215・類は友を呼び、猫は人を招く
先年、魔獣ギブルスネークを仕留めたクロード・リーデルハインは、その直後、幼馴染サーシャとの婚約も無事に成立させ、一緒にホルト皇国への留学まで実現し、まさに順風満帆、我が世の春を謳歌していた。
……あくまで、「傍目には」の話である。
実は本人としては、なかなか胃の痛い思いをしている。
目立つのが苦手、小心者、基本的に事なかれ主義……そういった厄介な性格を抱えた上で、英雄視とまでは言わないが、王都ではまあまあ目立ってしまった。
昨年末のネルク王国十大ニュースの七位にも「士官学校の学祭におけるギブルスネーク退治」が認定されてしまい、逃げるように安息の地(※ホルト皇国)へ留学してきたら、幼馴染のサーシャとは扉一枚を隔てたほぼ同室をあてがわれ、たまに同衾もしている。
あくまで添い寝なので手は出していない。そんな度胸はない。ルーク(飼い猫)からは「このヘタレが……」と視線で詰られている。
……いや、さすがに在学中はまずい。それぐらいの理性はあるし、サーシャは距離感がバグっているくせに妙に子供っぽいところもあるので、対応を間違えるわけにはいかない。
リーデルハイン子爵家も数年のうちには伯爵家になるだろうし、ドラウダ山地に発見(笑)された新たな集落『メテオラ』と、それに付随する『禁樹の迷宮』も領地として認められる。
また領内で新たに設立された『トマティ商会』は、まだ一つも商品を送り出していないのになぜか成功を確約されているし、ちょっと豊富すぎる資金力と文字通りの魔法じみた生産力、対応力、さらには世界を滅ぼせるレベルの(ほぼ無意味な)戦闘力を持ち合わせた化け物商会に成長しつつある。
たぶん今後は領主や国王ですら頭が上がらない影響力を発揮するはずで、遂に猫が人間を支配する時代が訪れた……と、個人的には思わないでもないのだが、肝心の亜神ルークが犬っぽい忠義心に溢れる性格なせいで誰も危険視していない。そもそもアレ本当に猫か? 中身は元人間だとしても、トマト様に忠誠を誓っている時点でやはり何かがおかしい。「神だからしゃーない」と言われればそれまでである。
ともあれ、クロードは亜神ルークと意気投合できる程度には常識人で小心者で心配性で……ついでに転生者でもある。
ルークほど無茶な能力と才能は持っていないし、宮廷魔導師のスイールほど優秀でもないし、歴史に名を残したシュトレインやらキリシマやらといった他の転生者ほどの大業をなす気もないのだが――それでも転生者として、ちょっとした恩恵は得ていたらしい。
「らしい」というのはつまり、あまり自覚していなかったのだが……
「……クロード。それは普通じゃないよ……いや、できないって。なにそれ……怖……」
「いや、だから喉元がギブルスネークの弱点なんだってば! そこを貫けば本当に矢でも一発だから」
「だから貫けないって……相手、生き物だぞ? 的と違ってずっと動いてるんだろ? 体に当てるぐらいならともかく、急所を狙ったって、矢が飛んでいる間に相手も動くんだし――」
「そこはほら、どう動くかをなんとなく予測した上で、矢がそこに届くタイミングも調整して……あれ?」
……よく考えたら、自分はわけのわからないことをしているのでは?
