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我輩は猫魔導師である! 〜キジトラ・ルークの快適ネコ生活〜  作者: 猫神信仰研究会


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236/288

227・聖女を迎えし皇国議会(前足)


 先日のラズール学園・入学式祭り(意訳)において、猫は「ラジオの公開生放送」みたいな式典の進め方に驚愕した。

 しかし、始まってみれば出店もいっぱいあって楽しかったし、生徒達も盛り上がっていたし、第一印象は「なんだこの入学式」だったものの、終わる頃には「コレはコレで!」という感想に落ち着いた次第である。むしろ絶賛と言って良い。

 そしてあの時、悪辣なルークさんは確かに一つの気づきを得たのだ。


「……この放送、使える……ッ!」と。


 ラズール学園では今後、文化祭とか体育祭とか、その手のイベントがあるたびに、放送部があの手の放送をやるらしい。

 そこにトマト様の、そしてバロメソースの宣伝をぶち込むことができれば……!


 ククク……ラジオCMなどこちらの世界では不可能と思っていたが、あくまで限定的な範囲とはいえ、流行に敏感な若い子達にアピールできるこうした機会は貴重である。


 ……まぁ、そうはいってもだいぶ先のことであろうと夢想していたのだが、トゥリーダ様のおかげでいきなりチャンスが転がり込んだ。


 なんといっても「レッドトマト商国」はトマト様の名を冠した国……! 国名の由来を説明する際に、トマト様のエピソードを自然な形で周知できるのだ。


 そしてこれは去年から想定していたことであるが、つい先程、レッドトマト商国から「友好の証」としてトマト様の苗木をホルト皇国側に贈ったことで、ネルク王国→レッドトマト商国→ホルト皇国の三国間で、トマト様外交のルートが完成した!


 これは歴史の教科書に載るレベルの偉業であり、未来の名著『トマト様が紡ぐ新たな歴史~世界を変えた至高のお野菜~』の冒頭を飾るエピソードになるはずなのだ!


 ……いや、ルークさんは忙しいので書く予定ないですけど。たぶんどこかの誰かがきっといい感じに虚々実々まじえて書いてくれる……はず。メイビー。可能性はインフィニティ。


 ルークさんがうっかり「トマト様……ウフフ……トマト様……」モードに入ってしまったため、その間に皆様が相談を進めてくれた。


「学園側から声をかけてもらえたのは幸運でした。こちらからは言い出しにくいことですし……実際、大きな効果を期待できます。ここは乗るべきかと」


 パスカルさんは俺と同意見か。この人はラズール学園の卒業生でもあるので、学園の影響力をよく知っている。

 

 一方、シャムラーグさんはちょっと不思議そう。


「『こうかいほうそう』ってのが、耳慣れない言葉でよくわからんのですが……」


 この疑問に、パスカルさんが懐かしげに応じた。


「ラズール学園で導入されている技術です。手っ取り早くいえば……『広い範囲に、音楽や演説、談話の類をそのまま響かせる仕組み』ですね。音を伝えるスピーカーや蓄音機の類は、ネルク王国にもあるでしょう? あれを学園内の至る所に設置し、現場から離れていても、クリアな音声が聞こえるようにしてあるのです。各スピーカーを有線でつなげる必要がある上、この線がそこそこ高価なので……街などでは盗難のリスクが避けられず、普及していないのですが、学園内では線を地中に埋め警報機と連動させることで盗難対策としています」


 あー、そんなことになってたのか……

 これは電線というか、クソ長いオーディオケーブルみたいなものであろう。もちろん魔道具なので、なんらかの魔法的な加工がされているはず。スピーカーもこちらの世界では「風魔法」で動かすものであり、電気は使用していない。


 省エネではあるが、魔導師がいないと使えない上に、魔道具そのものが非常に高価……内部に宝石とか琥珀とか使っていることも多いので価格面はしゃーないのだが、盗難の危険が常にあるため、インフラとしては常設しにくい。件の放送機器も「学園内」という特殊環境だから成立しているのだろう。

