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49・転生するも他生の縁


 さて、お庭に出た我々一行は二組に分かれた。

 季節は春、お庭には様々な名称不明の花々が咲き誇っており、クラリス様とサーシャさんは王宮のメイドさんの案内で植物鑑賞。

 一方で、クロード様とルークさんはベンチで一休み。


「ルークは僕が預かっておくから、クラリスとサーシャは庭を見せてもらうといいよ」


 そんな感じに、クロード様が気を利かせてくれたのである。

 つまり俺にとっても、クロード様と二人きりで話せる好機が到来した!

 もちろん大きな声は出せないが、ベンチの周囲に他の人影はない。小声で話す分には問題なかろう。


「…………さて、ルーク……さん? ええと、呼び捨てのほうがいいのかな?」

「呼び捨てで大丈夫ですよ。クラリス様にもライゼー様にも呼び捨てにしていただいてます」

「……それじゃ、ルーク。君はもしかして……『地球』から来たのかな。しかも日本? 富士山とか琵琶湖とかがある、あの日本?」


 士官学校の寄宿舎で俺が出したメッセージは、きちんとクロード様に伝わっていた。


「はい、その日本です。クロード様も……やっぱり転生者だったんですね。パラレルワールドとか平行宇宙とか、そういう可能性もありますので、まったく同じ世界の出身かどうかはまだわかりませんが……あ、平成生まれです」

「……僕も同じく。ただ、正確な年は憶えていないんだ。そもそも記憶がものすごく曖昧で、断片的で……両親の名前や顔、自分の名前すら思い出せない。でも……風景とか食べ物とか地名とかの一般的な知識は、ある程度まで思い出している。前世の死因は憶えてないんだけど、成人してからの記憶がまったくないから……若いうちに死んだんじゃないかな、って、勝手に思ってるんだ」


 ……思い出した?

 ん? なんか俺とはだいぶ違う状況?


「ええと……私の場合は、前世の記憶は最初から全部残ってました。事故死した瞬間まではっきり憶えています。クロード様は、そうではなかったんですね?」

「う、うん。他の転生者……なんて滅多に見つかるものじゃないから、他がどうなのかはわからないけど――僕の場合は、10歳の頃まで、この世界の人間として普通に暮らしていたんだ。でもある時、サーシャとのスパーリング中に……」


 ちょっと聞き流しにくい単語が出てきた。翻訳ではない。響きもそのまんま。


「……スパーリング?」

「あ、聞いてない? 僕、子供の頃はサーシャと一緒に、サーシャのお母さんから拳闘を習ってたんだよ」


 聞き間違いではなかった。こんなファンタジー感満載の世界で聞く単語としては、妙に現代的すぎて違和感しかない。


「いえ、拳闘を習われていたとゆー話はうかがってます。ただ、『スパーリング』みたいな専門用語が、その……あまりにそのまんま出てきたもので、ちょっと面食らいまして」

「ああ。たぶんボクシングに関しては、僕らと同郷……日本かどうかはわからないけど、とにかく地球出身の誰かが、こっちで広めたんだと思うよ。グローブとかトランクスとかリングシューズとか、ほぼそのままのデザインだし、マウスピースやバンテージ、練習用のヘッドギアみたいな装着品も、素材はともかくとして同じ役割のものが最初からあったみたいだ。ついでに、こっちには『デトロイト』なんて地名はないのに、教本には『デトロイトスタイル』が構えの一例として記載されてる。名付けの意味はこっちの人達にはわからないから、由来不明のままで」


 まじかぁ……これはいよいよ、推論が裏付けられてきた。


「あのー……実はちょっと気になっていることがあるんですが、前の世界で『近代的なボクシング』が成立したのって、いつ頃の話でしたっけ……?」

「え? ……ごめん、そういうのはちょっと憶えてない――っていうか、そもそも知ってたかどうかすら怪しい」


 まぁ、それは仕方ない。俺だって釣りとか農業に関する知識はある程度もっていたが、量子物理学とか大人女子のシックな春コーデとか言われたら完全にお手上げである。


「……あ、でも拳闘って、古代ギリシャとかにもあったんだっけ?」

「はい。でも、起源となるとそのあたりでしょうが、ルールはもう完全に別物のはずです。中世でも『単なる素手の殴り合い』みたいな時代がそこそこ長く続いたっぽいですし……近代風の道具やルールが整備されたのは、せいぜい西暦1800年代から1900年代にかけてじゃないですかね?」


