魔剣ノスフェラトゥ
人狼の長と呼ばれた男は、笑いながら寄ってくる。
それを警戒する詩音に、セルイが言う。
「慌てないで! こっちにはまだなんのカードもないんスから!」
「わかったが、どうするんだ?」
セルイは頷くと、
「J! オレを売ったっスね?」
単刀直入に聞く。すると、
「あはは、直球だな! あぁ売った!! 羽振りのいいヤツだったんでな!!」
あっさり言うJに、セルイも笑いながら言う。
「そんで? いくら出せばいいっスか?」
そう言うと、Jが目を細める。
「なぁに、今はしがない商人なんだっけ? まぁ、いいさな! てめえから金もらっても退屈だ! 条件を出そう!! 魔剣ノスフェラトゥを探して持ってこい!! そうしたら情報を売るのを辞めてやる!」
そういうJに、驚きを隠せない詩音が疑問符を浮かべ聞く。
「そんなもの持ってどうするつもりだ!? それにそもそも実在するのか!?」
首を傾げながら言う詩音を他所にセルイが、
「……わかったっス。目的までは聞かない。こっちの情報を漏らさないでもらえれば、それでいいっス!」
「!! セルイ!?」
「詩音、Jを敵に回すのは厄介この上ないっス。それに、情報も商売の一種。ここは素直に要求を飲もう。」
その返事を聞いたJは、嬉しそうに、
「ははは! さすがは真祖の王! 話が早くて助かるぜ!! そんじゃ期待して待ってるぜ!」
そう言ってJはどこかに行ってしまった。
しばらくして、 再びの静寂を詩音が壊す。
「おい! どういう事だ! 魔剣ノスフェラトゥは実在したのか!?」
詩音の言葉にセルイが頭をかきながら言う。
「いやぁ実は……オレが造ったんスよね!」
「な、なんだと!?」
「まぁまぁ落ち着いた! 落ち着いた!」
衝撃発言に驚く詩音をたしなめると、セルイは歩きだした。
「お、おい! どこへ行く!?」
「どこって、情報収集っスよ!」
****
「お、おい! ここは危険なんじゃないのか!?」
しばらく歩いて着いた場所は、朽ちた廃屋だった。
「確かに危険っスよ。足元と頭上に注意っス!」
そう言われ、戦々恐々しながらセルイに続いて詩音も入って行く。
中は昼間だと言うのに暗い。懐中電灯を頼りに進んで行く。
キッチンまで着くと、セルイが下を照らす。
「えぇと、確かここの床下にっと!」
床下の扉を開けると、階段が見えた。それを降りると、四畳程の空間があった。
「セルイ、こんなところに情報なんてあるのか?」
詩音が聞くが、セルイは答えない。
そうしていると、金庫の前まで来た。重い金庫の扉を開けると、中から箱が出てきた。
「それは!?」
詩音に待てと手で合図し、セルイが慎重に箱を開けると、そこには沢山の資料が入っていた。
中身を確認を終えるとセルイが箱に戻し、トランクの中にしまう。
「さぁて、出るっス……待って!」
上に上がろうとする詩音を静止し、今来た床下の蓋を閉め、中から鍵をかける。
「どうしたというのだ?」
「シー! 誰か来たっス。静かに移動するっスよ」
そう話した直後、ドシドシと数人の足音がしてきた。
何かを話ながら歩き回る人物達に、声を潜め、ゆっくりと、四隅にある扉を開ける。
セルイが手で合図しながら、中に入るよう促す。
詩音も頷き、ゆっくりと入って行くと、扉の鍵を閉めた。
「ふぅ〜。ヤバかったっスね」
出た先は、洞窟だった。一息着くと、
「詩音。色々言いたい事、聞きたい事があるだろうけど、今は静かにオレに着いて来て? わかった?」
詩音は無言で頷く。それを確認すると、セルイが暗い洞窟内を進んで行く。
そうして二人は、洞窟を抜け、下水道に辿り着き、腐臭のする中を歩く。
「うぅ」
キツい臭いに詩音が顔を歪める。
「詩音、もう少しの辛抱っス」
そう言うとあとは無言で進んで行き、ある箇所の扉前で止まる。
「ここっスね」
セルイが鍵を開ける。そして、中に入って行く。
詩音も後を追い、着いたのはスラム街の一角だった。
「まさかここに辿り着くとはな!」
驚く詩音に、セルイは疲れた様子で言う。
「まぁ、この街には古くから居るっスからね……。それより、詩音! これをかけて!」
そう言ってセルイが取り出したのは香水のようなものだった。
「? 何故だ? いや、そうか! 臭うからか! なるほど!」
一人納得する詩音に、
(それもあるけど、オレ達の認識をいじる目的もあるんスけどね。まぁ、説明すんのも面倒だし、いいか)
そう思い、何も言わずにセルイは自分にふりかける。 それをマネして詩音も自分にふりかけたのを確認して、セルイ達は街を歩いて行く。
しばらくして着いたのは、古いマンションの一室だった。
「さてと、オレの隠れ家その一に着いたっス!」