 前世でも太陽光発電のケーブルとか普通にガンガン盗まれてたしな……


 なお、ケーナインズのハズキさんが演奏家として活躍している「クラッツ侯爵領の領都・オルケスト」でも、この手の音響システムをコンサートで活用している。ただし範囲は『神殿前の広場』だけなので、ラズール学園よりもだいぶ規模が小さい。

 ラズール学園の場合、競技場に加えて、多くの教室や学生寮にまでこの放送システムがつながっており、イベントだけでなく生徒や講師の呼び出しなどにも活用されているのだ。お金かかってるぅ……


 ともあれまぁ、そんな便利なモノを新国家の宣伝に使わせてもらえるならば、こちらとしてはありがたい。

 流れとしては「トゥリーダ様がラズール学園を視察」「その一環としてマードック学園長と公開対談。軽めの質疑応答的なトークショー」という感じになるようだ。


 リスターナ子爵とトゥリーダ様達が込み入った打ち合わせを始める中、俺はリルフィ様のお膝に陣取り、スプーンでおやつのプリンを食べさせていただく。至福。


「あの、ルークさん……マードック学園長は、政治的な振る舞いがあまり得意ではなさそうな印象でしたが……どうして今回、トゥリーダ様をお誘いいただけたんでしょう……?」


 あー……この点は、実は俺もちょっと意外だった。

 学園長のマードック氏とは、敷地内を散歩中に遭遇し、リルフィ様が一対一で少し世間話をした関係である。

 俺は自己紹介をしていないが、ガタイがでかい割に気遣いの細やかそうな人で、あんまり偉ぶったりもしないナイスミドルであった。


 なんとなく「政治的な動きからは距離をおきたがっている」みたいな印象だったので……わざわざトゥリーダ様との「公開生放送」なんて企画を提案してくれたのはびっくりである。ただ突然でもあったし、そうとう悩んだ末のお誘いだろうともわかる。


「……おそらくですが、リルフィ様と会話したことで、我々が『無害な存在』であると感じていただけたのではないかと……」


 リルフィ様がきょとんとして、猫を見下ろした。ガチで不思議そうなので、俺は補足説明を加える。


「今、ホルト皇国がもっとも気にしているのは、『オズワルド様の動き』です。そして現状、そのオズワルド様が意向として示しているのは、『レッドトマトとの外交』、『ネルク王国からの留学生の安全』の二点のみ。マードック学園長はおそらく、その真意を測りかねていたのでしょう。しかし先日、リルフィ様と会話できたことで、『オズワルド様に他意はなく、彼は今回、友人達のために動いているだけっぽい』と、確信できたのだと思います。『不帰の香箱』の処分を巡って、ホルト皇国側もすでに助けてもらったという認識もあるでしょう。ならばその『友人』への便宜を図ることが、ホルト皇国とオズワルド様双方の利益になるはず――という御判断かと」


 マードック学園長は中年男性に見えるが、実年齢は八十五歳。そこそこ老獪ろうかいであっても不思議はない。

 

 ……あとまぁ、「この機会にトゥリーダ様と会っておきたい」という狙いもあるだろう。年若い国家元首だけに、国がこのまま安定すれば長い付き合いになる。

 先日のバロウズ猊下の講義を参考にすれば、旧レッドワンド側を今後、警戒する必要がなくなれば、南側にある『サクリシア』への対応にその分の労力を注げそうだし……国際情勢が動きそう。そして猫は「我関セズ」と毛繕いをする……


 しかしリルフィ様は、俺の説明を聞いてもなお不思議そうなお顔だった。

 

「……あの、私……学園長に信用してもらえるような受け答えは、できていなかったと思うのですが……?」


 これは猫が敢然と否定する!


