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お姉ちゃん

「ま〜た、このシチュエーションっスか!!」


 つい最近同じような事があったばかりのためか、呆れ気味に言う。


「文句を言っても始まらない! やるぞ! セルイ!」


 ハイハイと返事をすると、二人は同時に仕掛ける。

 まず詩音が先行して切り裂いていき、漏れた敵をセルイがボウガンで撃ち落とす。

 二人の連携プレーに、敵がおされる。


「いい感じっスね!」


(だけど、なんスかね? この手応えのなさは)


 セルイが感じ取った違和感の正体はすぐにわかった。


「倒した敵が起き上がってきた……だと!?」


 確かに切り裂いた敵が、ボウガンで倒した敵が、起き上がってくる。


「セルイ!? コレは一体!?」


 思わずセルイに聞く詩音に、リセが答える。


「コレがこの世界の技術、ロボットよ?」


「ろぼっと……というのはなんだ!? わかるように話せ!!」


 詩音の抗議に耳を貸さず、リセは後方から詠唱をし始めた。


「魔法はまずいっス!! 詩音!!」


「わかっているが、敵が! 倒しても倒しても起き上がってくるんだ!!」


「ロボットなら何度か攻撃すれば壊れるっスよ!」


(ただのロボットならいいんスけどね……)


 嫌な予感を感じるセルイとは対象的に、詩音は攻撃をし続ける。セルイの言葉を信じて。

 だが、一向に敵が倒れる気配がない。

 そうしている内に、詠唱が終わってしまった。


「くっ! 魔法が来るぞ!?」


「なにが来るっスかね!?」


 二人の反応に、リセは笑いながら


「二人をわかつ、魔法だよ!」


 そう言った刹那、セルイの足元に空間が生まれ、セルイは飲み込まれてしまった。


「セルイ!?」


「さぁ、お姉ちゃん。今度こそ二人きりで話そう?」


 リセはそう言うと、詩音を囲むロボット達に命じる。


「お姉ちゃんを捕らえなさい」


 無数の手が詩音を捕らえようと動く。


「くっ! まだだ!! まだやれる!!」


 強がる詩音だったが、切ったところから起き上がるロボット達に体力を減らされ、

 剣を握っていた手を拘束されてしまった。


「!! 離せ!!」


 そうして詩音を拘束すると、


「お姉ちゃん、お話しようね? 連れてきなさい!」


 リセの命令により、詩音は拘束されたまま連れていかれてしまった。


****


 一方その頃


「いったぁ〜!! ここどこ!? っていうか今どき剣山はないっしょ!?」


 謎の空間に飲み込まれたセルイを待っていたのは、鋭利な剣山だった。


「全く、不老不死でも痛いもんは痛いっつーの!!」


  ゆっくりと、剣山から身体を抜く。


「あ〜あ〜、服がボロボロっス!」


 そう言って立ち上がると、セルイは武器を確認する。

 剣山に刺さる直前に、四隅の端に投げたのだ。


「チィトゥィリ・アルージェ、壊れてないっスね。よかったぁ〜。コレけっこうしたからなぁ」


 チィトゥィリ・アルージェを撫でると、セルイは出口を探す。が、どこを見ても出口がない。


「まぁ、殺す前提の部屋に出口なんか作らないか……。さぁて、どうするっスかね〜」


 口調はのんびりしているが、纏う気配は殺気だっていた。


「血のストックは充分……やるっスかね」


****


 同じ頃、捕らえられた詩音は、拘束されたまま椅子に座らされていた。


「さてと、どこから話そうか? お姉ちゃん」


「やめろ! 私をお姉ちゃんなんて呼ぶんじゃない!!」


「冷たいなぁ〜。でも、そんなお姉ちゃんも素敵だよ」


 そう言って詩音の顔を撫でるリセに、不快感を表す。

 だが、リセは気にせず触り続ける。


「私が剣聖のホワイトパールの娘なのは本当なんだよ? 南部聖司なんぶせいじ。この世界でのお父さんの名前だよ」


