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シーニー

「……シーニー!」


  シーニーと呼ばれた女性は、詩音を盾にしながら歩いてくる。


「お会い出来て光栄ですわ。ずっと探していましたのよ?」


  その言葉に、セルイが言う。


「探していた? どういう意味っスか?」


「折り入って貴方様にご協力頂きたいのですわ」


  勝手に話を進めるシーニーに、セルイは頭をかき、


「話は聞くっス。だから、その子から銃を外すっス。出ないと……」


  セルイの影が蠢く。その様子を見ていたシーニーは、


「わかりましたわ。娘は解放しますわ」


  そう言って詩音から銃口を外し、セルイの胸元に突き飛ばした。

 慌てて受け止めると、詩音の身体は震えていた。


「……敵の気配に気づけなかった! 不甲斐ない!」


  震えを誤魔化すかのように、自分を叱責する詩音の肩を叩くと、セルイが言う。


「さぁ、話をする……前に移動しないっスか? ここじゃ警察が来てしまう」


  その言葉に反応しシーニーは、


「そうですわね。ワタクシの拠点がありますから、そこまで移動しましょう? ……下手なマネはしないで下さいましね?」


「わかってるっスよ!」


  そう言うと、シーニーは飛んだ。


「な!? あの女も飛べるのか!?」


  驚く詩音に、セルイが言う。


「そりゃあ吸血鬼っスからね! 後を追うっスよ! そんな訳で、詩音! また飛ぶ時間っスよ〜!」


  問答無用で詩音をギターケース事担ぐと、セルイが飛ぶ。


「いゃああ! 飛ぶのは嫌だぁ!!」


  珍しく悲鳴を上げる詩音に、苦笑いしながらセルイはなるべく負担がかからないように飛ぶ。

 レオンも続いて飛んで来た。


「セルイ様、お荷物お持ち致しましょうか?」


「いいっスよ。これくらいは自分でやんないと!」


  セルイの言葉に承知しましたと言うと、後方に下がって行く。


****


 数時間後、エンドの拠点に辿り着いた。


「ここがワタクシ達の拠点ですわ」


 降り立った場所は、とあるマンションの屋上だった。


「このマンション全てが、ワタクシ達の所有物ですわ」


 シーニーの言葉に、詩音が驚く。


「まんしょん? と言うのはわからんが、建物一帯を支配しているのか!」


  詩音の言葉で楽しそうに、シーニーが言う。


「ふふふ。中もかなり改造してありますのよ?」


  自慢げな彼女に、セルイが言う。


「それで? オレ達をわざわざ連れて来た理由を教えて欲しいんスけど?」


  セルイの苛立ちげな声でシーニーが緊張した顔をし、


「これは失礼いたしましたわ。お話しましょう」


  一呼吸置いてシーニーが言う。


「灰色の王。改めて、ワタクシ達に協力して頂きたいんですの」


「ほう?」


  セルイの言葉に頷く。


「単刀直入言いますわ。南部聖司の復活を阻止し、ハンナ教団を壊滅させてほしいのですわ」


  その言葉に詩音が焦ったように言う。


「待て! 南部なんちゃらとは私の父かもしれない人物だ! 復活の阻止とは! ハンナ教団とはなんなのだ!!」


  詩音の発言にセルイも続ける。


「詳しく話して欲しいっスね。協力を仰ぐなら、それがスジってもんスよ?」


  二人の言葉を聞いたシーニーは、


「わかりましたわ。お話致しましょう」


  シーニーは口を開いた。


「まずは、南部聖司に何がおこったのか御説明致しますわ。彼は十数年前、別の世界からやって来ましたわ。降り立ったのは聖リントの集会所のど真ん中。聖リントの者達は、異世界から来た彼を神と崇めましたわ」


  ここまではいいですわね? と前置きをすると、


「そして、神になった彼は聖リントの解体を行いました。理由は恐らく裏との繋がりを断ち、真に清らかな団体にするためですわね。そして、ハンナ教団に完全に生まれかわった組織は、裏から手を引いたのですわ」


