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湧き出る効力感

作者: 元気温

 人間は日々の活動が役に立っているとか、自分が成長しているというがないと次第に落ち込み、積極性が失われる生き物です。前向きな姿勢を維持するためには周囲の環境に影響を及ぼせている実感、効力感が必要とされています。

 無気力な人が増えているといわれることも多くなりましたが、その一つの原因として、効力感を獲得する機会が減っていることが挙げられます。

 この効力感の肝になるのは自分の行動が何かしらの影響を周囲に与えたと実感すること、そして自分自身の考えで実行することです。

 まず初めに、人間は意識を持たない幼児期から効力感を感じています。幼児が泣くのは何のためかといえば、両親に自身の不快感の原因を排除してもらうためです。誰にも反応されず、泣くことに意味がないと理解した場合、幼児は泣くことをやめてしまいます。自身の行動に意味はないと判断がされるのです。

 次に、成長すると効力感の獲得も複雑になります。単純な身体動作による反応だけでなく、社会

的な評価や関係なども無視できません。その中で、本当に自分が心から喜べるのかどうかが大きな問題になります。両親や教師からの干渉は強い影響力を持ち、対象の意欲を減退させることは容易です。自分が興味を持って勉強している所に現れ、適当にほめて、何かご褒美を与えるといったことは最悪です。その瞬間、自分が興味を持っていてやっていたことが、褒められるためにやっていたことにすり替わってしまうからです。

 

 このように前向きに、精力的に、勤勉に学び、働くには、適切に効力感が獲得できるような環境が整えられなければいけません。

 しかし、現実的に一人一人に合わせて対応するのはあまりにも困難。そこで用意されたのがこちらの効力感調整装置、「できるくん」です。

 使い方はいたってシンプル。ヘッドギアのように装着するだけです。

 効能としては他人から受けた命令を自分のやりたいことだと変換し、得られる効力感を高める作用があります。

 今どきのワークライフバランスだとかゆとり教育といった考えを持った若者であっても時間を忘れて一心不乱に目の前の課題に取り組み続けること間違いなしです。

 長時間着用すると外してもその効果が消えないようになります。どんな時でも前向きになります。どんな怠け者であっても関係ありません。

 欠点を上げるとするならば、装着者の作業への集中が解けない点でしょうか。時々あるのですが、喜びからついつい長時間労働をしすぎてしまって、気づいたときには...というケースが見られます。長期休養中のはずなのに隠れて働いていたなんてこともありましたね。

 オンとオフの切り替えも管理者用の登録をすれば、外部から操作が可能です。

 世の中には自分で考えて、行動するということができない人間は多々いるもので、私もその一人なんです。今こそ装着していませんが日ごろから欠かさず利用しているんですよ。あれだけ嫌だった労働が嘘のように楽しくなって、これがない生活なんて考えられません。

 

 

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