汽車
イルカさんの「なごり雪」の雰囲気を真夏に。
この村を出ていく少女を見送る「わたし」
だが、この村にあの少女は住んでおらず、誰も訪ねてきていない。
いつからだろう?ホームに少女が立っているのは…水田を渡る風は肌に心地よく、せみ時雨すら涼しげに聞こえる。汽車を待っているように、線路の先を時たまのぞき込み姿が垣間見え。
山影から煙が見えてきた…もうすぐだ、あの山影にもうすぐ汽車が現れる。
白いワンピース、腰を赤いリボンで絞った姿…わら帽子を模した、白いつば付きの帽子から見え隠れするおさげの先にも同じ赤いリボンが見える。
ベルトで閉める革の小ぶりなトランクを足元に置いてノースリーブの袖口に見え隠れする白い肩がきらりと光るのは汗だろうか?
汽車が到着し少女が乗り込む…その時ちらりとこちらに微笑みかけたうっすらと色づく唇がやけに鮮明に見える。
ああ…汽車が出ていく、少女を乗せて…
不思議なのはこの集落に住む人間は全員顔見知りだがあの少女は初めて見た。
ひときわ大きくせみ時雨が響き、一瞬感じた眩暈を振りほどくように頭を振ると…そこはいつもの駅だった。国鉄合理化でディーゼル化せずSLが引退する前に廃線になった単線ローカルの跡地で駅舎は公民館として使われている。…そう、線路跡はすでに土砂崩れでふさがり、国鉄から払い下げられた駅舎は公民館としての余生を過ごす。
だが、私は確かに…数十年ぶりの最終列車を見たんだ。




