蛮行と魔族
翌朝、二人は早起きをして聖リント跡地に向かった。
「ここに来るのも慣れたもんスね」
そう呟くセルイに、詩音は、
「全くだな。さて何かわかればいいのだがな」
「オタク発案っしょ? もっと自信持って!」
「……そうだな」
そんなやりとりをしていると、跡地についた。
「さぁて! チャチャッと済ませますか!」
「了解だ。始めるぞ!」
そう言うとギターケースから聖剣を取り出し、詩音は呪文を唱えだす。
その間に、セルイは『自主映画の撮影中』と書かれたプレートを即席で作り、跡地の隅に突き刺した。
(これでいいっしょ! はてさてどうなることやら)
詠唱を続ける詩音の邪魔にならないように隅に寄りながら見守る。すると周囲が暗くなり、最初にここに来た時と同じく映像が映し出された。
(おお! なになに?)
その映像は、南部聖司が神さまとして君臨し始めた所から始まった。
彼が指示をだし、縄で繋がれた複数の信者達が連れて来られた。そして、南部聖司は……神さまは己の聖剣でその信者達を次々と切っていった。
(これは……粛清っスね。うっわ、エグいな!)
無抵抗な彼らを切り終わると、椅子に座る。そして、次に連れて来られた信者達には、呪文を唱え、何かを施している。
(見た感じ……洗脳っスかね?)
そうして、粛清という名の虐殺と洗脳を繰り返し、彼らの神さまは玉座に座った。
(これからどうなる?)
全てが終わったらしい神さまは、自分に呪文をかけだし、聖剣を手放した。そこで、映像は終わった。
「……詩音」
微動だにしない詩音に声をかけると、はっ! とした表情でセルイの方を向く。その目には涙が浮かんでいた。
「……セルイ。ちち……あの男は、間違いを犯している。やはり、任せない方がいいと思う」
それだけ言うと、無言になる。
周囲はもう明るくなっていた。セルイは頷くと、
「……そうっスね。気になる点もあるし、調べてみますか?」
「……ああ」
突き刺したプレートを回収すると、二人は跡地を後にした。
****
隠れ家に戻ると、セルイは魔剣の資料をテーブルに無造作に並べる。
「? 何故魔剣の資料を並べる? 魔剣はもう手放しただろう?」
疑問符を浮かべる詩音に、セルイが言う。
「いやぁ、案外こういうのが手がかりだったり……するんじゃないかと、思ったり?」
「……何故最後に疑問符を浮かべる? それに、その資料は何百年も前のものだろう? 役に立つのか?」
「まぁまぁ。ずっと気になってたんスよ! 手慣れのJが瀕死にまで追いやられた理由を! あれだけの事が出来て、更にオレ達を狙っている……何かありそうっしょ? 」
セルイの言葉に詩音も確かに! という表情をする。それを見て、セルイは笑うと、
「それじゃま、資料を漁ってみますか!」
****
数時間後、遂に手がかりになりそうな物が見つかった。
「これっスよ! ……多分」
「多分とはなんだ、多分とは。……それで? この資料で何がわかったのだ?」
急かす詩音をたしなめながら、セルイが古い一枚の紙を見せる。
「! この文字は!?」
「やっぱそうっスか。オレに読めなくて詩音に読める文字……おそらくは詩音の世界の紙っスね!」
セルイが持つ紙を奪うと、詩音が読み始め、その表情がみるみる変わっていく。
「……その? なんて書いてあるんスか?」
「……簡単に言うぞ? 魔族の事について書いてある。異世界から来てしまったこの魔族は、元の世界へ帰るために、魔剣を手にしたが無意味だった。だから、魔剣を元の場所に戻した。と書いてある。魔族と言うのは魔王の眷属達だ! 私や……あの男以外にもこの世界に渡って来た者がいるとは!」
驚きを隠せない詩音に対して、冷静なセルイは、
「何百年も前に、詩音達の世界から来た……か。その魔族ってのは、長生きなんスか?」
セルイの質問に、詩音が震えた声で言う。
「ああ。数百年は生きるはずだ」
「なるほど。……となると、この魔族? ってヤツが怪しいっスね!」
そう言うとセルイはスマホを取り出す。そんな彼を見て詩音が問う。
「? すまほを取り出してどうするのだ?」
セルイはニヤリと笑うと、
「探すんスよ! この魔族をね!」




