80・猫を以て毒を制す
お昼がほど近い午前中のうちに、我々はクロスローズ工房へと再びお邪魔した。
今日から数日はここに泊まり込みである! ピタちゃんはシェルター内で朝寝をしている。まぁ、今日は退屈な作業になるってわかってますし。
「おはよーございます、昨日はどうも!」
そんな感じで元気に肉球を掲げてご挨拶。
出迎えてくれたクイナさんは、力なく微笑んだ。
「おはようございます、皆さん……ふぁ……」
なんだかびみょーにお疲れっぽい顔色である。
「あれ? 寝不足ですか?」
「……むしろ、ずっと寝てる感じですねぇ。徹夜で、その……夢が覚めないうちにと思って、いろいろ作業してました……?」
ちょっと何言ってるかわからない。
が、睡眠不足であることは間違いなさそうで、リルフィ様が心配そうに寄り添った。優しい。
「あの……でしたら、今日は横になっていただいても大丈夫ですよ……? 急ぐことではありませんし……」
「ん……ありがとうございます。でも、思いついたことはやっちゃわないと、逆に眠れない性質でして……あ、ユナは練習に行ってます。とりあえず、こちらへ」
昨日と同じように、店頭から工房へ案内されると――
そこそこ蒸し暑い。
どうやら夜通し、釜を使っていたらしい。湿度も高めでよくわからぬ薬品系の匂いが少し……もちろん窓は全開である。
そして作業机の上には――
灰色の紙で作られた、いくつかの小袋。
えっ……これ……まさか……?
「……昨日の紙を、袋状に加工したいとのことでしたので――一応、試してみました」
……ペーパーパウチの袋である! 記念すべき試作一号!
しかも、これは……継ぎ目や接着部分がない!
「こ、これはっ……! クイナさん、一体どうやってコレを!?」
「えっと……大きい紙を一枚ずつ作ると、そこから袋状に加工する手間がかかると思いましたので……レンガの表面に原料を塗ってから乾かしてみたんです。四隅と直線の部分は穴が空きやすかったので、レンガの角を削って丸くして……原料の粘度を高めたので、コストは一割くらい上がると思いますが、これなら袋の形にはできるかな、って――あと、厚みが少し、いびつなんですが……」
……たった一晩でさらりととんでもないことを成し遂げて、生あくびを一つ。
……………………ステータスなどというものは、まったくもってあてにならぬ。
いや、高い分には相応なのだろうが、クイナさんは割と平均的とゆーか、職人としてはっきり目立つほどの評価ではなかった。それにもかかわらず、この有能ぶり!
レンガサイズの小袋を手に取り、俺は感動に打ち震える。
「……すばらしい……すごいです、クイナさん……! ちゃんと袋状になっていますから、あとは上部の密封の方法と、毒性の検証ですね!」
クイナさんが微笑みつつ、ちょっと困ったような顔をした。
「糊はですね……もう全然くっつかなくて。折りたたんでクリップで留めるか、蝋で塞ぐか……でも、蝋も簡単に剥がれちゃうんですよね」
「そのあたりもおいおい、考えていきましょう。他の職人さんや魔導師さんの知恵もお借りしたいですし、私のほうでも考えておきます! まずは現時点での、安全性のチェックからですね」
この時点で毒性があったら、密封の方法も考えるだけ無駄である。とにかくコレが一番大事。
「ではさっそく、原料について教え……あ。でも、これはさすがに工房の秘密ですよね。契約前に明かすのはマズいでしょうし、えぇと……なんかこう、間違いなく毒性のあるものとかって使ってます?」
クイナさんが曖昧に頷いた。
「教えるのは別にいいんですけど……あの、毒というか……薬品はきっと、そのまま飲んだら普通にお腹を壊しますよね?」
…………それはそう。ルークさん、バカなことを聞いてしまった。
大事なのは、その毒性が内容物となる食品に染み出すかどーかである。
「とりあえず、水をいれてみて、色や匂いがつくかどうかを確認してみましょうか」
結果。無色、無臭。
水をいれた状態で湯煎もしてみたが、中の水がお湯になっただけであった。
空の状態で煮てみても、内部に鍋側の湯が浸透することはなく、防水性はほぼ完璧のようである。
これが数日後、数ヶ月後にどうなっているかも確認せねばならないが、現時点では満点の成績といって良い。
ルークさんは改めて茫然自失である。
「……す、すごい……え、なんでこんなことになってるんです……? これ、本当に紙なんですよね?」
プラスチックや金属系の素材は一切使われていない。こんなもん、前世の技術でも実現できるかどうか……?