 つまり、俺が生きていた頃からさかのぼって、百年から二百年くらい前の話。

 一ラウンドが三分と決まったのもその頃で、それより昔には「一回ダウンするごとに一ラウンド」「数十ラウンド戦ってもまだ勝負がつかない」なんてこともあったそうな。知識系のバラエティ番組かなんかで見た。いわゆる賭けボクシングの全盛期である。


「王都で拳闘のポスターも見かけたんですが……なんか絵に描かれたリングとか衣裳とかが、前世のボクシング漫画かと疑うよーな見事な完成度でした。一瞬、元の世界に戻ったのかと錯覚したほどです」

「ああ……わかる。このあたりの地方では特に、伝統的に拳闘が盛んなんだ。ネルク王国内では、法律で許可されている唯一の賭博だし、公営の闘技場が王都だけで五ヶ所もある。飲み屋や修練場にある私設のリングはいくつあるのか見当もつかない。闘技場だと治癒士がリングサイドに常駐していて、試合後の治癒魔法も義務づけられているから、ある程度まで強ければ冒険者より安全に稼げるし……子供の習い事としても定番で、選手の数は女子も含めてかなり多いよ。人気のある選手は、引退後に男爵の地位を与えられたりもする。だから地方の町長には拳闘士出身者が珍しくないんだ」

「ふむふむ……あの、それだけ世間に浸透しているとゆーことは……いつ頃からあるんです?」

「……ええとね……ちゃんとした数字は、調べてみないとわからないけど……少なくとも、三百年は経ってると思う――」


 しばし沈黙。

 俺の問いが持つ意味を、クロード様も理解したらしい。


「三百年以上昔に、この世界で近代的なボクシングを広めた人って……我々と近い世代の人だったんでしょうね」

「うん……そうかも」


 士官学校の制服を見た時の推論が、また補強されてしまった。今度はデザインだけでなくルールや名称まで含めた話なので、もっと確度が高い。

 これがタイムトラベル的な事象だった場合はともかく、「二つの世界で時間の流れ方が違う」という理由ならば、今後、数十年後とか数百年後にやってくる「誰か」もまた、我々と近い世代の人かもしれない。「だからどーした」という話ではあるが、似た境遇の同志としては、せめてこちらの世界を住みやすい環境に整えておいて差し上げたいものである。よもや俺がラストってことはないだろう。


 気を取り直して、俺はクロード様の腕を肉球でぺしぺしした。


「あ、話を脱線させてしまってすみません。で、10歳の頃のスパーリング中に?」


 クロード様が恥ずかしげに笑う。


「ああ、うん……ちょっと事故っぽい流れでいいパンチが当たっちゃって、完全にKOされて……その後に目が覚めたら、前世の記憶を断片的に思い出していたんだ」


 なるほど。頭を打った衝撃で――普通なら「おかしくなった!」とでも考えるところだが、俺は状況こそ違えど同じ転生者であり、納得するしかない。


「つまり、こちらで生まれた時点では、転生者としての自覚とか記憶とかなかったんですね」

「うん。思い出したのも、前世の記憶っていうより……『昔、こんな風景を見たな』とか『こんなもの食べたな』っていう、思い出話みたいな感覚かな。だからたまに、こっちの世界の記憶とごっちゃになる。ルークの場合は……子猫として生まれた時点で、もう喋れる状態だったってこと?」

「とゆーか、自分はまだ生後0歳なんです。最初からこのサイズで、近くに母猫とかもいませんでした。気づいたら山の中に一匹で放置されていて、その後、風の精霊さんに助けてもらい、リーデルハイン邸の近くまで送ってもらったんです。あとは学生寮でクラリス様が話された通りですね。それと……ラン様の前では言えなかったのですが……」