「ちょっと待って欲しいっス! 聖リントは壊滅したんじゃないんスか?」


  セルイの質問に、詩音も乗る。


「それに、父上が神になった理由が不足しているのではないか!? なぜ父上は神などと……」


  二人の質問に、シーニーが答える。


「壊滅と言うのもあながち間違いではないのですわ。南部聖司は、いえ、彼らの神は聖リントの汚さを恥て、粛清も行ったらしいですから。それから、なぜ貴女のお父様が神になったかですが、答えは簡単。この世界では失われた秘術……魔法を使えたからですわ」


  シーニーの説明に、詩音が納得行かないとばかりに食らいつく。


「父上は高潔な聖騎士だ! それが、魔法が使えたからという理由だけで、いや、神として崇められたから等という理由で、神になどなるはずがない!!」


  詩音の抗議に、シーニーはため息を吐くと、


「人間は権力を持たされると変わるものですのよ、お嬢さん。どんなに高潔でも、いえ、高潔だったからこそ貴女のお父様は神になった。なってしまったのですわ」


「そんな……」


  シーニーの説明で、詩音はショックを受けた様子で黙り混んでしまった。

  コホンと咳払いをし、セルイが聞く。


「それで? その神さまの身に何がおこったんスか? 臓器移植が必要なほど怪我したって聞いてるっスけど?」


「ええ。彼は深手を負いましたわ。ワタクシと戦って」


  シーニーの爆弾発言に、セルイも詩音もそして、ずっと黙っていたレオンも驚く。

  そんな三人に気にもとめず、シーニーが続ける。


「彼はあまつさえ、この街の支配者になろうとしたんですのよ?」


「街の……支配者だと!?」


  詩音が声を震わせながら言う。


「ええ。貴女のお父様は、この街の市長になろうとしたんですのよ? 魔法を使ってね」


「……そんな……」


  ショックを隠せなくなって来た詩音の代わりに、セルイが聞く。


「それで戦って瀕死にまで追いやったのは理解したっス。問題なのは、なぜシーニー。貴様が出て来た? 理由次第では……容赦はしない」


  セルイの口調が変わる。


「ようやく本気になって下さったみたいで感激ですわ、灰色の王」


  嬉しそうに笑うと、


「ワタクシの目的はただ一つ。愛しいお方の安寧ですわ」


「今の市長か?」


  セルイの言葉に頷くシーニー。


「ワタクシ、何百年振りに恋をいたしまして。その方のために、エンドを立ち上げ、ハンナ教団と争って来ましたの。もちろん裏の方々にはキツくキツくかん口令を引いて! ああ! たまりませんわ!!」


  火照った頬を赤らめながらくねくねとした動きをするシーニーに、セルイが冷たく言う。


「貴様の恋などどうでもいい! だが、それなら何故ガイアを殺した!? そして、あの爆弾はなんだ!?」


  セルイの身体が黒くなり、シーニーの首元を絞めるかのように動く。それに動じずに、シーニーが言う。


「あの情報屋の方には悪い事をしたと思っていますわ。ワタクシは、忠告いたしましたのよ? でも聞いて下さらなくって。それで」


「……殺したのか。だが、ガイアが調べていたのは聖リントと剣聖のホワイトパールだ。何故お前が手を下した?」


「ええ。でも、聖リントを辿って行けば自然とハンナ教団まで辿り着く。そして、剣聖のホワイトパールの事を知れば脅威になりかねない。不安要素は排除して起きたかったんですの。そして、爆弾は保険でしたの。もし、ハンナ教団の連中だったら、死んで頂かないと。……これも全ては愛しい殿方のため。ですから……ワタクシも命をかけていますのよ?」


  凛とした姿勢で言うシーニーに、セルイは元の姿に戻ると、


「詩音の親父さんをどうするかはこちらで決めさせてもらうっス。それが、協力する条件っスよ?」


「……セルイ!」


  詩音の方に親指を立てると、


「それで? 教団とはいつぶつかるんスか?」


  セルイの言葉にシーニーが言う。


「明日ですわ」

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― 新着の感想 ―
[一言] 詩音の父よ……! でも本当に権力を持って人が変わったのかな、と言う疑問を捨てきれない。 背後にも色々と思惑があって蠢いてますねぇ……!
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