「そんなことはないです! あの時のリルフィ様からは『一生懸命、がんばって話してくれている』感が伝わってきました。ホルト皇国の皇族なんていう政治力のある人達には、下手な演技や阿諛追従あゆついしょうなんて通じません。そのかわり、真摯な言動からの誠実さはちゃんと伝わるのです。リルフィ様のお言葉には、そういう説得力があります!」


 ……身も蓋もない言い方をすると「この子、お人好しすぎてちょろそうだな……大丈夫?」という意味でもあるのだが、そのあたりはボディーガードの猫さんが対処する。悪・即・フカーである。


 ただ、リルフィ様の「うそがへた」「演技もへた」「だからこそ生まれる言葉の重み」というポイントは意外と軽視できぬ長所であり、たぶんスイール様もそのあたりを気にいっている。

 とゆーか、政治関係のめんどくさい日常に慣れてしまうとですね……リルフィ様みたいに静かで裏表のない御方は、ガチで癒しなのです……(経験者談)


 そうこうしているうちに、トゥリーダ様達の打ち合わせが終わった。

 リスターナ子爵がその内容を俺にも伝えてくれる。


「ルーク様、予定がまとまりました。今夜はこのまま、こちらの迎賓館で外務省職員や皇家側の官僚との晩餐を……これはまぁ、外交関係者同士の顔見せですな。そして明日は予定通り、皇国議会での演説を行います。これは三十分ほどかけて、挨拶と建国時の状況説明をする程度です。午後はラズール学園に移動し、公開生放送に関する打ち合わせに時間を割きます。外交質問のテンプレートがありますので、質問を選択し、その答えをこちらで用意しておくという流れになるでしょう。夜は皇族主催の晩餐会に出席し――公開生放送の本番は、可能ならば明後日にやる予定です。ラズール学園の視察も同時に行います」


 みっちみちである。合間に気分転換のスイーツをご提供するのが俺の役目か。

 さらにパスカルさんが補足説明。


「こういう場合は本来、部下が台本の製作をして、その間に、元首ご自身には他の外交日程をこなしていただくのですが……なにせこちらの人員が少ないですし、今回は『トゥリーダ様のお言葉』を過不足なく反映させるのが、何より重要と判断しました。今後の各貴族との面談も、『その内容』を踏まえた上で進められますので、時間をかける価値はあるはずです」


 頷いたトゥリーダ様が、我が猫耳をふにふにした。


「それでですね。もし可能なら、明後日の学園視察の案内役を、ベルディナ嬢と、ポルカ嬢、マズルカ嬢に依頼したいと思っています。パスカルさんにもそのタイミングで会ってもらって、夜はそのままルーク様達のおうちで過ごさせてもらおうかと……大丈夫ですか?」


「ご心配なく! 部屋もありますし、キャットシェルターも使えます。迎賓館のほうはケーナインズに留守番をしてもらいましょう」


 明後日はちょうど休講日なので、ベルディナさんはもちろん、ポルカちゃんとマズルカちゃんも問題あるまい。「休講日に何を視察するのか」という問題はあるが、部活動とか課外活動はやっているし、手の空いている講師に話を聞いたりもできる。そもそもメインは公開生放送なので、リスナーとなる学生さん達も受講中でないほうが望ましい。


 できれば視察中にトゥリーダ様のお姿を学生達の前に晒し、「あの美人だれ!?」「レッドトマトの国家元首だって!」的な好奇心も集めた上で放送に臨みたい。


 そして翌日。

 公開生放送の前に、トゥリーダ様はまず、『皇国議会』での挨拶&演説という大役に臨んだのであった。


 §


 ホルト皇国の皇国議会は、東西諸侯によって過半数がおさえられている。

 議員が選挙によって選ばれるわけではないため、議会内の変動は「爵位の増減」「派閥の出入り」と「官公庁の長の交代」が基本となるが……爵位などそう頻繁に上がったり下がったりするものではないし、派閥間の移動も極めて珍しい。官公庁の長も派閥内での交代によって済まされることが多く、種々の利権が概ね固定化されている。


 変革は望みにくいが、安定感はある。

 腐敗は正せないが、だらだらとした現状維持はしやすい。

 