 リーデルハイン邸の皆様は既にご存知の事実、クロード様にも明かさねばなるまい。


「私、種族は『亜神』ということになっていまして、クラリス様も称号『亜神の飼い主』を獲得されています。ご家族の皆様にもそれぞれ、亜神のなんたらかんたらという称号がつきまして……クロード様にも近いうちに、何かそれっぽい称号がつくかもしれませんので、発覚してもどうか驚かないでください」


 クロード様がぴたりと停止した。


「…………あじん。亜人? 『人に近いもの』って意味?」

「そっちではなくて『亜神』です。神、いわゆるゴッドのほうです」


 姿は猫、いわゆるキャットであるが、字面も似てるし似たようなものであろう。

 G・O・Dと、C・A・T。「じー・おー・でぃー」と、「しー・えー・てぃー」。

 こうしてみると濁音の有無と母音のズレが混ざる程度の違いであり、もしも方言だったらもはや同じ単語といっても過言ではあるまい。過言か。


 神は猫であり、猫は神である――! みたいなことをルーシャン様なら言いそうだが、小心者のルークさんはまだそこまで開き直れない。

 ちなみに犬は「D・O・G」であり、神の逆となっている。つまりお犬様は逆立ちすると神になる。英単語ってふしぎ。


 クロード様は膝上で丸まった俺を見おろして、引きつった笑みを浮かべた。


「……ま、またまたぁ。かつごうとしても駄目ですよ。だって、そんな……猫じゃないですか」


 動揺しつつも言葉遣いが丁寧になるあたり、クロード様も長いものには巻かれがちな性分であるらしい。共感! すごくわかるそのきもち!


「自分も半信半疑なんですが、魔力鑑定の結果が『亜神』だったので……クラリス様やリルフィ様、ライゼー様はもちろん、サーシャさんやヨルダ様も既にご存知です。あと猫魔法という変な魔法も使えます。今もその魔法で、ライゼー様達の様子を確認し続けているんですが……ま、そのあたりはおいおい」

「えっ」

「あとですね。午前中にご紹介したピスタちゃんは、本当の名前をピタゴラス様と言いまして、ラン様が見破った通りの神獣、トラムケルナ大森林のクラウンラビットです」

「えっ」

「そして私の従者です」

「えっ」

「それから亜神の能力で、会った人の適性や称号を魔力鑑定みたいな感じで把握できます。クロード様の適性には……なんか『主人公補正』と『転生特典』なんてのがあるんですよ。これを見て『もしかしてお仲間!』と思ったんですが、この適性に心当たりってあります?」

「ない! ないよ、そんなの!」


 語尾に!マークがついているが、声はあくまで押し殺した小声だ。


「そもそも僕、適性なんか一個もないですよ? リル姉様に鑑定してもらった時も魔力なんてなかったし、士官学校の入学時にも何も……! いやまぁ、それが普通だけど!」

「あー。魔力鑑定で把握できるのって、称号と特殊能力と、魔法系の適性だけみたいなんですよね。私の眼から見ると、世の人々には他にもいろんな適性がありまして……槍術とか弓術とか、政治とか商才とか、鍛冶や建築、なんてのもあります。これで見ると……クロード様って、めちゃくちゃ優秀なんですよね。弓なんて達人級で、ヨルダ様を超えてます」

「嘘だ! それはさすがに嘘だ! そもそも筋力が違うから威力も違うのに!」


 ヨルダ様は弓術B。クロード様は弓術Aである。適性では明確に勝っているのだが……確かにクロード様の「武力」はBどまりなので、このあたりは体格とか筋力とか経験の差も影響しているのだろう。

 どうも適性というのは、「能力に対する掛け算の因子」になっているような気がする。

 各人には筋力やら反射神経やら記憶力やら発想力やら、そうした細かな要素がいろいろとあり、それに対して「適性」が掛け算のように作用した結果、「じんぶつずかん」上では体力武力知力などの大雑把な「ステータス」として総合的に評価される――的な流れ。


