249・ソラネの憂鬱
ソラネ・ラッカはつい昨日、「神」と知り合った。
握手もした。ぷにぷにだった。毛並みもつややかで、顔立ちはとても愛らしかった。
一晩明けて、早朝。
いつものように身支度を整えつつ、「さて」と改めて戸惑う。
外交官候補生のベルディナからは、昨日のうちに諸注意を受けた。
「余人に話すな」そりゃそうである。
「猫として扱え」それは無理っぽくない?
「トマト様を崇めよ」ごめんよくわかんない。
……まぁ、ソラネもホルト皇国の教育を受けてきた身として、「亜神」に対する畏敬の念は備えている。
だから不用意な真似をする気はない。
そんな存在が「ペット」として飼われているという事実には戦慄し戸惑ったが、本獣が納得しているなら、まぁ……いいのか? 本当に?
……いずれにせよ、そのあたりはソラネがどうこう言うべきことではない。問題は「自分がこれから、どう役に立てるか」である。
亜神ルークはその存在を公にしていない。
なのに名乗られたということは、彼はなんらかの「利用価値」をソラネに見出したのだろう。
「キルシュの妹だから」という要素も大きく影響したはずだが……魔導師としても医師としても優秀だった兄と比して、ソラネは学力こそ高いものの、その他の能力はただの一般人である。これといった強みは持っていない。だから何をどう評価されたのか、不思議に思っている。
亜神ルークは、同行していたラルゴ伯爵とエレフィン伯爵相手には自己紹介をしていなかった。あの二人の場合、単に信用度が足りないのだろう。実際、これといった悪さはしないまでも、亜神の威を『利用』したがりそうなので、この判断は正しいと思う。
だから問題の焦点は、「亜神ルークがソラネに対して、何を期待しているのか」――ひとまずはそこに絞られる。
わからないことを考えても仕方ないので、ソラネは淡々と身支度を済ませ、階下に降りた。
居間では居候中のラルゴ伯爵が新聞を読んでいる。
「おはようございます、ラルゴおじさま。今朝はずいぶんとお早いですね?」
「おはようございます。恥ずかしながら、妙な夢にうなされましてね……」
ラルゴの声は冴えない。
「学生時代の夢です。弓術の試験を受けるのですが、『飛んでくる矢を撃ち落とせ』などという無理な課題を出されて、途方に暮れるという……そんな私をよそに、周囲の連中はいともたやすくカコン、カコンと矢を撃墜していきましてね……」
「あー……お察しします。あれはちょっと……衝撃でしたね」
クロード・リーデルハインという少年の化け物じみた弓術は、ラルゴの脳裏に強く焼き付いたらしい。
ソラネもまあまあ衝撃を受けたが、その後の猫からの挨拶もまた衝撃的で、上書きされる形で印象が薄れてしまった。
「その後のアークフォートという講師もすごかった……学園の講師というのは、弓術の腕そのものより、教え方の上手さ、指導力、対応力で採用されているものと思っていたのですが……どうも私の勘違いだったようです」
ラルゴは視線を逸らし、深々と嘆息した。
ソラネもそう思っていたのでなんとも言えない。講師陣にあんな達人が紛れているなど想像もしていなかったし、そもそも「目隠し弓術」など、安全面を考えると練習すら危険である。少なくとも学生には絶対やらせられない。
「おじさまは、今日のご予定は?」
「……エレフィンと、南方諸侯の取りまとめに向けた根回しに動きます。個別に訪問し、レッドトマトとの交易路線に協調してもらえるよう説得を――まだこの国を戦場にしたい者もいるでしょうが、仮に開戦した場合、レッドトマトとオズワルド様に介入されるでしょう。それはあまりに分が悪い。皇家の思惑通りに動くのは癪ですが、時勢が変わりました」
「むしろレッドトマトの思惑通り……というべきでしょうね。トゥリーダ様は、一度の外交で我々の認識をひっくり返してしまわれました。例の猫騒動であの日の新聞が売れに売れた結果、いまや皇都で彼女の名を知らぬ者はいません」