ようやくクロードは訝しんだ。
いままで感覚でやってたからあんまり自覚してなかった。
オーガス・ペシュクと知り合った当日。
放課後の約束を取りつけた二人は、学内のカフェの片隅で待ち合わせた。
いざ本格的に話しはじめてみれば、クロードとオーガスはとても気が合った。
最初だけは丁寧な言葉遣いだったものの、お互いに呼び捨てを容認した後は口調も気安いものへと変わり、弓に関する談義を経て、お互いのこれまでについても話が及んだ。
オーガスは自領で弓の鍛錬をしてきたらしい。伯爵家とはいえ、かつての広大な領地は削られ、今はあまり質の良くない湿地と野山を開発している最中とのことで……狩猟も趣味や道楽ではなく、食料を確保するための大事な仕事だったという。
そしてクロードが、「士官学校の学祭でギブルスネークが降ってきた」話をしたら、「怖……」とドン引きされた。
「……いや、いけるいける。オーガスの腕ならいざとなったらいけるって。距離と角度にもよるけど、真正面で対峙したら的の中心を射抜くのと大差ないから」
「……あのな、クロード。ギブルスネークって『風魔法』も使うんだよ。普通に矢の勢いを殺したり逸らしたりはしてくるし、たぶん『威嚇』の瞬間を狙ったから、うまくいっただけで……それは『運が良かった』ってことにしておいて、次からはちゃんと逃げたほうがいいぞ……?」
「…………うん。そうする……」
人生においてそう何度もギブルスネークさんに襲われる事態があって欲しくはないが、これはまぁ、オーガスの言う通りではある。
「しかし……秋の学祭でそれをやったってことは、その後すぐに出国したのか? ネルク王国からホルト皇国までの道のりって、早くて四ヶ月、長くて半年ぐらいかかるって聞いたことがあるんだけど」
この日程のズレは、近くてやや危険なルートと、遠回りでそこそこ安全なルートの差である。ついでに川の増水や、山越えの際の局所的な嵐などによって長めの足止めをくう例もある。
「……あー。ええとね……一応、一部の人だけしか、まだ知らない話なんだけど……」
史書にも残りそうな「公式情報」なので、ある程度の開示は仕方ない。
「うちの領地で見つかった、新種の『トマト様』っていう野菜があるんだけどさ。レッドワンドからの国境侵攻時に、うちの父がそれを物資として戦場に持っていったら、魔族のオズワルド様に気に入られて……苗をお譲りしたら、『その御礼に』ってことで、転移魔法で送ってもらえた……」
オーガスが宇宙を見る猫みたいな顔へ転じた。
「……君の人生、波乱万丈すぎるって言われない?」
「……いや……これはまだ、あんまり広がってない話だから、特に言われてないけど……オーガスもなるべく黙っておいて」
いずれバレるのは既定路線である。隠したいのは、さらにその裏にいるもっとヤバい「猫」の存在なので……
猫の情報開示についてはさすがにルーク自身の判断が必要になるが、護衛の黒猫魔導部隊(不可視)が平然と懐いているので、たぶん時間の問題のような気もする。
オーガス本人は気づいていないが、今も頭と両肩と膝上に黒猫が張り付いている。化け猫系のホラーかな?
「でも納得したかな……ほら、交易学の授業で見かけた、君の妹のクラリス嬢と王弟のロレンス様。あんなに小さい子を連れて遠路はるばる留学なんてリスキーな話だし、転移魔法を使ったなら納得できる。『魔族と知り合い』っていう情報のほうは、まだちょっと頭で処理しきれてないけど……」
カフェのテーブルで、オーガスが頭を抱えて突っ伏した。そこは猫の腹の上だ。(不可視)
「……なんか今、モフってしたような……気のせいか。ところで、クロードと一緒にいた他の女性達はどういうお立場なんだ? 一人は学園の先輩みたいだけど」
先ほどの弓術の講義でも、ベルディナは上級生のグループで鍛錬していた。言動からもいろいろ察していたのだろう。
「ベルディナさんは外交官のリスターナ・フィオット子爵のご令嬢で、学園で僕らの案内役をやってくれているんだ。もう一人、短い黒髪の子は、ええと……サーシャっていう名前で……妻です」
顔をあげたオーガスが、さらに宇宙の深淵を見つめる猫のような顔に転じた。さっきより困惑が深い。
「……クロード、結婚してるのか!? その年でもう? えっ、ネルク王国だとそれが普通だったり……!?」
「さすがに珍しいだろうけど、いろいろ深い事情が……サーシャはうちの騎士団長の娘さんで、僕が子爵家の跡継ぎになる前からの幼馴染なんだ。うちの父は三男坊で、商家へ養子に出されていたんだけど、領地で疫病が流行って……親族がほとんど亡くなったから呼び戻されて、子爵家を継いだっていう流れ」
オーガスが若干、遠い目をした。
「そうなのか……知っているかもしれないけど、私の祖父もそんな感じだった。例の悪名しかない『ブレルド・ペシュク』侯爵の甥で、反乱で本家の跡継ぎがいなくなった後、呼び戻されて事後処理を任されて……もちろん状況は全然違うし、うちはただの自業自得だから、君のところと一緒にはできないけれど……世が世なら、私達はどちらも平民だったんだな」
もっともその場合は親の結婚相手も違っただろうから、私は生まれなかっただろうけれど――と、オーガスは自虐的に笑った。
彼の言いたいことはなんとなくわかる。クロードも親族の不幸がなければ、今頃は一介の見習い商人として働いていたかもしれない。案外、トマティ商会の採用面接とかも受けていただろうか?
