想像力には驚かされるよ。外見はまじめだけど、彼女の頭の中はファンタジーなんだろうな。
リトは泉の水を飲んで、何の疑いもなく楽しんでいた。僕はリトの無邪気さにちょっとした羨望を感じつつ、彼のように何も考えずに水を楽しめたらどんなにいいだろうと思った。
僕たちは泉での休憩を続けた。リアナの話が本当かどうかは疑わしいが、この泉の水が一時の安らぎを与えてくれたのは間違いなかった。
午後には、僕たちは高い丘を越えた。その頂上からは、遠くに広がる光の渓谷が見えた。渓谷からは柔らかな光が放射しており、その光はまるで渓谷自体が生きているかのようだった。
夕暮れ時、僕たちはついに光の渓谷の入口に到着した。渓谷の入口は美しい自然に囲まれ、神秘的な雰囲気を放っていた。僕たちは一晩ここで休むことにし、翌日からの探索に備えた。