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我輩は猫魔導師である! 〜キジトラ・ルークの快適ネコ生活〜  作者: 猫神信仰研究会


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会報七号発売記念SS・ハイパーネコ粒子砲のひみつ

 こちらは会報七号(小説七巻)の刊行記念SSです。

 時系列は適当、カブソンさんとお友達になっているので、基本的には七巻の「後」になります。

 短いですがご査収ください m(_ _)m


 ハイパーネコ粒子砲……


 その空前絶後の威力は猫を真顔にさせるレベルであったが、実のところ、この新兵器(※魔法)には謎が多い。

 火力はガチで凄まじいのだが、岩をも溶かしている割には周辺への熱の放射が少ない気もするし、対象が爆散したりもしない。


 そもそも「ネコ粒子」とはなんなのか?


 荷電粒子砲であれば、それは電子、陽子、重イオンなどの電荷を帯びた粒子を、亜光速まで加速して撃ち出すものであろう。莫大な電力が必要だったり、装置の小型化が難しかったりで、実用化は厳しいとされているが、理論的には一応、「いずれできるのでは?」的なモノだった気がする。ほんとに?


 問題はネコ粒子である。

 電力はそもそも必要としていない。撃ち出しているのはルークさんの魔力である。

 魔力の充填が必要なので、なんかこう、圧縮とか加速とか収束とか、内部でいろいろやっている気はするのだが……

 魔法を使っている俺自身は、特に何も考えずにイメージだけでぶっ放したので、「むしろよく成功したな?」と、今更、不思議に思っていたりもする。


 そんなこんなである日、余人を交えず、迷宮の管理者たるカブソンさんにご相談してみた。今のところ、ハイパーネコ粒子砲の唯一の目撃者である。四精霊さんは上位存在なので例外とする。(※後日、バロウズ大司教も目撃者に加わる)


『ネコ粒子とは何か、ですか……いえ、それこそルーク様ご自身にしかわからぬものなのでは……?』


「うーーーーん……でもほら、魔光鏡だって、仕組みはよくわからなくても魔導師なら使えたりするじゃないですか。例のネコ粒子砲は、私にとってまさにそんな感じでして」


 そもそも大艦巨砲主義(※大艦は関係ない)は男の子のロマンであるからして、深く考えなくてもイメージに成功してしまったのだろうか……「力押しロマン砲」なので、「こまけぇこたぁいいんだよ」の精神でうまくいってしまっただけな気もするが――


 カブソンさんがお茶をすすりながら考え込む。

 精霊さんは基本的に飲食しないらしいのだが、カブソンさんは「それでは味気ないので」と、依代(※着ぐるみ)に飲食機能を付加しておられる。これは気分の問題であろう。


『あの時は、ルーク様の魔力を数分間にわたって『充填』しましたな。たとえばですが、最小出力で、細く、小さく撃ち出してみて……その様子を観察してみるのはいかがでしょう? ただの不発で終わるかもしれませんが』


 ミニチュア実験か! 試してみる価値はある。

 さっそくカブソンさんと一緒に、迷宮の端っこへ移動。

 ……万が一ということもあるので、安全のため、「向こう側」に何もない場所を選定した。迷宮の怪物が近づかないよう、白猫聖騎士隊と茶トラ戦車隊を通路の前後に配しておく。黒猫魔導部隊も障壁係として展開中だ。


