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星の涙  作者: ならん
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ブドウ、リンゴ、そして大福

朝の光が宿の窓から差し込み目覚めた。


昨夜の工芸品店の店主の話が心に残っていた。このリアンの町には、まだ発見されていない秘密がある。そして、その秘密を探ることが、僕の新しい目的となった。

朝食を済ませた後、僕は荷物をまとめて宿を出た。町が目覚めるのと同じタイミングで、僕も新しい一日の探求を始める。昨夜のバーで聞いた話を手がかりに、町の古い部分へと足を運んだ。


町の古い地区は、狭い路地や古い建物が密集している場所だった。そこは観光客の目に触れることの少ない、地元の人々の日常が色濃く残るエリア。僕は路地を歩き、壁に描かれた古い絵や彫刻に目を向けた。


しばらく歩いていると、1つの古びた門に辿り着いた。その門は普段閉ざされているようだが、今日はなぜか開いていた。好奇心に駆られ、僕はその門をくぐり、中に入った。


中には広い庭園が広がっており、その中央には古い噴水があった。噴水の水は乾き、時間が止まったような静けさがあった。噴水の周りには、何かを語りかけるような古い彫刻や石碑が配置されている。それらはこの場所の歴史を物語っているようだった。

僕は噴水の周りをゆっくりと歩き、彫刻や石碑を1つ1つ注意深く観察した。


庭園の奥には、大きな古い図書館のような建物があった。その扉は半開きで、中には薄暗い本棚が並び、古い書物がぎっしりと詰められていた。僕は迷わずその建物に入り、中を探索し始めた。


図書館の中は静かで、空気は古い紙の匂いが満ちていた。僕は本棚を1つ1つ確認し、特に古そうな書物や地図を手に取ってみた。それらの中には、リアンの町やエルダナの歴史に関するものが多く、僕は興味深くそれらを眺めた。


1冊の古い書物が特に僕の注意を引いた。その本には、エルダナの伝説や神話が記されており、特に「守護獣の伝説」の章が興味深かった。僕はその章を読み進め、守護獣が隠したとされる「秘密の場所」に関する記述を見つけた。

記述によると、その場所はこの町のどこかに存在し、特定の儀式を行うことで入ることができるらしい。しかし、その儀式の詳細は書かれていなかった。僕はその謎を解き明かすために、さらに書物を探し続けることにした。


この図書館には、まだ多くの秘密が隠されているようだった。僕の探求はまだ始まったばかりで、この謎を解明することが、僕の新しい冒険となることを感じていた。



◇◇◇



図書館の中で、僕は時間を忘れて書物に没頭した。

ページをめくるごとに、エルダナの歴史と文化についての理解が深まっていった。しかし、守護獣の伝説に関する詳細な情報はなかなか見つからなかった。


午後になり、図書館の奥から謎めいた声が僕を呼んだ。振り返ると、そこには古いローブを着た老人が立っていた。彼は図書館の管理人のようで、「探しているものがあるのかね?」と尋ねてきた。

僕は老人に守護獣の伝説と秘密の場所について話し、何か手がかりがあるか尋ねた。老人はニヤリと笑い、「その伝説は古くからこの町に伝わるものだ。しかし、真実かどうかは誰にも分からない」と言った。


それでも、老人は僕の好奇心を評価してくれ、裏の部屋にある特別な書物を見せてくれることになった。彼が案内する部屋には、普通の訪問者には公開されていない、古い書物や文書が保管されていた。


「これらは、我々の町で最も古い書物です。しかし、不思議なことに、これを読むことができる者は非常に少ないのです」と管理人は言った。彼の言葉には謎めいた響きがあった。


その中には、数世紀前の地図や、秘密の儀式に関する文書が含まれていた。僕はその文書に目を通し、儀式の手順や必要なアイテムをメモした。どうやら、この儀式は特定の日時に行う必要があるらしい。リトも僕の肩に乗り、好奇心旺盛にそのページを覗き込んでいた。


「これは...どうして僕には読めるんだろう?」と僕がつぶやくと、管理人は深くうなずき、謎めいた笑みを浮かべた。


「それはおそらく、あなたが異世界から来た転生者だからでしょう。伝説によると、これらの書物は選ばれた者にのみ、その真実を明かすと言われています」と管理人は説明した。


老人は僕に警告を与えた。


「その場所は危険かもしれない。もし本当に存在するなら、そこには古い力が眠っているだろう。十分に気をつけるんだよ」。


管理人が静かに去った後、僕はその古代の書物を手に取り、読み進めることに集中した。周りは図書館の静寂に包まれ、時折ページをめくる音だけが響いていた。リトも僕の横でじっとしており、時折ページを覗き込んでいた。


書物から驚くべき情報を発見した。それは、リアンの町に隠された秘密の場所に関する手がかりだった。その場所は「星の神殿」と呼ばれ、古代の守護獣に関連する儀式が行われた場所らしい。


文書には神殿の場所と、守護獣に捧げる儀式の詳細が記されていた。それによると、神殿はリアンの町から少し離れた森の中に隠されており、特定の夜にのみその入口が現れるという。さらに、儀式には特定のアイテムが必要で、それらは自然界や市場で見つけることができるものばかりだった。そのアイテムとは、なんとブドウ、リンゴ、そして大福だった。僕は文献を見てあきれた。


「なんだこれ?ブドウとリンゴと大福で何かの儀式?」と僕は独り言を漏らした。リトも僕の反応に興味深げに頭を傾げた。


しかし、エルダナの世界では、これらのアイテムが特別な意味を持つのかもしれない。僕は首をかしげながらも、必要なアイテムを集めることを決めた。神殿を探し、守護獣に捧げる儀式を行うためには、どんな小さなヒントも見逃せない。



◇◇◇



興奮とともに、僕は儀式のためのアイテムを集めるために町へ戻った。

市場で、特定の食べ物――ブドウ、リンゴ、そして大福を手に入れようとしていた。


ブドウの露店に着くと、リトの目がキラキラと輝き始めた。

僕が価格を尋ねている間に、リトはこっそりとブドウをつまみ食いしていた。


露店の主が「あら、小さなドラゴンちゃんがブドウを気に入ったみたいね」と笑うと、僕は気づいて恥ずかしくなった。


「リト!まだ買ってないんだから、待ってよ」と僕が言うと、リトは申し訳なさそうに小さく「キュイーン」と鳴き、もう一粒ブドウをつまんでしまった。

僕は苦笑しながら、ブドウを少し多めに購入することとした。


リンゴと大福も無事に手に入れたが、リトはブドウのことが頭から離れないようだった。

準備が整い、僕たちは森へと向かう。儀式の場所を見つけ、古代の謎を解き明かすことにわくわくしている一方で、リトの食いしん坊な行動には目を光らせなければならなかった。

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