……いや、ルークがクラリスに拾われていなければ、王都は壊滅していた可能性のほうが高いので……どっちにしても、歴史はちょっとした歯車のズレで大きく変わっていくものなのだろう。
自分とオーガスはこうして知り合ったが、この縁が将来にどう影響するのかもまだわからない。
留学期間が終わったその先でも、良い関係を続けていければと――今はただ、漠然とそう願うばかりのクロードだった。
§
「……と、そんな感じで、割とすんなり意気投合しまして……話してみたら、すごくいいやつでした……」
「…………それは、まぁ、はい……何よりでした……」
カルマレック邸の居間にて。
クロード様からの事情聴取……説明を聞きながら、リルフィ様に抱っこされたルークさんは「ほけー」っと感心しきりであった。
コミュ強……! クロード様はやっぱりコミュ強! これだからギャルゲの主人公は!(冤罪)
しかし実際のところ、この世界の貴族というのは「コミュ強」が多い。
そもそも人脈がそのまま武器になるので、人付き合いが下手だとまともにやっていけない。
例外的に「強い権力がある家」の場合、少々勘違いしたムーブをしても大丈夫だったり、あるいは偉そうに振る舞うことで権勢を誇示することもあるが……貴族社会の大多数を占めるのは、伯爵家より下の「子爵家・男爵家」である。
この世界の場合、男爵家ぐらいだと「……貴族?」と疑問符がついてしまうくらいに平民感が強いのだが、それはさておき、子爵家・男爵家クラスは「より上の貴族」に対する対応力、交渉力がたいへん重要になってくるので……そうした家々での教育方針は、やはり「まずはコミュニケーション能力を鍛える!」というものになりがちなのであろう。
クロード様の話術に関しては、前世の記憶と性格的な要素が大きいのだろうが、ともあれ気にしていた「ペシュク伯爵家」は敵視しなくて良さそう……?
「えーと。でも、『グラントリム家』のことは、まだ話してないんですよね?」
「そこはさすがに、ルークさんに相談した上で、サーシャからも許可をとるべきだと思ったので……それにこっちの国では、『ラダリオン・グラントリム』は戦死したことになっています。戦死したからこそ、侯爵殺しの罪も有耶無耶になったんでしょうし、その子孫だと暴露するのはちょっと問題がありそうで……あと、これに絡んでもう一点、気になることがあります」
……まだあんの?
「ほう? うかがいます」
「弓術の講義に、アークフォートっていう高齢の講師がいまして……僕の構えを見ただけで、『ラダリオンの孫弟子』と見破られました。僕の構えはヨルダ先生から学んだので、たぶんそのせいです。ラダリオンの部下で戦友だったって言ってましたが、おそらく亡命の手伝いとかもしたんじゃないかと……」
……クロード様の周囲には、なんか、こう……いろいろ集まるな……? コレやっぱり「奇跡の導き手」より「主人公補正」のほうの影響なのでは?