クイナさんは恥ずかしげに微笑んだ。
「どうしてこうなったのかは、作った私にもよくわからないです。使っている草はこれでして……川岸や水の中によく生えているんですけど、名前は知りません。硬くてえぐみが強くて、食用にもならず使い道がなかったので、雑草として扱われてます。牛でも食べません」
クイナさんが棚から取り出して見せてくれたのは、束ねられた水草のような植物であった。寒天の原料になるテングサに近い形状だが、色は真っ黒。触るとゴワゴワしている。
「これを細かく刻んで煮込むと、灰色のどろっとした液体が出てきます。そのままだといくら漉いても紙になんかなりませんが、これに別の植物から抽出した薬液を二種類混ぜながら、さらに煮込むと粘度が上がり――それを紙製造機にいれれば、先日お見せしたような紙になります。紙製造機を使わず、袋状にするためにレンガへ塗った場合には……追加でちょっと魔力をあててあげないと、うまく固まりません。そのまま放置して乾かすと、強度が足りずにぽろぽろと崩れてしまうみたいです」
魔力。
製造に魔力が必要なのか……?
乱暴な推論を重ねると、この謎の草は寒天のよーに何らかの処理で固まる成分を含んでおり、それを抽出して化学反応を促す薬品を混ぜつつ魔力をあてることで分子構造が変化、プラスチック的な安定性と強度を獲得する……という話なのだろうか?
ついでにクイナさんは魔力C評価だが、魔導師ではない。魔法系の適性も持っていないはず。この部分は量産体制の構築に大きく影響する要素であり、確認は必須であろう。
「えぇと、魔力をあてる……というと、どのような作業を?」
「あ、魔導師さんほどの強い魔力ではなく、魔導ランタンを光らせる程度の、一般的なごく微量の魔力ですよ? 体内魔力っていうやつですね。紙製造機もそれで動きますから、動作時に自然に混ざるんだと思います」
魔導ランタンは、メイドのサーシャさんもリーデルハイン邸で使っていたアレだ。一般人でも使える魔道具の代表格という話であった。
「私も魔力の放出なんてできませんし、職人が素材に魔力をあてる時には、こういう道具を使うんです。私達が扱う素材の中には、わずかな魔力に反応して性質を変えるものがそこそこありますから」
そう言ってクイナさんが棚から取り出したのは、版画に使う「バレン」のようなモノであった。漢字で書くと馬楝、もしくは馬連である。競馬用語ではない。版木に紙をあてて擦る時のアレである。
ただしこちらはちょっと大きめな手の平サイズで、見た目は赤っぽくて銅製と思われる。形状的には近いが、用途も素材もバレンとは別物だ。
「リルフィ様は、アレをご存知ですか?」
「はい……あれは、発明者の名前をとって『ウォルターズ・ソーサー』と呼ばれていまして……ウォル盤と省略されることが多いですね。クイナさんの説明通り、素材に魔力をあてる時に使う魔道具ですが……王都で研究もされている職人さんには普及しているかと思いますが、田舎ではなかなか見かけません……うちにもありませんね……」
アイシャさんが横から囁く。
「ていうか、リルフィ様はそもそも『魔導師』だから必要ないんですよ。魔導師ならウォル盤を使わなくても、素材にそのまま、純度が高くて強い魔力を注げますから。私もお師匠様も同様です」
「そうですね。魔導師の方には無用の長物です。リルフィ様は確か、魔法水もお作りになられるんでしたよね? 薬液の中に魔法水を混ぜても、ほぼ同じ効果が得られますよ。もちろん魔法水は高価なので、コスト的には現実味がなさそうですが」
リルフィ様が俺の喉元を撫でた。うにゃー。
「……魔法水が高価なのは、需要が少なく、安くしてもあまり売れないから、という側面があります……私が作って、ルークさんがお使いになる分には……さほど負担にはならないかと――それ以前に、私が袋作りに参加すれば、魔法水も必要ありません」