トゥリーダ・オルガーノの公開生放送中に起きた、奇妙な猫の大量出現――
あれが一つの流れを生んだ。
翌日発行された新聞各紙は、猫騒動とその版画を大々的に報じつつ、肝心の「中身」はトゥリーダの言葉とレッドトマトに関する記事がメインとなった。
学園長の簡易な説明はあったが、『猫の精霊』に関してはわからないことが多すぎて、記事の行数を稼げなかったこと。
また水蓮会の襲撃に関しても、速報の時点では捜査情報すら存在せず、報道できる事実がほとんどなかったこと。
何より、現場にいた記者達は元々、トゥリーダの言葉を聞くためにあの場へ集っており、その取材メモやニュースソースが充実していたこと。
記者達の多くが『レッドトマトの聖女』に好印象を持ち、その言葉を紙面に載せて報じることに義務感を持った影響も大きい。
――「まるで誰かに導かれたような」という、違和感はあった。
そして昨日、ソラネは後輩からの説明によって真実に触れた。
猫の精霊、その正体は亜神ルークであり、彼こそがトゥリーダとレッドトマト商国の真の後援者であること。
豊穣を司り平和を愛するその亜神が、昨年来、ネルク王国とレッドトマトを中心に、多くの偉業をなしてきたこと。
魔族オズワルドもその盟友であり、ルークの隠れ蓑としての役割をこなしていること――
亜神本人が隠蔽している以上、どれもこれも国家レベルの機密情報であり、決して他言はできない。
当然、ラルゴやエレフィン相手にも言うつもりはないが、しかし「知ってしまった」以上、今後は亜神ルークの意に沿うように動く必要がある。
他にルークの存在を知っているのは、「バロウズ大司教」と「宮廷魔導師スイール」らしいので……こうした大物の後ろ盾があるのは素直に心強い。
自宅を出て、街角からラズール学園に向かう乗り合い馬車に乗ったところで、ソラネは後輩と顔を合わせた。
「おはよう、ベルディナ。今日もいい天気ね」
「おはようございます、ソラネ先輩。昨日はおつかれさまでした」
ゆっくりと進む乗り合い馬車には他の人間も乗っている。つまりルークの話はできない……が、猫の話なら可能である。
「ベルディナの家で飼っている子……エルマだっけ? 元気にしてる?」
「ええ、やんちゃ盛りですからね。毎朝起こしてくれますし……真夜中に叩き起こしてくれることもあります」
ベルディナがくすりと笑う。猫好きにとってこれは不満や愚痴ではない。「うちの猫様は私に甘えてくれる!」という、遠回しな自慢である。すなわちマウント行為である。
……しかしソラネも猫好きなので腹は立たないし気持ちもわかる。猫好きは猫好きに寛容なのだ。
そもそも猫の場合、マウント行為も単なるじゃれ合いになりがちなので――猫好きのそれもじゃれ合いに等しい。要するに爪は出していない。「ふしゃー」ではなく「にゃーん?」ぐらいの空気感。でもうらやましい。
「先輩も割と猫さん好きですよね? よく学内猫と遊んでますし。ご自宅では飼わないんですか?」
「昼間は私が留守だし、家族は基本的に帰ってこないし……メイドさんに一番懐かれる未来しか見えないから……」
遠い目をして応じると、ベルディナは苦笑いで「おつかれさまです……」と気遣ってくれた。外交官育成コースは官僚育成コースより幾分かましなはずだが、多忙という意味では五十歩百歩である。
適当に雑談をこなしているうちに、乗り合い馬車はほぼ城門に近い構造の校門をくぐった。
まだ始業時刻には少し早いが、朝のラズール学園はそこそこ混雑している。
少し早めに教室へ向かう者、カフェで朝食をとる者、朝練帰りで談笑する者、学内猫におやつ(猫用ささみ)をあげる褐色肌の双子、一緒になっておやつを貰うキジトラ柄の亜神、その光景を微笑ましく見守る通行人達――
……知り合いが視界に入った気がしたが、馬車が通り過ぎてしまったため、声はかけそこねた。どうせ昼になったら会えるのだ。今日は昼食を一緒にとる約束をしている。