「反乱は四十年前でしたか。そのぐらいならまぁ、存命の関係者もまだ多いでしょうね……」
それこそ入学式後に会った皇弟ジュリアン様と、その奥方の魔族ヴァネッサ様あたりも当時のことは憶えているだろう。オーガス君の祖父とかも、世代的にはこのお二人の御友人かもしれぬ。
今、我々が住んでいるお屋敷の元家主、カルマレック氏は……もう亡くなっていた頃か。こちらは確か没後五十年というお話だったので、ラダリオン様の反乱のことも把握していない可能性が高い。
とはいえ、その差はあくまで十年程度なので……反乱とは無関係でも、関係者とは知り合いかもしれぬ。カルマレック氏はまだ精霊界とやらから戻ってきていないので、そのあたりの確認は当分できぬが……まぁ、昔話は別に良い。重要なのは猫の自己紹介の有無だ。
「うちの子達が懐いていたというのも、ちょっと気になりますねぇ。お昼ご飯がおさかなだったんでしょうか」
「……そんな理由で懐くことがあるんですか? それはそれでどうなんです?」
クロード様は困惑気味だが、いやまぁ、猫なんて割とそんなもんスよ? 通は寿司屋でドーピングしてから猫カフェ行くらしいっスよ?
「ところでそのオーガスさんという方、弓の腕はどんな感じなんです?」
「かなり上手いと思います。集中力もありそうですし、たぶん弓を引いている時は雑念を捨てて、的も狙っていないんじゃないかと」
おかしなことを言い出したな……?
「いや、的は狙うでしょう、弓術なんですから。何言ってんです?」
「うーん……それはそうなんですけど、なんていうか……『的を狙う』っていうのも、一種の雑念だと思うんです。集中が極まるとそれすら忘れて、周囲の風の流れとか、撃つ前から矢のラインとかが見えてくるというか……そうなるともう的を狙う必要すらなくて、撃つ前から当たるのがわかるっていうか……」
やべぇこと言い出したな、この達人……! 猫はちょっぴりジト目に転じる。
「もちろん実際には的も狙ってるんですが、集中するとその自覚がなくなるぐらい、『的以外のもの』が見えてくるんです。そもそも的って固定されたまま基本的に動かないので、そんなもんにいちいち集中するより、風向きとか距離とか角度とか筋肉の状態とか、そういう『自分で対応できる部分』のほうに気を配ったほうがいいよね、っていう話なんですが」
「ちょっと何言ってるのかわかんないですねぇ」
猫は弓術に詳しくないのだが、クロード様はやはりおかしいと思う!
「……そんなこと言われても……ヨルダ先生には『あー、そんなもんです、そんなもん』って納得してもらえたし……」
「その会話から得るべき教訓は、『その領域は達人同士じゃないと理解できない』っていう残念な事実です。あとヨルダ様のほうはぜったいテキトー言ってると思います」
ぶっちゃけ、弓術の技能に関してはヨルダ様よりクロード様のほうが明確に上である。御本人もいつぞや「クロード様の腕前は正直、わけわからんですな」と言っていた。
俺が宇宙を見る顔をしていると、クロード様は「……ギブルスネークの話をした時、なんかオーガスにもそんな顔されたんですよね……?」と言っていた。オーガス君は猫仲間でしたか。
ここまで黙って話を聞いていたリルフィ様が、俺の頭上で呟く。
「それで、あの……ルークさんも、オーガス様と接触されるのですか……?」
「まずは遠目にお姿を確認してから考えます! 明日はトマティ商会のお仕事をお休みして、学園側を見て回ろうかと……幸い、リーデルハイン領のほうはナナセさん達のおかげで順調ですし、機材の搬入・設置も問題なく終わったので、少し余裕もできました。レッドトマトのほうも、今はもう各地への物資配送を人力でしっかりまわせていますし、喫緊の問題はなさそうなので」
バロメソース輸送業者の手配については、社員のジャルガさん達が動いてくれている。かつての行商人時代の伝手で、信頼できる交易商人へ「来春からリーデルハイン領ですごい特産品を売り出すよ! 一口乗らない?」(意訳)ってな感じに打診してくれているのだ。猫がいなくてもちゃんと準備が進むのしゅごい……たすかる……
また王都側の店舗も、ルーシャン様の指揮で内装工事の仕上げが進んでいる。お弟子さんの育成というか社会勉強も兼ねているとかで、なかなかおもしろそうな設計になっている。
こうしてみるといかに亜神とはいえ、皆様のお力添えがなければトマト様の覇道もままならぬ……みんなありがとー。トマト様もきっと、下僕ども(猫含む)の献身をお喜びくださっているであろう!