大量生産となると無理だろうが、少量生産のうちはそれも良いかもしれぬ。
しかし、リルフィ様に多忙な労働はちょっと……ルークさんを構うヒマがなくなってしまっては寂しいし本末転倒。袋の生産はなるべく機械化し、普通の人でも可能なレベルにしていきたい。リーデルハイン領での雇用安定にもつながるであろう。
……いやまあ、リーデルハイン領の場合は、そもそも人手不足が重要な課題なんですけど、そこはそれ。どっか後腐れなさそうな所から、百人くらい連れてこられないものか……
ないものねだりをしても始まらぬので、とりあえず毒性の検証だ!
袋の中の水やお湯は無色、無臭のままであり、現時点で薬品類の染み出しはないものと思われる。
が、多くの食べ物は先人達の経験の蓄積を経て、その毒性が今も検証され続けている最中であり、「絶対」はない。数年前までは安全とされていたものが、その後の研究によって「やべぇ」と判明する例も当然あるし、ある時までは危険視されていたものが実は安全だった、なんて事態もたまに起きる。
「……ルーク、毒性の検証ってどうやるの?」
「そのことでしたらご心配なく、クラリス様! すでに策を講じております。猫魔法、『テイスティキャット』!」
「カッカッカッ」
クラッキングとともに作業机に現れたのは、鼻眼鏡をかけて白いヒゲを生やした、気難しそうなお爺ちゃんの白猫さん。黒いシルクハットをかぶり、貴族の装束を着ておられる。
ルークさんを一睨みし、一緒に出てきた猫サイズのアンティーク調アームチェアにどっしりと腰掛け、頬杖をついている。偉そう。とても偉そう。
クイナさんはびっくりして眼を擦り、言葉を失っていた。
そしてリルフィ様やクラリス様も、ルークさんよりだいぶ偉そうな猫様のご登場に戸惑っておられる。
「……ルークさん、こちらの方は……?」
「テイスティキャットさんです。毒見、味見、料理の審査など、いろいろやってくれる猫さんです。ま、百聞は一見にしかずとゆーことで」
ルークさんが、袋に入った水を差し出すと、テイスティキャットさんは鷹揚にそれを口に含み――
一瞬後、シルクハットのてっぺんがパカッと開き、札が飛び出て「◯」と表示された。
毒性はない。大丈夫!
「これは安全です。毒性があった場合には、帽子から×の札が出て、テイスティキャットさんは怒ってその品を吐き捨てます。料理の審査時は表情で採点する感じですね。今はしかめ面ですが、美味しいものを食べるとご機嫌が良くなります。こんな感じに」
コピーキャットで錬成したチーズケーキバーを差し出すと――
テイスティキャットさんはそれを一口かじるなり、ほんわかと優しい笑顔に転じた。ご機嫌である。椅子からはみ出した尻尾もいー感じにゆらゆらと揺れている。帽子からは堂々の「☆」マーク。
「今後、毒性のチェックはこちらのテイスティキャットさんにお願いします。一ヶ月後、半年後といった長期保存性の検証に関しては、密封技術を開発してからですね」
密封できなければまず間違いなく腐るわけで、袋の毒性云々の前に食中毒確定である。
なお、テイスティキャットさんの毒物判定は「適量」が前提であり、健康に影響のない範囲であればスルーしてくれる設定となっている。
実は毒にならぬものというのは存在しない。どんなものにも「適量」という概念がある。
醤油は少しならおいしいが、1リットルも飲んだら死ぬ。DHMO(※水)の致死量はおよそ6リットル。塩の致死量は150グラム前後。カフェインは個人差が大きいようだが、たったの3グラムから10グラムでやべぇことになる。コーヒーならカップのサイズにもよるが、20杯〜40杯前後?