ただ、隣のベルディナには一応、小声で聞いておいた。
「……あれは……何をしていたの……?」
ベルディナがソラネの耳に唇を寄せ、周囲に聞かれぬようこそこそと囁く。
「……猫に紛れる特訓らしいですよ。学内猫の皆さんにはもう挨拶をしたそうなんですが、自分の挙動にまだ不安があるとかで、他の猫さん達の仕草を真似て、より自然な猫らしさを追求したいとかなんとか……」
……亜神の考えることはよくわからない。が、遠目に見た限りでは(そんなに)違和感はなかった。他の猫達からも懐かれているようで、適当にグルーミングもされていた。ちょっと困ってそうだったのは気のせいだと思う。
「えーと……先輩は、今日も学生課の研修ですか?」
「ええ。でもその前に母さんのところに寄って、兄さんの手紙について知らせてくるつもり」
ソラネの母は学内の農業研究所にほぼ泊まり込んでおり、滅多に帰ってこない。
忙しいことは忙しいのだろうが、帰ってこない理由の大半はおそらく「移動が面倒」「帰ってもすることがない」「読んでいる途中の本がある」とか、その程度なので……まぁ、心配はしていない。
農業研究所に限らず、学内の研究施設にはそういう職員が多いのか、有料での食事のデリバリーやランドリーサービスなども完備されている。
そもそもラズール学園には、研究者を甘やかす気風があるようで……それが技術の発展にも寄与しているのだろうが、同時に生活破綻者を増やす効果も生んでいそうだった。
「先輩のお母様……メルーサ・ラッカ博士って、講義とかは担当されていないんですよね?」
「そうね……あんまり人前で喋るのは得意じゃないから」
「物静かで温厚な方だと聞いています。それに農業経営学、農業経済学の両分野で、たいへん素晴らしい論文を書かれていると」
「性格は人見知りで気弱なだけなんだけどね……論文のほうは、私も誤字チェックの手伝いをしているから、だいたい読んでいるけど――東西のお歴々が嫌がりそうな話だなぁ、って印象」
「そうなんですか? 私は概要しか知らないんですが、確か最近のだと、『生鮮品と加工品にかかる通行税の弊害』とか『物品税をかけるべき作物と除外するべき作物見直しへの提言』とか、そんな内容ですよね?」
「……それ、もろに東西諸侯の利権切り崩しだからね……? だから皇家の方々は高く評価してくれるけど、東西の諸侯からは『余計なこと書きやがって』みたいな……吹けば飛ぶような木っ端学者の妄言扱いで無視されてるからいいけど、もし母さんにもっと発言力があったら、いろいろ睨まれてそう――」
愚痴をこぼすと、ベルディナが力なく笑った。
「あはは、大丈夫ですよ。東西諸侯の方々は、学者さんの論文なんていちいち読みませんから。南方の諸侯ならチェックしてるかもしれませんが――」
……悲しい現実だが、これはベルディナの言う通りで、東西諸侯の多くは学問に疎い。国のシステムや公平性、将来設計や理念などはどうでも良く、目先の利益を確保できるかどうかをもっとも重視している。
もしも議会で自分達に不利な規制や税制が提起されたら、単純に反対すればいいだけなのだ。
実際に東西諸侯はそうやって国政を牛耳ってきたし、彼らにとって都合の悪い学者の提言などが、まともに採用された実績はない。
乗り合い馬車から降りたソラネは、教室へ向かうベルディナと別れ、学内にある母の職場、「農業研究所」へと向かう。
この研究所は農業系サークルの取りまとめ役を兼ねている。
各サークルからの研究報告はまずここに提出され、評価や検証が行われる。また、収獲物の代理販売、出荷なども請け負っており、研究所の正面には野菜や果物の販売スペースも常設されていた。
早朝の今はまだ開いていないが、だいたいの品が皇都側よりも安価なため、学内の飲食店からは好評らしい。皇都側に住んでいる学生の中には、帰宅時にわざわざ野菜を買っていく者もいる。