「教室はさすがにペット禁止なので……僕やクラリスが連れて行くわけにはいかないかと思いますが――」
「そこはご心配なく。ステルスで隠れて、こっそり入り込みます。単身のほうが動きやすいですし、何か用があればメッセージを飛ばします。そのオーガス様とは、明日以降、一緒の講義はありそうなんですか?」
「ええ、一時限目から一緒です。僕もオーガスも将来は領主なので、選択する授業自体は重なりがちで……教室や時間帯を調整して、一緒にとれそうな授業に関しては、なるべくこっちの都合に合わせてくれることになりました。まだ本登録前の体験期間ですから、そのあたりは融通がききますし」
一緒の授業に登録しておけば、病欠時のノートを融通したりわからない部分の手助けをしたり、便利なことも多い。一緒にいて楽しいとか心強いとかだけではなく、学友の存在には実利的なメリットもあるのだ。
「リルフィ様は明日はどうします? スイール様とご一緒ですか?」
……なお、うちに引っ越してきたスイール様は早寝遅起きなので、もう寝室でお休み中である。
寝る子は育つっていうからね……クラリス様より早いのはちょっとどうかと思わないでもないが、睡眠時間を大切にするその姿勢は俺も見習いたい。
彼女はリルフィ様の師になってくれたが、俺にとっても(睡眠に対する姿勢の)師になってくれるやもしれぬ……いや、そっちはピタちゃんだけでいっか……
「いえ……明日は他の部署との会議や打ち合わせが複数入っているそうなので、別行動ですね……なので私は、いただいた資料を読んでおこうかと……あの、もしお邪魔でなければ、キャットシェルターをお借りしてもいいですか……?」
雉虎組の謎技術によってリフォーム済のカルマレック邸は、冬でも充分に暖かいし、そもそもホルト皇国・皇都の冬はだいぶ温暖ではあるのだが……それはそれとして、我がキャットシェルターには「コタツ」があり、柔らかくて暖かい猫型クッションも大量に常備されている。
冷蔵庫やコンロに似た家電(もどき)の家具もあるし、一年かけて整えた快適性はまさに別次元なのだ。
ついでに出入り口の基準点が俺なので行き来しやすい上に、内部で待機中の方を安全に連れ回せるのも利点である。
「わかりました! リルフィ様が一緒に行動してくださるのは心強いです」
そして翌日。
クロード様達と一緒に講義を受けるオーガス君を、俺はこっそり天井付近から観察し――そのステータスを見て、真顔になった。
----------------------
■ オーガス・ペシュク(16)人間・オス
体力C 武力C
知力C 魔力C
統率C 精神C
猫力90
■適性■
弓術B 調理B 農耕C
----------------------
ステータスがほぼ「まぁまぁ」という、この「可もなく不可もなく」感はともかくとして……
猫力の90台は、俺の知る限りで現状三人。
リルフィ様、ルーシャン様、有翼人のソレッタちゃんである。ソレッタちゃんの場合、出会った当初は85だったのだが、メテオラで暮らし始めてから91に伸びた。さては猫を吸いすぎたか?
有翼人の方々は元々、猫地蔵様への信仰を持っていたため、だいたい高めではあった。そして移住後はさらに数値が上がっており、集落全体での猫力平均値が80オーバーというやべぇ村になってしまったが、俺のせいでは……さすがに俺のせいか。
それでも集落で猫力90越えはソレッタちゃんだけであり、猫としては少しだけ、ほんの少しだけ、将来が心配になってしまうのだ……
ルーシャン様は手遅れ、リルフィ様は慈愛の女神様なのでしゃーないが、ソレッタちゃんはまだ正気に戻……げふんげふん。調整の余地があるのでは、と思っている。80台後半ならまだね……一応、ちらほらいるので……90超えると、ちょっと……あぶないかな、って……(目逸らし)
そしてこの殿堂入りともいえる猫力90の領域に、新たな人材として、オーガス・ペシュク君が堂々エントリーしたわけなのだが――!
……どうしろと?(真顔)
いろんなところで豪雨が続いているようで……皆様どうかご安全に。