 リセの言葉に、詩音が反応する。


「その話が本当だと言う証拠はどこにある!?」


 身をよじる詩音に触れながら、リセは続ける。


「証拠は、この世界なら遺伝子で分かるんだよ? 今度やろうね? こっちもお姉ちゃんが本当に剣聖のホワイトパールの娘か、知りたいから」


 その言葉に、詩音が言う。


「私は誇り高き剣聖ホワイトパールの娘だ! 間違いなどあるものか!!」


 その反応に、嬉しそうにリセが言う。


「そうだね。お姉ちゃんはお姉ちゃんだもんね?」


 今度は上半身に触れてくるリセに、詩音は顔を歪める。


「お姉ちゃんあのね? お父さんはね? この世界に来て神さまになったの。教団を一から変えて、裏社会を牛耳るとこまで行ったの。でもね? 出る杭は打たれるってことで、お父さんは抗争によって瀕死の重体になったの。だから……」


 一息置いて、リセは言う。


「お姉ちゃんの臓器をお父さんにちょうだい?」


 その言葉に、詩音から血の気が引く。


「臓器……だと!?」


「そう。私じゃダメだって言われたから、お姉ちゃんにお願いしたいの」


「ふざけるな!! 私の臓器は私のものだ!! この世界ではどうだか知らないが、私はやらせんぞ!!」


 そんな詩音にリセは、


「でも、もうお姉ちゃんは私の言う事を聞くしかないよ? だって、動けないでしょ?」


 リセの指摘の通り、全く動けない詩音は、


「……くっ!」


 悔しがるしかない。


「じゃあお姉ちゃん、そろそろおやすみなさい」


 そう言うとリセは何かを取り出し、詩音の口元に持って行く。


「さあ飲んで。さあ!」


 無理やり口を開かせると、何かを飲ませた。


「ゲホッ! 何を飲ませた!?」


「お姉ちゃんが眠くなるお薬だよ? コレで寝ちゃえば、後はもう大丈夫。目が覚めたら全部終わってるから。」


「くっ! なんとおぞましい!! お前のやっている事は悪だ!!」


 詩音の言葉に、リセの顔が不機嫌になる。


「悪じゃないよ? だって、神さまの娘なんだよ? 神さまの娘がやることは全部いい事だよ?」


 そう言うと、


「さ、そろそろ眠くなって来たでしょ?」


 そう言って、詩音の身体に触れてくるリセに、


「全然眠くなどないぞ! それどころか力が湧いてくる!!」


「強がってもダメだよ? この薬は……」


 リセの話の途中で、詩音が拘束を力技で外した。


「な!? ウソ!?」


 驚くリセに、詩音は椅子から立ち上がり、


「悪は滅するべし! 覚悟しろ! リセ!!」


「くっ! 人形達! 来なさい!!」


 リセの呼びかけに、詩音も警戒体勢に入る。

 が、一向に来る気配がない。


「なんで!? どうして来ないの!?」


 そう言った瞬間、部屋の扉が開き、


「残念! オレが全部壊しちゃいました〜! イヤ〜大変だったっス!」


 元気そうなセルイの姿に、


「!! 来てくれたのか!! セルイ!!」


「!? 死なずのセルイ!? 本当に死なないの……!?」


 喜ぶ詩音と戸惑うリセ。二人の反応を気にとめず、セルイは言う。


「さぁて、改めて! お仕置きの時間っスよ!」

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― 新着の感想 ―
[一言] なんと、娘って言うのは本当だったのか……! お父さん、何しちゃってるんだよっ!! しかも教団の神様!?裏社会牛耳るって……えええええ、ホントお父さんに何があったの!? とりあえず、内臓は無事…
[良い点] キャラとの掛け合いが描けていて、心情が伝わってくる。 [気になる点] んー、どでかい事件が起きて欲しかったな。
2020/06/21 23:20 退会済み
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