状況整理
マリ達の所に向かうと、レオンが出迎えた。
「今日はなんでしょう? セルイ様、お嬢様」
玄関先からマリの部屋までの間に、簡単に説明するとレオンは、
「なるほど……状況は理解しました。現市長との戦いが楽しみです!」
「そう言う期待は要らないんスけどね……」
呆れながらそう言うと、セルイ達はマリの仕事部屋に入る。中でマリは大人しく椅子に座っていた。
「その様子じゃ、私のパパの情報を得たみたいね? 全く!! 私が欲しかったのに!!」
机をバンッと叩く彼女に、受け取った資料を渡す。
「それで? オタクはどこまで知ってるんスか?」
セルイの問いにマリは少し考えた後、口を開く。
「……あんた達を騙すつもりはなかったんだけどね……。聖リントがあの男のモノになった後、あれだけ反対していたパパがおかしくなったの。神さま神さまって! 別人みたいに!! だから、パパに何があったのか知りたくて……そんな時、あんた達の話が流れて来て……それで盗聴していたら、いつの間にか仲間にされてたってわけ」
「なるほどね。でも、よく本名で情報を集めてたっスね? かなりリスキーなのに」
セルイの言葉に、マリが言う。
「今回だけよ! いつもは偽名使ってるわよ!! それで? 私に資料を寄越したって事は、何をさせる気なわけ!?」
セルイは頬をかくと、
「実はっスね……。聖リントの残党が実在するのかどうか知りたいんスよ」
「? 私みたいなのはいるかも知れないけど、残党? そんなのいるのかしら?」
疑問符を浮かべるマリにセルイは、
「案外オタクみたいな理由で、残党をやってるヤツがいるかも知れないっスからね。後、現市長と魔族との繋がりも知りたいっス」
「魔族? まぁいいわ。結構な注文ね……。命懸けになるかも知れない……。いいわ! やってあげる!! その変わり、私のパパに何が起こったのか教えなさい!!」
マリの言葉に、セルイは無言でいた詩音と頷きあい、自分達が跡地でみた光景を話す。
しばらくして、聞き入っていたマリが口を開く。
「……なるほど。魔法による洗脳……ね。確かにそれならパパがおかしくなった理由にも説明はつくわ。……ありがとう」
素直にお礼を言うマリにレオンが、
「お礼を言えるとは素晴らしいですよ! マリ!! 後でご褒美をあげましょう!!」
「!! ま、まぁ私だってお礼くらい言えるわよ」
ご褒美を想像したのか、頬を赤く染めながら言うマリに、レオンが優しく顔を撫でる。いい雰囲気になりそうだったところを、セルイが止める。
「そーいうのは後でやってほしいっスね! コホン!! それじゃ、頼んだっスよ!!」
そう言うと、セルイは詩音を連れて部屋を出た。出てすぐに、詩音が声をかける。
「なぁ? もっと色々聞かなくてよかったのか?」
「人の過去を探るのは危険っスよ? それに、オレ達がほしいのは、聖リントの残党と魔族と現市長の事っス! 下手に聞くより仕事してもらった方がいいっスよ!」
「まぁ、確かにそうか」
納得したらしい詩音を確認すると、セルイは、
「そんじゃ、隠れ家に戻りますか!」
****
隠れ家に着くと、セルイがソファに寝転ぶ。
「いやぁ! 色々あったっスね!」
そう言われ、詩音も緊張の糸が切れたのか、椅子に座ると、ため息を吐く。
「一体なにがどうなっているのやら……頭がおかしくなりそうだ!!」
そんな詩音を見て、セルイは頬をかきながら、
「まぁまぁ。とにかくいい時間っス! なんか食べて風呂入って寝るっスよ!」
そう言うとキッチンに立ち、簡単な料理をし始めた。手持ち無沙汰な詩音は、魔剣の資料を読む。と言っても、ほとんどの文字は読めないが。
ボーッと眺めていると、料理が出来上がったらしく、テーブルに並べられた。
「はい! 今日はアボガドクリームパスタっスよ!!」
出された料理に、もう慣れたのか詩音は早速いただきます。と言い食べ始める。
「どんだけお腹空いてたんスか?」
苦笑いを浮かべながらも、セルイも食べ出す。
しばらくして食べ終わると、二人は交代でシャワーを浴び、テレビを見ながらくつろぎ出した。
「ふぅ〜。やっと落ち着いたっス」
呑気なセルイに、詩音が言う。
「……なぁ。状況を整理しないか?」
彼女の発案に、いいっスよ。と答えると、
「まず、オレ達の情報を売っていたJが襲撃された。襲撃目的は不明だが、Jはオレ達が狙われていると言った。そして、現場には聖リントの残党らしき痕跡があった。ここまではオーケーっスね?」
セルイの話に詩音も頷く。その様子を見て、更に続ける。
「でも、聖リントは粛清と洗脳を行いハンナ教団になっており、そこに残党の影は見当たらなかった。そこが矛盾点っスね!」
「ああ。そして、我々の情報を買っていた連中の中に、現市長がいた。ヤツの秘書はマリとの取引に聖リントの報告書を持って来た。だな?」
セルイは頷くと、
「ここで疑問が出てくるっス。なぜ聖リントの報告書を現市長が持っていたのか? 」
「確かにな。……案外そこが突破口になる……といいんだが」
「オレ達の情報を一日も待たずに手に入れようとした男っス。詩音の言う通りかも」
うんうんと頷くセルイに、詩音が聞く。
「なぁ? 現市長が我々の情報を得たい理由はなんなのだろうな? 魔剣か? だが魔剣は……」
「南部聖司に渡してしまったっスね。Jも欲しがってたし、魔剣とここに来た魔族との関係性も不明っス。さて、どうしたものか……」
しばらく考え込む二人だったが、答えは出ない。
「んー! 埒が明かないっス! 今日はもう寝るっスよ!」
「そうだな。……ふぁ。ものすごく眠いぞ」
目を擦る詩音はベッドルームに入って行く。
「それじゃ、おやすみ。セルイ」
「おやすみっス!」
そう言ってソファに寝転がると、電気を消し、二人は眠りに着いた。