顔見知りの守衛に挨拶をして正面玄関を通り抜け、ソラネは母の研究室へと向かう。まだ寝ているかもしれないが、さすがにこの時間なら叩き起こしても許される。
研究室の前で呼び鈴を鳴らすと、ぱたぱたと足音がした後にドアが開いた。
「あっ、ソラネちゃん、おはよう。入って入って」
ソラネよりも背の低い母は、にこにこと愛想よく微笑み、娘の手を引いた。
小柄で細身で白皙で、まるで人形のように可愛らしいと評判の才女である。
……一緒に歩くと、よく姉妹と勘違いされる。もちろんソラネが「姉」で、母のメルーサが「妹」のほうである。
もう五十歳というのにこの容姿の若さはさすがに異常なので、おそらく皇族や魔族に由来する、なんらかの隔世遺伝的な影響が出ていそうだが――ホルト皇国にはたまにそうした人材がいるので、さほど悪目立ちはしていない。
皇族もそうだし、宮廷魔導師スイールもその類だと思われている。珍しいことは珍しいが、決して「有り得ない」話ではなく、歴史的にも前例がそれなりにあるのだ。
ただ……皇族もそうなのだが、いわゆる「長命者」は、総じて子供が生まれにくいという特徴も併せ持っている。
なのに母のメルーサは、息子二人に娘一人というそこそこの子沢山なので……もしかしたら長命者ではなく、「単純に若く見えるだけ」の異常個体かもしれず、このあたりは確認のしようがない。
この後、二百歳くらいまで生きれば「長命者だったんだ」となるし、百歳になる前に亡くなるようなら「若く見えるだけの普通の人だったんだ」となる。要するに結果論でしか判別できないのだ。
ついでに母・メルーサの場合、研究室に籠りがちであまり日焼けしないので、皮膚の老化が進みにくいだけという可能性も捨てきれない。しかも職務上、新鮮な食材を食べる機会が多いので、栄養面でも有利である。
メルーサから手を引かれ、ソラネは執務室に入る。
そこにはよく見知った家族の顔があった。
「やあ、ソラネ。久しぶりです。だいぶ背が伸びましたねぇ」
呑気に声をかけてきたのは――
つい先日、手紙を送ってきたばかりの兄、『キルシュ・ラッカ』である。
にこにこと柔和に微笑む胡散臭い美形は見紛うはずもない。年端もいかない妹に家の雑事をすべて押し付け、「行方不明の大叔父を探す」という名目で自らは他国までフィールドワークに出かけ、自身も数年にわたって行方不明になった挙げ句、唐突に他国から「結婚しました」「娘が生まれました」と事後報告を寄越した放蕩者の兄である。
「…………は?」
思わず真顔で低い声を返したソラネに、母のメルーサがにこにこと笑いかける。
「びっくりだよね? あのね、ついさっき、猫のルークちゃんが、キルシュくんを連れてきてくれたの! 昨日、ソラネちゃんにご挨拶したから、私にもご挨拶しておきたいって……すごく丁寧な猫ちゃんで、キルシュくんとも仲良くしてくれているみたいで……キルシュくんがネルク王国で結婚したって聞いて、びっくりしちゃったけど、あんなにしっかりした猫ちゃんが一緒なら安心よね! あ、お土産にいただいたケーキもすごく美味しいの! 今、キルシュくんから今までの話を聞きながらお茶してたんだけど、ソラネちゃんも一緒にどう?」
……研修の開始時刻が迫っているので、母ほどゆっくりはしていられない。
そもそも兄から届いた「手紙」を母に渡すだけのつもりだったのだが、とうの兄が何故かこの場にいる。
「……兄さん? まずは私に、言うべきことがありますよね?」
にっこりと硬直した微笑とともに問いかけると――
キルシュは不思議そうに首を傾げ、次いでぽんと手を叩いた。
「ああ、菜園のスペースはあけておいてくれましたか? トマト様の苗木を、近いうちに持って――」
「違います! 他にあるでしょう! 『心配をかけてすまなかった』とか『何の相談も報告もせずに、勝手に結婚を決めて申し訳なかった』とか……こっちがどれだけ心配したと思ってるんですか!」