「実際の武力というより、素質の話かもしれませんね。本格的に体を鍛えて経験を積んだら、もっと伸び代があるんじゃないでしょうか。たぶん、クロード様の弓の上達速度には、ヨルダ様も驚いていたんじゃないですか?」

「……ま、まぁ……弓は褒めてもらったけど……でも、槍では父上に全然敵わないし、拳闘ではサーシャに手も足も出ないし……」

「ライゼー様にも父親としての威厳がありますし、まだ十五歳の息子には、さすがに意地でも負けられないでしょ……必死だと思いますよ? それにサーシャさんについては、自身の弱さを嘆くより、サーシャさんの強さを褒めてあげるべきです。だいたいサーシャさんが強くなれたのも、幼い頃からクロード様がその良き練習相手になってきたからでしょうし。むしろ『サーシャはワシが育てた!』ぐらい言っちゃってもいいんじゃないですか?」


 クロード様が、眼をぱちくりとさせた。確かに子犬っぽいわかりやすさ。


「……そんなこと、初めて言われました」

「まぁ、サーシャさん本人は言いそうにないですよねー」


 あの子をデレさせるのは、なかなか大変そうである……


「で、改めて、『主人公補正』と『転生特典』の件なんですが」

「いや、それはほんとに心当たりないです。だいたい僕、ぱっとしない印象でしょ?」

「……ええとですね。正直に言うと、子爵家の長男で、一見すると地味系なのに有能で、可愛い妹さんがいて幼馴染のメイドさんといー感じで親友の男の娘とも仲が良くて――『ギャルゲの主人公かな?』って思いました」


 本音で話すと、クロード様が両手で頭を抱えてしまった。


「ちょ、ちょっと待って……いや、その……『ぎゃるげ』って言葉の意味はわからないんだけど……なんか今、心に刺さるものがあったような……え、何この感じ?」


 記憶喪失気味ではありながら、深層心理に響くものがあった模様。

 主人公補正って、もしかして……周囲に可愛い子が集まる感じのアレ? ……いやまさかな!

 そもそも「人間」のクロード様は、あの超越猫さん達の管轄ではないから別ルートからの転生だろうし、あんなふざけた……ユーモア精神に溢れた神様がそうそういるとは思えない――褒めてるよ? ディスってないよ?


「転生特典というのも謎ですよね。なんか珍しい経験ができるとか、能力にちょっとずつ補正がかかるとか、良さげな運命の悪戯が起きやすいとか、そんな感じでしょうか……? いずれにしても、適性関係は謎が多いですし、調査方法も限られているので、気にせず努力を重ねるのがいいと思います。努力に勝る天才なし、なんて格言もありますし!」

「は、はぁ……」


 困ったらあたりさわりのない一般論で締める! ルークさんの得意技だ!


 ……一応、この適性に関して推論はある。

 クロード様は、たぶん俺とは別ルートからの転生であろうが――俺は以前、「自分は、超越猫さんがこの地にもたらした実験動物、あるいは観察対象なのではないか」という推論を持っていた。

 これはクロード様にもそのまま当てはまる。

 クロード様をこの地に転生させた「誰か」にとって、クロード様が、いわゆる「観測点」や、「地上を観察するためのカメラ」だった場合。

 すぐに死なれては困るから、生存に役立つなんらかの優遇措置を施す可能性は充分にある。


 俺の場合は「亜神!」という極端な特典だったが、そうして考えると、主人公補正や転生特典は、たとえば「ピンチになっても生き残りやすい!」とか「良い縁に恵まれやすい!」とか、「美少女に好かれまくってハーレム展開!」とか、そういう流れに影響しそうなネーミングだ。

 あ、クロード様はサーシャさん一筋なのでハーレムは無理。クラリス様も許さぬであろう。もちろん俺も主のご意向に従う。


 ともあれハーレムは冗談だが、「良い縁」に関しては――

 ……俺とクロード様がこうして出会ったのって、「偶然」なのだろうか……?

 よもやクロード様の能力が水面下で影響した結果、俺はリーデルハイン家に拾われた、なんてことは……?