 そもそも国土が豊かで基本的に飢餓が起きない上、近隣に陸地を接した好戦的な大国などもなく、国民の生活は安定している。

 貴族が多少、私腹を肥やしたところで、加減を間違えなければ不満は溜まりにくく、むしろ貴族の散財によって利を得ている者も多い。


 旧ペシュク侯爵家のように、加減を無視してしまう貴族もごく稀にいるが……これは極端な例だから目立つだけだし、彼も結局、部下によってしいされた。


 つまるところ、東西諸侯連合の治世はさほど悪くないはずなのだ。

 小さな諸問題は多いし、不正によって私腹を肥やしているのも事実だが、「この程度で、わざわざ波風を立てることもなかろう」というのが本人達の見解だった。


 東西諸侯の多くは、「権力は固定化、安定化してこそ価値がある」と、本気で考えている。

もちろんそこには、「自分達にとっては、そのほうが都合がいい」という思考が根底にある。

 南方に重い税を課し、自分達は法の抜け穴を用いて脱税するのも「権力を安定化させるため」であり、これを『悪事』だとすら考えていない。


 だからそこを問題視する皇家に対しても、「調停者気取りの面倒くさい連中」と呆れている。「建国時に誰が担いでやったと思っているのか」という思いもあるし、「我々がいなければ、この国は乱れるだけだろうに」と自負してもいる。


 ……「このままだといずれ、南方諸侯はサクリシアに寝返るだろう」という皇家の危惧など、気にもしていない。そうなったらなったで、今度こそ徹底的に南方を制圧し、次は自分達でその土地を管理すれば良いとすら夢想している。


 皇家としては……この認識のズレと危機感の欠如こそがホルト皇国の『急所』だと、他国に露呈する前に、なんとかして皇国議会の現状を是正していきたい。


 今回の「ペット誘拐犯の捕縛」、そこからの「非合法組織・水蓮会の裏帳簿発覚」は、政変の危機であると同時に、おそらくは「最後のチャンス」だった。


「ペットの誘拐事件が、魔族か神獣の怒りを買った可能性がある」という強迫観念を原動力として各所を動かし、東西諸侯からの捜査妨害も許さず、またその暇もないほどの勢いで強権的に証拠を確保した。

 年末年始の多忙な時期だったせいもあって、東西諸侯や水蓮会の対応が遅れたのも功を奏した。


 この機を逃せば、次のチャンスなど何年先になるかわからない。そしてその間、南方諸侯がおとなしく耐えてくれるという保証もないし、他国……特に交易国家サクリシアあたりが悠長に待ってくれるはずもない。


 ホルト皇国の『皇国議会』は今、建国以来、かつてなかった程の「転機」を迎えつつある。むしろここで変われなければ、そう遠くない将来に南方から国が割れ、国土が削られる可能性すらある。


 ――新国家、「レッドトマト商国」の元首、「トゥリーダ・オルガーノ」が外交のためにこの地を訪れたのは、まさにそのタイミングだった。


 新たな隣国の若き元首がいかなる人物なのか、議場の面々は注目している。

 彼女は『純血の魔族・オズワルド』と親しい。

 彼女は進行しつつあった飢餓から多くの国民を救った。

 彼女は若くして『レッドトマト商国』の建国を成し遂げ、これまでの鎖国状態を改め、交易と外交を行う国家への転身を図っている。


 その動きが旧レッドワンドの諸侯に受け入れられていることも信じ難い。

 魔族オズワルドという後ろ盾があるのは大きなポイントだし、飢饉に際し派閥を問わず援助の手を差し向けたことも信頼につながったのだろうが……「いくら非常事態だったとはいえ、そんなに早く一つの国をまとめられるものだろうか」と、普通の貴族ならば考える。


 しかも彼女は、戦争一つまともにやっていない。

 ネルク王国との国境でオズワルドが反乱軍を一蹴したとは聞いているが、彼女自身が兵を率いて何かを打倒したわけではないのだ。

 にもかかわらず、多くの兵が彼女に忠誠を捧げ、対立しそうな貴族のほとんどがいつの間にか捕縛され、各自のやらかした不正に関わる裁判が始まっている。


 支援物資の流通一つとっても、その過程で略奪や襲撃はほとんど起きず、物資の足りない所に、いつの間にか、スムーズに処置がなされてしまった。

 通常ならば、飢饉の状況の正確な調査だけでも多くの人員を要するし、物資の輸送となればさらに人手が要る。

 兵によるそれらの持ち逃げや転売の痕跡も、現状では見つかっていない。


 こうした動きを見れば――オズワルドだけではなく、彼女には「多くの」「優秀な」家臣団がついているはずで――むしろ驚愕すべきは、魔族の存在よりも、一子爵の小娘が短期間でそれだけの部下を揃え、兵達を統率した事実のほうである。