「猫魔法、ハイパーネコ粒子砲・ミニチュアカスタム! スタンバイ!」


「ニヤアアアーン」


 甲高く小さな鳴き声と共に現れたのは、手のひらサイズのハイパーネコ粒子砲。ちっちゃくてかわいい。温泉地の土産物屋で売っている猫の置物みたいな存在感である。


 この子を地べたに設置し、俺の魔力を込めないようにして……それこそ、スポイトでほんの少し、水滴を垂らす程度に調整して、即座に発射させてみる。


 ぽひゅっ。


 空気の抜けるような音と共に、ちっちゃなハイパーネコ粒子砲さんのお口から、指先サイズの……光り輝く小さな小さな金色の猫さんが一匹、ぽてっと転がり出た。


 カブソンさんと俺はしゃがみ込み、揃ってその姿を覗き込む。

 ネコ粒子さんはのそのそと起き上がってあくびをかまし、俺とカブソンさんをちらりと見上げた。


「……出てきましたね」


『……出てきましたな』


「ちっちゃいネコ粒子さんです」


『……粒子とはなんです?』


 なんだろう……わかんない……猫は雰囲気で猫魔法を使っている……


 とりあえず素粒子物理学とは無関係の猫粒子物理学において、ネコ粒子とは四足歩行でキラキラ輝く謎の猫型疑似生命体(?)であるらしい。


 指先サイズのそのネコ粒子さんは、ぴょいっと前方の石壁に飛びつき――そこに自分の体積分と同程度の、つまり指先程度の穴を空けた。そこだけ消失したかのような見事な切り口である。

 そして消えた分の石は、もっしゃもっしゃと光のネコ粒子さんが咀嚼中。


 ……どうやら満腹になったようで、ちっちゃなネコ粒子さんはちょっと大きくなった腹をこちらに見せつつ、『また呼んでください!』とでも言いたげに前足を振って悠々と消えた。


 ――俺とカブソンさんは、しばし戸惑う。


『……つまり、ハイパーネコ粒子砲とは……前方にあるものに、とりあえず食いつく光の猫の群れ、という解釈で良いのでしょうか……?』


「ええぇー……?」


 ……今のを大量に、しかも超高速で召喚すると、あのハイパーネコ粒子砲になるの……?

 すなわちその本質は熱線とかビーム兵器の類ではなく、直線上にあるものをすべて食い尽くす暴食の権化……?

 岩の断面がぐつぐつ煮えていたっぽいのは、ネコ粒子さん達が亜光速で通り過ぎた後の摩擦熱か何か……?

 

 …………よ、より謎が深まってしまったような気もするが、しかしひとまず実験は成功である!

 気を取り直してミニチュアハイパーネコ粒子砲を仕舞い、俺はカブソンさんに握手を求めた。


「ご協力ありがとうございました! 今のは見なかったことに!」


 男の子の夢を具現化したよーなかっこいい力押しロマン砲――その正体が俺の「食欲の分身」だったという事実を闇に葬るべく、猫は流れるよーに実験結果の隠蔽を試みた。

 威力はね……威力は申し分ないんですよ……仕組みにちょっと、問題があっただけで……


 カブソンさんは戸惑いつつも握手に応じ、俺が目を逸らしたい事実に触れてしまう。


『……先日退治していただいた、迷宮最下層のボス……あれはいわゆる「焼却処分」かと思っていたのですが……実際には、「ただの一瞬でネコ粒子様の群れに食い尽くされた」ということでよろしいのでしょうか……?』

 

「よろしくないです! 重ねて見なかったことに!」


 所詮は粒子のはずなので生き物ではない! それでもその解釈はちょっといろいろアレなので、使用者としてはなるべく目を逸らしておきたい!


 かくして猫魔法『ハイパーネコ粒子砲』は正真正銘の切り札、決して多用してはならぬ最終兵器としてのポジションを確立し、しばらくの間、封印されることになるのであった。


 おしまい

ハイパーネコ粒子砲も登場する会報七号、おかげさまで無事に発売中です!

何気にサーシャの母親のシエルさんなども初登場。

店頭でお見かけの際はどうぞよしなにー。

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― 新着の感想 ―
好き嫌いの確認はしないと、イザという時に使えないかもしれないぞ。
暴食猫
・ネコ粒子さんを「分身」と認めた ・ネコ粒子砲は焼却でなく「捕食」である ・コピーキャットは「自身」が食した事のあるモノを再現する つまり、現状ないし成長次第では ワラ→ナットウ→ナイゾウノヨウナネ…
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