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我輩は猫魔導師である! 〜キジトラ・ルークの快適ネコ生活〜  作者: 猫神信仰研究会


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178・猫の肉球圧迫面接(後足)


 トマティ商会の記念すべき第一回採用面接は、おおむね滞りなく進んでいった。

 かなりの手応えとともに「ナナセ・シンザキさん」という有能人材を確保し、スタートアップのためにあと二、三人欲しいな……という流れの中で、さらに二人ほど順番が進み……「次の方ー」と呼ばれてやってきたのが、年若い夫婦。

 お。二人組?

 旦那さんだけ、とか、奥さんだけ、ではなく、二人揃っての就職をご希望らしい。

 今回は「移住」が前提なので、このお二人は一緒に面接してしまおう。どうせ採用の可否はじんぶつずかんに頼るし、時短である。


「よろしくお願いいたします。カイロウ・イルヤークと申します」

「妻のアンナ・イルヤークです」


 旦那は真面目そうな青年。ちょっと童顔だが、芯は強そうだ。二十歳……になってないな、これ? まだ十八かそこらと思われる。

 奥さんは少し年上で、二十二、三前後。青い長髪が印象的な、いかにも優しそうでおしとやかな美人さんである。

 ……なんか微妙に水ちゃんを思い出すな……? いや、これは単純に髪が青いせいなので他意はない。別にヤバい人ではない……と、思う。


 さて、じんぶつずかん参照。

 ……偽名だな……? 本名は……うん? 旦那のほうは見知らぬ名前だが、奥さんのほうはアンリ・カトラート。

 レッドワンド将国(滅亡済み)の、カトラート子爵家(レッドトマト商国で存続中)出身……?

 旦那はその家の元騎士で幼馴染?

 高位貴族との望まぬ結婚を断ったら暗殺者を差し向けられたものの、その暗殺者が善人だったため、彼の手引きでそのまま隣国へ脱出?


 ………………どっっっかで聞いたような話だな???


 ネルク王国へ逃亡し、人の多い王都に隠れ住んだものの……頼るあてもなく物価も高く、追っ手を警戒して酒場の給仕みたいな人前に立つ仕事にもつきにくく、旦那は工事などの日雇い、奥さんは針仕事の内職などをして、細々と支え合っているらしい。


 で、将来的には厳しくなりそうなので、ちゃんとしたところへ就職しようとはしているのだが、ツテもなく特技もあんまりないのでなかなか採用されず……「僻地への移住!」という厳しい条件がついている今回の案件ならば、多少は競争率も下がるかと期待しつつ、また職場つきならば移住そのものにも抵抗はなかったため、夫婦そろって応募してきたという流れ。


 面接内容は特に問題なく、真面目そうなお人柄が伝わってきた。

 能力的には、旦那のカイロウ君が剣術C、奥方のアンナさんが社交術Cなどを持っているが、取り立てて目立つ要素はない。商売に向く能力も持っていないため、通常ならばお祈りメールなのだが……


 ……シャムラーグさんが助けた人達かぁぁぁぁ……

 しかもカトラート子爵家は、レッドトマト商国にも初手から好意的に接していただけた穏健派の貴族である。

 現在も国家元首トゥリーダ様へ積極的に協力してくれている人であり、さすがに放置はできぬ。


 ちなみにこの流れ、「すごい偶然!」とも言い難い。割とまぁ腑に落ちる状況ではある。

 逃亡者であるお二人が潜伏するなら、まずは「人が多くて紛れ込みやすい場所」「流れ者にも仕事がある場所」を選ぶのは自明。なんだかんだ言って、田舎で余所者よそものは目立ってしまう。ちゃんとした就職先というか、人に説明できる背景事情があれば良いのだが、職なしで目立つと素性を疑われやすい。せちがらい。

 そうなるとネルク王国の国内では、第一候補が王都ネルティーグ、第二候補がダンジョンのあるオルケストということになる。


 各領地の領都なども一応は候補になるが、この第一、第二は揺らがない。街としての規模が違うので、やってくる人も出ていく人も両方多い上、各種ギルドや産業も揃っている。

 そしてうちのような「別の土地への移住を前提とした求人」も、人が集まりやすい王都の商人ギルドで出される例が多いため――今後の移住先、定住先を探す人にとっても都合が良い。「とりあえず困ったら王都へ行け」と、シャムラーグさんも逃亡前に助言していたようである。