「そんなに飲めんわ」というのはごもっともだが、このように日々の飲食物、嗜好品でさえ、「過ぎれば毒」なのだ。
また、薬の多くも同様であり、結局は「量」と「効果」のバランスが大事とゆー話になる。
テイスティキャットさんが引っ込んだ後、アイシャさんが改めて「ほああ」と変なため息を吐いた。
「……ルーク様の猫魔法って、もう魔法じゃなくて、何か別の概念ですよね……?」
わかる。使ってる俺も若干ドン引きしてる。超越猫さんは手加減とかゲームバランスというものをご存知でない。
ともあれ毒性については、即時影響する要素はなさそう。これは喜ばしい。
煮沸や長期保管の影響で染み出すものがあるかもしれないので、決して油断はせぬが、引き続き「ミートソース」での検証に移るとしよう。
水やお湯では問題なくとも、酸性やアルカリ性の物質などに触れることで化学変化が起きる可能性はある。
「ただいまー……あ、やっぱりルークさん達も来てたんですね」
そうこうしているうちに、ユナさんがボクシングの練習から帰ってきた。
気づけばそろそろ太陽も中天を越し、お昼の時間が過ぎつつある! これは一大事である。作業に没頭しすぎていた。
「あら、ユナ、おかえり。今日は早かったのね?」
「……明日、アレがあるから、今日中に貸衣装に行ってくる……行きたくないけど」
貸衣装?
アイシャさんが手を叩いた。
「あ! もしかして、ユナもアルドノール侯爵邸の夜会に呼ばれてる? そっか、王国拳闘杯準優勝だもんね。そりゃ呼ばれるよね」
「アイシャも? あれ? 魔導閥と軍閥って、そんなに仲良くないよね……?」
「いつもなら出ないけど、今年はリオレット陛下が出席するから、師匠筋のルーシャン様はそのお供。こちらのリーデルハイン家の方々も軍閥だから出るし、ルーク様も猫のふりして出席予定」
「にゃーん」
猫のふり大事。わざとらしく一声鳴くと、ユナさんがくすりと吹き出した。
「ルークさんも? ふふっ、タキシードとか似合いそうですよね」
「さすがに服は着ませんが、粗相のないよう、おとなしくしているつもりです! ところでユナさんは、夜会とか苦手なんです?」
「うーん……軍閥の方々はボクシング興行の後ろ盾だしパトロンでもあるので、呼ばれたら行かないとですよね。でもお酒嫌いだし、愛想よく振る舞うのも疲れるし、行かなくていいなら練習か睡眠時間にあてたいなー、っていうのが本音です」
正直な子である。すごくわかる。
「でも、皆さんと一緒だって聞いて少しほっとしました。知り合いがノエル先輩……うちの王者なんですけど、その人しかいないかと覚悟していたので。リルフィ様やクラリス様も、なるべく一緒にいていただけると嬉しいです」
恥ずかしげにテレたように笑うユナさんは、とても可憐であった。リルフィ様も「不安なのは自分だけではない」と知ってちょっと嬉しそう。
アイシャさんが「しょーがないなー」的な苦笑いを見せた。
「とはいえ玉の輿のチャンスなんで、ユナみたいに貴族の夜会を嫌がる子って少数派ですけどね。私とかはほら、一応は官僚なんで年齢制限とかないですし、のんびりだらだら長く働けますけど……女子の拳闘士は二十代半ばで引退する人が大半ですし、その後のことを考えると、貴族の有望株と結婚って勝ち組の定番ルートなんですよ。実例もそこそこありますし、ユナなら引く手数多だと思うんですけどねー」
そういえばヨルダ様の奥方、つまりサーシャさんのお母様も拳闘士出身だったはずである。リーデルハイン領で織物工房をされているが、残念ながら俺はまだお会いしていない。
娘のサーシャさんを見る限り、かなりの美人さんなのは間違いないが、現役だったのは十五〜二十年くらい前のはずなので、ユナさん達との接点はないと思われる。
クイナさんが眠そうに微笑んだ。
「ユナが貴族と結婚してくれたら、この工房も安泰なのかしらねー……私にはそういう話が全然ないし」
「そういう流れでの安泰は長続きしないからダメでしょ……せっかくルークさん達がお仕事の話を持ってきてくれたんだから、これを工房の収入につなげないと……あ、そうそう。縫製職人さんのところで、例の袋の密封に試せそうな物を貰ってきたよ」
さすがは職人街育ち!
