無駄足
「それで!? この後はどうするのだ!?」
「そうっスね~。オレの本名も知られているわけだし……。逃げてもダメなら突破しろ!! てきな?」
そう言うと、セルイはチィトゥィリ・アルージェを変形させ、ボーガンブレードにする。
「さっさと片付けるっスよ!! 詩音!!」
そう言うやいなや、セルイが仕掛ける。
「よっと!」
黒い影を出し、類達が持つ拳銃に絡みつける。
「くぅ! なんだ!?」
困惑する彼らに、詩音が峰打ちをきめていく。
「このまま、されるがままだと思うなよ! 化け物!!」
そう言うと類が懐から、苦無を出し、セルイ目掛けて放つ。
セルイはそれをチィトゥィリ・アルージェのブレード部分で受け止めると、類は影と詩音のスキから這い出て、セルイに向かって行く。
それに気づいた詩音が、精鋭達を気絶させながら叫ぶ。
「セルイ!!」
「大丈夫っスよ。問題は何もない!」
短刀を取り出し、セルイの首元目掛けて刺そうとする類をクロウダートで受け止める。
「!! っこの化け物がぁ!!」
「それしか言えないんスか? オタク」
類目掛けてボーガンを放つ。至近距離にも関わらずかわす彼に、セルイは目を細め、
「ほう? どうやら忍者と言うのは侮れないっスね? ならば俺も本気になろうか!」
セルイの姿が、少年から青年に変わる。
(セルイが本気を!? あの男、それほどなのか!?)
思案する詩音目掛けて、精鋭達の中の一人が銃を放つ。詩音は慌ててかわすと、顎を剣でつき、よろけたところでみぞおちを打ち、気絶させる。
「危ないな! 私とした事が……!」
そう言いながら、詩音はテキパキと動き、精鋭達を全員気絶させた。
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青年に変わったセルイ目掛けて、苦無を投げる。その攻撃をブレード部分で払い落とすと、セルイが動く。
急接近し、距離を詰める。
「! そう易々と!!」
類が煙幕を出し、視界から消える。
「ほう?」
立ち尽くすセルイ目掛けて、再び短刀で攻撃する。が、その剣を影で掴むと、セルイはニヤリと笑い、
「悪いが、ショーはここまでだ」
影ごと、類を壁へ打ち付ける。その衝撃で類は気絶した。
「さてと、それで? 獅子堂光はどこに行った?」
周囲を見渡すと、壁と壁の間にある脱出口に足をかけていた。
「クソッ!! こんなに早く片付けられるとはな!!」
悔しがりながら、脱出しようとする彼を、セルイが影で動けなくさせる。
「ちぃ!! この影!! 味方だと心強いが敵だとこうも、厄介なのか!?」
もがく獅子堂へセルイがゆっくりと近づく。
「クソッ!! クソッ!! 僕だって覚醒さえ出来れば!!」
「覚醒? そうか、魔族の力が使えんのか。なら、この姿じゃなくても良さそうっスね?」
言い終わらないうちに、少年の姿に戻ると、いつもの調子でセルイが言う。
「オタクの言うリリアンヌが、今どこに居るのか教えてもらうっスよ?」
「!! 知ってどうする!? あの人は何も知らないんだぞ!?」
「へぇ~よくご存知なんスね? 」
しまったと言う顔をする獅子堂に、セルイは笑いかけながら、
「まぁまぁ、そんな狭いところにいないでっと!!」
影ごと宙に浮かべ、獅子堂を執務室の椅子に座らせる。
「な!? その影はそんな事もできるのか!?」
驚く詩音に、セルイは親指を立てると、
「さぁて、それで?」
先を促すセルイに、獅子堂は大きく息を吐くと、
「……あの人が今どこに居るのか、僕も知らんのだ。……だから、貴様らを見張っておけば会えるかと思ったのだが……」
「ふぅん? それだけ? オレ達の情報をあんなに集めといて、ただの人探しが目的? ナメてんスか?」
セルイの若干怒気が入った言葉に、獅子堂は嫌な汗をかくと、
「信じてもらえないかもしれないが、本当なんだ!! あの人は……リリアンヌは、南部聖司が現れたと同時期に行方不明になったんだ!!」
それだけ言うと、獅子堂は泣き出した。その様子をみて、興ざめしたのか、セルイは影から解放する。
「はぁ~~。オレ達にケンカ売ってくるから、どれだけの男と思いきや、ただのマザコン? 先祖コン? とは かんっぜんに無駄足だったっス!!」
一気に脱力すると、
「詩音、帰るっスよ! あ、市長さん? もうオレ達にちょっかい出さないでよ? 次は……ないっスから」
口調はいつも通りだが、殺気を放つセルイに、獅子堂はコクコクと頷く。
「同意と受け取るっスよ? んじゃ、失礼するっスよ〜」
そう言うと、手をヒラヒラとさせながら、詩音と共に執務室を出ていった。
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「……結局なんだったんだ?」
首を傾げる詩音に、セルイがわざとらしく咳をすると、
「よーするに、自分でリリアンヌを探せなかったから、漁夫の利狙ってオレ達の情報を買ってたと。あんな乳臭い奴に興味をもつシーニーの気が知れないっスよ。あーあー! 全く!!」
「?? とにかく現市長殿はなんの情報も持っていなかったと言うことだな?」
「そゆこと」
あっさり言うセルイに、詩音も疲れたのかあくびをする。それをみたセルイは、
「んじゃ、多分もうちょっかいかけて来ないだろうし、一旦家に帰りますか!!」
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久しぶりの我が家に、ゆっくりと伸びをするセルイに、
「随分久しい気がするな。……私の甲冑も無事だな!!」
自分の甲冑の無事を確認しヨシヨシと撫でる。そんな彼女をみて、
「さてと。どうしますかね~。現市長はハズレだったし。マリ達からも連絡ないし」
「そうだな」
二人して唸る。しばらくして、セルイが口を開く。
「リリアンヌの行方が気になるっス。獅子堂が言ってた『南部聖司が現れてから行方しれずになった』ってのがどうも引っかかるっス」
「確かにな。なんの関係があるのか……」
「やっぱカギは南部聖司……か。んん! ……とりあえず、人狼の長がどうなったかも気になるし、ちょっと休憩したら、あのシャッター街に行くっスかね!」
セルイの提案に、詩音も頷く。
「さてと、そんじゃ休憩ターイム!!」
二人はソファに座り、セルイがテレビを付け出した。それをみた詩音は一人考える。
(セルイの本名……はじめて知ったな。本当に私は何も知らない。これだけ一緒に居て。……コレでいいのだろうか?)
そんな彼女の心中を知ってか知らずか、セルイが笑う。
(考えても答えは出ない……か)
詩音は首を左右に振ると、目を瞑った。