 見たところ、奥さんのアンナさんは戦闘技能がからっきしなので、二人でダンジョンに挑戦! という感じにはならなかったのだろう。

 王都へ着いたのも夏頃のようで、俺がシャムラーグさんを保護した頃はまだ各地を転々としていたようだ。したがって猫の旅団とかは目撃していない。


 面接のほうはライゼー様にお任せ。

「志望動機は」とか「得意分野は」みたいな質問には、当たり障りのない答えが返ってきた。名前と境遇以外は嘘もついていない。あくまで平民の夫婦っぽいふりをしているが、奥さんのほうは育ちの良さを隠せていない気もする。


 この若夫婦への面接が終わったところで、午前中の面接予定者が終了、お昼休みとなった。一旦、キャットシェルターへ移動し、クラリス様達と合流。

 お昼ごはんに生姜焼き定食(パンとスープ付き)をご用意し、みんなで食べながらご相談をする。

 まずはクロード様。


「……ナナセ先輩が来たのには驚きました。そんな話、まったく聞いてなかったので」


 ……そもそもクロード様、ギブルスネーク退治の後は「ライゼー様のお手伝い」っていう名目で学校から逃げてたからね……求人の掲示を出したのもあの前後だし、話すタイミング自体がなかったはずである。


「リーデルハイン領のことは、クロード様から話していたんですよね?」

「ええ。領地のことというより、春先にルークさんから頼まれたトマト様の宣伝ですが……弓術試技の朝練組とは、雑談をする機会がそこそこ多かったので、『来年あたり、トマト様っていう作物で交易を始める』とは話していました。でも、まさかトマティ商会の求人に応募してくるとはびっくりです。優秀な人なのは間違いないですよ」


 うむ。それは『じんぶつずかん』にも記載されていた。

 ついでながらナナセさん、クロード様に横恋慕してるとかそういう要素は一切なく、ただ純粋に「トマト様の可能性」に注目してくれているようである。同志よ!


 一方、アンナさんとカイロウさんはトマト様のこととか知らず、むしろ安心して定住できる土地と安定した職場を探しており、「移住前提」の部分に惹かれた模様。


 このお二人の正体については、まだライゼー様達にも言っていない。『じんぶつずかん』については「魔力鑑定と似たようなもの」という軽めの説明しかしていないので……実際のヤバい精度は、さすがに気味悪がられそうなので秘密である。


 ……が、お二人を見て考え込む俺の不審な態度については、しっかりバレていた。


「午前中の最後の夫婦については、ルークも何か悩んでいたな? 採用を迷うような要素があったのか?」


 ライゼー様からのご質問に、俺はこくりと頷く。


「能力的には、他の方々と比して特に目立つ部分はなさそうなのですが……何かひっかかるとゆーか、ウチに必要な人材のような気がしまして……」


 曖昧にごまかしつつ、改めて思案。

 放置はしない。なんなら実家の状況をお知らせして、元の領地に戻っていただくという案もある。

 が、彼女はカトラート子爵家の後継ぎとかではないし、いまさら戻ったところでなぁ……一度は領地を捨てた身、とか思ってそうだし、ぶっちゃけうちの商会で働いたほうが衣食住すべて充実するのは間違いない。レッドトマト商国はいまだ立て直し……というか、法とか制度とかいろいろ整備中である。


 ひとまず本人達の意向を確認するのが先だが、こればかりは『じんぶつずかん』も使えない。

 今の彼女らは「自国の正確な状況」を知らない。「それに対してどう感じ、どう考え、どう決断するのか」といった未来の情報にまでは、さすがの『じんぶつずかん』さんも対応できぬのだ。

 とりあえず採用しておいて、シャムラーグさんと偶然を装って再会してもらい、その先のことはお二人に決めてもらうとしよう。

 というわけで(ひとまず)採用決定! 一時保護とも言う。


 これで三人。

 その後、午後からの面接でも、有望そうな方をさらに二人ほど確保できた。

 合計で五人もいれば、商会スタートアップのための人材獲得としてはなかなか上々の滑り出しである!

