目的
帰宅した二人を待っていたのは、荒らされた部屋の片付けだった。
「はぁ〜! ほんっと、どこまで荒らしたんスかね!? 片付ける身にもなってほしいっス!!」
愚痴りながら部屋を片付けるセルイは、先程から無言で手伝っている詩音に目をやる。
(唐突な親父さんの件スかね? まぁ……オレには人間の気持ちはわかんないスけど)
そう思いながら手を動かし作業に没頭した。
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あらかた片付けが終わった頃、詩音がおもむろにセルイに声をかけてきた。
「セルイ、聞いてほしい」
「はぁーい、なんスか?」
一呼吸置くと、
「私はやはり元の世界に帰りたい! だが、その前に父上に何があったのかを知りたい!! だから、協力してほしい!!」
詩音の覚悟に、セルイは少し考える動作をし、
「……まぁコレも乗りかかった船っス。オタクが元の世界に戻るまで付き合いますよっと」
セルイの言葉に、詩音の顔がパァと明るくなる。
「本当か!? 感謝する!!」
そう言って胸に拳を当てお辞儀する。
「なんスか、そのポーズ?」
「聖騎士団の挨拶のポーズだ!」
その答えに納得すると、セルイは話題を戻す。
「それで? 親父さんを探すにしろ、どうするつもりなんスか?」
「それなんだが、この父上の剣、おかしいのだ」
詩音は見てくれと剣をセルイの目線に持って行く。
「ここ、刃の根元に文字があるだろう? コレは私の世界の文字なんだが……父の通り名、剣聖のホワイトパールの箇所。それが不自然に削られているのだ」
確かに言われてみると、文字にも見える。
セルイはそれを見つめながら、
「それで、不自然ってのはどういう事っスか?」
その質問に、
「不自然に削られた箇所を読むと通り名から別の言葉に変わるのだ。読むぞ? 『私は聖にいる』だ」
詩音の言葉にセルイは首を傾げ、
「私は聖にいる? なんスか?」
「わからない。だが、コレはきっと父上からのメッセージに違いない!!」
意気込む詩音に、セルイが待ったをかける。
「ちょい待ち! そんな暗号みたいなもんだけで探すつもりっスか!? 無茶っスよ!!」
セルイの言葉に、
「……確かに。だが、他に手がかりがないのだ……」
さっきの意気込みはどこへやら、凹んでいく詩音に、
「あ〜。仕方ないっスね。明日、オレの情報屋から情報を聞くとかするっスかね?」
詩音の表情が変わる。
「本当か!?」
「本当っスよ! だから、今日はもう寝るっス! もうこんな時間スからね!」
時計を見ると、深夜零時を示していた。
「わかった。寝よう。セルイはまたソファでいいのか?」
詩音の発言に、セルイはため息を吐きながら、
「あのね、年頃の娘さんと一緒に寝るわけには行かないんスよ! 倫理的に!! それに、オタクの寝相酷かったっスからね!? 一緒に寝たらオレの身体がおかしくなるの必須っス!! だから無し! オーケー!?」
若干の早口で言うセルイに、詩音は軽くショックを受けたらしい。
「私の寝相……そんなに酷かったのか……」
またしても落ち込んで行く彼女に、色々と忙しい子だなぁと思いながら、セルイがフォローする。
「まぁベッドから落ちないだけでも御の字っスよ……? それより、明日! 行くんスから、早く寝る!!」
そう言うや否や、セルイはソファに寝そべってしまった。
「……なんだか納得行かないが、おやすみ」
「おやすみっス」
セルイは布団をかけ直すと、体勢を変え、一人考える。
(あの情報屋が言っていたオレと同じヤツからの依頼……か。同じ……つまり相手も吸血鬼の可能性が高い。ケンカを売って来た理由はわからないが……コレは面倒な事になったっスね)
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翌朝
セルイが起きると、詩音が先に起きていた。
なんだか焦げ臭い匂いがする。
慌ててキッチンに向かうと、
「おはようセルイ! 今料理を作っているところだ! 待っていてくれ!」
焦げたフライパンを持ちながら、自信満々に言う詩音に頭を抱え、
「詩音……。自分も食べるのわかってるっスか?」
「もちろんだとも! 美味しくするぞ!!」
もう無理だろ……と、とうとう頭痛がして来たセルイに構わず、詩音は料理を続ける。
数分後、出来上がったのは焦げた黒い謎の物体だった。
「どうしてこうなった!!」
机をバンと叩き嘆く詩音に、
「いや、焦げた時点で気付くっしょ!? 普通!?」
セルイの突っ込みに、
「くぅ! 元の世界ではコレに魔法の調味料をかければ美味しくなるのに!!」
それは調味料が有能過ぎたのでは? と思ったが、それは言わずに、
「……とりあえず、オレが作り直すから大人しくしてるっスよ?」
無言で頷く詩音に頷き返し、セルイがキッチンに立った。
その様子をボーっと見ていた詩音は、ふと、キッチンに置かれた鏡を見る。
すると、そこには調理をするセルイが写っていた。
(この世界の吸血鬼は鏡に写るのか……)
異世界だからと納得する詩音を知り目に、セルイは、
(オレが鏡に写っても驚かないっスね……。てっきり突っ込まれるかと思ったのに……。まぁいいか)
そうこうしている内に料理が出来た。
「さぁて、食べて元気出して行くッスよ! いただきます!」
「了解した。いただきます!」
二人は無言で食事を取った。
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食べ終わり、片付けを手短に済ますと、二人は情報屋の元へ向かう事にした。
支度をしていると、詩音がおもむろにセルイに言う。
「剣が心配だから持ち歩きたいんだが、何かないか? 正直、布だけではキツいんだが」
詩音の発言に、マジかーと思いながら、仕方なく倉庫に行き、セルイが引っ張り出して来たのは、ギターケースだった。
結果、軽音部の学生のような出で立ちになった詩音に笑いを堪えながらセルイは言う。
「それじゃ行くっスよ!」
「了解した!」
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数分後、
前を歩くセルイに、詩音が声をかける。
「それで、お前の情報屋というのはどういう人物なんだ?」
詩音の言葉に、
「あ〜そうっスね。良い奴だけど悪い女? って感じっスかね?」
「良い奴なのに悪いとはどういう事だ?」
詩音の疑問に、セルイは少し笑うと、
「まぁ会えばわかるっスよ」
そう言って先を歩いていく。その後を追うと、着いたのは寂れた洋館だった。