横のパイプがいろいろありそうなことには期待していたし、接着剤については「まぁ、どっかにあるやろ」とは思っていた。
前世でも接着剤の歴史は極めて古く、初期のアスファルトは石器時代に生まれ、矢じりの接着などに使われていたと聞く。
獣の皮から煮出したニカワや、固まりやすい樹液などは、こちらの世界にも当然あるだろう。米のとれる地域ならデンプン糊もないわけがない。
……問題は、「ペーパーパウチ」に流用できるものが、既にあるかどーかである。
ユナさんは作業机にリュックをおろし、愛用のボクシンググローブをよけて、中から二つの小瓶を取り出した。
ガラスの蓋には、瓶との接合部にゴム的なものが塗ってあり、それが隙間を埋めて密閉性を保っている。
かたや無色透明。
かたや白濁。
どちらもそこそこの粘度があるようで、瓶の中でも波打ったりはしない。溶剤と木工用ボンドみたいな見た目であるが、たぶん違う。
「これ、私のボクシンググローブを作ってもらっている、縫製工房で貰ってきたんです。革の補修用の接着剤として研究していたらしいんですけど……革に使うと、そこだけが硬くなりすぎて危ないからってことで、グローブへの使用許可は下りなかったみたいで。それで今は馬具とか革鎧の補修に使おうとしているんですが、それだけだとあまり需要もなくて、持て余してるって聞いて……もしかしたらと思って、試供品を貰ってきちゃいました」
ルークさんは猫目を見開き、無言で震える。
…………これ、アレやん……どう見てもアレですやん……?
缶詰開発計画の頓挫からたった数日で、このような新技術に巡り会える偶然が、果たして起こり得るものであろうか……?
もしや俺、知らないうちに悪魔か何かと契約とかした? それとも亜神様って運命力とかそーいうのまで操れる? もしくはトマト様の加護ってそれほどまでに強力なもの……?
「白いほうは、ダンジョンに生息するライムライトスパイダーの巣を採取して加工したもので……透明なほうは工房の秘密らしくてよくわかりませんが、高いものじゃないとは思います」
そしてユナさんは、慣れた手付きで作業用の革手袋を装着。
二本のガラス棒をそれぞれの瓶に一本ずつ差し込み、二種類の液体をほんの少しだけ取り出した。
ペーパーパウチの端切れにそれぞれを塗りつけ――慎重に、ぺったんと貼り合わせる。
これは、やはり……!
「主剤と硬化剤に分けられた、二液混合タイプの強力接着剤ッ……!?」
「え? えっと……そうですね。二つを混ぜると固まるみたいです。ルークさん、知ってたんですか?」
……この国の技術レベル、さらに各種資源のもつ可能性は、やはり侮れぬ……
ユナさんがもたらした想定外の福音を目の前に、ルークさんはただただ、この僥倖と運命の異常な確変に恐れ慄くばかりであった。