 

 そして最後の十五人目。

 扉を開けてさっそうと入ってきたのは、ルックスが良くて、ちょっとチャラい感じの……見覚えのある軍服っぽい兄ちゃん。後ろで案内のシィズさんが苦笑いしてる……


「水臭いな、ルーク殿! 社員を募集するなら誘ってくれてもよかろう!」

「…………不採用で」

「何故だ!?」

「純血の魔族様をヒラ採用なんかできるわけないでしょう!?」


 わざわざ偽名で登録してきた純血の魔族、オズワルド・シ・バルジオ氏であった。

 ……魔族さぁ……(呆れ)


 §


 最終面接が一転してお茶会になってしまいそうだったので、このタイミングで我々は商人ギルドを辞去し、オズワルド氏を交えて猫カフェのほうへ移動した。


 両手で抱えたティーポットからお茶を注ぎながら、猫が問う。


「なにやってんですか、オズワルド様。さすがにヒラでは雇えないですよ? 仮に裏の相談役とかだとしても、書類には存在を記載できないですからね?」

「ダメか……? 確かに時間通りの勤務などはできんから、ダメで元々とは思っていたんだが……いや、まぁ、半分以上は冗談だ」


 ……三割か四割は本気だったっぽいな……


「それより、採用者は集まったのかね? 足りないようなら、正弦教団から見込みのありそうなのを何人か回そうかと思ったんだが」


 それも怖くて雇えないです……


「大丈夫です! 有望そうな方を五人も確保できました!」


 ナナセさんは士官学校の卒業待ちなので来年初頭からであるが、他の面々は今年中に移住予定。共にトマト様へお仕えする仲間であり、近々、俺からもご挨拶が必要であろう。


「で、オズワルド様はどうしてこちらに? まさか面接に参加したかっただけではないでしょう」

「ああ、これといって用事はないんだがな。リーデルハイン領へ行ったら、執事から『王都へ行っている』と聞かされて……で、様子を見に来たら、正弦教団の連中から『トマティ商会からの求人が出ている』と教えてもらった。諜報目的で登録していた奴がいたから、その名義を借りて、私が代わりに来たわけだ」


 ……どのみち十五人目は対象外だったか……


「悪く思わんでくれ。連中にも悪気はないんだ。ただ、あいつらはルーク殿のことを知らんから……春先からこっち、『リーデルハイン子爵家』の躍進ぶりを気にしていたようでな。そういえばクロードも、学祭ではずいぶんとご活躍だったそうだな? 新聞にまで出ていたぞ」


 オズワルド氏が、親戚のおっちゃんみたいな顔でクロード様に笑いかけた。クロード様はあわてて会釈。


「きょ、恐縮です。いえ、撃った矢が、たまたま相手の急所に当たっただけでして……」

謙遜けんそんするな。ギブルスネークを矢で一撃など、偶然でできることではない。まぁ……西の方であんなことがあったばかりだから、今、弓の腕で名を売るのは恐ろしい心持ちかもしれんが――」


 …………何の話?

 いや、西の情勢とか知らんし。クロード様にはぜんぜん関係ないよね?

 皆が一様に首を傾げていると、オズワルド氏は「ああ」と目をしばたたかせた。


「まだ伝わっていなかったのか? いや、てっきりルーク殿なら知っているかと……西の方で先日、アロケイルという王国が滅んだのだ。滅ぼしたのは純血の魔族、ラスタール家。滅ぼした理由の第一は『親族の敵討ち』なんだが……第二の理由は『人の身にはふさわしくない武器の開発』で、要するにこれが『強力な新型の弓』でな。これが世に広まると、おそらく戦争の形が変わる。それを危惧した魔王様が、技術の抹消と封印を命じた。戦いは一日で終わったそうだよ。攻め手はヘンリエッタ・レ・ラスタール……やはり『落日の偏光』は伊達ではないな」


 誰だか知らぬが、まぁまぁかっこいい呼び名だな……ちなみに俺が知っている魔族の二つ名は、アーデリア様の『火群ほむらの姫』、オズワルド氏の『流星の魔弾』とかである。俺も『トマト(様)の下僕・ルーク』と呼ばれる準備は万端なのだが、何故か誰もそう呼ばぬ。まぁよい。