 頭の鈍い貴族の中には、トゥリーダの情報に触れても「魔族の威を借りた、理想論だけのただの小娘では?」と侮る者がいないわけでもないが……


 ホルト皇国で日頃の政争や政務を体験している者ほど、「彼女は只者ではない」と、会う前から認識していた。中身が「本物」であれ「詐欺師」であれ、どちらにしても決して只者ではない。


 そんな後世に名を残す『救国の聖女』が、歴史ある皇国議会の壇上に立つ。


 一部の皇族と官僚だけは昨日のうちに接触したが、大多数の貴族にとって、トゥリーダの姿を見るのはこれが初めてだった。


 服装は、さほど華美ではない女性用の軍服。

 成人した女性ではあるが、顔立ちにはまだ幼さすら残している。

 

 緊張した様子もなく、足取りは自然体。

 表情は凛として、柔らかな微笑を見せている。


 青く澄んだ髪色はホルト皇国で信仰の対象となる「水精霊」を連想させた。

 実際に水属性の魔導師でもあり、もしもホルト皇国に生まれていればそこそこ厚遇されただろう。

 基本的に飾り気のない質素な姿だが、唯一の宝飾品として、赤い宝石のついた額冠をつけている。

 王冠ほど派手ではないものの、青い髪を背景にして輝く赤い石は印象深く、「レッド」トマト商国の国名を改めて連想させた。


 トゥリーダは壇上のマイクを少し珍しそうに見た後、貴族達に向けて優雅に一礼する。


「皆様、はじめまして。レッドトマト商国の代表、トゥリーダ・オルガーノです」


 澄み切ったその美声に――議場の貴族達は、揃って息を呑んだ。


 容姿にも神聖な気配は漂っていた。

 だが、いざ言葉を発すると、そこに込められた「神気」とも形容したくなる圧が凄まじい。


 口調は柔らかい。

 声は澄んでいる。

 言葉遣いは、友好的ではあるが少々威厳に欠けるかもしれない。

 なのに……その声には、思わずその場にひれ伏したくなるほどの、尋常ならざる力が内包されていた。


 ある伯爵は、『救国の聖女』の声を直に聞き、呆然とする。


(本物だ……これが、魔族に見込まれた傑物……)


 ある侯爵は、『救国の聖女』の姿を直に見て、歯噛みする。


(魔族の傀儡などではない……! この娘自身が、王たる資質を備えている!)


 ある公爵は、『救国の聖女』の威に震え、ただ祈る。


(レッドワンドは……いや、レッドトマトは、国の在り方そのものを大きく変えてくる。願わくばその変化が、我がホルト皇国にとっての脅威とはならぬように――)


 そして全ての貴族は、『救国の聖女』を前にして、こう確信した。


(……旧レッドワンドを降伏させ、飢饉への対応をそつなく進め、新たな国の立ち上げをあっさり成し遂げられたのは――魔族の影響だけではなく、彼女の才覚あっての偉業だ)


 魔族のオズワルドは、おそらく彼女という存在をおもしろがって、「少し手伝っただけ」なのだろう。


 ホルト皇国の貴族達の目に映る『救国の聖女』トゥリーダ・オルガーノは、魔族をも魅了しかねないほどの強烈なカリスマを、確かに備えていたのだった。


トゥリーダ様「……かんちがいです。そこらへんはぜんぶねこさんがやってくれました……」


救国の聖女さん(称号)『それはそれとしてせっかくの晴れ舞台なので、今日は張り切ってカリスマ特盛の威圧感マシマシでいきます!』


赤い額冠さん(宝飾品)『全力でサポートしますね! 魔力充填120%! 称号さんとの相乗効果で、私いま、かつてなく輝いてます!』


トゥリーダ様「……ヤメテ……タスケテ……」


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― 新着の感想 ―
流れ的にしょうがないことだけど、最近政治色の濃い内容が続いてちょっと退屈
あれえ? トゥリーダ様どうしちゃったの? 猫がなんかやった? と思ったらまさか称号と宝飾品が全力投球してたとはw
いやぁ、いい仕事してますねぇw
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