兄は脱力気味に苦笑を漏らした。
「それは……申し訳ありません。一応、商人に預ける形で何度か手紙は出していたんですが、以前のレッドワンドでは郵便事情が悪すぎて届かなかったようで……あ、大叔父の行方も聞きました。亡くなったとばかり思っていたのですが、川に落ちて流されて、そこから内海へ出て今はサクリシアにいるとか?」
この書状は昨年末に大叔父側の家に届いており、「とりあえず無事らしい」とは聞いていた。が、その事実を所在不明の兄に知らせる手段はなく、年明け以降、頭を抱えていた次第である。
ラッカ家の人間としては平常運転、とでも言いたげなのんびりした反省のない口調に、ソラネは再度、頭痛を覚えた。この次兄は間違いなく、植物学者の父や民俗学者の大叔父に似た。すなわち無駄に移動力があり、行った先でしぶとく生存し、なんだかんだでうまくやってしまう変な才覚にあふれている。
そんな彼がリーデルハイン領という土地でおとなしく定住できていることには違和感すらあるのだが、嫁と娘ができて多少は分別がつくようになったのか――
あるいは亜神ルークというもっと興味をそそる存在が間近にいるせいかもしれないが、いずれにしても「国外への移住」をこんな雑な勢いで決めてしまうあたりは、いかにも兄らしい。
「はあ……いえ、もういいです。兄さんはそういう人でした……ルーク様が連れてきてくれたとのことですが……もしかして、ネルク王国の留学生の方々の移動にあわせて、年末にはもうこっちへ帰国していたんですか?」
「いや? 今朝、ルーク様から『昨日、ソラネに挨拶した』と聞かされて……ルーク様からのご希望があったので、母との仲介もしておこうと、こちらへ送ってもらったんです。午前の診療開始時刻には向こうへ戻ります」
「は?」
ソラネは唸る。兄は事も無げに雑な説明を寄越した。
「ルーク様は『宅配魔法』という、魔族の転移魔法によく似た魔法を使えるので……留学生の方々も、ちょくちょくネルク王国とこちらを往復しています。私も離れた集落へ往診に行く時にお世話になっているんですよ。それで、さっき送ってもらった後に『親子で積もる話もあるでしょうから』と気を使っていただけて」
「本当にしっかりした猫ちゃんよね。キルシュくんはいろいろ自由すぎるからちょっぴり不安だったけど、お母さん、安心しちゃった!」
猫に息子を預けて安心するな。
……亜神ならまぁ安心ではあるが、しかし猫である。ついさっき、他の猫達に混ざってポルカとマズルカからおやつのササミをもらっていた光景は記憶に新しい。
ソラネは努めて冷静に、続けて問う。
「……つまり、兄さんは……いつでも好きな時に帰ってこられたのに、ずっと実家を放置していたと……?」
ドスの利いた声に、兄が一瞬怯んだ。遠距離ならば帰れないのは仕方ないと納得もできる――が、一瞬で行き来できる手段があったのならば、この放置はギルティである。
「い、いえ、いつでもというわけには……妻も身重でしたし、ルーク様の事業を手伝ったり、しばらく医者が不在だった地域の診療を始めたりと、忙しかったのも事実でして……あ。あと、私とルーク様が知り合ったのも、昨年の春頃でしたし……」
「…………一年近く前ですね?」
「……ごめんなさい」
申し開きを諦めた兄が、椅子に座ったまま深々と一礼する。
たぶん口先だけしか反省していない兄の向こう脛を、ソラネは軽く蹴飛ばしておいた。
いつも応援ありがとうございます!
先週、ニコニコ漫画のほうで猫魔導師・コミックの21話が更新されていたようです。アイシャさん登場回、遅ればせながらご査収ください。
そして小説版の七巻も発売日が5/15と迫ってきました。
ハム先生のステキな表紙絵も各サイトに出ていますので、こちらもお見かけの際はどうぞよしなに……
そして庶務は気温の変化と低気圧に負けてややぐったり気味です。
GW後半、皆様もどうかご安全にー