「アロケイル王国が……そんなにあっさりと……?」


 ライゼー様が目を見開いた。クロード様まで顔色が悪い。


「大きな国なんです?」

「うーん……西側の国々は勢力が流動的だし、こことは距離が離れているから、国力や規模の実際のところはよくわからんが……聞こえてくる噂では、当代の王はずいぶんと強気で、周辺国を併合するべく軍備の増強に積極的だったらしい。我が国にとって直接の脅威ではなかったが、交易商人達の間では危機感が高まっていた」


 ふーむ……人口動態とか軍事とかGDP的な指標もないだろうし、それどころか「地図の精度」すら怪しいこちらの世界においては、「他国の国力」を正確に知る手段はほぼない。基本的にはなんとなく「イメージ」で語るしかなく……歴史を紐解けば、その誤解が元で格上相手に戦争をふっかけてしまう弱小国なんかもそこそこあった模様。

 ホルト皇国くらいの規模になると、明確に「強い!」とわかるようだが、それだって世間に広まっている情報の精度を疑い始めたら、実際のところはよくわからなかったりする。


 というわけで、正確な規模感は不明だが……とりあえず、弱小国とかではないっぽい。

 思案する俺に、クロード様が追加情報をくださる。


「……ルークさん、覚えてますか? 春先に、ほら……アイシャ様が言っていたでしょう。他国で新しい強力な弓が開発されたっていう噂があって、軍部の依頼で、魔導研究所でも新しい弓の研究をやっているって――」


 あ。あー。なんかあったな、そんな話。猫にはあんまり関係なさそうだったのでスルーしていた。

 クロード様のほうに、もしかしたらアドバイザー参加の要請があるかも――みたいな流れだったが、実際のところ、まだ試作品どころかアイディア出しすらできていないよーである。


「その新型の弓を開発したのが、アロケイルっていう国なんですね?」

「そうです。弓の開発が、魔族に目をつけられるきっかけになるなんて……オズワルド様。その弓は、魔族の脅威になる可能性があったということですか?」


 クロード様の問いに、オズワルド氏は軽く肩をすくめた。


「ウィルヘルム殿のような親族には通じるが、私やアーデリア嬢のような純血の魔族にはまったくの無意味だな。刺さったところで傷にもならん。しかし今回は、威力よりもむしろ経緯が問題だった。ライゼー子爵の指摘どおり、アロケイル王国はこの弓を量産し、周辺国への侵攻を目論んでいたんだが……それを支給された部隊が調子に乗っていろいろとやらかして、辺境で普通に暮らしていたラスタール家の親族を、それと知らずに殺してしまったらしい。その部隊はすぐさま魔族によって粛清され、王家も先日、滅ぼされた。少し期間が空いたのは、助命したい連中を選別、避難させるのに手間取ったせいだろう。被害の規模までは知らんが……とりあえず、城は廃墟になったそうだ。しばらくは国内で荒れるだろうな」


 ……うーむ。やはり猫さんが首を突っ込む話ではなさそう。

 オズワルド氏が俺の喉を撫でた。ごろごろ。


「まぁ、こちらの地域には影響あるまいが、弓の開発はしばらく控えたほうが良いだろう。変な噂が立つと困る。たとえば……アロケイルの生き残りが、その弓の技術をこちらへリークした、とか――そんな根も葉もない噂であっても、反応して調べに来る魔族がいないとも限らん。それでルーク殿と鉢合わせでもしたら目も当てられん」


 む。確かにそれはちょっと困る……あとでルーシャン様と陛下にお知らせしておこう。


「好奇心からうかがいますが、開発されたのってどんな弓だったんです?」

「私も実物を見たわけではないが……ルーク殿は、私の持つ『銃』を知っているよな? あれと同じように『引き金を引いて、矢を放つ』タイプの弓だったらしい」


 あー。クロスボウか……? 転生者の発案かもしれぬが、そうでなくても普通に考えつく方向性の進化ではある。そもそも前世でも発明されたのは紀元前の話であり、むしろこっちで普及していないのが不思議なレベル。