 ……今後も要検証である。


 さて、クロード様とそんな転生仲間っぽい話をしながらも、俺はしっかり正妃とライゼー様の盗聴を続けていた。

 序盤は挨拶とゆーか、現状確認みたいな探り合いの会話がしばらく続き――そろそろ本題かな? というあたりで、俺はクロード様を見上げる。


「私の魔法で、ライゼー様達の会話をこっそり聞けます。ライゼー様からも、事前にご許可を得ていますので、一緒に聞きませんか?」

「えっ……あ、うん。亜神様ならそれくらいできるか……じゃ、じゃあ、お願いします……」


 気にはなっていたのだろう。部屋を出る時も心配そうにされていた。


「それでは、つなげますね。ちょっと失礼」


 ぷにぷにの肉球を、そっとクロード様の手の甲へ載せる。肌接触だと音質が向上するのだ。原理はわからぬ。アンテナ触ってる時だけ雑音が減るラジオのよう。

 まず脳裏に響いたのは、ライゼー様の渋いお声。


『……国王陛下の突然の崩御には、我々もたいへん動揺しております。トリウ伯爵も数日以内には王都に着くはずですので、今後の方針は伯爵の判断次第になりますが――』

『ライゼー子爵……トリウ伯爵からの信任が厚い貴方の言ならば、伯爵も決して軽視はできぬものと理解しております。第二王子と第三王子、貴方個人のご意見としては、どちらが……いえ、これは答えにくい質問ですね。失礼いたしました。質問を変えます。第三王子ロレンスに、王たる資質が果たしてあるか否か……貴方は、どのように思われますか?』


 ライゼー子爵が小さく唸った。


『は。ロレンス様はたいへん利発な、高貴な気配をまとった素晴らしい御方と認識しております。ご挨拶をさせていただいた機会は数えるほどですが、王たる資質は間違いなく持っておられるものと感じました』

『まぁ……! たいへん心強いお言葉です。では、ライゼー様はロレンスを支持していただけるということで……』

『いえ。私はトリウ伯爵の指示に従う立場です。伯爵がロレンス様の支持を決めれば、もちろん喜んでそれに従いますし、第二王子のリオレット様を支持する場合にも、やはり伯爵と歩調を合わせることになります。派閥とはそうしたものですので――ですが、私個人のロレンス様に対する印象としては、我ら臣下が支えるにふさわしい御方であると感じます。今の時点では幼さを危惧する声もあるかとは思いますが、これは数年で解決する問題です。その頃にはもう、『資質』を疑う者はいなくなるでしょう』


 …………ライゼー様、ちょっと第三王子さんを持ち上げすぎじゃない?

 会話の方向性としてはあんまり良くないような、でも正妃様を刺激しないという意味では正解にも近いような……判断が難しい。

 もちろんライゼー様なりの狙いがあるのかもしれないし、あるいは「こちらの世界での慣例として、こういう場合にはこう言っておくべき」みたいな俺の知らないお約束があるのかもしれず、一概に「悪手」と断じるわけにはいかない。貴族社会のことなんてルークさんにはわからぬのだ。


 その時、正妃ラライナの気配が、す――と薄くなった。


『……数年後では、遅いのです』


 声に抑揚がない。


『……第二王子リオレットが王位を継いでしまえば――リオレットは、私達親子を決して赦さないでしょう。おそらく私達は殺されます。あの男はそういう男です。だって……「あの女」の息子ですもの――』


 ――あ。ヤバい。


 そんな直感によって、俺の尻尾がピンと逆立った。



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― 新着の感想 ―
むむ、クロードはギャルゲーと言う単語知らないって事は平成初期かギャルゲーをしてなかった?にしても男子高校生ギャルゲー知らないってのもちと不思議だな。 ずっと病院暮らしで亡くなった線もありそう。
つまり、ネコ は 亜神
[一言] 300年前…ボクシングをこの世界に広めたのもビーラダーさんかぁ… まあそれまでは人類生き延びるので精いっぱいだったもんね…
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