「さっき、『人の身にはふさわしくない武器』という言い回しをされていましたが……つまり魔王様としては、人間には強い武器をもたせたくなくて、そういう動きが発覚すると魔族に潰される――という解釈で良いのでしょうか?」


 俺の問いに、オズワルド氏が珍しく困った顔をした。


「そのあたりは魔王様の判断次第だが……今までの例でいうと、一点物――つまり、製造に手間のかかる魔剣の類であれば、見逃されることが多い。そもそも製造の難度が高く、量産できない魔道具だな。逆に、『安価で大量に生産が可能で、一般の兵でも扱いやすい強力な武器』とみなされた場合には、魔族が介入して国ごと潰すこともある。このあたりには、魔王様の思想というか、何か特別なお考えがあるのだろう。私の父もかつて言っていたが……魔王様は、人の『戦争』を否定はしないが、そこに『節度』をもたせたいらしい。だから剣、槍、弓といった一般的な武器で戦うのはいいが、人がそれ以上の武器を求めた時には、高い確率で介入する。際限のない武器の進化を許せば、いずれ数百年後には魔族をも脅かすものが出てくると……そうお考えなのかもしれん」


 うーーーーむ……オズワルド氏の話を聞きながら、俺の脳裏には別の可能性がよぎる。

 魔族にとって厄介という面もあろうが……そもそもじんるいはおろかなので、武器の急速な進化によって、人類そのものを絶滅させてしまう可能性もないわけではない。


 たとえば前世、俺が生きていた時代では「世界規模の核戦争!」みたいな地獄はまだ起きていなかったが――どこかで歴史の歯車がズレていれば、それが起きていた可能性を否定できない程度には殺伐としていた。


 魔王様とやらがそんな状況まで想定しているかどうかは定かでないが、そもそも彼ら『魔族』自体が、滅亡した魔導王国での人体実験によって生まれた存在である。人類の兵器開発を危険視しているのはほぼ間違いあるまい。

 クロスボウのレベルでもうアウトというのはなかなか厳しい判定だが、こちらの世界には魔法や魔道具もあるので、どのタイミングでどんな技術革新が起きてしまうか、前世を持つ俺でも予測がつかぬ……

 とりあえず、トマト様が武器になる未来はさすがになかろうと思うが――トマト祭り……? 投擲とうてき用トマト様……? うっ……頭が……っ!(忌まわしい記憶の封印)


 ……ともあれ、滅んでしまった国には気の毒であるが……さすがに魔族を敵に回したくはないし、知らぬ国にまでは関与できない。しかも新兵器を揃えて周辺諸国への侵攻を画策かくさくしていたとなれば、いまさら味方する気にもなれぬ。


「現地は今、どのような状況なのですか?」

「国内にまだ戦力がある状態で、王家と政府が潰されたわけだから、残った有力諸侯が勢力争いを始めるだろうな。ロゴールと似たような内乱状態に陥るか、レッドワンドのように早急にまとまるか……そのあたりは現地の連中次第だが、元からあまり筋の良くない国で、周辺国とも悪い関係だったから……普通に領土を切り取られて終わるかもしれん。いや、むしろ僻地の諸侯が、隣接国にそのままくだって保身をはかる可能性もある」


 わぁ……ぐだぐだしそう……やっぱり関わらんとこ。


「それでもまぁ、放置して周辺国を好き勝手に荒らされるよりはマシだったはずだ。愚かな王を持つと民は不幸だな」


 シニカルな物言いとは裏腹に、オズワルド氏は何故かちょっとだけ寂しそうであった。人より長く生きている分、見てきたものも多いのだろう。


 一方、そのオズワルド氏よりさらに長生きしているはずのピタちゃんは、すべての会話をスルーして、ウサミミをぱたぱたしながら一心不乱におやつのソフトクリームを舐めていた。


 …………その生き方、見習いたい。(割とガチで)


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― 新着の感想 ―
こりゃあ、黒色火薬にすら行けないな。
欲望の果てに 狂気がうごめき 狂気の果てには 終焉が横たわる 人類は何も学ばない
おそらく ですが 魔王様、人間が安易に武器を開発する過程で、亜神核の開発に手を出す事を憂いているのかも?。
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